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Published by johntss124, 2021-06-25 19:33:46

日语综合教程6

日语综合教程6

紀前からなのか、私はよくわからない)一面に板を敷く。私のこの包もそう
だった。

内部に、四台、鉄製のベッドが置かれている。ベッドを置くなどずいぶ
んハイカラだが、恐らく旅客用の包だから特別配慮されているのかもしれ
ない。

ちょっと横になってみると 、ひどく快適だった。シーツも青く光ってい
るように清潔だったし、毛布もよく手入れされているのか、地の感触がよ
かった。床板はよく磨かれて光っているようだし、室内の中央に置かれて
いるストーブ(円形の薄い鉄板製)もよくぬぐわれていて、油煙などついて
いない。

やがて扉が外へ開いて、いかにも笑顔の懐かしそうな緑色のセーターを
着た中年婦人が入ってきた。バケツに薪をいっぱい盛り上げて、部屋の隅
に置いた。その甲斐甲斐しい物腰を見ると、彼女の労働が、この包に清潔
をもたらしたということがよくわかった 。

夏とはいえ、高原の深夜や未明は、ときに日本の冬並みにまで温度が下
がる。そのためのストーブなのだが、燃料が薪というのは、よほどの奮発
に違いない。その石炭バケツに近寄ってみると、ボーリングのピンほどに
太い薪だった。山のほうの岩肌をはっている這松みたいな樹の幹や根で、繊
維が針金のように荒々しい。

「なぜアルガル(牛糞)を用いないのか。」
と、彼女に聞いてみた。彼女の返答は、曾存ではアルガルを用いない、と

言うのみで、理由は言わなかった。旅客に対して失礼だということだろう
か。

古来、ユーラシアの草原で暮らしてきたすべての遊牧民族の燃料は、草
食獣の糞であり続けた。草食獣の糞がもし燃えないものなら、燃料のない
草原では人間などとても存在できず、したがって人類の歴史を彩った騎馬
民族は存在しなかったに違いない。

牛や羊たちが草原に落としてゆく糞は、すぐ乾いてしまう。手に載せる
と吹きとびそうなほどの軽さになり、鼻を近づけても草に似たにおいがす
るだけで、およそこの前身が糞であったとは想像しにくい。羊糞をホルゴ
ルと言い、馬糞はホモールという。その糞もりっぱに燃えるだけでなく、青
い炎を上げて、熱量も相当高そうに思える。

「歓待ですよ、ハイ。」
と、精松教授は薪のバケツを指さしていった。まことに痛ましいような感
じで、草原の人には珍物に類するような薪をむざむざと燃やせないような
気もする。

このとき、ツェベクマさんが、扉をたたいた。食事だという。扉を排し

286日语综合教程第六册

て外へ出ると、わかりきったことだが、いきなり大草原に漂い出る感じで、

歩いてゆくうちに自分がけし粒のように小さな自然物になり果てるような

思いである。
草原の中の食堂は、完全に西欧式である。白いテーブル•クロスをかけ

た卓子が七つほどあって、ほかに、くつろぐための安楽椅子もある。

ロシア風の黒パン、モンゴルのさまざまな乳製品が食卓の上に載せられ

ている。
やがて、モンゴル人が最も好む羊の肉ダンゴの入ったスープが運ばれて

きた。酒は水よりも透明度の高そうな例のモンゴル•アルヒを頼んだ。そ

の液体は、ウィスキーのシングルのグラスに入っている 。モンゴル人は客

を接待するとき、これを一気にのどにほうり込み、相手にもそのやり方を

強要する。
料理の皿数が増えるにつれて、首筋から酔っぱらってきた。

「ツェベクマさん、人生は長いですか。J

と、私が言いだしたころには、相当酔ってしまっていたに違いない。

「短いですね。」
彼女は、言下に言った。もう五十になった、と彼女は言う。色白だから

四十そこそこの感じなのだが、数字というのは無残なものだ。しかしなお

彼女は英気潑剌としている。私がそのように言うと、彼女は、自分もそう

思ってはいる、しかし気力のある間に娘に受け渡しておかねばならない、と

言った。

「何をですか。」
「私のモンゴルについての想い。私の持っている小さな教養 。日本語も含

めてです。それに私が娘のころに身につけたお行儀。そして、もうずいぶ

ん娘に語ってきましたが、娘に、あなたの父親がいかにすばらしい人であっ

たかということ。……お酒、もっと召し上がりますか。」

彼女は、照れたらしい。

私は彼女の話を聞きながら、チミドという現代詩人の 「我はモンゴルの

子」という詩を、せきあげるような勢いで思い出した。この詩は、田中克

彦氏著の『草原と革命』で知った。

アルガルの煙たちのぼる

牧人の家に生まれし我

人を知らぬこの広野を

これぞ我が揺籃と思う

(『新版高校国語二』日本書籍より)

第9課香住から白兎海岸へ287

k注釈

❶ 司馬遼太郎(しば りょうたろう)(1923 -1996)

日本大阪府に生まれた。小説家。これまでの歴史観にとらわれぬ新しい視点に立った歴史小説を

数多く発表。日本および日本人像の追求をするかたわら、評論や紀行文にも精力的に筆を執って

いる。司馬さんは1973年8月と1990年7月の2回モンゴルへ旅に出た。
❷ッエベクマ

モンゴル貿易省の末端のお役人で、司馬さん一行の旅行中の通訳と案内をする人である。

❸南ゴビ(Gobi) 南戈壁
モンゴル南東部から中国北部にかけて広がる砂漠。

❹ タラップ(trap) 舷梯
船や飛行機の乗り降りに使うはしご段。

❺ レニングラード(Leningrad)大学 列宁格勒大学,(现)圣彼得堡大学

現サンクトペテルブルグ大学

❻フェルト(felt) 羊毛毡
羊毛などを加熱圧縮して作った厚地の布。

〇 ハイカラ(high collar) 追求时髦,时兴的

西欧風のしやれた様子。
❽楮松教授

モンゴル語学者。筆者の恩師である。

❾ モンゴル・アルヒ(Mongolia〜)
馬乳酒から作る蒸留酒。麦を原料にしたものもある。

®田中克彦(たなかかっひこ)

言語学者。1934年、日本兵庫県に生まれた。『草原と革命』は1971刊。

288日语综合教程第六册

10第 「課

仮面の思想

[本…文一—......... —…—......

•加藤秀侈

ニューギニアの高地に住む人々は、ときに、無

気味としか言えないような不思議な扮装をする。

まず石灰などを材料にして、体を真つ白に塗り

たくる。もともとの皮膚の色が黒いところに、

真つ白な色を全身にわたって塗るのだから、そ

の姿はまことに異様だ。民族学者の話によると、

こうして体を白くするのは死者の霊を象徴する

ものだ、という。そんな話を聞くと、いよいよ気 ニューギニアの仮面
味が悪くなる。

ときには、その上に更に仮面をかぶる。メラネシアの造形美術を見ていて

気がっくのは、白と黒と赤土色の三色を基調にした大胆な色彩の配合なのだ

が、その三色で塗られた仮面をかぶるのである。部族によっては更に蓑のよ

うなものを体にまとう。写真を通じて見ているだけだからよく分からないけ

れど、その格好は、少なくとも我々の基準からいうと、お化け、妖怪のたぐ

いとしか言いようがない。

だが、たまたま、私はニューギニアの部族社会のこうした民族誌を勉強し

ていて、こういう姿に出会い、異様な感動に打たれただけのことであって、よ

く考えてみれば、世界のもろもろの文化には、ほとんど一つの例外もなく、仮

面というものが存在しているようなのである。インカやアステカの遺跡の中

にも異様な仮面があったし、また、キャプテン•クックが初めて発見したと

きのハワイの王族は、大きなひょうたんのごとき瓜を中空にし、そこに目玉

を空けて頭からかぶりていた。銅版画で残っているこの奇怪な仮面は 、これ

またしげしげと眺めてみると 、あまり愉快なものとは言えない 。

もっとも、美しいか奇怪であるか、あるいは愉快であるか不愉快であるか

といったようなことは、もっぱらそれぞれの文化の価値基準に基づくもので

第10課仮面の思想 289

あって、一概にどうこうと判断できるものではない。我々の日本文化の中に
も、おかめ、ひょっとこ、天狗といった一連の仮面があり、それらは概して
言うなら、滑稽さを感じさせるものだけれども、他の文化の中で育った人が
見れば、これらの仮面もグロテスクで無気味に見えるかもしれぬ。こうした
ことは、ことごとく相対的な問題なのである。

とはいえ、私は、ここで仮面の美醜を論じようとしているのではない。私
が力点を置いて考えようとしているのは 、人類文化における仮面の普遍性な
のである。古今東西を問わず人間のいるところ仮面というものは必ず存在し
ている。仮面のない文化は一つもなく、更に言うなら、仮面という高度の象
徴物の発明は、ひょっとすると、人類を他の動物から分かつ重大な指標のー
つなのではないか、とも思われるのである。

実際、文明史を振り返ってみるなら 、さまざまな異形の仮面は古代、いや、
それ以前から作られていたようである。少なくとも、今日の地球の上でなお
かすかに残っている石器時代の生活をしている人々の姿が 、我々のかつての
祖先の姿と似ているとするならば 、人類と仮面とのつきあいは十万年以上も
続いているはずなのだ。それは、ハーバート・リードなども言うように、人
類史における最も古い象徴的造形としてとらえることができるのかもしれな
い。いわゆる古代文明の成立するはるか以前から、人間は仮面というものを
発明し、それをかぶり、そこになんらかの——というよりは極めて重大な
—— 意味を求めていたのである。いったい、なぜ、人は仮面などという奇想
天外なものを作り、かつ、かぶるのか。

一般的に言って、仮面というものは多かれ少なかれ宗

教的な起源を持っているようである。例えば、お神楽の

ようなものを考えてみよう。お神楽というのは、その言

葉からも分かるように、神を喜ばせるための音楽であ

り、舞である。そこで音楽を奏で、舞う人たちは、人間

であって同時に神の世界に近づいた人たちである。その

人たちは人間のままの姿であってはいけない。少なくと

も、ふだんの姿ではいけない。神と近づき、あるいは神

の意志によって動くこれらの人たちは、それにふさわし 仮面
<自分を変えなければならないのである。

そのためには、その人自身の姿を視覚的に変える必要がある。その変身の

手段として、仮面はいちばん手つ取り早い方法だったのであろう。ときには

奇怪で、ときには滑稽なこれらの仮面は、人間の日常の世界を超越し、ある

いは日常の世界から逸脱した面相をしている。それは人間世界にそもそも属

していてはいけないものなのである。もちろん、ルドフスキーの言うように、

290 日语综合教程第六册

人間の想像力には限界というものがあり、神という超越者を描こうとした芸
術家たちは、神を視覚化するにあたって、結局のところ人間化するという以
外に知恵のはたらくことがなかった。だからその結果、神をかたどり、精霊
を象徴させたさまざまな仮面には、例えば、目鼻があり、ロがあり、耳があ
り、そして、頭髪がある。神は人間と異なった存在であるはずで、したがっ
て神像というものは、人間離れしていることが論理的に言って当然であるの
だけれども、どうしても人間らしさから離れることができず、その形は人間
そっくりになってしまうのである。その意味では、怪力乱神の仮面も人間そ
のものに近づくという皮肉な現象がある。

だが、それにもかかわらず、仮面はまず一義的には宗教的な性質と機能を
持っていた、とみて差し支えない。初めに見たニューギニアの仮面も、精霊
や祖霊の象徴であったし 、今日ではすっかり観光化してしまったものの 、キ
リスト教国でのイースターのパレードなどもローマ以来の祭式の延長なので
ある。実際、テレビの主人公などをかたどったお面が主に社寺の縁日で売ら
れているというのも、仮面と宗教の間の密接不可分な関係を物語っている、
と言うべきであろう。

そして、言うまでもないことだが、そもそも演劇というものは、洋の東西
を問わず、神にささげる仮面劇をその起源としている。大陸の伎楽の伝統か
ら展開した日本の雅楽を見ても、また古代ギリシアの悲喜劇を見ても、それ
らは例外なしに宗教的な神事から展開したものであった。仮面をつけた俳優
たちは、ときには祖先の英雄的な物語を再現し、ときには神々の世界を形象
化し、そのことによって、いわば彼岸と此岸とをつなげることを試みたので
ある。事実、一口に俳優というけれども、彼らはもともとは必ずしも常の人
ではなかった。彼らの少なからぬ部分は、神事とかかわる特別な存在であり、
ときにはシャーマン(巫女)であったり、聖職者であったりした。

そのいい例が、日本の伝統演劇である歌舞伎の始祖というべき出雲阿国で
あろう。阿国の出自は必ずしもはっきりしないけれども、その職業が出雲神
社に仕える巫女であったらしいことはほぼ確かである。彼女が巫女であるこ
とは、絵巻物に出てくる阿国がその首から紐で経筒をペンダントのごとくに
ぶら下げていることからも分かる。もとより、彼女の時代の巫女は零落した
存在であって、彼女を聖職者という言葉で呼ぶのには少なからずためらいを
感じさせられる。だが、演劇というものにつきまとう一種の異常さ、あるい
は、この世のものとは思えないある種の雰囲気をかもし出すものは、彼女の
存在そのものにつきまとう神秘性と宗教性だったのではないか。

仮面をつけることによって 、その途端に人は神になったり 、神に近づいた
りする。少なくとも、人は日常の存在と違った存在の仕方を仮面によって獲
得する。

第10課仮面の思想 291

演劇というものは、その意味では、聖なる世界に属するものであり、我々
人間の日常の世界とは全く次元の異なったところで行われる一つの祭式なの
であった、と言ってもよい。まことに、仮面というものは、人を別世界にい
ざない、そして、質の異なった時間を経験させる不思議な発明品なのである 。
その伝統は今日も変わらない。

ところで、この仮面というものをより広義に解釈するなら、それは、例え
ば扮装、化粧といった人体へのカモフラージュ全体を含むもの 、と考えるこ
ともできるであろう。ふだんと異なった衣装を身にまとうことによって、ま
たは、体や顔に色をつけたり、あるいは人工的な装飾を施すことによって、人
は全く異なる存在になりうるのである。

例えば、サングラスというものを取り上げてみよう。この小道具は、それ
だけで一人の人間の面相や表情を完全に変えてしまう。そのメガネをかけて
いる人間の目は黒いレンズの陰に隠れて 、全く見ることができない。その人
間の素顔がどのようなものであろうと、サングラスをかけると、面相の見分
けがつかなくなってしまうのである。サングラスやつけひげなどというもの
は、変装の道具としてあまりにも陳腐だが、ほんのちょっと顔をいじるだけ
で、人間はすっかり変わる。だれがだれであるかわからなくなる。

