ら国有林に分け入った。しかし、そこに見たのは、すっかり様相を変えた
甘池の姿だった。無数にあったはずの地獄への抜け穴も、背丈を越す葦の
茂みも今はなく、ただの山地と化した甘池だった。あのタカオトンボはど
こへ行ってしまったのだろう。
ボクは営々たる歳月の重みと、ホ口苦い少年の日を思い出しながら山を
下りた。
(『高校新選国語I改訂』尚学図書より)
I注釈
矢口高雄(やぐちたかお)(1939 -)
漫画家。本名高橋高雄。秋田県に生まれた。主な作品に漫画『釣りキチ三平』『オーイノ /やまびこ』、
随筆『ボクの学校は山と川』などがある。
186 日语综合教程第六册
7第 課
本文 文章について
•芳賀魇
文章を書くことは苦しい。しかしまた楽しい。書きたいテーマは脳中に
あって早く文字化されることを待っている。頭の働きの調子のよいときには、
目白押しで待っているといってもそれほど言い過ぎではない状態になる 。
しかし、ひるがえって思うに、文章を書くことは恐ろしい。書くなどという
ことは、恐るべく、慎むべきことである。
人は、自分の持っているものを文章化する。それによって他人を益するこ
ともあれば、世に刺激を与え、問題を投ずることもできょう。けれども、人
が「持っている」ものはたかが知れている。「持っていない」もののほうがは
るかに多いのだ。
知識、思想、表現力、人格的感化カーーどれをとってみても、各人の持って
いるものは知れている。他人を益するだの、問題を投ずるだのと、楽天的に構
えてばかりはいられない。書くことは、おのれの足らざるところを人に示す行
為である。隠すより現る。内にあふれるものが行間に読み取れることもある代
わりに、内に何が欠けているかが見えすいて、読者の気持ちを寒々とさせるこ
ともある。人は、あまりにしばしば、書いて自己の貧困を世にさらす。
足らざるを露呈するだけではない。思いの内容を過不足なく言葉に表すこ
と、これがまた容易ではない。事実関係の再構成に手間どる、どこかにすき
間が残る。それを文字化する、またすき間がある。言葉足らざるもどかしさ
は、いつまでも尾を引いて心が平らかでない。
けれども、また思うに、これは、表現すること、さらに人が生きることの
背負っている宿命というものかもしれない。---- 人間は、自分の考えを他者
に伝えたくて、言語という記号(シンボル)を創りだした。言語は記号であっ
て、考えそのものではない。選び出された言葉の列が 、考えを映しているに
すぎない。ちょうど、実際の風景と、カメラで写した風景とに違いがあるよ
うに、実際の考えと、言語によるその表現との間には、常に微妙なずれがあ
第7課文章について187
る。
賢者は黙して語らない。書くことも話すこともせず、ひたすら沈黙を守っ
て世間の尊敬を受けている。壁に向かって九年間も沈黙を続けた達磨大師の
面壁九年は、さしずめ、その好例といっていい。黙っていれば、恥をかかず
にすむ。
そうは思っても、そういう考えをここにこうして書いて、新しい恥の種を
まくのが、人間の、特に凡夫の業というものなのだ。人間の業は、言葉をもつ
て自分を表現しないではいられないというところにある。それが社会的生物
としての人間の本能なのだ。
とするならば、ためらいや恐れはほどほどに抑えざるを得ない。そして、甘
えは捨てなければならない。自分を表現し、相手に理解してもらうために、努
カし続けようではないか。たしかに、言葉には記号というものの持つ不自由
さがある。けれども、自分の気持ちを正しく相手に伝えるためには、言葉と
いう手段しかないという事実を、もう一度認識し直さなければならない。
これが文章を書くという行為の出発点だと私は考えている。その上に立つ
て文章を実際に書いていくとき、私が心掛けていることが二つある。
まず第一に、自分の持っている考えを、少しでも的確に表現しようという
ことだ。そのためには、まず自分自身の考えをつきつめていくことが大切だ 。
自分でさえ「うまく言えないんだけれど」ということを、他人がどうして理
解してくれるものか。
自分の考えたことを言葉という記号に移しかえたとき、まとまっていな
かった思考がはじめてはっきりとした形をとる。言語は記号だから、思考そ
のものとの間にはずれがあるかもしれない。だからこそより的確に言葉を選
ばなくてはならない。少しでも自分の心にぴったりくる言葉を選ぼうとする
のは、ものを書く者の責任だ。そのための格闘こそ、表現作業の中心である。
心と言葉との距離を、こうして無限に小さくしていくよう心掛けたい 。
第二に、他者に伝えるために表現しているという意識を忘れないことだ。
とかく、自己を表現することに熱中してしまうと、相手の存在を見忘れがち
になる。けれども、表現というものは、それが相手に伝わってはじめて完結
するものだ。「どんな人たちに」「何を」伝えたいのかということを意識する
ことは、ものを書く場合、不可欠の条件だ。
これは、日常生活の中で「相手を意識した」話し方をしていないと、うま
くできるものではない。ところが、若い人たちは書くことと同様、こういう
話し方が苦手なようだ。
それが難解で独りよがりな表現とつながり、飛躍ばかりでとりとめもない
表現とつながる。これでは、当人は自分を表現しているつもりでも、独り言
188 日语综合教程第六册
を言っているのと変わりはない。
「言語不信」などと言う人に限って、ありきたりの没個性的な表現に寄りか
かって、こと足れりとする傾向がある。それでいて、他人に理解されないと
こぼしているのは、甘えというものだ。「弘法筆を選ばず。」というが、実際
には、弘法大師は書体によって筆を選んだという。表現も同じことで、相手
によって選ぶ言葉も違ってくる。そのためには、ふだんからさまざまな文章
を読み味わって、言葉に関する感覚を養っておかなくてはならない 。
さて、これまで述べてきた心掛けに基づいて、いよいよペンをとるとなる
と、具体的には、どんな点に注意して文章を書いていったらいいだろう。
「文章はレイアウトである。」——これが、私の文章観だ。
文章をレイアウトする目的は、テーマ(主題)をはっきりと浮かび上がら
せることにある。そして、言いたいことどもの比重や相互の関係を視覚化す
ることにある。この文章によって、何を人に伝えたいのか、どんなことを訴
えたいのかということから、目をそらせてはいけない。テーマが分裂してい
たり、テーマ以外の要素が入ってきたりすると、レイアウトをすっきりと仕
あげることができない。
レイアウトには、スペースの感覚が大切だ。文章のレイアウトの場合、こ
のスペースは原稿用紙の枚数にあたる。それが五枚であるか、十枚であるか、
スペースの大きさによって、レイアウトの方向も定まる。たとえ、枚数が自
由である場合でも、自分で内容に応じたスペースを設定しておく必要がある。
無限大の紙にレイアウトはできないのだから 。
スペース(枚数)がはっきりしたら、それを視覚的にとらえることを勧め
たい。一枚の紙の大きさを、これからレイアウトすべきスペースと考える 。そ
して、その紙を縦の線で区切っていこう。こうして、スペースのわりふりを
考えていくのだ。
読み手の注意を促し、興味を呼びさます提示の部分、それを受けて、テー
マを浮き彫りにしていく展開の部分、そしてそれらのすべてが一点に凝縮す
る結論の部分。そういう話の組み立てを、こうやると、自分の目で確かめる
ことができる。いま思い返してみると、中学生のころから、一枚のざら紙に
答案を書くとき、無意識のうちにこういうレイアウトを実行していたようだ 。
いま、論文を書くときでも 、新聞のコラムを書くときでも 、同じコツを実践
しているらしいと、自分では感じる。答案を書くコツ、コラムのコツ、さら
には新聞の紙面を構成して見出しをつけるコツ、すべては共通したものと信
じる。教師の立場で学生の答案を読むとレイアウトの巧拙が歴然とする。
提示や結論の部分が長すぎて、くどい印象を与えたりすることはないだろ
うか。展開の部分の材料の配列はうまくおさまっているだろうか。材料が多
第7課文章について189
すぎてごたごたしたり、一方に偏って散漫になったりしてはいないだろうか 。
—— こうしたことを点検して、レイアウトが決まったら、それに従って文章
を書いていけばいい〇
こうした作業は、戯曲やシナリオを書くときに用いられていて 、専門用語
では、「箱書き」と言っている。「箱書き」は戯曲やシナリオを構成するレイ
アウトなのだ。
言ってみれば、文章とはドラマのようなものである。その主人公は、もち
ろん文章を書く自分自身だ。だが、ほかにもう一人相手役がいる 。それは、そ
の文章の読み手だ。読み手というバイプレイヤーには、セリフはない。けれ
ども彼は確実にそこに存在し、行間に主人公の書き手と無言の対話をしてい
なくてはならない。大学を受験したときの自分をいまになって思い出すと、
たしかに、出題者(顔も名も知らない)と対話する気持ちで筆を進めていた
と思う。
ドラマの主人公は、相手役に向かって、熱心にその考え方を説いていく。相
手役の反応を見ながら、その心をつかもうと働きかけていく。そして、つい
に相手の心を動かすというクライマックス。そして、幕切れの印象的なセリ
フ。
こういうドラマの構成は、そのまま文章にもあてはまる。「聞き手」という
相手役を設定し、彼らの考え方を具体的にイメージとしてとらえることがで
きれば、文章は生き生きと精彩を放つはずだ。
そんなとき、セリフにはリズムが生まれる。文章にもまた、リズムがなく
てはならない。センテンスの長短は、そのまま書き手自身の息づかいを感じ
させなくてはならない。——いやにだらだらと、どこまでも続くセンテンス
は鈍重で切れ味が悪い。といって、やたらにぶつぶっと、センテンスをこま
切れにすればよいというのでもない 。センテンスは短いほどよい 、という法
則(?)が影響力を持った時期もあったが、その主張は極端すぎて妙味がな
い。やはり、ものにはほどがある。
短いセンテンスを積み重ねて、たたみかけていく呼吸。そして、長いセン
テンスで、じっくりと説いていく呼吸。そんな長短の配合よろしきを得て、は
じめて文章のリズムが生まれてくるものだ。
それを会得するために、自分の文章を朗読してみることをお勧めしたい 。
声に出して読んでみると、リズムのあるなしが実に明快にわかってくる。そ
して、快いリズムのある文章には、退屈させずに引つ張っていく力があり、読
み手の心に食い込む説得力があるものだということが悟れるだろう 。
(『高校国語ー改訂版』大修館書店より)
190日语综合教程第六册
k注釈
❶ 芳賀綏(はが やすし)(1928 -)
国語学者。日本福岡県北九州市に生まれた。東京大学文学部を卒業。東洋大学•藤女子大学・法
政大学助教授・東京工業大学教授を歴任。言語社会心理学が専攻で、表現•文法•方言などを研
究分野としているが、政治評論の分野での活躍にもめざましいものがある。また、NHKラジオ・
テレビなどにも出演し、新聞のコラムなども担当する幅広い活躍ぶりを見せている。代表作には、
『日本文法教室』『日本人の表現心理』『言語・社会•日本』など多数ある。本文は、雑誌『言語』
(1978年5月号)に発表された「文章について」によった。
❷達磨大師の面壁九年
達磨大師がわが国の少林寺で壁に面して黙ったまま9年間座り続けたという故事。達磨大師はわ
が国の禅宗の始祖。菩提達磨。5世紀ごろの南インドの王子で、6世紀のはじめわが国に渡り、少
林寺で面壁座禅して悟りを得たという。没後のインド帰国など、多くの伝説がある。
❸弘法大師
平安初期の僧、空海のこと。書道の名大。来唐して恵果に学んだ。日本真言宗の開祖。「弘法筆を
選ばず」は、本当の名大は道具を問題にしないというたとえ。
!新しい言葉
目白押し(めじろおし) [名] 大勢の人やたくさんの物が、一か所に集まって
翻って(ひるがえって)
混み合っていること。/拥挤,ー个挨着ー个。
益する(えきする)
投ずる(とうずる) [副]' 今まで述べてきたことと反対または他の立場に
構える(かまえる)
立って物事を言う意味。逆に。反対に。一方で。
己(おのれ)
行間(ぎょうかん) 考え直してみると。/反过来,回过头来。
見え透く(みえすく)
[他サ] 利益を与える。ためになる。/有益,有用。
露呈(ろてい)
[他サ] 文語。投げること。放り出す。/投入,投身。
[他一] ①整った形に作る。/修建,修筑。②ある姿勢・
態度をとって相手に対する。/采取某种姿势或
态度。
[名・代] 文語表現。自分自身。私/自己,我。
[名] 書かれた文章の行と行の間。/行间,字行。
[自五] ①底まで透き通ってよく見える。/看透,看穿。
② 明らかに推察できる。明らかにわかる。特に、
他人の意図•本心がよくわかる 。/显而易见,露
,骨。
[名•自他サ] 隠れていた(隠していた)ものが外に出てしま
う。むき出しになる(する)。あらわになる(す
る)。/暴露。
第7課文章について 191
過不足ない(かふそくない) [形] 度を越したり不足したりせず、ちょうど良い程
度。/恰如其分。
もどかしい [形] 物事が思うようにならず、いらいらすること。
はがゆい。じれったい。/不耐烦,急不可待。
尾を引く(おをひく) [慣] ①尾のように後ろに長く伸ばす。/拖个尾巴,留
下痕迹。②事が済んだ後までも影響が消えずに
残る。なごりが残る。/留下影响。
ずれ [名] ①ずれること。/偏移。②正しい位置・状態か
ら、少し外れていること。食い違い。/偏差,偏
离,差距,(意见等的)分歧。
賢者(けんじや) [名] 道理に通じ、俗世間に惑わされない賢い人。ま
た、聖人につく、、優れた人。賢人。/贤人,贤哲。
面壁(めんぺき) [名•自サ] 壁に向かって座禅すること。また、座禅。/面
壁,坐禅。
差し詰め(さしずめ) [副] 差し当たって詰まるところは。結局当面の問題
は。/归根结底,总之。②将来のことはわから
ないが、今のところは。当面。/当前。
恥をかく(はじをかく) [慣] 人前で恥かしい目にあう。面目を失う。/蒙耻。
凡夫(ぼんぷ) [名] 平凡な人。普通の男。仏教語でありふれた普通
の人、仏教を理解しない俗人をいう。/凡夫俗
子。
業(ごう) [名] 仏教語で、身(身体)•ロ(言語)•意(心)による善
悪すべての行為をいう。普通の人間が、常に好
むと好まざるとにかかわらず行うこと、という
意味で使われる。/善恶行为。
ほどほどに(程程に) [副] ちょうど良い程度に。適当に。/适当地,恰如
其分地。
来る(くる) [自力] 自分のほうに現れでる。自分の心の上に生じ
る。/(意识的)产生,出现。
見忘れる(みわすれる) [他ー] 前に見たことがあるのに忘れて思い出せな
い。/想不起来,认不得。
完結(かんけつ) [名・自サ] 続いていた小説・劇•物事などがしめく くりを
つけてすっかり終わること。/完成,完结,结束。
ひとりよがり(独り善がり) [名・形動] 自分だけでよいと思い込み、他人の意見を受け
付けようとしない。/自以为是,沾沾自喜,自
命不凡。
取り留めがない(とりとめ [慣] まとまりのない。しまりのない。要領を得ない。
がない) /漫无边际,望风捕影,不得要领。
192日语综合教程第六册
ありきたり(在り来り) [名・形動] 珍しくない。どこにでもあるような。平凡な。月
並みな。/不稀奇的,常有的,老ー套的。
没個性(ぼっこせい)
[名] 個性的でない。その人らしさがない。/没有个
寄り掛かる(よりかかる)
性。
こと足れりとする(こと
たれりとする) [自五] ①体をほかのものにもたせかける。/倚靠。②他
書体(しょたい) の人の力をあてにする。/靠,依靠。
レイアウト(layout)
[連語] これで間に合うと思う。充分だと感じる。/足
比重(ひじゅう)
目を逸らせる(めをそら 够,够用了。
せる) [名] その人特有の文字の書きぶり。書風。/字体。
分裂(ぶんれつ)
[名・他サ] 新聞・雑誌・ポスターなどで、写真・カット・
仕上げる(しあげる)
文字などを効果的に配置すること。/版面设计,
スペース(space)
排版,布局。
無限大(むげんだい)
[名] 重点の置き方の割合。ウェート。/比重。
区切る(くぎる)
割り振り(わりふり) [連] 目を他のほうへ向ける。/把眼睛转向其他地方。
浮き彫りにする(うきぼ
无视,不看。
りにする)
凝縮(ぎようしゅく) [名・自サ] まとまりのあるものがばらばらになってまとま
りを失うこと。/分裂。
ざら紙(ざらがみ)
[他ー] 仕事をすっかり済ませる。完成させる。成し遂
コフム(column)
げる。/完成。
巧拙(こうせつ)
歴然とする(れきぜんと [名] ①空いている場所。空間。/空间。②紙面の余
する) 白。/空白。
くどい(諄い)
[名] 限りなく大きいこと。大きさに制限のないこ
と。/无穷大,无限大。
[他五] ある物をいくつかに分ける。/隔开,划分。
[名] 割り当て。配分。/分配,分派。
[連] ある物・物事を他よりも目立つように表すこ
と。/突出描绘,刻画。
[名・自他サ]凝り固まって縮むこと。また、ばらばらなもの
が集まって、密度を増すこと。/凝结。
[名] 表面がざらざらした、粗末な西洋紙。わら半
紙。/粗糙的纸。
[名] 新聞や雑誌の短い囲み記事。評論記事。/专栏,
短评栏。
[名] 上手なことと、下手なこと。/巧拙。
[連語] はっきりする。明確になる。「歴然たる」の形で
も使う。/明显的,分明,昭然若揭。
[形] ①何度も同じことを繰り返し言って煩わしく
感じられる様子。しっこい。/冗长乏味,啰嗦。
第7課 文章について 193
②物の味や色などが濃厚でくせがある。/味道
过于浓厚。
配列(はいれつ) [名・他サ]順序立てて並べること。またその並べ方、並ん
だもの。/排列。
ごたごた [副・名]①多くの物が秩序なく入り混じっている様
子。/混乱。②面倒なもめごとが起こっている
こと。/争吵。③こまごました雑多なもの。/大
杂炫。
散漫(さんまん) [名•形動]気が散ってしまりのない様子。集中力に欠け、
仕事にまとまりのない様子。/散漫,不集中,涣
散。
点検(てんけん) [名•他サ]誤りや不備な点、故障などがないかどうか、ー
つ一つ調べること。/检查。
戯曲(ぎきょく) [名] 舞台で上演するような形式で書いた文学作品。
ドラマ。/戏剧;剧本。
箱書き(はこがき) [名・自サ]シナリオ執筆の際、あらかじめ各シーンごとに
箱状の枠の中に要点を書きとめておくこと。Z
场景的要点记录。
バイ プレイヤー(byplayer) [名] 演劇・映画などのわき役。/配角。
舞台で、俳優が劇中人物になって言うことば。
セリフ(台詞) [名]
転じて人に対する言い分を表す。Z台词。
クライマックス(climax) [名] 物事や感情が最も盛り上がり、緊張した状態。
頂点。/最高峰,顶点,高潮。
幕切れ(まくぎれ) [名] 芝居の一幕の終わり。転じて物事の終わりを表
す。/落下帷幕,闭幕,收场。
あてはまる(当て嵌まる) [自五] ちょうどうまく合う。適合する。/适合,恰当。
精彩を放つ(せいさいをは [連語] 「精彩」は美しい色どり、つやのことを言う。•「精
なつ) 彩を放つ」は、すばらしさがひときわ目立つこ
とをいう。/大放异彩。
センテンス(sentence) [名] 文。普通は句点で終わる一文。/句,句子。
息づかい(いきづかい) [名] 息をする様子。呼吸の仕方。調子。/呼吸(的
节奏)。
鈍重(どんじゅう) [名•形動]反応が遅くて鈍いこと。ここでは文章が無駄に
長く続き、リズムを失うことを言っている。/笨
重,迟钝。
切れ味(きれあじ) [名] 刃物の切れ具合。/(刀)快钝。
ぶっぶっと [副] 縄のようなものを次々と切断する様子。/一段
ー段地切开。
194 日语综合教程第六册
細切れ(こまぎれ) [名] 細かく切った切れはし。/碎块。
妙味(みょうみ) [名] 深い味わい。優れた趣。/妙趣,妙处。
積み重ねる(つみかさねる) [他ー] 幾重にも重ねて積む。比喩的にある物事を段段