昔のミュージカル『ファニー・フェイス』は、まさしく人間が化粧や装飾
によってどう変わるかをその主題の一つとしていた。映画では、オードリー・
ヘップバーンがその主人公だったが、 書店で働くなんの変哲もない、そして
どちらかといえば風変わりな顔をしているその主人公は、あるとき、ファッ
ション•デザイナーの目にとまる。デザイナーは、この主人公の髪型を変え、
眉や唇に化粧品でメーキャップを施し、優雅なドレスを着せる。すると、さっ
きまでやぼとしか言いようのない容姿だった女性が、たぐいまれなるファッ
ション・モデルに生まれ変わってしまうのである。それは、これまで手をか
え品をかえてつくられてきたシンデレラ伝説の一つであるにすぎず、物語の
筋としては他愛ないけれども、化粧や装身によって人がどう変わるかという
問題を考えると、どういうわけか、『ファニー•フェイス』を思い出してしま
うのだ。

日本における化粧や装身についても、その起源は宗教的なものに求められ
るのだが、しかし、現代の女性たち、ときには男性たちにとって、化粧とい
う行為は恐らく宗教的なものとはいっさいかかわりがなくなっているはずで
ある。それは、美しくありたいという願望の現れであり、その願望を満たす
ために、クリームだの口紅だのが用いられるということになる。化粧品に
よって、人はその素顔ではないもう一つの顔をつくろうと努力するのである。
そうした願望は、仮に変身願望と呼んでいいものであるのかもしれぬ。

292 日语综合教程第六册

そして、不思議なことに、装身や化粧によって外面的に自らを変えること
は、微妙な仕方で人間の内面をも変える。女性の化粧を笑う男だって、例え
ば、紺のスーツに身を固め、ネクタイをきっちりと締めたときの気分と、浴
衣がけで座敷にあぐらをかいているときの気分との間に、驚くべき相違があ
ることを経験的に知っているはずである。いくら外面が変わっても内面が変
わらないという人物がいるとすれば、それは、よほどの道徳的抑制によって
精神が硬直している人間か、さもなければ、よほど鈍感な人間であろう。
ちょっとした彩りの違い、そして、ちょっとした顔の手入れー・そのことに
よって、人の気分が変わり、精神が変わる。「別人のような」という表現が、
こうした変化の感覚を表すのに最も適切であろう。そして、そうした感覚は
程度の差こそあれ、我々のすべてが共有し、かつ求めているものなのではな
いか。

なにゆえに我々は変身したいのか——その理由は分からない。しかも、変 t
身願望の中に潜む不安に着目した作品として、言うまでもなくカフカの『変
身』がある。この小説の主人公は、ある朝、目覚めて、自分が一匹の虫になつ
てしまっていることを発見する。虫になってしまった以上、人間世界からは
完全に疎外される。声を出してみても、もはや人間との間、人間的な交流は
絶たれてしまっている。そこにあるのは不安と絶望以外の何ものでもない。
この変身ファンタジーは悪夢である。

だが、そういう恐ろしい可能性をさえ一方に見据えながら 、なお、人はな
んらかの形に変わりたいのである。そして、その欲求ないし願望を最も素朴
かつ善意に解釈してみるなら、それは、人間の心の中にある一種の向上心の
ようなものとかかわっているのではないか 、と私は思う。つまり、人間は、こ
うありたいという理想的自我をどこかに描いていて、その理想像に自らを近
づける努力を怠ることがないようなのだ 。これまた、まことに陳腐な例だけ
れども、幼い子供たちに、将来どのようになりたいか、を問うてみたらよい。
子供たちは、例えば、パイロットになりたい、野球選手になりたい、作家に
なりたい、といった夢を語るであろう。そして、そういう将来の、自分のあ
りうる姿を考えるとき、子供たちは、そこに、いわば変身した自我像を描い
ているはずなのである。

実際、子供用のテレビ番組やマンガ本に登場する人気者を分析してみると、
その多くが変身願望を充足させる機能を果たしているようなのだ。例えば、
「ウルトラマン」に始まる一連の不思議な人物たちは、一人残らず、奇声を発
して驚くべき超自然的な能力の持ち主に変身するのである 。中には、「変
身!」と、わざわざかけ声を発する人物さえもがいる 。もとより、この人物
たちは『スーパーマン』の焼き直しにすぎず、その筋立ては同工異曲であっ

第io課仮面の思想293

て、芸術的価値がどれだけあるかは疑わしい。だが、そうしたものでありな
がら、それが手をかえ品をかえてテレビの画面に登場するたびに 、子供たち
を強く引きつけて離さない、というのも社会的事実なのである。

子供ばかりではない。大人だって、実のところ似たようなものだ。サラリー
マンの生活は平凡だ、と多くの人は言う。十年一日のごとく変化というもの
がこれっぱかしもない、と言う。しかし、若い社員であるなら係長に、係長
なら課長に、それぞれに自らが変身している状態を 、ときには思い浮かべて
いるはずなのだ。現実にあるがままの自分以外の自我—— それを想定し、と
きにはその想定された自我に乗り移って幻想の世界をさまよう能力は 、心理
学でいう鬲一視の能力というものであろう。その能力あればこそ、人は現実

の自我を離れて、別世界をさまようことができるのである。
仮面というものは、そうした同一化能力の結集したみごとな創作物と言う

べきであろう。それは、いわばインスタント変身の手段であり道具である。そ
れを着用することによって 、人の外貌のみならず 、内面生活までもが変わっ
てゆくことは、これまでに見たとおりである。しかし、仮面という、形のあ
るものだけが仮面なのではない。人が人と出会うときには、心の仮面とでも
言うべきものを必ずまとう。とすれば、我々のすべては、程度の差こそあれ
演技者なのであろうか。そして、人生というのは演技なのであろうか。いや、
生きる、ということそれ自身が、一つのドラマなのではないか 。

(『高校国語I』東京書籍より)

L注釈

❶加藤秀俊(かとうひでとし)(1930 -)
日本東京都に生まれた。1953年日本一橋大学卒業。放送教育開発センター所長。社会学者、評論
家。主な著書に、『比較文化への視角』『暮しの思想』『習俗の社会学』などがある。

❷ ニューギニア(New Guinea) 新几内亚
オーストラリア大陸の北方にある、世界第二の島。別名パプア島。

❸ メラネシア(Melanesia) 美拉尼西亚

南太平洋の島々の中で、ほぼ180度経線以西にある島々の総称。
❹ インカ(Inca) 印加

15世紀から16世紀初頭にかけて、南アメリカの中央アンデス地帯に栄えた帝国。
❺ アステカ(Aztec) 阿慈特克

14世紀中期、メキシコ高原地帯に栄えた帝国。

0 キャプテン・クック(James Cook)(1728 —1779) 詹姆斯・库克

イギリスの探検航海者。3回の太平洋航海を行い、多くの島を発見、キャプテン•クックとして知
られた。

294日语综合教程第六册

〇 ハワイ(Hawaii) 夏威夷

アメリカ合衆国の州の一つ。北太平洋中央部のハワイ諸島およびミッドウェー島、ジョンストン

島などからなる。 赫伯特・里德

❽ ハーバート•リード(Herbert Read)(1893 —1968)

イギリスの詩人、評論家。

0 ルドフスキー(Bernard Rudofsky)(1905 —1989) 伯纳德・鲁道夫斯基

オーストリアの建築家、文明批評家。
画大陸の伎楽(たいりくのぎがく)

昔のわが国で行われた、音楽を伴う無言仮面劇。日本には、飛鳥時代に百済から伝えられた。

(D出雲阿国(いずものおくに)

日本安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した女性。生没年未詳。
®出雲神社 出云大社

出雲大社ともいう。日本島根県簸川郡大社町にあり、大国主神を祭る。

®『ファニー・フェイス』(Funny Face) 滑稽面孔

アメリカのニューヨークにあるブロードウェーで上演されたミュージカル。初演は1927年。映画

(日本語の題『パリの恋人』)は1957年に上映された。 奥黛丽・赫本

值)オードリー・ヘップバーン (Audrey Hepburn)(1929 —1993)

アメリカの女優。

® シンデレラ(Cinderella)伝説 灰姑娘的故事

世界的に広く分布する継子話で、起源はオリエントとされる。ペローおよびグリムの童話が有名。

密 カフカ (Franz Kafka)(1883 —1924) 卡夫卡

チェコスロバキアの作家。『変身』は1916年の作。

® ウルトラマン(ultraman) 奥特曼

「ウルトラマン」シリーズの最初のヒーロー。1966年に日本テレビで放映された。

够 スーパーマン(superman) 超人
アメリカの代表的なコミックブックの主大公。1935年発表。後、映画化された。

新しい言葉 [名] 素顔を隠すためにつける顔の形に作ったかぶり
[名・自サ] もの。マスク。/假面具。
仮面(かめん) 俳優がその役柄の人物に似せて身なり•顔立ち
扮装(ふんそう) [名] などを装いつくること。また、ある人物の身な
[名] り•顔立ちなどに装うこと。/装扮,化装。
赤土(あかつち) [名・他サ] 火山灰が分解して出来た赤褐色、または赤黄色
色彩(しきさい) の土。/红粘土,赭土,褐土。
配合(はいごう) 色。彩り。比喩的にある物事の持つ傾向、性質、
特色も現す。/颜色,色彩,彩色。
二種以上のものを適当に混ぜたり組み合わせた
りすること。/调配,混合。

第io課仮面の思想295

纏う(まとう) [他五] 巻いて包むようにして、身に着ける。/缠,裹。

お化け(おばけ) [名] ばけもの。妖怪。/妖怪,妖精。

民族誌(みんぞくし) [名] 特定の民族の生活様式についての具体的な記

述。/民俗誌。

もろもろ(諸々) [名] さまざまのもの。多くのもの。/诸多,种种。

ひょうたん(瓢箪) [名] 瓜科のつる性の一年草。果物は細長く、中間が

くびれて上下が膨らむ。/葫芦。

瓜(うり) [名] 白瓜、胡瓜、西瓜、まくわうりなどの総称。/瓜。

中空(ちゅうくう) [名] 内部が空っぽであること。/空心,内部空虚。

目玉(めだま) [名] 目の中心となる部分、たまのように丸くなって

いるもの。/目邮子,眼球。

銅版画(どうばんが) [名] 銅版に刻んだ絵。銅版で印刷した絵。/铜版画。

どうこう [副] あれこれと口に出して問題にしたり批判したり

すること。直接口にするのがはばかられるよう

な行為•行動をぼやかして言うこと/这么那么,

这个那个,说三道四。

おかめ(御亀) [名] 丸顔で額や頰が出て、鼻の低い女の面。/丑女

假面具。

ひょっとこ [名] 片目が小さく、 ロをとがらせた滑稽な男の仮

面。/ ー只眼小、尖嘴的丑八怪假’面具。

天狗(てんぐ) [名] 深山に住むという想像上の妖怪。神通力があっ

て空中を自由に飛行でき、大天狗は赤顔で鼻が

高い、その仮面。/天狗。

滑稽(こっけい) [名・形動] おどけていておもしろおかしいこと。/滑稽。
グロテスク(grotesque) [名・形動] 不気味で、異様な様子。奇怪な様子。/奇怪,奇
异,奇形怪状。

ことごとく(悉く) [副] 関係するものすべてにわたり、その状況が認め

られること。/所有,一切,全部。

美醜(びしゅう) [名] 美しいことと醜いこと。/美丑。

力点(りきてん) [名] 力を加える箇所。/着力点,力点。

古今東西(ここんとうざい) [名] 「古今」は今と昔、「東西」は東洋と西洋。/古

今中外。

分かつ(わかつ) [他五] 別々にする。分ける。/分,分开。

指標(しひょう) [名] ある物事の目的の基準とする目印。/指标,目

标,标识。

異形(いぎょう) -[名・形動] 普通と異なった怪しげな姿•形。/奇形怪状。
石器時代(せっきじだい) [名] 人類が石器を使っていた時代。/石器时代。

奇想天外(きそうてんがい) [名・形動] 普通にはとても考えられないほど変わっている

296日语综合教程第六册

神楽(かぐら) [名] こと。/异想天开。
日本古来の神事芸能。神祇を祭る歌舞。神々の
奏でる(かなでる) [他ー] しぐさをまねた音楽舞踊で、神々を慰めるー
手つ取り早い(てっとり [形] 方、人々に幸福をもたらす意味を持つ。/神舞。
楽器で、メロディーを奏する。演奏する。/演
ばやい) [名・自サ]
逸脱(いつだつ) [名] 奏。
面相(めんそう) [他五] ①物事をするのにてきぱきとして、すばやい。/
かたどる(象る・模る) [名] 迅速,麻利。②手間がかからない。/简单,直
神像(しんぞう) [名] 截了当。
怪力乱神(かいりょくら 本筋からそれること。/越出,脱离。
[形動] 顔つき。顔かたち。/容貌,相貌。
んしん) [名] あるものの形をもとにして、うつしとる。/仿
一義的(いちぎてき) 照,模仿。
イースター (Easter) [名] 神の姿を彫刻や絵画に現したもの。神の肖像。/
[名]
社寺(しゃじ) 神像。
縁日(えんにち) [名] 人知で推し量れない力を持つもの。/(指怪异、
勇力、悖乱、鬼神。在例行范围内不能说明的事
伎楽(ぎがく) [名] 物)怪力乱神。
最も重要な意味。/最根本且最重要。
雅楽(ががく) [名] キリストが死後3日目に復活したことを記念し
て祝う祭日。毎年、春分後の最初の満月の次の
神事(しんじ) 日曜日に行われる。/复活节。
神社と寺。/神社和寺院。
寺や神社で、祭ってある神仏の降誕•成仏など、
何かの縁がある日。その神仏の供養や祭りなど
が行われる。/寺院或神社为纪念本寺庙信奉的
菩萨的诞辰、成佛而举行的祭祀活动日。
西域地方に発した雑劇のひとつと推測され、日
本には612年(推古天皇20年)に伝えられたと
いう。笛と二種類の打楽器(皮製と金属製)を用
いた音楽に合わせて演じられた無言の仮面劇
で、江戸時代に滅びたが、獅子舞などにその名
残りが認められる。/伎乐。
奈良時代に、宮廷・寺社・貴族の間で行われた、
音楽を伴う舞。中国、朝鮮、印度などから伝来