と重ね増やしていく。/堆起来,摞起来,积累
起来。
畳み掛ける(たたみかける) [自他ー] 間をおかずに続ける。余裕を与えずに続けて行
う。/接二连三地,ー个劲地说。
じっくり [副] 物事を落ち着いてゆっくりとする様子。/慢慢
地,不慌不忙地。
会得(えとく) [名・他サ] 十分に理解し、自分のものにする。/领会,理
会,掌握。
言葉の学習
上»目白押し 挤在ー块儿,拥挤不堪.....................................................j
鳥の目白が枝に止まるとき、一か所に何羽も集まって止まる習性があるとこ
ろから、大勢の人やたくさんの物が一か所に集まって混み合っている様子をい
うが、本文中では、書きたいテーマが頭の中にあふれるほどにあるという意味
で用いられている。
❶ 日本にはもう何回も行ったが、行くたびに、スケジュールが目白押しなので
ゆっくりと見物できなかった。(日本已经去过好几次了。每次去日程都排得满
满的,无法好好地到处看看。)
❷ 週に1回の朝市はとてもおもしろい。狭い道端に野菜だの果物だのを売る露
店が目白押しに並んでいるC (一周1次的早市很有趣。狭窄的马路边摆满了蔬
菜摊啦,水果摊啦等等。)
❸ 書きたいものが目白押しで待っているようだったが、書くとなると、なかな
か筆が進まなかった。(想写的东西多得像要涌出来一般。然而当我提笔写的时
候却怎么也写不下去。)
❹ エジプト文化財の展示会だから、お昼を早くして出かけた。博物館の入り口
にレ、る目白押しの見物人に尻込みし、結局見ないで帰った。(我早早地吃了午
饭去看埃及文物展。看着博物馆前吵吵嚷嚷拥挤不堪的人群,我打退堂鼓了,
结果没看就回家了。)
❺ 雑誌では恋愛特集が、テレビでは純愛ドラマが目白押しといった状態だっ
た。「愛」というもののほとんど登場してこない小説ばかり書いていた私さ
えも、恋愛小説を書き始めた。(现在杂志出恋爱特集,电视上演的尽是爱情故
事。就连从不写“爱情”小说的我现在也写起恋爱小说来了。)
第7課文章について 195
匕ヨべく 为了…;必然…;(不)可能 [
文語の推量を表す助動詞「べし」の連用形で、動詞の終止形に付く。「べし」
は古典において意志、当然、可能などを表し、その未然形は「べから」、連体形
は「べき」、終止形は「べし」である。
「べくもない」という形で「〜することはとてもできない」「〜はずもない」な
どの意を表す。当然そうなることが予想されるという意味を表すときには、「動
詞べくして同一動詞の過去形」の形で使われることが多い。
❶ これは、みなさまのお肌に合わせるq、長年の研究によって完成した、高
級化粧品でございます。(这是ー种高级化妆品,是为了适合各位的肌肤经过长
期研究研制出来的。)
❷ 長年日本語教育に努力をしてくださったことに対し、外国語学部として感謝
の意を表すrU、謝恩送別会を催したいと思います。(系里打算召开ー个欢送
会,对您多年来努力从事日语教学表示感谢。)
❸ あの人は科学者になるべくしてなったような人だ。頭もよいし、勤勉で、少
しもたゆまない根気の持ち主だ。(他似乎生来就是当科学家的。脑子好,勤
奋,毫不懈怠,彳艮有毅カ。)
❹ 少ない出張費では、飛行機で行くような贅沢を望むべくもなかった。(出差费
用很少,别指望可以奢侈地坐飞机去。)
❺ ここもこういう状態だから、他は推して知るべし。(这儿都如此,其他就不难
想像了。)
㊂ 高が知れている 有限的,没啥了不起的 I
「たか」は「高」で、程度や値打ちのことを言う。「たかが知れている」は、ど
のくらいの程度か、大体わかる。たいしたことはないという意味になる。
❶ ひとりの人間が持ち合わせている世界などは、高が知れたものだけれど、書
物の中には、際限もなく広がる豊かな世界がある。(1个人所拥有的世界是有
限的。但是书本可以向我们提供无限广阔的丰富的世界。)
❷ 私の逞しくした空想はこんなものであったが、しかし、詩人の奔放な空想
だって高が知れている。(我的丰富的想像虽然就是这类东西。然而,即便是诗
人的奔放的遐想也不过如此。)
❸ あの人とは小さい頃からの友達だから、大きな口をたたいても高が知れてい
至。(我和他是青梅竹马的朋友很了解他,ロ气再大,也没什么了不起的。)
❹ 精巧にできているとはいえ、イミテーションにすぎないのだから、たとえ値
段が高いといっても高が知れている。(虽然做得很精巧,但毕竟是仿制品,价
196日语综合教程第六册
钱再贵也贵不到哪儿去。)
❺代理店になる電気屋の数に比べれば、大手量販店の数なんて高が知れてい
皇。商品の更新頻度は月ごとになるか、週ごとになるかはわからないが、当
番制にして定期的に量販店の販売価格を調べるのはそう難しいことではな
い。(和电器代理店相比,大卖场的数量是有限的。我不清楚它们是每个月还是
每周更新商品,但是轮流定期地进行其商品价格的调查并不是件难事儿。)
迪尾を引く 拖个尾巴;影响尚存
尾のように後ろに長く伸ばす。比喩的に、何かが済んだ後までもその影響が
残るという意味を表す。
❶ この鐘は出来たてのころは、余韻が3分35秒だったが、一年の間朝夕つき
鳴らしているうちに4分5秒も響きが尾を引くようになったというのであ
る。(听说这个钟刚造好时,打钟的余音有3分35秒。一年里每夭早晚两次打
钟后其余音也变长了,有4分5秒呢。)
❷ 夕陽で焼けた野原に、人の影が長く尾を引いている。寂しくもあり孤独でも
ある。(被タ阳染红的原野上长长地拖着个人影,看上去是那么地寂寞和孤独。)
〇 しかしこの夜、妻の口を通じて聞かされた母のふたつの言葉は、あとあとま
で強く尾を引いて私の心に残った。(但是这天晚上从妻子嘴里听到的母亲这两
句话深深地留在了我的心里,久久地影响着我。)
❹ あの事件がまだ尾を引いていて、その影響が完全に消えるまでにはまだ時間
がかかるものとみてよい。(那件事的影响尚在,可以认为其影响要完全消失还
需要一段时间。)
❺ ことが終わった後も、そのことから受けたショックはいまでも尾を引いてい
る〇そのため、私はしばらくの間何をするのにも元気を奮い起こすことがで
きなかった。(事情是过去了。可是这件事给我的打击至今还存在。为此我很长
一段时间做什么都打不起精神来。)
%金^〜というものだ/〜というものではない这就是…;并非…,
'I............................ 并不是…’
「というものだ」は、Aについて客観的判断を下せばBである、という意味を
表したり、Aという物の名称や内容についてBで述べ、説明する意味を表す。後
者の意味を表すとき、「〜というものは〜ものだ」に換えられる。ただし、「と
いう」がっくことによって、文に客観性が生まれるので、特に取り立てて説明
する必要がないものにはこない。
「という.ものではない」は、AならBだと思われるかもしれないが、一概にそ
うとは言えない、という意味を表す。
第7課文章について197
❶ やりたくないからやらないなんて、君、それはわがままというものだ。(不想
做就不做,你这是任性。)
❷ 引越しが終わってから手伝いに来ても、後の祭りというものだ。(搬完家了,
你オ来帮忙,真是马后炮。)
❸ 音楽が好きなのはいいが、朝6時からステレオをかけるのは迷惑というもの
だ。(喜欢音乐是可以的,可是早上6点就开音响,这叫做不识相。)
❹ 全自動洗濯機は、ボタンを押すだけで洗濯から脱水までしてしまうというも
のだ。(全自动洗衣机就是只要按一下按钮,从洗涤到脱水全过程都会自动完成
的机器。)
❺ ただ、敬語、敬称、丁寧語などというものは、原理原則さえ知っていれば、
それでうまく話せるというものではない。(但是,敬语、敬称、礼貌语等不是
明白了其使用原则就能用好的。)
❻ 子供の立場を考えずに、一方的に子供をしかりつける親もいる。だが、親は
子供をただしかればよいというものではない。親子の関係は信頼関係に支え
られているのだ。(有的家长只知道骂孩子,根本不尊重孩子的想法 。其实对孩
子不能只是训斥,大人和孩子的关系是建立在互相信赖的基础上的。)
匕令とかく〜(傾向を表す表現)だ往往 I
書き言葉的。文末に「〜がちだ」「〜やすい」「ものだ」などの傾向を表す表
現を伴い、「どちらかというと〜ような傾向がある」という意味を表す。あまり
良くない事柄に使うのが普通。そして「とかく」のかわりに、「ともすれば」「や
やもすると」なども用いられる。
❶ 頭がいいと、とかく油断して努力を怠りやすいと思っていたが、今から思え
ばその考えは偏っている。(我以前认为聪明的人往往容易懈怠不努力。现在想
想这个想法有点偏颇。)
❷ まあ私などは職業柄とかくことを悪いほうに考えてしまいがちなのですが、
あなたとしてもあまり気にしないでください。(我这个人因为职业关系往往会
把事情往坏处想,你呢也不要太在意。)
❸ 何もあなたの考えだけではない。若い者はとかくそういうふうに考えるもの
だ〇 (也并不是你1个人的想法"’年轻人往往都是这么想的。)
❹ 私はとかくやきもちをやきがちだが、夫のほうはそれほどもてているわけで
はない。(我这个人爱吃醋,其实我的丈夫也不见得有多么吃香。)
❸ 他人の目で自分を見るって難しいことだ。、人間はとか宣自分の欠点などには
気がつかないものだ。(人很难做到以他人的眼光来审视自己。人往往都看不
到自己的缺点。)
198日语综合教程第六册
そ0とりとめもない漫无边际,不得要领 i
「まとまりのない•しまりのない・要領をえない」の意を表す。
❶ 恵子はとりとめもなく思い続けながら、どこへいくというあてもなく、むや
みに町を歩き回っていた。(惠子没边没际地乱想着,毫无目的地在街上游逛。)
❷ ものごとの未来に対してとりとめもなく考えたcそれは自分に都合のよいも
のばかりだった。(我无边无际地想着事情的未来,全都是对自己有利的事情。)
❸ 私はとりとめのない恐れを感じたCこの患者の病気はほんとうに動物から伝
染したのだろうか。(我感到了一种莫名的恐惧。这位患者的病真的是从动物那
里传染上的吗?)