した楽器合奏曲が中心である。/雅乐,宫廷古

乐。
神を祭る儀式。まつり。/祭神,祭神仪式。

第io課仮面の思想297

彼岸(ひがん) [名] (仏)煩悩を超越した悟りの境地。/彼岸,涅磐
此岸(しがん) [名] 岸。
(仏)彼岸における涅槃の世界に対して生死の悩
シャーマン(shaman) [名] みや迷いのある世界。この世。/此岸,尘世,凡
世。
巫女(みこ) [名] シャーマニズムの呪術で特殊な精神状態に入っ
て、悪魔の駆除、息災、雨ごいなどの祈願をし、
聖職者(せいしょくしや) [名] 神の意志を確かめる者。巫女。巫者。/萨满教
徒,祈祷师,女巫,巫婆。
演劇(えんげき) [名] 神に仕えて、神楽・祈祷を行ったり、神託を伺っ
たりする未婚の女性。/巫婆,女巫。
出自(しゆつじ) [名] キリスト教の僧職。/神职人员。
舞台の装置・照明・音響効果などを用い、演出
絵巻物(えまきもの) [名] 者の指導のもとに俳優が演技をして、脚本の筋
書きを舞台の上に表現する総合芸術。/演剧,戏
経筒(きょうづつ) [名] 剧。
その人の出た家柄。生まれ。身もと。/出身,出
ペンダント(pendant) [名] 生的门第。
物語・伝説などを、絵と絵詞(説明文)で表し、
零落(れいらく) [名・自サ] 巻物にしたもの。絵巻。/画卷,卷轴。
経典を納めて経塚に埋める円筒形容器。多くは
かもし出す(かもしだす) [他五] 銅製で、鉄・陶・石製もある。/经筒。
装身具の一種。鎖や紐で首から胸にさげる飾り
聖なる(せいなる) [形動なり] で、金属・宝石・ガラス・陶磁器などを材料と
する。/垂饰。
次元(じげん) [名] おちぶれること。/零落,沦落,衰败。
(その場に似つかわしい、ある感じ•気分など
祭式(さいしき) [名] を)自然に作り出す。/酿成,造成。
清らかで尊い様子。神聖。普通、連体形「聖な
別世界(べっせかい) [名] る」の形で使う。/神圣,至高无上。
物事を感じたり考えたりする立場・世界。また、
いざなう(誘う) [他五] その高低の程度。/立场,着眼点,水平。
祭りの儀式。また。祭りの作法(方式)。/祭祀
的仪式。
俗世間からかけ離れたところ。別天地。また(そ
れとは)まったく違った環境。/别有洞天,另ー
世界。•
すすめて連れ出す。誘う。/邀请,劝诱。

298日语综合教程第六册

カモフラージュ [名・他サ] 戦争のとき、敵の目をごまかすために、武器・
(camouflage) 施設・体などに種々の色をぬったりものをつけ
たりして、周囲のものと区別できないようにす

ること。転じて、様子を変えて、別のものに見

せかけること。/迷彩,伪装,化装。

衣装(いしょう) [名] ①(外見を飾る)衣服。着物。/衣裳。②芝居な

どで、出演者が着る着物。/演出服,戏服。

サングラス(sunglasses) [名] まぶしい光を防ぎ、紫外線などから目を保護す
るためにかける、色っきのめがね。日よけめが

ね。/墨镜。

素顔(すがお) [名] 扮装をしていないときの顔。化粧をしていない

顔。比喩的に虚飾のないありのままの状態。Z
平素的面孔,不施胭脂的脸。

つけひげ(付け髭) [名] 人工的に作ったひげ。/假胡子。

陳腐(ちんぷ) [名・形動] 古くて腐る。ありふれてあたらしみがない。Z
陈腐。

いじる(弄る) [他五] ①手で触れてもてあそぶ。さわる。/玩弄,摩

拏。②道楽として手入れをしたり、世話をした

りする。/鼓捣,摆弄。③構造・機構などのも
のごとの表面だけを変える。/随意改动。

ミ ュージカノレ(musical) [名] 音楽を含む演劇形式の総称。ミュージカル・プ
レーの略。狭義に第一次世界大戦後、アメリカ

のブロードウェーで独自に発達した、音楽、舞

踏、演劇の三要素が巧みに融合されたアメリカ

独特の大衆音楽劇。/音乐剧。

風変わり(ふうがわり) [名・形動] 性質•様子•やり方などが世間一般のあり方と
異なっていること。/与众不同;奇特的,古怪

的。

ファッション・デザイ [名] 衣服の色、スタイルなどを考え、具体的にデザ
ナ、一 (fashion designer) [慣]• イン画をまとめる仕事をする人/时装设计师。
目に入る。見える。転じて心が引かれて印象に
目に留まる(めにとまる)

残る。気に入る。/看见,映入眼帘,看中。

メーキャップ(makeup) [名•自他サ] 俳優などが、出演のために行う化粧•扮装。Z
化装,扮装,打扮。

まれなる(稀なる) [形動なり] めったにないこと。たまにしかないこと。/稀

少。

手をかえ品をかえ [慣] いろいろさまざまに手段•方法をかえてみる。

(てをかえしなをかえ) いろいろの方法を試みる。/千方百计,施展各

第io課仮面の思想299

种手法。

変身願望(へんしんが [連語] 何かに変わりたいと思う気持ち。/想成为什么
んぼう)
人的愿望。
身を固める(みをかた
める) [慣] ①身支度をする。/装束停当。②定職につく。/

座敷(ざしき) 有了一定的职业。③結婚して所帯を持つ。/结
あぐらをかく(胡坐を
婚成家。
かく)
硬直(こうちょく) [名] 畳を敷き詰めた部屋。日本間。特に来客を通す

着目(ちゃくもく) ための日本間。/铺着席子的日本式房间。
疎外(そがい)
ファンタジー (fantasy) [慣] あぐらの姿勢ですわる。喩えてのんきに、また
見据える(みすえる)
[名•自サ]「 ずうずうしく構えて努力しない様子をいう。Z
パイロツト(pilot) 盘腿坐;(喻指)大模大样。
焼き直し(やきなおし)
筋立て(すじだて) 体などが硬くなって、しなやかに曲がらないこ
これっぱかし
と。こわばって柔軟性にとぼしくなること。Z
同一視(どういつし) 僵直,僵硬。
結集(けっしゅう)
[自サ] ある人・ある物事を重要なものとして目をつけ
ること。気をつけてみること。/着眼,注目。

[他サ] のけものにする。/疏远,不理睬。

[名] とりとめのない思い。幻想。空想。/空想,幻

想。

[他ー] ①じっと見つめる。/目不转睛地看。②じっと

見て、そのものの有様•本質をはっきりと捉え

る。見定める。/看准。

[名] 飛行機などの操縦者。/飞行员。

[名] すでにあるものに表面的に少し手を加えただけ

で、新鮮味がないこと。/翻一版,改写。

[名] 物語•脚本などの筋を立てること。また、その

立て方。/梗概。

[名] 俗語。①具体的にこれと示すわずかな程度。コ

レッパカリの転。これっぽっち。こればかり。/

这么一点儿。②このことだけは。この件だけ

は。/只有这个,只有这件事。

[名] 無意識のうちに対象と自分を同じものと見なす

こと。/同样看待。

[名•他自サ] ちりぢりになっているものをひとつにまとめ集

めること。また、まとまりあつまること。/集

结,集聚,集中。

300 日语综合教程第六册

言葉の学習

上:》〜だけのことだ只有…;仅此而已

それ以外に方法はない、あるいはそれはたいしたことはないという意味を表
す。

❶ 誰も引き受けたくないのなら、私が引き受けるだけのことだ。(没人愿意接受
的话,那只有我来接受了。)

❷ 手術代がそんなに高いものなら、受けないだけのことだ。(手术费这么贵,那
我们只有放弃手术了。)

❸「こっちは別にそのことにこだわっているわけじゃない。ただ、今まで会う
必要がなかっただけのことだよ。Iと伊作は答えた。(伊作回答说:“也不是我
对这件事耿耿于怀,只是迄今为止没有互相见面的必要,仅此而已嘛。リ

❹ わたしはそこの若い学者たちのやっている仕事を、ただ事務的にマネージし
ているだけのことだ。(我只是在事务上帮着管理这些年轻学者正在做的工作,
仅此而已。)

❺ 彼は別に役人になろう、金持ちになろうなどと考えていたわけではない。彼
にとって最も確かな希望は、生活を少しでも豊かにするだけのことだった。
(他并不想当什么官,或成为有钱的人。对他来说最实际的愿望就是要尽可能
地让生活变得好些。仅此而已。)

j公 〜を問わず 无论,不管,.....•丕限......................................................

「Aに関係なく」「Aを問題にせず」という意味を表す。「男女」「昼夜」「有無」
などの対になることばを受けることが多い。

❶ 駅の向かいにあるデパートはパートを募集している。そして経験者なら、年
齢や男女を問わず採用するといっているc (车站对面的百货商店正在招计时
ェ,说是有经验者录用时不受年龄性别的限制 。)

❷ これは、洋の東西を問わず、子供が成長するときには常に必ず起きることで
ある。(无论东方还是西方这是孩子在成长过程中必然会发生的事情。)

❸ 太極拳は老若男女を問わず楽しめるスポーツだC特にあなたのような病気が
治ったばかりの人にいい。(太极拳是ー项男女老少皆宜的体育运动。尤其适合
像你这样的大病初愈者〇 )

❹ しかし、いったん共有経験を持てば、人種、民族の如何を問わず、外国人を
差別せず待遇するのが普通である。(一旦有了共同的经历,一般情况下他们就
不会在乎你的肤色、民族,也不会因为你是外国人而歧视你。)

第10課仮面の思想301

❺雨季洪水の予防のために、兵士たちは昼夜を間わず働いている。(战士们为了
雨季防洪不分昼夜地工作着。)

愚存在 r

現実に物事•人間などが価値あるものとしてある(いる)という意味を表す。
「人間の存在する理由」「そういう現象は今なお存在している」という用法のほ
かに、「彼は歴史上もっとも不可解な存在のひとりだ」のような言い方には注意
してほしい。

❶ 形式はどうであろうと、田村にとって玲子は妻のような在在である。(无论形
式上如何,对田村而言玲子如同是他的妻子一般 。)

❷ 賛成か反対かはっきりした態度を示さなければならない。どちらともっかな
いあいまいな存在はないC (赞成还是反对必须有个明确的态度,不存在模棱两
可的态度。)

❸ あの人は課長じゃないけど、課長並みの待遇を受けている特別な在在だ。
(他是个特殊人物,不是科长却享受着科长待遇。)

❹ 思えば、あの時期は死が本当に間近な在在だった。しかし死の怖さはあまり
なかった。(想来那时死亡已经迫近,但我一点儿没有感到恐惧 。)

0 女の子はうれしげな表情になった。自分が見捨てられた在在でないことを

知ったから。(女孩开始高兴起来。因为她知道自己并没有被人遗忘。)

な粵・•そもそも〜というものは本来… j一...........................

「そもそも〜というのは」も言う。あるものの本質や基本的な性質を述べるの
に使う。そのような本質を考慮に入れない行動や意見に対して反論する場合に
使われることが多い。「そもそも」は副詞や接続詞の用法があり、ここは接続詞
の用法である。

❶ 言うまでもないことだが、そもそも演劇というものは、洋の東西を問わず、
神にささげる仮面劇をその起源としている。(当然,无论是东方还是西方,演
剧原本都起源于敬神的イ反面剧。)

❷ そもそもいびきというのは睡眠中の呼吸運動のアンバランスに由来する音だ
から、それは病気じゃないという考え方がまず間違っている。(本来打呼噜是
因睡眠中呼吸失去平衡而发出的声音,所以不把它当作病是错的。)

❸そもそも権威のことばであっても、それを鵜呑みにせず、批判的検討を加え
るというのは、大事な思考習慣だ。(本来对权威的话也不能盲目相信,而要批
判地加以研究,这是非常重要的思维习惯。)

〇 そもそも運動というのは健康のために行うものだが、過度の運動で体を壊す

302日语综合教程第六册

こともしばしば起きている。(本来运动的目的是为了增进健康。但是由于运动
过度伤害身体的事也时有发生〇 )
❺ そもそも電話というものは相手に通話するために開発されたものだcそれな
のに、留守番電話の開発によりその機能が失われてしまったのではないか。
(本来研发电话的目的是为了和人通话。但是,录音电话的出现却使电话失去
了这个功能。)

副詞の用法としては以下の例があり、「もともと」とほぼ同義である。(究
竟,说到底)

❶ そもそも小説を書こうと思い立ったきっかけは何だったんですか。(你究竟出
于何种原因下决心开始写小说的呢? )

❷ この事故はそもそも君の油断からおきたのだ。(这起事故说到底是因为你的疏
忽造成的。) ;

❸ そもそも最初から間違っていると思うc (我想从一开始我们就错了。)
❹ 携帯電話をもつ高校生が増えている〇・■'そもそも高校生には携帯が必要なのだ

ろうか。(使用手机的高中生增多了 。他们果真有必要用手机吗?)
❺ 巽也!生まれて初めての運転だから彼は緊張して手に汗をかいていた 。(说

到底这是有生以来第一次开车,他紧张得手心都出汗了 。)

をどちらかといえば总的来说 ・

「どちらかというと」もいう。人や物の性格・特徴について評価する場合に使
う表現で、断言を避ける言い方で、あえて言えば、全体としてはそのような特
性・傾向があるといった意味を表す。比較して言っているニュアンスである。

❶書店で働く何の変哲もないそしてどちらかといえば風変わりな顔をしてい
るその主人公はあるときファッション・デザイナーの目にとまった。(在书
店工作,长相平平,且让人感觉有点儿与众不同的主人公某天引起了一位时装
设计师的注意。)

❷ 徐家滙の店はどちらかといえば若者向けで、年配の客はあまり見当たらな
い。(徐家汇的商店总体上比较适合年轻人,所以很少见到有年长的顾客在那儿
购物。)

❸ あのクラスの人々はどちらかといえば積極性に欠けている。とりわけ男子の
ほうがそういう傾向が目立つ。(那个班的同学总的来说都缺乏积极性。男同学
的这个倾向尤为明显。)

❹ 海に囲まれた日本は豊かな水産資源に恵まれ、漁業は日本人の食卓に新鮮な
魚介類を提供する重要な産業として営まれている。しかし近年は日本周辺の
水産資源はどちらかといえば減少傾向にあり、環境悪化による海の生態系の

第10課仮面の思想 303

破壊は深刻な問題となっている。(日本四面环海有着丰富的水产资源,渔业是
给日本人的餐桌提供新鲜鱼贝类的重要产业。但是,近年来日本周围的水产资
源总体上出现减产,环境恶化造成的海洋生态系失衡成了一个严重的问题。)
❺ この社会は、どちらかといえば、「出る杭は打たれる」のことわざのとおり、
何事によらず人より抜きん出ようとすれば、それに対する風当たりもまた、強
くなるものである。(总的说真如“枪打出头鸟”这ー谚语所说的那样,这个社
会无论什么事情,如果想要出人头地,那么你要遇到的阻カ就会彳艮大 。)

善手をかえ品をかえ(て)千方百计,施展各种于段 !