❹ スープから始まったから、料理が終わるまで、かなりな時間をとった。3人
はとりとめのないことをしやべりあった。(因为是从上汤开始的,所以到菜全
部上完,用了很长时间。3个人漫无边际地聊着。)
❺ 上野から帰った晚は、私にとって比較的に静かな夜だった。私たちふたりは
机のそばに座り込み、とりとめもない世間話を始めた。 (从上野回来的那个晚
上,对我来说这是ー个比较平静的夜晚。我们俩在桌边坐了下来,开始漫无边
际地闲聊了起来。)
リーーー~…ーー…~~~一"'~一つ~~-~~一"~〕
/.過去を表す助動詞「た」、名詞+の、形容詞•形容動詞の連体形の後につき、仮
に仮定してという意味を表す。実際はそうでないのに、そうなった気持ちであ
る。「したとみなして」「したと考えて」「したと仮定して」などに言い換えられ
る。(看成是…)
❶ 私も子供がいないので、この子を自分の子のつもりで育てようと思ってい
る。(我也没有孩子,想把这孩子当作自己生的来抚养 。)
❷ この物置小屋にりっぱなマンションのつもりで住み着いたc 0巴这i攵东西的小
屋当做是高级公寓住了下来。)
❸ 彼は宝くじにあたらなかった2!立でその大金を癌研究センターに寄付し
た。この「地獄の沙汰も金次第」という社会においてはめったに見られない
ことだ。(就当作自己没有中奖,他把中奖的巨款捐赠给了癌症研究中心,这在
有钱能使鬼推磨的社会实属少见 。)
❹ 人間には欲がある。そして死に至らなければその欲を捨てられない。その意
味では、死んだ主也になれば何でもできるだろう。(人是有欲望的,而且只
要不死欲望终将存在。从这个意义上讲,如果有了死的思想准备,那还有什么
做不到的呢。)
第7課文章について199
2,主語が二人称や三人称の場合、その人は信じているけれども、話し手やほかの
人との考えとは食い違っているという意味を表す。主語が一人称の場合は、話
し手はそのように思っている、そう信じているという意味を表し、ほかの人の
• 考えと食い違っているかどうかとは関係がない。(自以为…)
❶ 私はよく彼の心を見抜いていたつもりだったが、騙されてしまったとは。俄
自以为看透了他的心思,没想到竟会上当受骗。)
❷ おもしろいつもりで冗談を言ったのに、誰も笑ってくれなかった。(我自以为
彳艮好玩就说了个笑话,可谁都没有笑。)
❸ ふたりで一緒にいるときは、彼の心をしっかりととらえたつもりなのに、ひ
とりになると、たちまち自信がなくなっていく。(俩人呆在ー起时我相信自己
已经牢牢地抓住了他的心。可是单独1人时这种自信就不复存在了 。)
❹ わたしは頑張っている。でも、どこまでやっても、頑張れとしか言われない。
先生は励ましたつもりだろうが、何を、どの程度、どうすればいいのか、はつ
きりしない。(我在努力。但是无论怎么努力对我说的永远只有“要继续努力
啊”这样一句话。也许老师自以为是在鼓励我,可是究竟努力什么,努力到什
么程度,怎么努力,都不清楚。)
Wが それでいて 尽管如此,虽然那样
接続詞。前に述べた事柄を受けて、それにふさわしくないことを次に述べる
ときに使う。例①「わかっていながら、〜」、例②「〜と思っていたが、〜」の
ように、二重逆接で用いられる場合と、例③のように文と文、例④⑤のように
語と語の間にさしいれて用いられる場合もある。それでいながら、それなのに。
❶ 信じてはいけないとわかっていながら、それでいてなんとなく心をひきつけ
られた。(我虽然知道他的话不能信,可还是不知不觉地被吸引住了。)
❷ 今度こそタバコをやめようと思っていたが、それでいてタバコを見るとつい
手が出てしまった。(我是想这次一定要戒烟。可是ー看到烟,手就情不自禁地
伸了出去。)
❸ いつまでも黙っている、それでいて、互いの心の中は、ちょうど自分の心と
同じようによく分かっている。ひとつの目つき、ひとつの微笑がその気持ち
を語るのに十分なのだ。(即便对方永远不说出来,也能如同明白自己一样地了
解对方在想些什么。表达心情只需ー个眼神、ー个微笑就足以。)
❹ 孫たちが帰ってまた静かな暮らしが始まるのだと、半ばさびしく、それでい
て,半ばほっとしたような気持ちで思った。(“儿孙们回去了,家里又重新开
始了宁静的生活”,我心有所失,但又略觉轻松地想着。)
❺ こうしてふたりのどこか不器用な、それでいて真摯な関係が始まった。毎日
200日语综合教程第六册
のように顔をあわせ、週に一度の割合でそとで夕食を一緒に食べた。僦这样
我们开始了并不融洽却是真挚的交往。我们几乎是每天见面,每周1次在外面
共进晚餐。)
匕4…といって—不过,但是........... .................... .............................. 一_―...J
「しかしながら」という意味を表す。書き言葉的で、論理的に筋道を展開する
文によく使われる。
❶ そこには戦争がなかった。といって、平和というわけでもなかった。(那儿没
有战争,不过也并非和平。)
❷ その音楽を聞いていると、なんとなくさびしくなってくる。といって、音楽
をとめる気にもならない。(听着这首曲子不由得莫名地感到寂寞起来。不过也
不想因此而把它关了。)
❸ もう一息のところだ。といって、崖から落ちて死んだらすべてがおしまい
だ。(就差一口气了。不过,这个时候如果从悬崖上坠落下来摔死了,那一切也
就全完了 〇 )
❹ やさしい問題では、練習しても意味がない。といって、あまり難しいのも困
る。(题目太过简单,那做了也没什么意义。不过太难的话也令人头疼。)
❺これが外部に洩れては会社の信用にかかわるが、といってそのまま放ってお
いて、もし事故でも起こったら取り返しがっかないと考えている。(我想这件
事被外界知道了会影响公司的信誉。不过,就这么放任不管,万一发生什么事
的话也就无法挽回了。)
表現の学習
つ話題の取り上げ I
話題の取り上げを表す表現をもう少し細かく分けてみると 、話題の取り上げ
と、定義や意味についての解釈、また、ある場合・ある状況•ある問題になつ
たとき、という三つのカテゴリーになる。話題の取り上げには、「ときたら•っ
たら•というと•といえば•なら«とすれば」などがあり、定義や意味につい
ての解釈には、「とは・って」があげられる。「となると•となれば•となった
ら」は普通、「〜のような場合は/〜のような状況になった場合は」という意味
を表すのに使う。
第7課文章についで201
1.話題の取り上げ
❶ みんなの笑いようときたら、もうおなかの皮がよじれてしまうほどだった。
(要说大家乐的样子,简直肚子都笑疼了。)
❷ この番組を忘れずにとっておいてくれと頼むと、女房は顔をしかめて、「ま
た?そんなこと言ったって、あなたったらビデオを見たことがないじゃない
の。」と言った。(每当我对妻子说别忘了给我录节目时,她都要皱着眉头说:
“又要录了?你每次都这么说,可是录了又没见你看。”)
❸ パリというと、すぐルーブル宮殿やベルサイユ宮殿が心に浮かぶ。ああ何と
心引かれる芸術の宮殿だろう。(提起巴黎我的脑海里马上就会浮现出卢浮宫和
凡尔赛宫。啊,多么令人向往的艺术殿堂啊。)
❹ 〇省〇〇課といえば、目下、ある汚職事件の摘発が進行中で、ほとんど毎日
の新聞に、記事が載っていないことはなかった。(您说的〇部〇〇科,就是目
前正在被查的某贪污案件,报上几乎每天都有报道的嘛。)
❺ 花ならカーネーションがいいよC母の日の母にはカーネーションがぴった
り。(花,还是康乃馨好。母亲节就该送母亲康乃馨。)
❻ 妻とすれば、ふだんの日は夜遅くまで帰らないし、休日も家にいない夫には
不満も大きいだろう、と思う。(我想妻子嘛,她的怨气也大着呢。丈夫平时晩
上那么晚回家,节假日也不在家里呆着。)
まとめ
「ときたら」と「ったら」両方とも話し言葉であるが、「ったら」は主に子供
や女性が使い、話し手が非難•からかい•心配などの気持ちをこめて言ってい
る。「ときたら」の文に話題として取り上げられるものは、ふつう話し手にとつ
て身近なもので、話し手はそれについて評価を述べたいときに使う。
「というと」と「といえば」はほとんど言い換えられる。その話題になって
いるものは、あくまでも受けた話からの連想、あるいはそれについて加えたり
した説明。ある話題を受けて、という点においては、「なら」も同様であるが、
ただし、「というと」の後ろの文にはそこからの連想ごとが多いのに対し、「な
ら」で表す主題は、よく 「〜なら〜がいい」「〜なら〜を勧める」などの形で
用いられ、あることを行う場合に一番よい手段•方法を勧めるような場合に用
いる。
「とすれば」は、人を表す名詞を受けてその人の立場から見れば (考えれば)
という意味合いで、話しことばでは「にしたら•にしてみれば」をよく使う。
2定義や意味についての解釈
❶ 農業空"植物に光合成をいかに効果的に行わせ、これによって得たでん
202日语综合教程第六册
ぷんをいかにうまく蓄えさせるかという技術である。(所谓农业就是指如何
让植物进行有效的光合作用,并怎样才能将以此得到的淀粉好好地储存起来
的技术。)
❷ 部屋のリフォームって、大変なことだ。私の今住んでいる部屋も長年の間修
理がされていない。今年こそと思いながらなかなか決心がつかないでいる。
(改建房子,是件很麻烦的事。我现在住的房子年久失修,总想着今年一定要
修修了,可至今仍下不了决心 。)
まとめ
ことを話題として取り上げて、定義や意味について述べる「って」は「とは」
の用法に該当し、話しことば的である。ほかに、「って」は評価を与えたりする
用法もある。これはくだけた会話の表現としてよく用いられる。
3.ある場合、ある状況、ある問題になったとき
❶ いよいよペンをとるとなると、具体的には、どんな点に注意して文章を書い
ていったらいいだろう。(一旦提笔开始写就不知道具体应该注意哪几个方面
了。)
❷ 贈り物をするのは、その人に喜んでもらいたいと思うからなのだが、これが
なかなかうまくゆかない。よく知っている人だから間違いなくゆくとはかぎ
らない。まして関係の薄い相手となれば、考えるのは無理というものだ。(送
礼是为了让对方开心,可实际上这事情并不那么简单。送给熟人的东西也不见
得一定合对方的心意,更何况送给关系不熟的人,更是无从考虑。)
❸ 今度の改革が失敗するとなったら、改革というものはほとんど不可能なくら
い難しいという固定概念が国民に植え付けられてしまう。(要是这次改革失败
的话,那改革彳艮难,几乎是不可能实现的这个想法将植根于民众之中。)
❹ 野口さんは外交官である父親の任地の関係で、世界各地を股にかけた引越し
青少年時代だった。もう60過ぎの野口さんは、そのときの生活のこととな
itば急に顔つきも生き生きと輝いてくる。(野口因为父亲是外交官的缘故,
青少年时代是在世界各地到处搬家中度过的。如今他已年过60,说起那时的
生活顿时满脸生辉。)
まとめ
「となると•となれば・となったら」は文または名詞を受けて、「〜のような
場合は」「〜のような状況になった場合は」という意味を表す。現実的な状況を
いう場合と仮定的な状況をいう場合と、両方とも可能である。
「のことになったら」は、「そのことについては」「それが話題になったら」と
いう意味を表す表現である。
•第7課文章について203
-4. 語や語句の構成 •I
/.再〜
接頭語で、主に漢語につき、「再び」「改めて」などの意を表す。「再評価•再
構成・再構築•再学習・再体験•再発表•再発行・再スタート・再教育」など
がある。
❶ 日本人独特の価値観は再評価すべきじゃなレ、かと思う。(我想对日本人独特的
价值观念也许应该重新进行评价 。)
❷ 日本が再軍備し、それによってもう一度軍国主義になる可能性は何パーセン
卜だろう。(日本重新武装,并以此再次走上军国主义道路的可能性有多少?)