「いろいろさまざまに手段•方法を替えてみる」「いろいろの方法を試みる」、
という意味を表す。連用修飾語としてしか使えない。

❶ 手をかえ品をかえて彼の機嫌をとってみたが、どうしてもだめだった。(我试
着变换各种方法取悦于他,都失败了。)

❷ 政府は手をかえ品をかえて消費を刺激しようとしたが、結局効かなかった。
(政府想方设法刺激消费,结果不起任何作用 。)

❸ 彼は学校にとってかけがえのない存在だから、学校のほうは手をかえ品をか
えて引きとめようとした。(对学校来说他是个不可多得的人才,所以校方千方
百计地挽留他。)

❹留学生たちは帰国後手をかえ品をかえて外国の文明の宣伝に努めたが、当時
鎖国状態にある中国ではうまくいかなかった。(留学生们回国后千方百计地宣
传外国的文明,但当时在闭关自守中的中国无法顺利地进行。)

❺ いまから考えると、50元という旅費は、私の家にとっては、かなりの負担
だったのだろう。しかし私はそんなことを考えず、手をかえ品をかえ、父と
母に切々と哀願してみたのだが、すこしも効き目がなかった。(现在回想起
来,50元的旅费对我家来说是个很大的负担吧。可是当时我不顾这些,变着
法子苦苦哀求父母,结果还是没能达到目的 。)

金(形容詞)く(も/は)ある有… 1

形容詞の連用形につけて「〜の状態を呈する」「〜の性質を有する」意を表す。

❶ こちらにとってはさしあたり、関心があるのは彼女のカメラ・フェースが美
しくあってほしいという点だけだった。(对我来说,眼前最关心的就是希望
她的照片拍得好看一点儿。)

❷ 日本では、女が「かわいらしい」のはよいこととされていて、男はかわいら
しい女が好きですし、女はかわいらしくあろうとします。(在日本,女人“招
人喜欢”被认为是一件好事。男人喜欢可爱的女人,女人也希望自己招人喜

304日语综合教程第六册

欢。)
❸ このように寂しくはあっても充実した留学生活だったが、つらいことも、楽

しいことも多かった。(这就是既寂寞又充实的留学生活。有彳艮多伤心的事也
有很多快乐的事。)
❹ 娘の結婚はうれしくもあり、さびしくもある。これまでの25年の間、親子
ふたりがしっかりと支え合って過ごしてきたのだから、娘のいない生活がど
うなるのだろうと考えると、何だか寂しく思う。(女儿的结婚既让我高兴又
让我感到寂寞。在以往的25年中我们母女俩相依为命,今后没有女儿的日子
会怎么样呢?想到这些不免感到有些寂寞。)
❺「まだ、みんなに言わなかったが、女房に逃げられてしまって……」と、つ
い口元まで出たけれど、大勢の前で恥ずかしくもあり、それは言わずにし
まった。(“我还没对大家说呢,我的妻子离家出走了……”,这话都到嘴边了,
但在这么多人面前实在有点儿不好意思,结果还是没能说出口。)

Pも こそ あれ(すれ) 只能是…;只会… !

体言•用言の連用形に「こそ」をつけ、さらに関連動詞の已然形をつけるこ
とで、文意を強めるための逆接の確定条件を表す。意味的には「こそあるけれ
ども」に近い用法と、「それとは対照的なものがない」の用法がある。書き言葉
的で、よく打消しの表現を伴う。

❶ 大晦日の12時になると、太陽暦を採用している国々では、多少の時差こそ
あれ、たくさんの人々が、それぞれの言葉で、今年がよい年であるようにと
願うのだ。(大年三十的午夜12点,在那些采用阳历的国家,虽说有些时差,但
人们都在用不同的语言祝愿新年的到来 。)

❷ どんな困難にぶつかっても、彼はどこまでも進みこそすれ退くことはない。
(无论遇到什么样的困难,他只是ー个劲地奋进决不后退。)

❸ 以前は、悲しいことがあまりにもあったので涙も出尽くした。今の私は、喜
びこそすれ悲しみはしない。(过去我有太多的伤心事,眼泪都哭干了。现在我
只会高兴不会再伤心了。)

❹ 上海の自転車の数は、年々増えこそすれ、少しも減っているようには見受け
られない。(上海的自行车数量年年在增加,没有任何的减少 。)

❺ われわれの生活はよりょくなりこそすれ、もう二度と昔の貧しい生活には戻
らないと思う。(我想我们的生活只会变得更好,不会再回到以前的穷日子了。)

安〜とでもいうべき可以称得上j

婉曲的な比喩表現。よく知られた名前をあげて、このようにたとえるのがふ

第io課仮面の思想305

さわしいという気持ちを表す。

❶ 中国の蘇州は東洋のべニスとでもいうべきところで、川や橋がたくさんあ
り、静かな雰囲気のあふれている町だ。(中国的苏州可以称得上是东方的威尼
斯,是个有着很多小桥流水,洋溢着宁静气氛的城市。)

❷ 武漢、重慶、南京という三大都市は中国の三大ストーブとでもいうべきとこ
ろで、夏の蒸し暑さがほんとうに耐え切れないほどだ。(武汉、重庆、南京三
大城市称得上是中国的三大火炉,夏夭的闷热简直难熬 。)

❸ あの人は中国の陸上競技のスターとでもいうべき人で、若者の憧れの的だ。
(他称得上是中国田径运动的明星,是年轻人的偶像 。)

❹ あの人は知恵袋とでもいうべき人で、さしあたって起きた出来事で彼の予想
をこえたものは何一つない。(他是可以被称之为先知的人,当今发生的事情没
有一件不在他的预料之中。)

❺ 鈴木は社長のお気に入りとでもいうべき男で、会社ではたいした存在だか
ら、その機嫌を損なうことは絶対にしてはいけない。(铃木称得上是经理的红
人,在公司里他不是ー个一般的人,你绝对不能得罪他 。)

他に、「とでもいう」の使い方もある。これは物事の性質、特徴などを別の表
現にたとえて説明する言い方である。

❶ 私には人種的な偏見などすこしもないが、同じ日本人であると知ってさらに
親近感を感じた。民族愛とでもいうものだろうC (我丝毫没有种族歧视之类的
偏见。但是当我知道他也是个日本人时顿时倍感亲切。这大概可以称之为民族
爱吧。)

❷ このような、他人に知られてしまうと経済的価値がまったくなくなる情報の
ことを、財産的情報とでもいうのでしょう。(这种一旦被他人知道就会失去经
济价值的情报可以称之为财产性情报吧。)

❸ 上海で育った私が、上海人にとくに親しみを覚えるのは無理もないことだろ
う。郷上愛とでもいうのだろうかCわたしはどんなことがあっても、この上
海人の男を助けようと、心に誓った。(我是在上海长大的,自然对上海人有一
种特别的亲近感。这大概可以称之为老乡亲吧。因此,我暗暗发誓无论发生什
么我都要帮助这个上海男人。)

上食 とすれば 如果这是事实的话,事实果真如此的话

「〜だとすれば」ともいう。前の文や相手の発言を受け、「それが事実なら」「そ
れが正しいとすると」という確定の意味を表す。用法上は「(確定条件を表す文)
とすれば」「とするならば」と同様。書き言葉で、普通の会話では「そうなら・
だったら」などがよく使われる。

306日语综合教程第六册

❶ 人が人と出会うときには、心の仮面とでも言うべきものを必ずまとう。とjz
れば、我々のすべては程度の差こそあれ演技者なのであろうか。(人在和别人
接触时一定会带上一个可以称之为“内心假面”的东西。如果这是事实的话,
那么我们所有的人不都成了程度不同的演员了吗?)

❷ 倉橋を犯人と考えるのは、やはり根本的に無理なのであろうか。とすれば、
こんな議論を交していること自体、時間の無駄といわなければならない。
(把仓桥看成犯人是不是还是太勉强了。如果真是这样的话,那么我们这样讨
论的本身不能不说是在浪费时间〇)

❸ ここは穀物の栽培の適地ではない。とすれば、ここはいったいどういうわけ
で穀物の栽培にこんなに力を入れているのだろうか。(这儿不适合种植谷物。
那么,既然不适合为什么还要花那么大的カ气种植谷物呢?)

❹ モネたちの作品の中に描かれたのは、あるがままの自然の姿というよりも、
彼らの目にそう映ったような自然の姿である。とすれば、彼らに対して与え
られた「印象派」という呼び名は最初は悪口であったとしても、意外に正確
にその本質を表しているといわねばならない。(莫奈等画家的作品中所画的与
其说是自然原有的模样,还不如说是他们眼中的自然 。如果这是事实的话,那
么我们可以这样说,“印象派”的称号即便最初是对他们的诽谤,却是意外地
正确地道出了其本质的东西。)

❺ あの子の家出も自由の追求だったのだろうか。とすれば、あの子はどんな自
由を求めて家を出たのか?—— わたしには想像する術もない。(那孩子的离家
出走也是为了追求自由吗?如果是的话,那她离家出走追求的又是ー种什么样
的“自由”呢? ーー我实在是无法想像。)

表現の学習

____ __________________ ____ J

ここで取り扱っている「結果」はやや広義的なもので、経過・結末・結論を
述べる表現も含まれている。さらに分けてみると、1、原因による結果。 2、
完成という意味においての結果。3、物事の成り行きから表れた結果。4、結
論や結末を述べる言い方など、4つに分けられる。スペースの都合で、ここにあ
げるものは、3 - 4の用法に限った。なお例文もこの順序に従って並べること
にする。

❶ 娘は来月結婚する。結婚したら家を離れて暮らすと言っている 。そうした
ら、家の中は寂しくなるだろう。(女儿下个月结婚。她说结婚后要和我们分
开住。这样家里会变得冷冷清清的吧 。)

第io課仮面の思想307

❷「来客は200人を超えるそうです。」「そうすると、パンフレットは足りなく
なるから、もっと用意しなければならないね。」(“听说客人会超过200人。”
“那样的话,我们准备的小册子不够了,还得多准备ー些 。”)

〇 このようにして(かくして)事件が収まった。(这样事情总算平息了下来。)
❹ 伝統思想の後退は、必然的に、新しい思想方向への道を切り開くことにな

る.〇 (传统观念的后退必然导致通往新思想的道路的开辟 。)
0 以前はOLとしてしやきしやき働いていたのだが、結婚して退職、毎日テレ

ビばかり見るなどしたあげく、頭脳が退化してしまった。(以前当公司女职
员时手脚挺麻利的。结婚后退了职,每天在家看电视,结果脑子都快变傻了。)
❻1分間ばかり考えた末、電車に乗ることをやめて、駅前を横切って店のほう
へゆっくりと歩き出した。(他考虑了1分钟之后决定不坐电车,穿过车站前
慢慢地向商店走去。)
〇 結果として、部下は割り切れない気持ちのまま上司の命令に従う羽目にな

(其结果是部下带着情绪盲目地服从了上司的命令。)
❽ ひとりで行けるつもりだったが、回り回って気が付くと施.もとの道に

戻ってしまっている。しかたなく電話をして迎えに来てもらった。(原以为
自己1个人能去。结果绕来绕去地最终又回到了老路,没办法只好打电话请
他来接了 〇)
❾ いたるところに彼が悪事を働いた跡があるのだが 、住むところがなかなか
掴めない。ずっと前から追いかけていながら、私もまだ実際に顔を見たこ
ともない始末だよ。(到处都有他干坏事后留下的痕迹,但是怎么都找不到他
的住处。很久以来我一直在追查他,可是实际上连我都不知道他长得什么模
样。)
画 こんなことを母になんか話したって、ばかばかしいと言われるのがおちだ。
(这种事告诉母亲的话,她一定会说我傻。)

まとめ

「そうしたら」はそれによって将来起こる結果について述べるのに使い、「そ
うすると」は前の話し手が述べたことを受けて、その話から自然に下す結論を
いうときに使う。

「〜結果」「〜すえ」と「〜あげく」は「いろいろたどって、とうとう最後に」
の意味を表す点においてはほぼ同じである。ただし「〜あげく」で表す結果は
マイナスの事態、残念なことのほうが多いのに対し、「〜結果」「〜すえ」はそ
の制約がない。そして「〜結果」は因果関係が強い文以外使いにくい。

「結局」はよく「結局」「結局は」「結局のところ」の形で用いる。行き着く最
後の結論や結果を示すときに使い、「最終的には」の意味である。「結局」で表
される結論や結果の多くは人の意志の力が及ばないところで成立するものだか
ら、望ましい結果を述べる場合は使用しにくいこともある。

308日语综合教程第六册

「しまつだ」は全体の成り行きを言っている。「その結果として」「というあり
さまだ」にも言い換えられ、ふっうよくない結果を示すのに使う。「おちだ」で
表す結末は前もって予測される望ましくないこと、「はめになる」は苦しい立場
に追いつめられないことには使いにくい。

S諳や話句の構成

1. 〜離れ

「親離れ•農業離れ・米離れ•文字離れ・本離れ・乳離れ•子離れ•人間離れ・
政治離れ」などがあり、もともと密接な関係があるものが依存する必要がなく
なり、離れてゆくこと、また、「日本人離れ」のように、それから甚だしくかけ
離れている意味を表す。「離れ」で作られた複合語は名詞としても使うし、「す
る」をつけてサ変動詞としても使える。

❶ 過保護に育てると、子供は親離れできなくなる。これは、一人つ子の家庭で
は特に注意すべき問題だ。(家长的过分保护会使孩子离不开大人不能自立。独
生子女的家庭尤其要注意这一点〇 )

❷ あの女優さんはリズム感があるし、体も日本人離れしていて、ステージで見
るとかっこういいですよ。(那位女演员节奏感强,体形也不同于一般日本人,
舞台形象很好。)

❸ 最近、「活字離れ」ということがよく言われるが、新聞ぐらいは読んでいる
から特に「書物離れ」「本離れ」というべきだろう。(最近经常可以听到“脱
离文字”这ー类说法。其实应该改为“脱离书籍”、“不看书”オ对,因为扌艮纸
之类人们还是看的。)

❹ 最近体を使う仕事を嫌う人が増えて、とりわけ農業離れが問題になってい
る。(最近不爱干体力活的人多了,尤其是农业荒废成了大问题。)

❺ 日本人の食生活は西洋化している。理れの食生活は日本の伝統文化の変化
にもつながるのではなかろうか。(日本人的饮食生活正趋于西方化。不爱吃大
米的饮食生活想必也会引起日本传统文化的某些变化吧。)

2. 〜がっく

「名詞+がつく」の形で用いるものがよく見られ、次がその一部である。ほか
には、「予想・見分け・予測•取り返し•説明」なども、よく 「〜がつく」とい
う形で使われる。

❶ あの件は長いことごたごたしているが、やはり解決がつかない。(那件事已
经纠缠了很久却仍无结果。)

第io課仮面の思想309

❷ 今日は土曜日ですね。月曜日までには結着がつきそうな気がするc (今天是星
期六吧。我觉得这事星期一就会有眉目了。)