❸ コロンブス以前のメキシコがもう一つの文明として再発見され、文明の概念
を支える素材として、決定的な意味をもつようになったのは、ようやく 20
世紀に入ってからのことだ。(进入20世纪之后,哥伦布发现之前的墨西哥重
新被认定为又一个古老的文明,这ー认定对于文明概念的维持有着决定性的意
义。)
❹ 日本人は、大自然から美を取り出し、それを独自の繊細で鋭敏な美意識で、
造形的に!S構成する能力が非常に優れている。(日本人从大自然中汲取美,以
独特的细腻和敏锐的审美意识用造型手法重新构筑美的能力非常强 。)
❺ 医療保険制度の改革が行われてからそろそろio年近くになると思う。成功
したか失敗したかについては触れたくないが、再検討すべき問題点がたくさ
んあることについては異議を唱える者がいないだろう。(实行医疗保险制度的
改革即将10年了。且不谈这ー改革的成败,很多问题有待重新研讨这一点,我
想大家不会有什么异议吧。)
2好〜
「よい」「好ましい」「立派な」などの意を表す。「好」で構成されることばと
して、「好例・好調•好景気•好都合・好人物•好男子•好物・好意•好感・好
運・好機•好況•好天・好適•好転•好青年•好条件・好評」などがある。
❶ 愛知万博の開幕で名古屋市内とその周辺観光地のホテルの4月の客室稼働率
は前年同期を13ポイント上回る、約96%と好調だ。(因爱知万博的开幕,名
古屋市内和其周边旅游胜地的饭店客房入住率 4月份比去年同期增长!3个百
分点,达到96%的好成绩。)
❷ この度のヨーロッパ旅行はずっと妊云に恵まれて楽しい旅行となっている。
(这次欧洲旅游天气一直很好,玩得很开心。)
❸ 最近の統計からして、わが国の景気が好転しつつあるように思われる。(オ艮据
204日语综合教程第六册
最近的统计,我国的经济似乎正在好转。)
❹ 好人物の彼も耐えられずに怒ってしまった。(连他这个老好人都忍不住发起脾
气来了。)
❺ 秋の夕暮れは早く、日が落ちると月のない夜は闇が濃い。ひそかな訪問には
好都合である。(秋天天黑得早。日落后没有月亮的夜晚天很黑,最适合悄悄去
拜访。)
❻ このあたりは地勢が平らでテントを張るのに妊適丞場所だ。(这ー带地势平坦
彳艮合适搭帐篷。)
3.没〜
「ない」の意を表す。「没」で構成されることばとして、「没我・没交渉・没趣
味」などがある。
❶「言語不信」などと言う人に限って、ありきたりの没個性的な表現に寄りか
かって、こと足れりとする傾向がある。(那些不相信「语言」的人身上有着一
种倾向,那就是语言表达极其一般,且没有个性,并以此感到满足。)
❷ 寿命が延びた今日において、没趣味の人は定年後ますます生きにく くなってい
る。(在寿命延长的今天,没有兴趣爱好的人退休后的日子正变得越来越不好过。)
❸ あの人の京劇への入れ込みはすでに没我の境地になっている。(他对于京剧的
痴迷已经到了忘我的境地。)
❹ 世の辛酸をなめた彼は辺鄙な山奥に戻って世間と没交墜な暮らしをしてい
る。(他尝尽了人世间的辛酸之后回到了偏僻的山区,过起了与世隔绝的生活。)
練習
ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。
寒々 露呈 巧拙 文字化 賢者 区切る 目白押し 記号
精彩 過不足 達磨大師 作業
凡夫 比重 分裂 楽天的 刺激 背負う 浮き彫り 格闘
飛躍 視覚化 人格化 ハ、、匚コ
凝縮 歴然 戯曲 幕切れ
書体 行間 散漫 細切れ
二、次の文の下線部の片仮名を漢字になおしなさい。
1. ただことばのハイレツだけで、まとまった意味の文にはならない。
2. 綿密にテンケンしたことはない。
3. 信子は昨夜からの絶えない内心の三立にとらわれ、ぼんやりしている。
4. 20人のうち、仕事シコウの人は大体半分くらいを占めている。
第7課文章について205
5. ドンジュウで無感動で、人好きしない男なのだ。
6. キレアジが鈍いかみそりだ。
7. エトクせぬものに対する無分別な尊敬ともいえよう。
8. トランプのミョウミはどこにあるか。
9. ムゲンダイの宇宙を前に、われわれ人間はほんとうに取るに足りない存在だ。
io. メンペキクネンってどういう意味ですか。
三、 次の質問に口頭で答えなさい。
1. 「文章を書くことはおそろしい」のはなぜか。本文中の言葉でその理由を示し
なさい。
2. 「持っている」もの、「持っていない」ものとあるが、具体的にはどのようなも
のが。また、「持っている」ものはたかが知れているとはどういうことか。
3. 「黙っていれば、恥をかかずにすむ」のに、また「新しい恥の種をまく」のは
なぜか。
4. 「甘え」とあるが、どういう態度をそう呼ぶのか考えてみよう。
5. 「少しでも的確に」「より的確に」と、あるが、それには、どのような思いが込
められているのか。
6. 「ずれ」を第2節では具体的に何と言い換えているか。
7. 「相手を意識すること」は表現の本質とどのような関係にあるかをまとめてみ
なさい。
8. 第3節で、筆者の文章に対する認識が簡明に述べられている文をふたつ指摘せ
よ。
9. 第3節の中から、筆者の主張に密接に関係する単語を挙げてみよう。
10. この「文章について」では、実際にどのようにレイアウトがされているか調べ
てみよう。
四、 次の文の下線部の意味を説明した上で、全文を中国語に訳しなさい。
1. 書きたいテーマが目白押しで待っているといってもそれほど言いすぎではない状
態になる。
2. 人は、あまりにしばしば書いて自分の貧困を世にさらす。
3. これは、表現すること、さらに人が生きることの背負っている宿命というものか
もしれない。
4他人を益するだの、問題を投ずるだのと、楽天的に構えてばかりはいられない。
5. この文章によって、何を人に伝えたいのか、どんなことを訴えたいのかというこ
と:から、目をそらせてはいけない。
6. 書くことは己の足らざるところを人に示す行為である。隠すより現る。
7. 教師の立場で学生の答案を読むとレイアウトの巧拙が歴然とする。
3いやにだらだらと、どこまでも続くセンテンスは鈍重で切れ味が悪い。
206日语综合教程第六册
五、文頭にあげた言葉の用法として、次の文の下線部ではどのように使われているか。
意味あるいはその用法を説明しなさい。
/,ものではない
① 「美しさ」は、自然の中にもともとあるものではなく、発見されたときに初め
て、発見した人の心の中に生まれてくるものである。
② 日本の伝統的文化を西洋種の文化の影響から区別して拾い出すなどというこ
とは、いまの日本ではとうていできるものではない。
③ アマチュアといっても、彼のとった写真はそうばかにしたものではない。
④ そんなひどいいたずらは、たとえ冗談であれやるものではない。
2. つもり
① 近道のつもりで実は遠回りになってしまった。
② きみは何のつもりで私たちふたりの仲を裂いたのか。
③ だれにもまけないつもりで、いままで人より2、3倍の力で勉強に励んできた。
④ 僕は妻と結婚した当時、妻とふたりで考えて、たいていの食器類はそろえた
つもりだったが、それでも、生活を始めてみると、まだこまごまとしたもの
がいろいろと足りないのに気づいて驚いた。
3. 心
① 相手役の反応を見ながら、その心をつかもうと働きかけていく。
② 少しでも自分の心にぴったりくる言葉を選ぼうとするのはものを書く者の責
任だ。
③ 言葉足らざるもどかしさがいつまでも尾を引いて心が平らかでない。
④ 心からの暖かいことばが相手への励みにもなる。
⑤ 心を狂わせてまでやりたいことに執着するのが、まさに彼の魅力的なところ
じやないか。
⑥ 人間の心がまだ完全に消えていない者にはこんなに残虐なことはできないだ
ろう。
⑦ 親の意見なんか求めなくていい。これは君の心次第で決まる事だ。
六、次の語群から最も適切な言葉を選んで( )に入れなさい。必要な場合は適当
な活用形にすること。
アさらす イありきたり ウ もどかしい 工さしずめ
ォ歴然たる カ構える キ 浮き彫りに ク積み重ねる
ケ独りよがり コ恥をかく サ 凝縮する
/.( )会社をやめると食うに困ることになる。
第7課文章について207
2もちろん極端に下手なアマチュア写真と、最高級のプロの写真との間には、
( )違いがある。そのことを、私は否定しようとは思わない。
3. 当時の段階では、彼の祖国アメリカで進化論を説くのは、たいへんなことだっ
た。無理解な非難に( )のを覚悟しなければならなかった。
4. 小説の世界は人生そのものではない。それは、人生を誠実にとらえようとする
作者によって作り出され、実人生以上に( )、密度の高い世界である。
5. 作品中に人生の姿を凝縮し、人間の真実を( )しょうとしている。
6. 贅沢品の製作は( )の実用品市場から完全に閉め出されている。
7. このような知識をたくさん( )うちに、人間の行動の中に潜む「人間
だれでもがすること」と「その個人だけがすること」とが正確に見分けられる
ようになるのである。
8. いまさらKの前に出て、( )のは、私の自尊心にとって大いに苦痛で
した。 )
9. あなただけは私のことを信じてくれるのね。あるいはこれも私の(
なの。
io,事件の処理には、その慎重さが( )思われるくらいだった。
〃・彼はこの女をさも憎憎しげな目つきで見据え、終始堅い表情で( )〇
七、次の語群から話題の取り上げを表す適切な表現を選び 、に入れて文を完成さ
せなさい。
! ときたら とすれば となると って
| なら となれば というと というのは
1. この問題、皆もまだもう一歩つっこんだ研究はしていない。
2. 輸出の競争、優劣は初めから明らかだ。
3. 皆がこんなに気をつかっているのに、彼 ぜんぜん感じていない。
4. 日本人にとって文化 人間関係で、その文化にプロパーなものはな
い。
5. 北海道、広い草原や牛の群れを思い出す。
6. そんなことを言われて、彼女 怒るのも当然だ。
7. 海外旅行 ヨーロッパがいいよ。イタリア、パリなど見るところが
多いよ。 勇気のいることね。わたしならと
8. 本人の前で反対の意見を述べる
うていできないわ。
208日语综合教程第六册
ハ、括弧の中のことばを使って次の中国語を日本語に訳しなさい。
/•年年扩招,在校学生人数已达到近5 000人。狭窄的校舍里挤满了人,拥挤不
堪的状况非常突出。(募集規模/目白押し/窮屈さ)
2他取得这么好的成绩决不是偶然,是努力加努力的结果,是本该取得的。(ベ
くして)
3.有的人不考虑对方的想法,一味地强调自己的意见 。但是,不是光自己的意
见通过就行了。只有也尊重对方的想法,正常的人际关系オ得以维持。(通す/
というものではない/してこそ/というものだ)
4. 我原以为自己的日语不错,可是和日本人交谈之后感到非常羞愧,认识到自己
的基础还很不扎实。(つもり/恥をかく)
5. 看着大家没精打釆的样子就知道昨天的输球还在影响着大家。(ところをみるZ
尾を引く)
6. 说是交谈,其实也都是ー些漫无边际的瞎聊。但是就是在多次这样的瞎聊中我
们之间开始产生了兄弟般的感情。(とりとめもない/を重ねる/情めく)
7. 从他平时花钱的样子来看,积蓄是有的,但不会很多。(たかが知れる)
8. 的确他很老实。虽说话不多,可无论做什么都很认真,而且充满活力。(それ
でいて)
9. 当然,抽象的理论与现实社会的各种现象之间会有相当大的偏差 。这些理论原
封不动地被运用到社会中去是不妥当的。(ずれが見られる/あてはめる/とい
うものではない)
10.的确,无论你在脑子里考虑得有多么地周到,但是单靠这些是不可能解决现实
中的具体问题的。(ものではない)
〃・俗话说「人不犯我,我不犯人」。我们也希望和平解决,无意挑起争端。(侵す/
としても/好んで事を構える)
第7課文章について 209
九、言葉の決まり
/.次の文の下線部の言葉を正しい言い方に改めなさい。
① 2対1で試合に負けた。これまでの努力がとうとう水の泡になってしまって残
念でならなかった。
② 夕べ東北地方に地震が起きた。しかし本当のことはまだはっきりとわからな
いが。
③ 何の理由もなしにいろいろ問い詰められたが、これが中国ならどうしてもあ
りえないことだ。
④ どこから見ても人に抜けでたところがなく、ごく普通の叔父さんだ。
⑤ それぞれの子供の能力に適合した教育を施そうと思っているC
⑥ 今日の会議はそんなに長くないだろう。長いとしても所詮2時間程度のもの
だと思う。
2次の①〜⑩の空欄に入る語を後から選び、 記号で答えなさい。一つの語は1回
使っこと。
①開いた( )がふさがらない。 ②後ろ( )を引かれる。
③後ろ( )を扌旨される。 ④( ) によりをかける。
⑤( )に泥をぬる。 ⑥( ) が回る
⑦( )を抜く。 ⑧ぺ ) を割る。
⑨( )であしらう。 ⑩( ) からうろこが落ちる。
ァ頭イ髪 ウ目 エロ オ 鼻カ耳 キ 顔 ク歯ケ舌
コ腕サ指シ腹ス尻セ 足 ソ手
3.次の文を、主部と述部の照応に注意して、整った文に直してみよう。
① 人間ひとりひとりの幸福の見方には、多種多様である。
② よく私たちは、「あいつは才能に恵まれている」と、人をうらやむものがある。
③ クラブを続けながら卒業できるのは、自分に打ち勝ったと思う。
④ 私たちはその問題についてアンケートを行って、大勢の生徒がそれに協力し
た。
⑤ 人間の考え方を決定するものは、その人の生まれ育った環境によって違うも
のだ。
十、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
日本には昔から、つまり高度成長への批判などとは関係なく、⑦物にこだわるの
は①里しいという思想的伝統があるので、物の所有、保存に対する反発も極端に走
りやすいのだ。この伝統的な考え方のモデルになるのは、例えばあばら屋に住むこ
とを理想としていた@芭蕉とカゝ、⑦兼好のような世捨て人である。
また、日本人のひとつの理想である“サムライ”という人格も、物への②執着
210日语综合教程第六册
をハイするところに成り立っている。山本周五郎の初期短編「ー領一筋」の中に、
ひとりの若い武士が婿入りした先で、妻の父が自慢の(a )にしている庭の“七
葉松”を踏み折り、秘蔵の茶碗を割るというそこつ者ぶりを発揮して、老人を閉
(b )させる話がある。話の運びは全体としてユーモラスなのだが、最後になつ
てこの奇行は、いつも死を覚悟している武士たる者は、“鎧一領槍一筋”以外の“物”
に無用な執着を持ってはならぬ、ということを示すためであったとわかると、よく
できた話だけにスッと背(c )が寒くなった。
この小説の言わんとしているのは、いつでも彼岸に旅立てるように、此岸=日常
的現実を単純化しておけ、ということであろう。これは言いかえれば、生活を楽し
んではいけない、ということに等しい。僕は山本周五郎の愛読者ではあるが、この
短編だけは、それが戦前に書かれたことを割り引いて考えても、どうも好きになれ
ない。しかし考えてみると、日本の伝統③家屋の、家具や物が全くない単純な美し
さも、根本的には园この世を仮の世とする美学に通底しているのではないだろうか。
日本の伝統家屋といってもさまざまだが、そのひとつの典型である“サムライ”の
家は、例常に死に向かって開かれているのを理想としたらしい。僕はとてもこうい
う家には住めないし、| A |そんな家を人様のために設計する気にはなれない。
世捨て人的な④文人墨客も、潔い武士たちも、現世への執着を捨てた点で、半ば
聖人であった。しかし、」悟りすました聖人ではなく、現世への執着を捨て切れない
俗人、⑤凡人たる僕たちの生は、どうしょうもなく品物と交わり、物に支えられる
ことで成り立っているのではないだろうか。
OD 下線部①〜⑤の漢字の読み方を書きなさい。
•① ② ③ ④ ⑤
(ED 下線部⑦「物にこだわる」と同じことを述べている他の表現を、文中から
5字で抜き出して答えなさい。
d❸ 下線部@「芭蕉」、©「兼好」の代表的作品名を答えなさい。
芭蕉: 兼好:
dD 下線部㊀「ハイする」の「ハイ」と同じ漢字を用いる語を、次のア〜エの
中から一つ選んでください。
ア キリスト教の礼ハイ堂だ。 イ ハイ下の武士を従える。
ウ無駄をハイ除する。 エ 国が荒ハイする。
( a )〜(c )にふさわしい文字を、次のア〜コの中から、それぞれひと
つずつ選び、記号で答えなさい。
第7課文章について211
ァ眼 イ耳 ウロ エ鼻 才腕 力腹
キ種 ク元 ケ筋 コ頭
a
b c
函 下線部 め「この世を仮の世とする美学」の考え方として文中での意味とー
致するものを、次の中からひとつ選びなさい。
ア あの世のためになることにこそ、求道的に財を費やすべきだ。
イ 忠君第一のこの世では、世間の思惑などに左右されてはならない。
ウ 頼りにならないこの世だから、個々の節約こそ、大切である。
工 はかないこの世にこそ、刹那的な美しさを追い求めるべきだ。
ォ あの世のことを念じて、この世にこだわりを持つべきではない。
dD 下線部①「常に死に向かって開かれている」と同じことを、比喩で表現し
ている部分を、過不足なく抜き出して答えなさい。
(〇 下線部导「物と交わり、物に支えられること」と同義になるように、
(1) 次の空欄①②にふさわしい語を文中から抜き出して答えなさい。
物を(① し、② )すること
(2) また、それはどういう態度であると、筆者は考えているのか、「生活」と
いう語を用いつつ、io字以内で述べなさい。
dD次の中から最も適当なものを選び、| a |に入れなさい。
ァせめて イさらに ウまして エまさか ウ確かに
文学・語学の豆知識
原稿用紙の使い方
① 題名は1行目か2行目に、頭から3マスほどあけて書く。
② 次の行に、学年、組、氏名を書く。
③ 本文は、3行目か4行目(「4行目か5行目」とする説もある)あたりから
書きはじめる。
④ 初めの書き出し、および、各段落のはじめは1マスあけて書き出す。
⑤ ひとつのマスに1字ずつ書き、句読点やかぎかっこなども1字ぶんとして
書く。次の行の一番上へ句読点がいく場合は、行の一番下の文字と同じマ
212 日语综合教程第六册
スへ書いたほうがよい。
⑥ 対話など、人のことばを入れる場合は、行をかえ、「」をつけるのが普通
である。
⑦ 原稿用紙が2枚以上になる場合は、番号をつけてとじる。
読み物
言葉と人格
•大岡信
言葉のもっている力ということを考える時、いつも思い浮かべるーつの
経験がある。母国語を楽々としゃべれるかどうかが、人の性格形成に及ぼす
実に大きな影響について、この経験は語っているように思うのである。
ある日本の芸術家がパリで外国女性と結婚し 、そこで暮らし、子供がー
人できた。妻なる女性はフランス人ではなく 、別の国からパリに留学してい
た人である。
私は昔、パリに数か月間滞在した時、この知人の家に数回行ったことが
ある。そして四歳ばかりになる坊やと仲良しになった。この坊やは、もちろ
んフランス語しかしゃべれない。父は日本人、母はドイツ語圏の某地の生ま
れだから、両親の母国語は、日本語およびドイツ語である。しかし二人の間
に生まれた子供は、両親の共通語であるフランス語しかしやべらない。この
ケースは、いわば臨床的な観察の対象として、興味ある例を示していた。両
親は、母国語ではない言語(フランス語)によって意思を通じ合い、その子
供は、両親にとって母国語ではないそのフランス語を、やむを得ず自分の言
葉として覚えてゆかねばならないというわけで、三人は一種抽象的、人工的
な言語環境を作り上げていたのである。
だが、実際には、それは観察の対象とか何とかいったなまやさしい問題
ではなかった。私が胸を衝かれたのは、この坊やの並はずれて神経質な挙措
動作であり、かつ、そこに漂っている言い知れぬ孤独感であった 。
あるいはそれは、両親から受けついだ気質の現れたったのかもしれない〇
しかし私に痛ましい思いを与えたのは、この坊やのフランス語が、明らかに
なまりをもち、かつ語彙が限られているということだった。年齢に比して、
第7課文章について213
坊やの話すフランス語は、明らかに貧弱だった。この坊やは、長いセンテン
スの言葉をしゃべることができず、その話し方は、どこか叫ぶような調子で
あった。それが神経質な感じを作り出す一因にもなっていたのである。
両親がフランス人だったら、もっと自然に、流暢に、論理的な屈折や展
開をもっと複雑にしかも自由に、話すことができたはずである。それがこの