❸ 会社が創立されて間もないころは、赤字続きで、前途がどうなるか、まるで
見当がつかなかった。(公司成立不久的那段日子,持续赤字,前途渺茫。)

❹ 山下さんは10年ほど前に医師会を脱会しているんですけど、そちらのほう
からも調べがつかなくなりました。(山下10年前就离开了医师会,那儿也无
从调查。)

❺ 広舍の媒体には、看板•ポスター・チラシ・ダイレクトメールなどの四大媒

体以外にもたくさんあるので、それらに投じられた広告費をも合わせたら、
どのくらいの巨額になるのカゝ想像もつかない。(广告媒体除广告牌、广告画、
广告单、商用信件广告等四大主要媒体之外还有很多。把所有投入费用加起来
会是怎样的一笔巨款呢?这根本无法想像。)

練習

ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。 目玉 銅版画 怪力乱神 蓑
面相 奏でる 古今東西 神楽
扮装 願望 色彩 瓢箪 滑稽 同一視 風変わり 巫女
天狗 美醜 異形 衣装 怠る 持ち主 筋立て 赤土色
縁日 伎楽 此岸 出自
着目 陳腐 彩り 優雅

二、次の文の下線部の片仮名を漢字になおしなさい。
1. 新製品の開発にリキテンを置く。
2. 物が売れるかどうかは景気回復のシヒョウになっている。
3. 今度の試験は教科書の範囲をイツダツした。
4. いまは見る影もなくレイラクした。
5. エマキモノから浮世絵版画まで、季節に対する敏感さは、日本人を特徴づけて

いる。

6. 社長の考えの粋をケッシュウしたプロジェクトだ。
7. 周りの人にソガイされるような感じがした。
8. 寒い風に吹かれて手足がコウチョクしそうになっている。
9. 写真よりスガオのほうがよほどいい。
10.今日の質問は昨日とまったくジゲンの異なるものだ。

三、次の質問に口頭で答えなさい。
1.「無気味としか言えないような扮装をする」とあるが、どのような点が無気味

310日语综合教程第六册

だというのか。そして、なぜ「そんな話を聞くと、いよいよ気味がわるくなる」

のか。
2筆者はどのような仮面の例をあげ、どのように論を進めているか。

3. 「私が力点を置いて考えようとしているのは、人類文化における仮面の普遍性

なのである」とあるが、「仮面の普遍性」とはどのようなことだと筆者は述べ

・ているか。 -一

4. 人が仮面などという奇想天外なものを作った原因について筆者はどう考えてい

るか。

5. 「その意味では怪力乱神の仮面も人間そのものに近づくという皮肉な現象があ

る」とはどういうことか、なぜ皮肉なのか。

6. 筆者は仮面と宗教はどのような関係にあると述べているか。

/もっと広い意味に解釈すると、たとえばどのようなものも仮面に含まれるのか。

8. 筆者は「ファニー •フェイス」の話を通して何が言いたいのか。
9. 「それは、よほどの道徳的な抑制によって……鈍感な人間であろう」とあるが、

「それ」とは何を指すか。また、なぜそう言えるのか。

10. 「そういう感覚は程度の差こそあれ、我々のすべてが共有し、かつ求めている

ものなのではないか。」とあるが、「そういう感覚」とはどういう感覚か。また、

この文の意味をわかりやすく説明しなさい。

11. 筆者は仮面とカモフラージュの関係をどのように述べているか。
12. 「変身願望の中に潜む不安」とは、どのようなものか、わかりやすく説明しな

さい。

13. 「人が人と出会うときには、心の仮面とでもいうべきものを必ずまとう」とあ

るが、「心の仮面」とはどのようなものか。

14. なぜ「人生というのは演技」であり、「生きる」ことがドラマだというのか、説

明しなさい。

15. 筆者は次の事柄について、それぞれどのような関係にあると述べているか、ま

とめてみなさい。

1、仮面と宗教 2、演劇と仮面 3、仮面とカモフラージュ

四、次の文の下線部の意味を説明した上で、全文を中国語に訳しなさい。
1. こうしたことは、ことごとく相対的な問題なのである。
2. 私が力点を置いて考えようとしているのは、人類文化における仮面の普遍性なの

である。

3. まことに、仮面というものは、人を別世界にいざない、そして、質の異なった時

閒を経験させる不思議な発明品なのである。

4. 現実にあるがままの自分以外の自我—— それを想定し、ときにはその想定された

自我に乗り移って幻想の世界をさまよう能力は、心理学でいう同一視の能力とい
うものであろう。

第io課仮面の思想311

五、 文頭にあげた言葉の用法として、次の文の下線部ではどのように使われているか。
意味あるいはその用法を説明しなさい。
1.たわいない

① それは想像力というたわいもないものを働かせているのではなく、もっと
しっかりした、着実な思考であるような気がした。

② すでに飲んできていた彼らは昼の疲れもあり、一時に酔いを発して、まった
<たわいがなかった。

③ いうことはまるでたわいなく、多くの場合合槌ばかりだった。
④ たわいない子供の言葉をそんなに気にすることはないよC

2目玉

① 上海のアパートは目玉が飛び出るほど高くなり、サラリーマンの私にはとて
も買えない。

② うっかりして父が自慢にしていた茶碗を落として割ってしまった。それで父
から大目玉を食った。

③ これは富士テレビの目玉番組で、全国でも指折りの視聴率だ。
④ 目玉の黒いうちに社会に役立つことをもっとたくさんやりたい。

3.常

30①,夕食後、妻とふたりで 分ぐらい散歩するのを常とした。

② 彼はもともと常の人ではなかったC
③ 常ならぬ彼女の様子にあっけに取られて、口もきけない。

六、 次の語群から最も適切な言葉を選んで( )に入れなさい。必要な場合は適当
な活用形にすること。

ア存在 イグロテスク ウ異様 エかもしだす オことごとく
カ 働く キ 風変わり ク 手つ取り早い ケ 付きまとう コ 類まれなる

1.自分の棟のほうへ曲がりこもうとした趙さんはふと背後に何か( )

気配を感じて立ち止った。 )あげくの行為だっ

2言われてみると、そういう危険な心理が(

た。

3. 生活の中における物は単なる物質的な( )であるにとどまらず、

しばしば精神的な意味を帯びてくると考えられる。

4. だれもが彼の普段と全く違う、( )格好にぎょっとした。
5. そのスーツケースの中身を( )出してみたのだが、洗面具とか、

着替えのワイシャツとかばかりだった。

312 >日语综合教程第六册

6. わたしはすぐそこへ飛んで行って、( )問題を片付けて、一緒に西

北に向けて出発することもできる。

7. その上私のその姿が多少滑稽であり、( )であるから、彼らは敏

感にすぐ笑い出した。

8. 若い時に犯した誤りが彼の一生に( )なんて思ってもみなかっ

た。

9. 3人の( )空気は、ほかほかと暖まって彼女を上機嫌にした。

10.語学にかけての彼女の持っている( )才能は子供の時からすでに

芽生えていた。

七、次の語群から適切な結果を表す表現を選び、に入れて文を完成させな
さい。

iおち 有様 結局 始末 すえ ことになった \

1.母へのお土産にアザラシの毛がついた買物袋を買った。父には迷った、

やや派手だが、花柄模様のネクタイを買った。

2初めは1週間か10日か、気の向くまま、勝手な旅をするつもりだったが、

、叔父の好意に甘えて、北海道を旅してきたのだ。

3. 彼は職権を乱用して私欲を貪り、ついに法の裁きを受ける 〇

4. 私は大学を出たものの職がなく、文筆で暮らしを立てようにも力不足で、身重の

妻とひどい貧窮に陥っていた。3度の食事にも事欠く だったから、出

産費用を捻出する当てもなく、その上、私が原因不明の高熱に取り付かれて寝込

む だった。

5. そのようにテレビゲームに夢中になっていると、気がついたらこれで一日むだに

してしまったと、臍をかむのが だよ。

ハ、括弧の中の言葉を使って次の中国語を日本語に訳しなさい。

7.纯粹因为那是工作我オ这么认真做的,仅此而已,没什么乐趣不乐趣的。(だ
けのことだ/〜でもなんでもない)

2. 这项奖学金不受国籍限制,成绩优秀者都可以申请。所以从昨天开始报名者蜂

拥而至。(を問わず/殺到する)

3. 是女人都希望自己是个美人。利用先进的整容技术,用各种方法使相貌丑陋的

人变成美女,正是利用了人们的这种心理。(手をかえ品をかえ/醜い人)

第10課仮面の思想 313

4.用这种稍带不满的态度说话,两人之间的误会只会变得越来越深,对解决问题

没有任何的好处。(いささかでも/こそすれ)

5. 听说十二号台风就要从日本海登陆了。日本海沿岸地区要做好防台准备。(ま

もなく/とすれば/厳重な警戒)

6. 没有孩子的我每次看到同事们带到公司来的孩子既羡慕又感到妒嫉。(形容詞連

用形くもある/妬ましい)

/我做了一件无论怎么道歉无论怎么请求原谅都无法挽回的事情 。关于这件事,
我无意为自己辩解,实际上我也知道这是无法辩解的。(請い願う/もう二度
と取り返しのつかない/〜がましい)

8.母亲病故后,姐姐对我来说如同母亲一般。姐姐不仅在生活上关心我,还省

吃俭用地送我上大学。我打心眼里尊敬姐姐,对姐姐充满了感激之情。(存
在/配慮する/生活を偷約する)

9.本来,幸福感就是因人而异的。有的人把能过奢侈的生活看作是幸福,也有

的人认为遇事先考虑大家,尽自己的能力帮助别人这就是幸福。(そもそも〜と
いうものは/何につけても/を真つ先に考える)

10.大学毕业已有10年了。其中我也有过挫折,但总的来说发展还是顺利的。(ど

ちらかといえば)

九、言葉の決まり

1.次の熟語はそれぞれ二通りの読み方ができる。それぞれの読み方と意味を確かめ

てみよう。 )—______________ :________________________________________

① 変化(

( )-___________ ___________________________________________
② 精霊 ( )一______________________________________________ ___
)______________________________________________________
( )一______________________________________________________
③ 気色( )一______________________________________________________
)一_______________________________________________________
( )—________________________________ ______________________
④ 気骨(



314日语综合教程第六册

⑤ 強力 ( )f_____________________________________________ :_________
( )_ ______________________________________________________
)_ ______________________________________________ 一
⑥ 末期( )_ ______________________________________________________
( )f_______________________________________________________
) _______________________________________________________
⑦ 数奇 (
(

2次のことわざを完成させ、それぞれの関係を考えながら、関連のあるもの同士に
〇をつけなさい。

① のどもと過ぎれば____________________________________________
② 泣く子と_____________________________________________________
③ 上手の手から:
④ 羹に懲りて___________________________________________________
⑤ 人を見たら___________________________________________________
⑥ 弘法にも_____________________________________________________
⑦ 鬼はない

3.次の①〜③の中から呼応の誤りの部分を指摘して正しい形に改めなさい。そし
て、④〜⑥の適当な箇所に陳述の副詞を補充しなさい。

① よもや合格するだろうと思っていたので、発表を見てとても嬉しかった。
② 僕の心は軽やかで、まるで大空を飛んでいた。
③ もしも電車に遅れるようなことがあるだろうから、その時は必ず電話をしな

さい。
④ 私は誰かを陥れようと思ってやったわけではなかったのです。
⑤ 夢でありましてもすばらしいことです。
⑥ それはそれは、お困りのことでしょう。

十、次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

実は日本人の自己意識は他民族、たとえば、欧米人のそれとは質的に異なってい
るのである。ヨーロッパ人は自分というものを、実体的にとらえようとする。自分
というのは、それこそ、aかけがえのない存在であり、独立した一個の人格と信じ
ている。ヨーロッパの哲学が古代ギリシアの昔から13一貫して求めてきたのは、た
だひたすら[自分]というものの本質であった。「なんじ自身を知れ!」というデル
フォイのシンタクを哲学の出発点としたソクラテス、「われ思う、ゆえにわれ在り。」
を哲学の原点にるえたデカルト、「人間とは自分の存在を自覚した存在者だ。」とす
るキルケゴール ヨーロッパの哲学史は、「自分」という実体へ向かっての旅だつ
たといってもよい。

それに対して日本人は自分という一個の人間を実体としてではなく、機能として
考えてきた。個人はけっして単独に存在するのではない。つねに「世間」で他の大
勢の人たちとさまざまな人間関係の中で生きるのだ—— というのが日本人の人間観

第10課仮面の思想315

の前提だった。現に「匚エ]」という言葉自体がそうした考え方を正直に語ってい
る。この言葉はいうまでもなく中国から受け入れた漢語であるが、この漢語の意味
はもともと人間の世界、すなわち「匚!口」ということなのである。ところがそ
れが日本ではいつの間にか「匚!!ロ」そのものを表す言葉になった。ということ
は、日本人にとって「匚!口」も「匚!!ロ」も同一のように思われていたから
に違いない。日本人は①社会と個人を一体化して考えてきた のである。

日本人はヨーロッパ人のように自然と対決するのではなく、自然に親しみ、自然
に同化することによって安らぎを得てきた。それと同じことが社会についてもいえ
る。日本人は欧米人のように個人を社会にタイチすることなく、世間と自分とをひ
としなみに表象してきたのだ。②「渡る世間に鬼はない。」ということわざがそのー
端を語っている。日本の自然が優しい山河であるように、③日本の世間も—— 他民

族の社会と比べればー-結構、心安い社会だったからであろう。
I ivし日本には地震をはじめとして自然の災害も少なくない。rv~n、日

本の社会も甘えていればそれですむというほどカンヨウなものだったとも思えな
い。世間の目は往々にして冷たいのである。pvn 、多くの異民族が同居し
ているのが常態であるような他の国々と違って、日本はきわめて同質的な社会で
あり、自然の厳しさも、社会の厳しさも、ほかと比べればずっと気楽なものと
いえる。rvsn 、日本人の人間観や「自分」意識は、このような風土の産物と
いってよい。こうした社会では、人々は自分を主張し、世間と対決して生きるより
も、自分をカエリみ、世間という人間関係の中での自分の立場をつねに意識して 、
社会に協調して生きようとするのである。

HD a・bの意味を簡潔に説明しなさい。
a、
b、

(〇 二重下線のカタカナを漢字に直しなさい。

シンタク( ) ス( )えた タイチ( )

カンヨウ( ) カエリ( )みる

dB 匚工!〜匚瓦 に入る語を次の中からそれぞれ選び、記号で答えなさい。

ア人間 イ関係 ウ自然 工世間 才人

I( ) n( ) m( )

(id 「!v丨〜m に入る語を次の中からそれぞれ選び、記号で答えなさい。

アしかし イそして ウしかも エむろん 才同様に

IV ( ) V( ) VI ( ) W( )