坊やにできなかったのは、言うまでもなく、両親がそれぞれ、フランス語を
母国語としておらず、彼ら自身のフランス語が、多かれ少なかれ人工的で、
生命的流動に満ちたものではなかったためである。
• 具合の悪いことに、フランスのアパート生活は、日本の団地などよりも
更に孤立的である。親どうしはもちろんのこと、子供どうしの往来も、日本
ほどには開放性をもっていない。この坊やの場合、仲良く遊べるフランス人
の子供は、周囲にいなかった。そうなると、坊やの生きている言語環境は、
極めて特異なものとならざるを得ない。決して完全とは言えない両親のフラ
ンス語が、彼にとってのマザータングとなる。だいたい、マザータングなる
ものが、なんでマザー(母)と呼ばれたかといえば、その背景には明らかに
ひとつの言語観があったはずである 。
っまり、我々は、文字どおり母国語の中から母国語の中へ生まれてきた
のだということ、母国語は我々にとって、母親同様、先験的な存在であると
いうこと、これこそ、マザータングのマザーたるゆえんであろう。しかる
に、この坊やの場合、現にフランス語を話しているにもかかわらず、そのフ
ランス語は、マザータングの有する先験的な豊かさ、厚味にみちたものでは
なくて、両親が多くの努力とそして誤りをおかしつつ、後天的に修得してき
た一種の伝達手段にすぎない。長いセンテンスを駆使できないというのは、
坊やだけのことではなく、親自身、時にはそうだったはずである。
こうしたことの結果、この坊やは時々凶暴性を帯びた感情の激発を示し
た。一度、おおぜいの日本人が集まる会合に一緒に出たことがある。それは
正月のお祝いの会で、子供連れの人々もかなり集まっていた。その中には日
本人とフランス人との混血の子供もいた。その子供たちと、くだんの坊やと
の出会いは、見方によっては少々残酷なものでさえあった。坊やは普段見る
ことのないおおぜいの人々の中へ入って、有頂点になってしまう。そして、
そこにいる同じ年ごろの女の子などと興奮してふざけ合う。ところが、言葉
が自由にならないから、その歓びを荒っぽく肉体全部で表現せざるを得な
い。外側から眺めれば、ほとんどヒステリー状態に近い様子を示す。しかも
その発する言葉には、仕事中の父親からしばしば浴びせられる 「こらつ。」
とか、「静かにしろつ。」とかいったたぐいの、まあ、あまり上品とはいえな
い種類の言葉が交じって飛び出す。
そういうわけで、とうとう、一人のフランスの女性(日本人と結婚して、
214日语综合教程第六册
当日女の子供を連れてきていた)から、やんわりと、ただし厳しく、たしな
められる結果になってしまった。その時にこの坊やが示した悲痛な表情を今
でも思い出す。彼はうれしくてたまらなかったのに、言葉の出口がつまって
いたため、荒っぽく肉体的にそれを表現せざるを得なかったのだ。例えば女
の子の振り袖を、ちぎれんばかりに引っぱってみたり、なぐりかかってみた
りしたのは、いわば言葉による表現の代償行為にほかならなかった。彼の性
格そのものが凶暴だったわけではない。
その後、いろいろな事情があって、この坊やは日本にやってきて、祖父
母のところで暮らすこととなった。日本の幼稚園に通い、たくさんの友達が
できた。私は一年ほどしてから一度だけ会ったことがある。その時驚いたの
は、かつての神経質で孤独な感じが、まるでぬぐい去ったように消えていた
ことである。日本へ来た当座は、おそらく大変だったことだろう。しかし、
一年もたっと、子供は全く日本語の中に同化してしまったのだ。元気な腕白
坊主になっているのを見て、私は他人事ならずホッとしたものである 。
以上の例は、言葉というものが人間の性格形成、いや人格形成全体に対
して果たしている重大な役割を、おのずと物語ってはいないだろうか。
人為的、後天的に修得された言葉の中だけで子供を育てようとすると、言
語のみならず人格そのものに、なんらかのひずみをもたらしかねない。母国
語というものは、日ごろ無意識に我々の中で生き 、我々を取り巻いているの
で、その重要性について私たちはともすると全く無自覚であるが、言葉の修
得は、単に意思の伝達手段の修得といった程度のことにとどまらず、一人の
人間の人格全体の問題に根源的にかかわりをもっているということを、はつ
きりと自覚する必要がある。単なる意思伝達ということなら、例えば足で人
を蹴とばすのも、あごで指図するのも、目でにらみつけるのも、すべて意思
伝達の手段であり得る。時には、それが言葉によるよりもずっと強力で効果
的で即効性をもっている場合さえある。言葉を単なる意思伝達の手段という
観点からのみ考えるなら、言葉は、記号的であればあるほど便利で有効だと
いうことにさえなりかねない。
だが、事はそのように簡単ではない。言葉によって伝達されるものは、意
思だけではない。もともと、人間の意思というようなものを、それだけ純粋
に抽出できるわけはないので、人は言葉によって意思を伝達するという時、
実は意思以上に、人格全体を伝達すると言うべきなのである。同じ言葉で同
じ意味内容を何人もの人が語った場合、人がそこから受け取るものがそれぞ
れ非常に違っているということは、しばしばみられる現象である。それは、
それらの言葉によって意味されるもの、すなわち発語の深層構造をなす人格
が、それぞれ異なっているからにほかならない 。
言葉はそれゆえ、正当な意味で、人格的現象であるということができる。
第7課文章について 215
それを端的に表しているのは、例えば次のようなことである。幼い子供を観
察していると気づくことだが、子供にとっては、ある感情は、それに適合し
た言葉を覚えた時に初めて、明瞭に自覚されるものとなる。例えば悲哀の感
情は、「かなしい」とか「さびしい」とかの言葉を知った時初めて 、子供に
とって明瞭な感情となるのであって、それ以前は、未分化な、一種全身的衝
動、すなわち泣き叫ぶ動作とともに流動し消滅してゆく衝動としてあるにす
ぎない。こういう全身的衝動はしばしば大人が振り返っては、憧れと郷愁を
そそられるに足る、合理・非合理の区別以前の、幸福な混沌の時代のように
みえる。
事実、近代の詩人たちの多くは、そのような未分化で原初的な感情を呼
び戻そうと、繰り返して試みてきた。だが、それはもともと極めて困難な逆
転作業であって、成功を初めから念頭においてできるようななまやさしい試
みではない。言葉を用いて、言葉以前の世界に戻ろうというのだから、初め
から絶望的な矛盾をはらんでいるのである 。
しかし、このような試みが繰り返されるということ自体 、言葉の世界の
驚くべき広大さを示していると言うべきだろう。ある言葉が与えられて初め
て、ある感情が明瞭に自覚されるようになるということは、なにも幼い子供
の場合だけではない。人はその知っている言葉の世界の広さに応じて、感情
の世界をもっと言っていいのである。
(『高校新選国語二 改訂版』尚学図書より)
IJ主釈
〇 大岡信(おおおかまこと)(1931—)
詩人・評論家。日本静岡県に生まれた。主な作品には、詩集『記憶と現在』『春 少女に』『故郷
の水へのメッセージ』、評論『紀貫之』『岡倉天心』『詩への架橋』『折々のうた』などがある。本
文は1985年刊の『詩•ことば•人間』に収められた「言葉と人格」によった。
❷ マザータング(mother tongue)
幼児期に母親などとの接触によって自然に獲得する言語。
216日语综合教程 第六册
8第 課
本文 企業内の聖人
•星新一]
ある会社に、ひとりの男が入社してきた。社の関係者のロききとかいう特
殊なものでなく、入社試験に合格という平凡な結果によってだった 。
人のよさを絵に描いたような顔をしていた。採用かどうかをきめる試験委
員たちは、みなその男にいい点をつけた。形容すれば、この男に限って、い
かなる環境におかれようと決して悪事はやらないだろう、といった顔つき
だったのだ。
ほかの入社志願者たちには、なんとなく抜け目のなさみたいなものがある。
そういう連中のなかにまざっているので、その男がとくにそう思えたのかも
しれない。
また、試験委員たちは、その男があまりに善良そうなので、落第点をつけ
るのをためらったのかもしれない。こいつを入社させないのなら、自分にも
在社している権利はないのではないかといった気分。
入社したその男は、営業部に配属された。そして、集金の仕事を担当させ
られた。こいつなら集金をごまかしたりしないだろう、との印象によるもの
だった。
まもなく、男は一週間の出張を命じられた。集金のためいくつかの取引先
をまわるのだが、そのなかに問題のある店が含まれていた。社員が出かけて
いっても、うまくまるめこまれ、わずかな集金で帰らざるをえないという、扱
いにくい王人のいる店た。
男は元気よく出かけていった。上役は、期待と不安をもって見送った。ー
週間がたち、男は帰社して報告した。
「集金をしてまいりました.... 」
上役はうなずいて聞き、感心した。前任者たちがてこずっていた店から、売
掛金のほとんどを回収してきたのだ。
「これはすごい。前例のない手腕の主だな。よくやった。で、ほかの店は 」
第8課企業内の聖人217
「いえ、今回はこれだけです。あとはつぎの出張のときに……」
その返事の言葉に上役はとまどい、何回も聞きなおし、やっと事態を知り、肝
をつぶした。この男、一軒の集金に一週間を費やしたのだ。なんということだ。
「信じられん.... 」
上役は怒るのも忘れた。そんなことをされては、収支がつぐなわなくなる。
上役はひとりになってから、もしかしたらこいつ、寄り道をして遊んでたの
じゃないかと疑った。そこで、確かめるべく、その取引先に電話を入れてみた。
「先日、うちの社員がうかがって.... 」
すると、相手の返事。
「いやあ、こんどの社員のかたは、実に立派ですな。あんなまじめなかたは、
はじめてです。負けました。酒席への招待のたぐいは一切受け付けず 、こっ
ちの煙に巻こうとする作戦にもごまかされず、ひたすら誠心誠意、店に日参
なさいました。こっちとしては、全額を払わずにいられなくなりました 。あ
んな熱意のかたまりのような人はいない。いい社員ですな 」
遊んでいたのでなく、その店に通いつめていたことが判明した。社員をほ
められたのにもかかわらず、上役は複雑な心境だった。非能率きわまること