316 日语综合教程第六册

關 下線部①と同じことを言い換えている部分を、これより後から20字以内で
抜き出しなさい。

dD 下線部②のことわざの意味を簡潔に記しなさい。また、このことわざによっ
て筆者が言いたかったことは何か、次の中から選びなさい。
意味:

ア 日本人は、未知の他者に旺盛な好奇心を持っていて、積極的に接してい
<ということ。

イ 日本人は、他人に対して無抵抗で、誰にでも親切にしてしまうというこ
と。

ウ 日本人は、どんなつまらないことがあっても、そのあと必ず良いことが
あると楽天的に生きているということ。

エ 日本人は、未知の人でも理解し合えると信じ、他人を同胞として信頼し
ているということ。

<1D 下線部③の理由を本文に即して5〇字以内で答えなさい。

HD 日本人が自分を「機能」として考えるとは、結局どういうことか。「立場」と
いう語を用いて、45字以内で説明しなさい。

文学・語学の豆知識

故事成語•ことわざ•慣用句

故事成語とは、昔の(中国が主)有名人の話やできごとがもとになってで
きた語句であり、ことわざとは、昔から伝わる尊重すべきことばや 、簡単で
意味深いことばをいう。また慣用句は、ふたつ以上の語が合して、おのおの
の語彙からは別の一まとまりの意味を表すもので、特有な言い回しや表現の
しかたをすることばである。

いずれも、言いならわされ、短いことばの中に教訓(慣用句を除く)その
他大きな含みをもっている。

故事成語(下の()内は出典)

矛盾=つじつまがあわないこと。前後が一致しないこと。(韓非子)

第io課仮面の思想317

蛇足=余計なもの。無用なつけたし。(戦国策)

五十歩百歩=似たり寄ったり。たいした違いのないこと。(孟子)

塞翁が馬=人生の禍福(運命)の定まりないこと。(淮南子)

推敲=文章の字句を何度も練り直すこと。(詩人賈島の故事・唐詩記事)

(故事成語には、漢字の意味から離れた特別の意味に使われるものも多く 、

四字熟語となったものも多い。)

ことわざ

足が棒になる=歩きまわって疲れる。

糠に釘・馬の耳に念仏・豆腐にかすがい=少しも効き目がない。

石橋をたたいて渡る=とても用心深いこと。

お茶をにごす=いい加減にその場をごまかす。

泣き面に蜂・弱り目にたたり目=不幸が重なること。

どんぐりの背比べ=どれもこれも平凡で、あまり差がないこと。

論より証拠=議論をしあっているより証拠を見せるほうが確実である。

一石二鳥•一挙両得=一つのことをして二つの利益を得ること。

(ことわざは話しやすく、覚えやすいように、おもしろく、調子よく、物事

の急所をずばりと言い当てている。)

慣用句 手をやく (取り扱いに困る) 板につく (しっくり合う) さじを

投げる(あきらめる)泡をくう(うろたえる) 目がない(夢中になる)

I読み物

絶対値

•内館牧子

福岡空港のロビーを歩いていると、向こうから若い女たちがドドーッと
走ってきた。何ごとかと思っているうちに、あっちからこっちからまたも若
い女たちが走ってくる。そしてもう、髪を振り乱し、我先にとドドーツ、ド
ドーッとこっちに向かって走ってくる。

私は恐ろしくなーり、道をあけようとした。その時ふと見ると、私の目の
前をプロ野球のイチロー選手が、帽子を目深にかぶって歩いているではない
か。女たちは彼を追っかけていたのだ。

318 日语综合教程第六册

私は思わず彼の腕をつかんだ。
「イチロー !」
彼は驚いて顔をあげ、私だとわかると、
「あーツ。久しぶりですッ。」
と人なつっこい笑顔を見せ、右手を差し出した。
私はその手を握り返しながら、
「昨日のオールスター戦、ホームランを打ったのね。あなたが打ったびに、
イメ ージするプレーヤーに近づいているのかなって思うのよ。」
と言って笑った。もっとも、彼にこの言葉が聞こえたかどうかはわからな
い。三十人はいようかという若い女たちはあたりかまわずシャッターを押
し、帽子の下の顔を写そうとしやがみこんでレンズを突き出し、歓声をあげ
る。彼の手に力が入ったことが返事であろうと思い、私は聞こえていたのだ
と推測するしかない。
イチロー選手と初めて会ったのはある月刊誌の対談の席であった 。
私がプロ野球に詳しくないことを言うと、彼は非常にわかりやすく、丁
寧に答えてくれた。私はとてもありがたく、一生懸命に耳を傾けたのだが、
最後に私はバカな質問をしたのである 。
「あなたの目標は何かしら。」
彼はおそらく何百回と聞かれているであろう質問に、一瞬の間を置いた。
そして、言った。
「自分がイメージしているプレーヤーに近づくことです。」
私は「あッ!」と思った。そして次の瞬間、叫ぶように言っていた。
「わかった。私は野球はわからないけど、あなたの思いはわかった。あな
たの目標は『絶対値』なのね!」
それに対して彼の返してくれた笑顔を 、私は今もって忘れられない。
「そうです。わかってもらえて嬉しいです。」
本当に嬉しそうに言う彼に、私はたたみかけた。
「あなたの目標が『絶対値』だとわかれば、三冠王をめざしますかとか、
大リーグに行きたいかとか 、そういう質問は出ないはずよね。」
「ええ。でも言ってもわかってもらえないと思うから、面倒くさくなって、
三冠王をめざしますとか何割打ちたいとか、ロから出まかせに答えちゃうん
です。でも、本当はそんなことが目標じゃないです 。」
この時、私は本当の求道者を見たと思い、感服したのである。具体的な
数字や、他の選手と比べての相対的な目標ではなく、自分の中に理想とする
プレーヤー像をイメージし、それに近づいていくことが、彼の目標なのであ
る。「理想とするプレーヤー像」は、つまり彼にとっての「絶対値」である。
これはもうとてつもない目標であり、これを口にする二十代の若者の、何

第io課仮面の思想319

と頼もしくも深い思いであることか。
よくスポーツ選手が言うコメントに、「自分のレースをすることが目標

だ。」とか「自分の柔道が出来なかったことがくやしい 。」とかがある。これ
は一見すると、イチロー選手の言う「絶対値」と大差がないように思える
が、まるで違う。

「自分の」というのは、今現在の自分の力である。それを百パーセント出
せるかどうかという話である。イチロー選手の思いは、今現在の自分よりは
るかにはるかに高い力をイメージし、それに近づきたいという話である。
「自分の」という現在のレベルの話ではないのである。

私はその対談で、「そのイメ rジするプレーヤーについて具体的に話して
ほしい。」とは絶対に聞くまいと思った。これは対談のホステスとしては、
本当は失格である。ホステスとしては、そこは当然つっこむべきなのだ。し
かし、そこは立ち入ってはならぬところなのだと、私は反射的に思ってい
た。

今シーズンに入ってから、新聞で「イチローは今年の目標を聞かれると、
不快気にそっぽを向いた。彼にはもっと大人になってほしい。」という内容
の記事を読んだ。その時、私はため息が出たのである。野球を知っている記
者さんなら、彼の本当の目標に気づいてもいいはずだし、それこそが大人と
いうものであろう。

考えてみれば、「絶対値」を目標にするということは、何と清廉なことで
あろうか。

どんな仕事であれ、状況であれ、誰しも「理想とするイメージ」はある
はずなのだ。その高みに向かって一歩一歩精進するということを、あらゆる
仕事やあらゆる状況の人々は目標にすべきだと心底思う。相対的な目標より
もはるかに深く、はるかに清らかで、はるかにあるべき姿だ。

福岡空港で、女たちに追われながら歩き去ったイチロー選手の背を見送
りながら、私は自分に言った。

「私も、高い視聴率を取ることが今年の目標ですなどは言うまい。私もイ
メージする『絶対値』の脚本家をめざし、視聴率なんかゼロでもいいんだ
わ!」

それも困るか.... 。
(『高校新国語!!』大修館より)

I注釈

〇 内館牧子(うちだて まきこ)(1948 — )

脚本家。秋田県に生まれた。主な作品には、テレビドラマ『ひらり』『毛利元就』などがある。本

320日语综合教程第六册

文は『女は腕力男は魅力』(1997年)によった。
❷イチロー(1973 — )

鈴木一郎。「イチロー」は選手登録名。

❸ オールスター(all star)戦 名手赛
優秀選手や人気選手を選抜して行われる特別試合。

❹三冠王 王三冠
打率、打点、本塁打の三部門で、成績がいずれも一位の選手。

❸ 大リーグ(〜league) 美国职业棒球甲级联赛
アメリカのプロ野球で、最上位の連盟。メジャーリーグ。

第10課仮面の思想 321

第11課

らくだのシアンツ

[本文

•走舎作立閤祥仆訳

祥子はやにわに走り出した。が、二、三十歩も行ったところでとまってし
まった。駱駝のことが気になったのである。彼がこの世界でもっているもの
といえば、いまや、彼自身の命だけである。落ちている縄一本だって、彼は
よろこんでひろっただろう。そんな物でも、もっていれば無一物とはいえな
いのだ。なんの役にも立たなくとも、気休めくらいにはなる。生きのびるこ
とはそれは大切にちがいない。しかし、裸一貫では話にもならないではない
か。駱駝をむざむざすててゆく手はない。ひっぱっていってどうなるものか
はわからないながら、とにかくそれは品物には違いないのだ。それもなかな
か大きな。

彼は駱駝をひきおこした。駱駝の扱い方にくわしいわけではなかったが、
田舎で家畜を扱いなれていたので、こわいとは思わなかった。駱駝たちはの
ろのろと立ちあがった。いっしょにつないであるものかどうかたしかめてい
る暇もないまま、引いて行けそうだぞと感じたときには、一頭だろうが全部
だろうがおかまいなしに歩きだしていた 。

しかし、歩きだしたとたん、しまったと思った。いつも重い荷を背負わせ
られているこのあたりの駱駝は、足がひどくのろいのだ。そればかりか、用
心しいしいゆっくりと歩いてやらなければならないのだ。駱駝は足もとをこ
わがる。水たまりやぬかるみは、いとも簡単に彼らの足をへし折り、膝をね
じ切ってしまうからだ。彼らのすべては完全に四本の足にかかっていて、
いったん足がだめになったら、一巻のおわりなのだ。こんなことで、果して
逃げきれるだろうか。

しかし、祥子は彼らをおいてゆこうとはしなかった。こうなれば運だめし
だ。いまさら濡れ手で粟の駱駝をすてる手があるものか、と。

長年車を引いてきたので、祥子は方角になかなか敏感だった。しかしなが
ら、いまはだいぶ混乱していた。駱駝たちをさがしあてたときは、頭は彼ら

322日语综合教程第六册

のことでいっぱいのようだったし、彼らをひっぱって歩きだしてからは、ど
こをどう歩いているのか、さっぱりわからなかった。空はまつ暗だったし、気
はあせりにあせっていた。またたとえ、星で方角を見ることを心得ていたと
しても、彼はそうはしなかったにちがいない。星たちは、彼の目には、彼よ
りももっとあせって、あっちへぶっかりこっちへぶつかり、暗い空を右往左
往しているように見えた。彼はあわてて顔を伏せた。走りだそうとする足を
おさえ、いらいらしながら、歩きつづけた。そして、ふと、駱駝をつれてい
るからは、山ぞいはだめで、街道ぞいに行かなければならないことに気がつ
いた。磨石口から——ここが磨石口としての話だが—— 黄村までは一本道で
ある。ということは、駱駝が往来できる街道であって、文句なしの近道とい
うことである。「近道」は車引きにとって最高の魅力だったが、そのかわりこ
の道には身のかくし場所がない。万が一、また兵隊に出会ったらどうする。ま
たたとえ兵隊に出会わなかったとしても 、このぼろぼろの軍服 、泥だらけの
顔、のびほうだいの髪で、駱駝ひきでございといってとおるものだろうか。む
りだ。どう見ても駱駝ひきには見えない。それどころか、まるで敗残兵だ。敗
残兵にせよ、警察につかまるのならまだしも、百姓たちにつかまったら、よ
くて生き埋めだ。ここまで来て、彼はガタガタふるえだし、うしろの駱駝の
かすかな足音にとびあがった。生きのびたければこの足手まといを捨てなけ
ればならないとは思ったが、思い切って手縄をはなすことはどうしてもでき
なかった。行こう、行くんだ。どこに着こうと、どんなことにぶつかろうと、
そのときはそのときだ。生きていられたら、駱駝は儲けもの、死んだら死ん
だで、それまでの命だったのだ!

しかし、彼は軍服を脱いだ。ビリッと襟をひきちぎった。まだ役にたつ金
ボタンもむしりとった。闇に投げすてたが、音もしなかった。それから、こ
の襟もボタンもない一重の上着を裡がけにひっかけ、風呂敷包みたいに両袖
を胸の前で結んだ。こうでもしておけば、いくらかは敗残兵らしくなくなる
だろうと思いながら、ズボンの裾もたかだかとたくしあげた。駱駝ひきには
ほど遠いにせよ、すくなくも掛値なしの敗残兵とは見られないだろう。この
泥だらけの顔、汗まみれの体では、まあ「炭坑夫」というところかな、と思っ
た。彼は頭の回転はにぶかったが 、考えは綿密で、思いつくとただちに実行
にうつす。真夜中のことで見ている者がいるわけでなし 、なにもあわててこ
んなことをやる必要もなかったのだが、そうはゆかないところが彼だった。
とにかく時間がわからなかったのだ。うかうかしているあいだに、夜が明け
てくるかもしれない。山ぞいに行くことをあきらめたからは、昼日中どこか
にかくれているわけにはゆかず、まつ昼間も歩きつづけるうえは、「炭坑夫」
らしくしなければならない。そこまで考え、すぐさまそのとおりにして、すっ
かりさわやかな気分になった。まるで、もう虎口を脱して北平を目前にした

第11課らくだのシアンツ 323

ような気分だった。ぐずぐずしてはいられないぞ。金もなければ食いものも
ないのだ。これ以上、途中でひっかかったりせず 、しかも一刻もはやく北平
へ帰りつかなければ。こう思ったとき、彼は駱駝に乗ろうかと考えた。疲れ
ずにすむから飢えをしのぐ足しにもなろうと思ったからだ 。しかし、思いと
どまった。これは悪くはないが、そのためにはまず駱駝をすわらせなければ
ならない。時は金なりだ。とてもそんな悠長なまねをやっている暇はない 。そ
れだけではない。もし高いところにすわりこんでしまったら、足もとをよく
見ることができなくなる。駱駝がすってんころりんやりでもしたら、おれま
で巻き添えを食わねばならぬ。やめた。こうして歩いてゆこう、と。

これが街道だろうとはおぼろげにわかったものの、いったいどこへ向かつ
ているのか、どこにいるのかとなると、皆目見当もつかなかった。深い夜の
なかで、連日の疲労と脱走の恐怖とが、彼の心身をじりじりと責めさいなん
だ。ポックリポックリ、のろのろと歩いていると、たいして歩いたわけでも
ないのに、頭がとろんとしてくる。闇はいっこうに退かず、しっとりと冷気
をふくんだ夜気が、心細さをいっそう募らせた。足もとに目を凝らすと、道
は果てしなくでこぼこしている。そのくせ足をおろしてみれば平らなのだ。
こん畜生、こん畜生と思っているうち、もうなにもかも投げだしたくなって
きさえする。足もとがどうなろうと知ったことかと、顔をあげ、足をひきず
るようにして歩いてゆくと、世界じゅうの闇が束になって待ちうけているみ
たいに、なにも見えない。闇から闇へとふみこんでゆくと、うしろからは音
もなく駱駝がついてくる。

その闇にもしだいになれてくると、今度は頭の活動がにぶってき 、瞼が重
くなってくる。歩いているのか止まっているのか、それすらはっきりしない。
暗い海に打ち寄せる波のように胸がドキンドキンと波打っているのを感じて
いるだけだ。そんな自分が闇とひとつに溶けあい、茫洋と広がり広がって、気
が遠くなってくる。突然、はっとする。何だかわからないが、なにかを思い
だしたようでもあり、なにか物音を聞いたようでもある。目をあくと、あい
かわらず歩きつづけている。そして、いまなにを思いだしたのかも、けろり
と忘れてしまっている。あたりもなにごともなかったように静まり返ってい
る。しばらくして胸騒ぎも収まったところで、もう二度と眠りこんだり、愚
にもつかぬことを考えたりはすまいぞ、なによりも一刻もはやく町に帰りっ
かなければならんのだから、と心に言いきかせた。それにしても、考えるこ
とをやめると、瞼のほうがとたんに垂れさがってくる。この場で寝こんでし
まったら、二日や三日、白川夜船で行ってしまうことはわかりきっているの
で、どんなことであれ考えっづけ、目をあいていなければならなかった。し
かし、考えるといっても、意識はもうろうとし、体じゅうじとじとして気色
が悪く、頭はめったやたらに痒いし、足はだるく、ロの中はからから、とて

324日语综合教程第六册

も考えるどころではなかった。自分が無性にかわいそうでならなかったが、
そういう自分のことすらもじっくり考えてはいられなかった。頭の中は空っ
ぽで、ふと我に返ったかと思うと、すぐまたわからなくなってしまう。それ
はちょうど、消えかかった蠟燭が、自分自身をすらよう照らしだすことがで
きないようなものであった。しかもあたりは真つ暗闇。何だか真つ黒い霧の
なかを漂っているような気分である。おれはまだ生きているんだぞ、一歩ー
歩大地をふんまえて歩いているんだぞとは思うのだが、ではいったいどこを
歩いているのかとなると、それを証明してくれるものがない。ひとりぼっち
荒海を漂っているようで、頼りないことおびただしい。こんな不安な、さび
しい目にあったのは、生まれてはじめてのことである 。いつものときなら、友
達づきあいを好まなかったにせよ、ひとりで外にいるだけで、お天道さまが
手足の隅々まで暖かく くるみこんでくれたし、さまざまのものが目の前を通
りすぎ、一度だって、恐ろしいという思いをしたことがなかった。いまだっ
て、べつに恐ろしいとは思わなかったものの、なにがどうなっているのか皆
目見当もつかないというのは、なんともやりきれなかった。これで駱駝たち
が驟馬のようにずるがしこいやつだったら、かえってこの野郎と用心する気
もおきただろうが、これがまたいやになるほどおとなしいのだ。頭がボーツ
となってきたときなど、ふっとやつらが消えてしまったのではないかなどと
思って、ぎくりとしてしまう。この大きな動物たちは、こちらが知らぬ間に
音もなく闇の分かれ道へ入って行ってしまうことができるのではないか 、氷
の塊みたいにだんだんと溶けてなくなってしまうのではないか、そんなふう
に思えてくるのだ。

いっか、彼は坐りこんでいた。このまま死んでしまい、そして死んだあと
でも意識があったとしても、自分がどうして坐ってしまったのか、何のため
に坐ったのか、けっして思い出すことはできないであろう。わからないとい
えば、そうして五分間も坐っていたか、それとも一時間もしたかもわからな
かったし、坐ってから眠りこんだのか、眠ってから坐りこんだのかもわから
なかった。なにしろひどく疲れていて歩きながら眠っていたりしたほどだつ
たのだから、おそらくは眠ってから坐りこんでしまったものだろう 。

そして突然目を覚ました。それは決して自然な目覚めではなく、一瞬に別
の世界にとびこんだような、突然な目覚めだった。あたりは依然まつ暗だっ
たが、このとき鶏の声をはっきりと聞いた 。鉄のように堅いものが頭をす
ぱっと断ち割ったようにはっきりと……。眠気はかき消えたようになくなっ
ていた。駱駝は?なによりもまずそう思った。縄はまだ自分の手の中にあり、
駱駝も横に立っていた。ほっとすると同時に、だるくなってきた。体じゆう
の箍が外れたようで、腰をあげる気がしなかったが 、かといってもう一度眠
ろうとは思わなかった。ボヤッとしているわけにはいかない。じっくりと考

第11課らくだのシアンツ325

え、うまい道を見つけださなければならないのだ。そして、自分の車のこと
を思いだし、思わず叫んだ。「なんで!」

「なんで!」
だが、ただ空しく叫んでみたところで、どうなるものでもない。駱駝にさ
わってみた。自分がいったい何頭ひっぱってきたのかいまのいままで知らな
かったのだ。手でさぐっていってみると三頭だった。別に多すぎたとも少な
すぎたとも思わず、ひたすらにこの三頭をどうするかと考えた。これという
結論が出たわけではなかったが、自分の将来のすべてがこの三頭の駱駝にか
かっていることだけは、漠然とながらわかった。
「こいつらを売って、車を買いなおしたら!」とびあがりそうになった。し
かし、こんなごくあたりまえで手軽なやり方を思いつかなかったことを恥じ
入るみたいに、ぴくりとも動かなかった。よろこびがその慙愧の念を圧倒し
たとき、はっきり腹をきめた。さっきのは、たしか鶏の声じゃないか。鶏は
夜中の一時二時に時をつくることもあるが、いずれにせよ夜明けはそう遠い
ことではない。あの声が聞こえたうえは、かならず部落があるぞ。もしかし
たら北辛安では?あそこには駱駝を飼っている家がある。いそごう。夜が明
けるころに行きついて、駱駝を売ることができれば、町に着くなり車を手に
入れることができるのだ。こんな物騒なときだから、車だって安く買えるぞ。
彼の頭は車を買うことでいっぱいで、駱駝を売ることなど、なんの苦もなく
できるように思っているみたいだった 。
駱駝と車の関係に思いいたったとたん、彼は、これまでだるくてたまらな
かったことなど嘘みたいに、しやきっとなった。この三頭の駱駝で百畝の畑
が買えるとか、幾粒かの真珠と取り替えられるとか思いついたとしても 、こ
れほどよろこびはしなかっただろう。彼はすっくと立ちあがると、駱駝を引
いて歩きだした。駱駝の相場がいまどれくらいになっているものか 、まるで
知らなかった。ただ、駱駝は力が強いのに、餌は驟馬より少なくてすむとい
うので、まだ汽車がなかったころには一頭が五十円銀貨一枚にもなったもの
だという話を聞いたことがあるだけだった。それで、五十円銀貨三枚とはい
わず、車一台買えるだけの、九十円か百円にでもなればと思っていた 。
そのうち夜が明けてきた。行く手の灰色の空がほんのりと赤くなった。地
平線や遠い木立の影がひときわ濃くなった。赤い色が静かに灰色の中に溶け
広がってくると、あるところはくすんだ紫に、あるところは鮮やかな赤に変
わった。それでも空のほとんどはまだ淡い葡萄色を呈している。さらにしば
らくすると赤い部分が黄金色に輝きはじめ、あらゆるものがいっせいに色づ
<〇と見るまに、すべてがくっきり浮かびあがる。ついで東の空の朝霞が茜
色になり、頭上の空が藍色になる。その茜色の空を貫いて一本、また一本、金
色の矢が走る。たなびく霞をぬって光の帯が立ちあがり、空の東南角に目く

326 日语综合教程第六册

るめく蜘蛛の網が織りなされる。田畑が、木立が、雑草が、いっせいに暗い
緑から鮮やかな翡翠に変わる。老松の幹が金色に染まり、ひるがえる鳥の羽
根がキラキラ輝く。ものみなすべてがよろこびにあふれている。祥子はその
燃えるような光にむかって声をかぎりに叫んでみたかった。兵隊にひつぱっ
ていかれて以来、彼はまともに太陽を仰いだ記憶がなかった。昼も夜も呪い
のことばをかみしめかみしめ、うなだれて、日や月があることも、天がある
ことも忘れていた。しかし、いま、彼はだれに拘束されることもなく歩いて
いる。ひと足ごとに明るくなる世界のなかを ……。太陽は草葉の露を金色に
輝かせ、祥子の眉や髪の毛を照らし、心を暖かくつつみ込んでくれている。彼
はすべての苦労、すべての危険、すべての心の痛みを忘れた。たとえ垢と泥
にまみれ、ぼろをぶらさげていようと、太陽の光と熱はけっして彼をのけ者
にしたりはしない。彼は明るい光と、暖かい熱につつまれて生きているのだ 。
彼はうれしかった。ワーツと叫びだしたかった。

自分のぼろぼろの服を見、うしろの三頭の毛の抜けた駱駝を見て、彼は思
わずにやりとした。こんなみっともない人間と獣とが、まんまと命の瀬戸際
をきりぬけ、お天道さまにむかって歩いているなんて 、こりやあまったく夢
みたいなことだ。もうこれからは二度と人を恨むまい。なにもかも運命だっ
たのだ。そう思うと、気も晴れ晴れとして、悠然と歩きつづけた。お天道さ
まがついていてくれさえすれば、こわいものなしだ、と。野良にはもう男や
女の姿が見えていたが、ここがどこなのか、たずねてみようとも思わなかつ
た。とにかく歩こう。駱駝だってなにも、今日明日にも売らなければならな
いということはないのだ。まず町に帰ってからのことだ。彼ははやく町が見
たくて、矢も楣もたまらない思いだった。そこには、両親がいるわけでも、財
産があるわけでもなかったが、なんといってもそこは彼の故郷であった。町
全体が彼の家であった。そこに帰りつきさえすれば、生きる目処はっくのだ。
村が見えてきた。なかなか大きな村だ。

(『駱駝祥子』岩波書店より。一部削除と漢字表記の改正あり)

、新しい言葉 [副] ①いまこそ。/现在正是。②いまにも。まさに。/
[名] 马上。③いまはすでに。/现在已经。
今や(いまや)
無一物(むいちもつ) 「むいちぶつ」とも読む。(金や品物などを)何
も所有していないこと。何一つ持っていない
こと。/什么也没有,ー无所有。

第11課らくだのシアンツ327

裸一貫(はだかいっかん) [名] 自分の体以外何も持っていないこと。普通男性

の場合に使う。/两手空空,一文不名,白手起

家。

むざむざ [副] ①わけもなく。たやすく。/轻易地,轻率地。简

单地。②惜しげもなく。あっさりと。/毫不吝

惜。

しいしい(為い為い) [連語] その動作をくりかえし行う意を表す。〜をおこ

ない、またおこなって。しながら。/反复…,…

いとも 又…。
[副] たいへん。非常に。はなはだ。/最,非常,十

分。

へし折る(へしおる) [他五] 力で押し付けて折る。また、「折る」を強めてい

う語。/折断;使屈服,挫败。

振じ切る(ねじきる) [他五] 強くねじって切り取る。/扭断,拧断。

一巻の終わり(いっかんの [慣] (一巻の物語が完了する意から)すべてが終わる

おわり) こと。特に死ぬこと。/全完,完蛋。

運だめし(うんだめし) [名・自サ] (かけごとなどをして)運の良し悪しを試してみ

ること。/试试运气,碰碰运气。

濡れ手で粟(ぬれてであわ) [慣] ぬれた手でつかむと、粟がたやすく手につくこ

とから、苦労しないで利益を得ることのたと

え。濡れ手に粟。濡れ手で粟のつかみ取り、と

もいう。/湿手沾干粉不劳而获。

心得る(こころえる) [他一] ①飲み込む。理解する。/懂得,理解。②たし

なみがある。身につける。/精通某种技艺。③

よく慣れて知っている。/熟知。

右往左往(うおうさおう) [名•自サ] (右へいったり左へ行ったりする意から)うろた

えたりまごついたりして、あっちへ行ったり

こっちへ来たりすること。/跑来跑去。

ぼろぼろ [形動・副] 古くなり、破れたりくずれたりしてもとの形・

姿がなくなっている。 /破烂的。

敗残(はいざん) [名] ①戦いに負けて生き残ること。/残兵败将。②

比喩的に、人生に失敗して落ちぶれること。/人

生惨败。

百姓(ひやくしょう) [名] 「農民」のくだけた言い方。田舎もの。/农民,

庄稼人。

328日语综合教程第六册

生き埋め(いきうめ) [名] 生きたままに地中に埋めること。/活埋。

ビリッと [副] 紙や布などの裂ける音の形容。びりびりとも。/
哧,哧啦。

ひきちぎる [他五] 引つ張って無理にちぎる。力をこめて、また乱

暴にちぎる。/撕碎。

むしりとる(窒り取る) [他五] むしってとる。また、無理に奪い取る。/拔掉,

葬掉。

一重(ひとえ) [名] 重ならないで、そのものが1枚だけであるこ
と。/单层,单衣。

褸がけ(たすきがけ) [名] 「たすき」とは和服の袖をたくし上げておくた

めに、背中で斜め十文字になるようにかける細

い紐。「たすきがけ」とは襖をかけること、また

その姿。/肩上斜挂着束衣袖的带子。

ひっかける [他ー] ①物の先に他の物をかける。/挂上。②無造作

風呂敷包み(ふろしきづ [名] に着る。Z披上。
「風呂敷」とは物を包んで持ち運んだりするた

つみ) めに使う四角な布のことである。「風呂敷包み」

はそれで包んだもの。/包袱皮。

裾(すそ) [名] 衣服の地面に近い部分。衣服の下端。/(衣服的)

下摆。

たかだか(高々) 〔副] ひときわ高い様子。/高高地。•

たくし上げる(たくしあげ [他ー] 袖などを手でまくり上げること。/挽起,卷起。

る)

掛け値なし(かけねなし) [連語] うそ偽りのない売値。物事をおおざっぱに言わ

ないこと。/货真价实。

炭坑夫(たんこうふ) [名] 石炭を採掘する労働者。炭鉱労働者。/煤矿工人。

綿密(めんみつ) [名・形動] 注意がすみずみまで行き届いて、手抜かりがな

いこと。また、そのさま。/周密,详尽。

昼日中(ひるひなか) [名] 昼間。昼中。/白天,大白天。

すぐさま [副] ただちに。すぐに。/马上,立刻,立即。

ひっかかる(引つ掛かる) [自五] 厄介なことにかかわりあう。/有牵连。

しのぐ(凌ぐ) [他五] ①苦しさ・つらさを我慢して切り抜ける。耐え

忍ぶ。持ちこたえる。/忍耐,忍受。②程度や

力がほかのものの先を越して優位に立つ。/凌

驾,超过。

第11課らくだのシアンツ 329

足し(たし) [名] 足りないところの補い。/贴补。
悠長(ゆうちょう)
[形動] 動作・態度などが落ち着いていて、ゆっくりし
すってんころりん
巻き添え(まきぞえ) ている様子。のんびりしている様子。/从容不

おぼろげ 迫,不慌不忙,慢悠悠。
皆目(かいもく)
脱走(だっそう) [副] 「すてんころり」ともいう。勢いよく転ぶ様子。/
じりじりと
扑通摔倒。
責めさいなむ(せめさい
なむ) [名] 他人の事件などに巻き込まれて、罪や損を受け

ポックリ る。かかわり合いになること。/株连,连累,牵
とろんと
连。
退く(しりぞく)
[形動] 記憶•物の形などがはっきりしない様子。ぼん
しっとり
やりしている様子。/模糊不清,模模糊糊。
夜気(やき)
知る(しる) [副] (多く下に打ち消しの語を伴う)まったく。ほ

んの少しも。ぜんぜん。/完全。

[名・自サ]自由を束縛されているところから抜け出て逃げ

ること。/逃脱,逃跑。

[副] ①ある物・状態に向かって、ゆっくりと確実に

近づいていく様子。/逼近。②(物事が思うよう

に行かずに)次第に心がいらだってくる様子。Z

焦急。

[他五] 容赦なくいじめ苦しめる。/百般折磨。

[副] 馬などがゆっくりと歩く足音、またその様子。Z
[副] 马等慢悠悠行走的样子或脚步声 。
[自五] 眠気・酒の酔いなどで、目つきがぼんやりとし
て活気のない様子。どろん。/睡眼惺怜,模模
[副] 糊糊。
①後へ下がる。後ろへのく。/倒退,后退。②
[名] 貴人・目上の人などの前から退出する。/退出,
[他五] 离开。③引退する。身を引く。/退职,退位。
①少し湿り気を含んだ様子。/潮湿,湿润。②
(雰囲気や性格)落ち着いて静かな様子。/ (性
格、气氛等)沉静,宁静。
①夜の冷え冷えとした空気。/夜间的冷空气。②
夜の気配。夜の静かな気分。/夜间的气氛。
かかわりを持つ。関知する。/与•••有关。

330日语综合教程第六册

待ち受ける(まちうける) [他ー] やって来たら、何かをする心構えで待つ。/等
待,等候。
瞼(まぶた) [名] 目の上をおおう皮膚。/眼帘,眼睑,眼皮。
けろりと [副] ①(俗語)重大なことがあった後でも何事もなかっ
たように平然としている様子。/若无其事,满不
愚にもっかぬ(ぐにもっか [慣] 在乎,泰然自若。②きれいさっぱりと。/完全。
ぬ) ばかばかしくて、話にならない。くだらない。/
太愚蠢,无聊得不值ー提。
白川夜船(しらかわよぶね) [名] 「しらかわよふね」とも読む。何が起こっても気
づかないほど、ぐっすり寝込むこと。/熟睡,酣
じとじと [副] 睡。
(不快に感じるほど)湿り気を帯びる様子。/湿
めったやたら(滅多矢鱈) [形動] 漉漉的。
無性に(むしょうに) [副] むやみなこと。めちゃくちやなこと。/胡乱。
我に返る(われにかえる) [慣] むやみに。やたらに。/过分,太。
意識がもどってはっきりする。また、われを忘
一人ぼっち(ひとりぼっち) [名] れていた状態から平常の状態にもどる。/苏醒,
恢复意识。
天道(てんとう) [名] ー「一人ぽっち」ともいう。仲間や頼る人がなく、
<るみこむ(包み込む) [他五] たった一人きりであること。/孤零零的ー个人,
ずるがしこい(狡賢い) [形] 无依无靠。
太陽。日輪。/太阳。
ぎくりと [副] 巻くようにして中に包み込む。/包。
悪知恵にたけて狡猾である。わるがしこい。/奸
すぱっと [副] 诈狡猾。
恐れと驚きを同時に感じて緊張する様子。/吃
搔き消える(かききえる) [自ー] ー惊,吓ー跳。
勢いよく、またはためらわないで物事を行う様
箍(たが) [名] 子。Z猛地。
すっかり消える。また、不意に跡形もなく消え
ボヤッ [副]
いまのいままで [慣] る。/突然消失。
桶・たるなどの周りにはめて閉める、竹・金属
などの輪。Z箍。
不明瞭にかすんでいる様子。/模糊不清。
「いままで」を強める語。たった今まで。/至今,

第11課らくだのシアンツ331

迄今,直至现在。

恥じ入る(はじいる) [自五] 深く恥じる。非常に恥ずかしいと思う。/深感

羞愧。

ぴくり [副] ひきつるようにわずかに動く様子。また、驚き・

恐れなどのために瞬間的に体を緊張させる様

子。/抽动一下,哆嗦ー下。

慙愧(ざんき) [名•自サ]文語表現。(自分の行為をふりかえり見て)自ら

心に深く恥じること。/惭愧。

•腹を決める(はらをきめる) [慣] 覚悟・気持ちをはっきりと定める。/决定。

しやきっと [副] 気持ちがすっきりとして元気が出てくる様

子。/矍蘇。

相場(そうば) [名] ①品物の時価。市価。/市价,行情。②(取引で)

現物の取引をせず、市価の高下によって行う投

機的取引。/买空卖空,投机买卖。③常識。大

体の見当。/老规矩,常例。

ほんのり [副] かすかな様子。ほのかに表れる様子。/微微,稍

微。

くすむ [自五] ①色が落ちついて地味になる。また色が冴えな

くなる。/颜色不鲜艳。色泽暗淡。②人の存在・

地位などが地味で、目立たなくなる。/不显眼。

朝霞(あさがすみ) [名] 朝たちこめる霞。/朝霞。

茜色(あかねいろ) [名] あかねの根から取った染料の色。少し沈んだ赤

色。/暗红色,酒红色。

藍色(あいいろ) [名] 濃い青色。紺色と青色の中間。/蓝色,深蓝色。

金色(こんじき) [名] 黄金のような色。黄金色。山吹色。/金色。

棚引く(たなびく) [自五] 雲•霞・煙などが横に細長く漂う。/飘忽,缭

绕。

織り成す(おりなす) [他五] 織って模様を作り出す。比喩的にさまざまなも

のを組み合わせて、変化に富んだものをつくり

だす。/织成,组成,穿插成。

声をかぎりに [慣] できるだけ声を出して。/尽可能大声地。

呪い(のろい) [名] 呪うこと。また、その言葉。/诅咒;咒语。

うなだれる(項垂れる) [自ー] (失望・悲しみ•恥ずかしさなどのために )頭を

前に垂れる、また元気がなくなる。/垂头,低

头。

332日语综合教程第六册

垢(あか) [名] 汗•油«埃などが、皮膚の上皮細胞と混じって
はがれた汚れ。/污垢。
のけもの(除け者) [名] 例外として取り除いたもの。仲間はずれにされ
た人。/被排挤出去的人,外人。
みっともない [形] ほかの人が見苦しいと思う様子。外聞や体裁が
悪い。/不像样的,不体面的,难看的 。
まんまと [副] うまくいく様子。首尾よく。/巧妙,漂亮。
切り抜ける(きりぬける) [他ー] 危険な状態から力を尽くして抜けて出る。/摆
脱,逃脱,闯过。
恨む(うらむ) [他五] 相手の仕打ちに対して不平•不満を持ち、心よ
からず思う。/怨恨,抱怨。
矢も楣もたまらない(やも [慣] (あることをしたいという気持ちが強くて)どう
たてもたまらない) してもいられない。こらえきれない。/迫不及
待地,急不可待地。
めどがっく(目処がっく) [慣] 完成・解決の予想がつく。見通しがたつ。/有
眉目。

言葉の学習

づ 〜ようが〜ようが 无论…都…,不管是…还是…

正反対、あるいは類似の意味の言葉を重ね、また同じ動詞の肯定と否定を用
いて「何が起こっても」「どのようなことをしても」「どちらの行動をとったと
しても」などの意味を表す。そして「ようが」ひとつだけでも使える。書き言
葉的な表現で、「ても」と同じ意味である。

❶ この部屋に閉じ込められたら、泣こうがわめこうが外には聞こえない。(要
是被关在这屋里的话,那哭也好叫也好外面都听不见。)

❷ まだまだ元気のいい連中のことだから、暑かろうが寒かろうが、かまわず
「徹夜」で働く。夜はむろん昼と違って骨も折れるし疲れ方もひどい。(这些
人的身体都还不错,所以不管酷暑寒冬“通宵近旦”地工作。当然夜晚与白昼
不同,工作劳心,也更累人。)

❸ 決めた売上高になるまでは、どんなに遅くなろうが疲れようが帰るまい、と
タクシーの運転手は車を走らせながら思っていた。(出租车司机ー边开着车ー

第11課らくだのシアンツ 333

边想,没有赚到规定的金额,无论多么晚多么疲倦我都不能回去。)
❹ 釣り好きといっても自分で釣るわけじゃない、ただ見ているのさ。雨が降ろ

うが風が吹こうが、のんびりと人の釣りを見ている。(说是喜欢钓鱼但其实并
不是自己钓,只是在ー旁看着别人钓 。无论刮风下雨都在ー旁悠哉悠哉地看着
别人钓鱼。)
❺ 自分の車さえもってしまえば、ドライブであろうが旅行であろうが思うまま
だ。どのみち車は自分のものなのだから。(只要有了自己的车,那无论是去兜
风或是开车旅游可以随心所欲了。总而言之因为这是自己的车了。)

X匸 〜たら(ば)〜たで 怎么着都够呛;(动词)就(同一动词)了 [

前後に同じ形容詞や動詞を二度繰り返すことによってある事柄について対照
的に述べ、「どちらにしても大変だ」「どちらにしても問題だ」という意味を表
す。文によっては「そのような状態になったら問題があるにしてもなんとかな
る」という意味を表す。動詞の場合は「仮定表現+過去表現+で」という形で、
形容詞は、たいてい「〜かったら〜かったで」というふうに使う。

❶ 歩いている間じゆう兵隊たちの持ち物を担いだり、車を押したり引いたりし
なければならなかったし、止まれば止まったで、水汲み、飯炊きから馬の
世話までやらなければならない。(行走时要为那些当兵的挑行李,推车拉车。
不走时也有不走时的事,打水、做饭、喂马。)

❷ 部屋を買おうかどうか迷っているの。買わなかったら買わないで目立って窮
屈になってきたし、買ったら買ったで、ローンの返済がたいへんだわ。(我正
为买房子的事苦恼呢。不买吧房子又显得太小,买吧还债也够受的。)

❸ 物価の値上がりをぶつぶついうだけで、それをどうしようというわけでもな
かった。上がったら上がったでそれまでのこと。だれにだって値をさげるこ
とはできはしない。(对物价上涨也就是嘟嘟发牢骚而已,不是真要拿它
怎么样。涨就涨了,谁也无法让它降下来。)

❹「趣味」というのは、所詮どうでもいいようなものであって、飽きたら飽き
たでいい。少なくともいまの私にとって「趣味」は人生の一大事ではない。
(所谓“兴趣爱好”毕竟是属于有没有都无所谓的,玩腻了就不玩了。至少对
现在的我来说“兴趣爱好”不是人生的重大事情。)

❺ 何も貴重品じゃないから、無くしたら無くしたでいい。もう探さなくても
いい。(也不是什么贵重物品,丢就丢了,不用再找了。)

匕令 それまで(のこと)だ (如果…话)那就算完了

よく「〜すれば」「〜したら」といっしょに使う。「それで終わり」「もうそれ

334日语综合教程第六册

以上はない」という意味を表す。

❶ どんなに立派な家でも、火事で燃えてしまえばそれまでだ。(再好的房子被火
ー烧也就完了 〇)

❷ この世界のどこかに、どんなにいい友達になれる人がいても、一生めぐり合
わないでしまえばそれまでであるC (即使这个世界的某ー个角落有着一位可以
成为你的好朋友的人存在,可是如果你们一生不能相遇的话,也就无法成为朋
友。)

❸ あなたがとうしても私の気持ちをわかってくれないのなら、それまでだが、
でも、やっぱりわかってほしい。(如果你无论如何都不能理解我的心情的话,
那只能算了。不过,我还是希望你能够理解。)

❹ 要するに、あちらのやり方は、相手が弱ければそれまで、相手にスキがなけ
れば、それならそれで、ということであるらしい。決して故意に相手の弱点
につけこもうとか、自分の主張を無理におしつけようというのではない。(归
根结底对方的做法似乎是,对手弱则已,对手无懈可击,则另作对待。决不会
刻意地利用你的弱点,把自己的主张强加于人。)

❺ アメリカ西海岸の高級住宅では、日本式風呂が流行中という。これを、アメ
リカ人の気まぐれな異国趣味といえばそれまでだが、「レジャー」としての
入浴を、西洋人が考え直し始めたのだとも思われる。(听说在美国西海岸的ー
些高级住宅区正在流行日本式的澡盆。把这说成是美国人ー时心血来潮时的异
国情趣也行。可我看到了西方人正在重新认识洗澡作为ー种新的休闲方式的可
能性。)

》形容詞連用形する

形容詞連用形についてサ変複合動詞をつくる。

❶ いま行きますから、そこにおとなしくしているのよ。(我这就过去,你老老
实实地在那儿呆着,别动!)

❷ わたしがこの学校に入ってからずいぶん良くしてくださったが、それはまっ
たく私が先生の弟子だったからにほかならない。(自从进入这个学校以来先生
一直对我非常关照。这无非是因为我是他的弟子的缘故。)

❸ 長年親しくしている友達は急にアメリカに行くことになった。行ったらいっ
会えるかと思うと、名残惜しくてならない。は艮久以来一直相处得彳艮好的朋友
突然决定要去美国。想到这一去也不知什么时候能再见面,心里充满了恋恋不
舍。)

〇日ごろいろいろ手伝ってもらって、ほんとうに感謝している。仕事のあとで
やさしくしたりしたのは、そのためだよ。(平时你经常帮我,我很感激。エ

第11課らくだのシアンツ335


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