ではないか。ふと、いやな予感をおぼえた。
つまり、その男の仕事ぶりは、それ以後もずっとそんな調子だったのだ。ひ
とつのことにとりかかると、それに心から没入してやりとげ、あとに好印象を
残す。それはそれでいいことなのだが、給料分の働きになっていない。新入社
員に対して「ほどほどにやればいいのだ」とも言えず、上役は頭を悩ました。
考えたあげく上役は、その男に別な仕事をやらせることにした 。
「集金は別な者に代らせる。きみには新規の取引先開拓のほうを頼みたい」
「はい。社のためであれば、どんなことでも喜んでやります。そのような重
要な分野にまわしていただき、心のひきしまる思いです」
男は張り切って答えた。おまえは無能だから交代させるのだとの意味なの
だが、それが通じないのか、いやな顔ひとつしない。
かくして、たずさわる分野は変ったが、仕事ぶりはやはり同様だった。怠
けているわけでなく、新しい取引先を確実に開拓はするのだが 、それがまこ
とにゆっくりなのだ。社が支払う給料に見合っていない 。
だが、当人は毎日、元気に街へ出てゆく。
「社のために、心血をそそいでがんばります」
と大声であいさつをして出かけるb事実その言葉どおりに熱心であり、当
人もそれに生きがいを感じている。それだけに、始末が悪いのだ。熱心とか
誠実、正直さや愛社心、そういった徳目と企業内での能率とが、彼の上にお
いて一致していないのだ。また、同僚に比べ成績があがらぬことで劣等感を
218日语综合教程第六册
感じてくれればいいのだが、残念なことに、そういうマイナス的な性格は持
ち合わせていないらしい。
彼は社の金を使っての、いわゆる社用族としての飲食はしなかったが、必
ずしも酒を飲まないというわけではなかった 。人づき合いが悪いということ
もなく、会社の帰りには同僚とともにバーに入ることもあった 。
しかし、そこでもいささか変わっていた。酒を飲みながら、会社や上役や
同僚の礼賛をやるのだ。酔いというものは、一般に上役やその場にいないや
つの陰口を誘発するものだが、その男はそれをしなかった。しないというよ
り、本質的にできないのだ。
といって、それにいやらしさはなかった。そばに上役がいて、それにお世
辞を言う図となると、快いものではない。しかし、彼は上役といっしょの時
はお世辞を言わず、つまり常識と逆なのだ。
同僚たちは、上役の棚卸しをさかなに酒を飲みたい時には、その男を誘わ
なかった。別に彼を嫌悪し、仲間はずれにするわけでもない。麻雀のできな
い者を麻雀に誘わないのと、そこに差はなかった。また、やつを誘わなくて
も、彼はそれを恨みに持たないだろうとの安心感もあった。
彼はひとりでバーに行くこともある。その時は、バーの女の子を相手に、会
社や上役や同僚たちへのほめ言葉を、酔いとともにとどまることを知らず、
しや^<りまくるのだ。心から楽しそうに……。
酔った時に人間の本性が現れるとすれば 、その男の本性はまさに善といえ
るだろう。あまりに奇妙な酒癖なので、バーの女たちは珍しがり・、いつのま
にか社の連中にも伝わることとなった。
となると、彼への陰口はだれも言わなくなった。聖人のごとき人物を根拠
もなくけなすと、なにかたたりがありそうではないか。彼の足をひっぱって
みようかなとは、だれも考えなくなる。自分を持ち上げてくれるやつの足を
ひっぱるなど、いくらなんでもできない。自分は上役の批判をやっているが、
彼はやっていない。その当人に、火のないところに煙をでっちあげ、上役に
むかっての彼に不利なつげ口はちょっとできない。
また、かりにそれをやったとしても、どこに彼への同情者がいるかわから
ない。その上役がそうかもしれない。事実、上役もバーの女から彼が礼賛し
てくれているとの話を聞き、内心でいい気分になっている。
というようなしだいで、その男は会社内において、周囲のだれからも愛さ
れた。愛されないまでも、反感を抱かれたりすることは決してなかった。
しかし、心情的にはそうであっても 、冷静な判断でとなると、こんな困っ
た人物もない。営利事業を構成する一員としての資格が、まるでないのだ。社
の利益に少しもつながらないばかりか、小額とはいえ損をもたらしている。
第8課企業内の聖人219
それなのに当人は、会社に身も心もささげているつもりで 、大満足という快
感にひたっている。
直接の上役はいらいらした。あいつだって、何らかの意味で社に貢献はし
ている、と考えたいのだが、いかに無形の要素を導入して計算してみても、そ
ういった答えは出てこない。また万一、彼の性癖が他の社員たちに伝染しは
じめたら、とんでもないことになる。
内心では「なあ、きみ。進むべき人生の道を誤ったんじゃないのか 、もっ
とふさわしい職に移ったらどうだ」と辞職を勧告したいのだが、そうもでき
ない。本人を前にすると、その文句がロから出なくなる。なにしろいいやっ
なのだし、陰でおれをほめたたえてくれている男なのだ。それを追い出すほ
ど冷酷にはなれない。
強引にそれをやったとしたら、さぞ寝覚めが悪いことだろうなあ。当人に
落ち度は何もなく、愛社精神の権化なのだ。彼に同情する人々が黙ってはい
ないだろう。労組も騒ぐかもしれない。
また、首にしたりしたら、彼は失意と絶望のあげく、本当に首をくくりか
ねない。彼の日常の愛社ぶりから、そんなふうにも思えるのだ。
それにしても、足手まといであることはたしかだった。周囲の者は、どう
も調子が狂いがちになる、また、彼がいるためにその課の成績が落ち、ボー
ナスの額に影響してくる。だからといって、排斥する気にもなれない。人徳
に対抗しうる力は存在しない。
なんということなく、周囲ではひとつの結論に到達した。祭り上げ。それ
ができれば、いちばんいいのだがなあ。すべて丸くおさまる。そんなムード
が発生し、具体的な運動になったりもした。他人を祭り上げるのなら、やま
しさを感ぜずに工作できる。
そして、それが実現した。彼はこう言い渡された。
「きみは課長に昇進ときまった」
「いえ、わたしはいまの地位でけっこうです。下積みで地味な仕事に励むの
が好きなのです」
彼は本心から答える。下積みでいては困るからこうなったとは知らずに 。
「それはわかるが、社の決定には従ってもらわなければならぬのだ」
まったく異例な昇進だったが、異議はどこからも出なかった。彼がいなく
なった課は、以前の調子を取り戻し、いわゆる順調な進展という状態になっ
た。
しかし、今度はその人柄をよく知らずに彼を迎えた課が困る番だった 。い
い課長であり、仕事熱心でもあるのだが、さっぱり能率があがらなくなった。
つまらん報告書を、熱心に検討したりする。企業には、いい加減さが必要な
■のだ。そのため、その分を部下たちみんなで気をつかって補わなければなら
220日语综合教程第六册
ない。余計な重荷をしょいこんでしまった形だった 。
といって、批判の声もあがらないのだ。「こんなことでは困ります」と直言
しようにも、彼の前ではその声が出なくなる。その男の人徳というやつだ。陰
へまわっても言えない。彼への好意の持ち主は多いのだ。愛社の念に燃え、お
のれをむなしくして部下をかわいがる、熱意と誠意の結晶のような人物を、
けなすのは憚られる。彼への不満は、心の奥にしまっておく以外にない。
しかし、企業にとってはお荷物だ。各種のデータにもとづきコンピューター
の出した報告によって、このことを知った冷酷なる人事部は、一計を案じた。
おとり作戦を計画した。巧妙に彼をわなにかけ、それをたねに首にするの
だ。反企業的な行為という事実をたねにすれば 、追い出すという大義名分も
たっというものだ。
ある下請け会社にいいふくめ、彼にリベートを握らせようと仕組んだ。聖
人を陥れる第一歩は、まず堕落させることだ。
その作戦が展開されたのだが、何の収穫もあげられなかった。下請け会社
の者は、人事部にやってきて、預かった金を返しながら、そっと報告した。
「わたしの手には負えません。世の中に、あんな立派な人物はいませんよ。筋
の通らぬ金には、まったく手をつけようとはしません。なんであの人を追い
出さなくてはならないのです。社の至宝といってもいい人でしょう。追い出
したりしたら、社の評判が悪くなりますよ」
第一の作戦は失敗だった。つぎにはもっと非情な作戦。詐欺のたくみなグ
ループに依頼し、彼の責任となるような形で、製品の取込み詐欺をやらせた
のだ。企業にとっては損害だが、これでやつを追い出せれば、その利益でお
っりがくる。
詐欺団と聖人では、勝負ははじめからついている。彼はみごとにひっか
かった。待ってましたとばかり、上層部から彼に「早く解決せよ」との命令
が届く。
しかし、芝居は筋書き通りに進まなかった。なにしろ彼は責任感が強く、寝
食を忘れて解決に熱中した。足を棒にして歩きまわり 、詐欺団の一味を追い
かけ、なんとか製品をかえすか金を払うかしてくれと頼み、交渉を重ね、飽
きることなく続けるのだ。
法律上は支払うことはないのだと突っぱねても 、あきらめてくれない。暴
力で脅かしても効き目がない。あげくのはて、人徳に引き込まれる。ついに
詐欺団たちも音をあげ、人事部に泣きついてきた。
「せっかくのお頼みなので 、やってはみましたが、もう手を引かせてもらい
ます。あいつに付き纏われていたら、一生を棒にふりそうだ。なにしろ毎日
付き纏われ、つぎの詐欺もできない。それに、ああいういい人をだましたと
第8課企業内の聖人221
思うと、いやな気分だ。そんな気分が高まってきたら、詐欺団の商売ができ
なくなってしまう」
かくして、取込み詐欺の一件は解決となった。人事部一同、このことで良
心がうずき、深く反省した。コンピューターがどう言おうと、とても彼を首
にはできぬ。
この秘密計画を知らない者たちにとっては、彼が会社の損害を防止したも
のと見えた。なるほど、いざとなると底力を発揮する人物らしいと 。現実は、
ひそかにしくまれた芝居だったのだが……。
そのムードの中で、また祭り上げ方式が採用された。それが企業のためで
あり、そうする以外にどうしょうもないのだ。昇進の形で、社史編集室長と
いう閑職へ移された。
だが当人は、いやな顔をするどころか、こんな意義のある仕事はないと、大
張り切り。閑職などと思っていないのだ。そのくせ、張り切るわりに、ここ
でもいっこうに能率はあがらなかった。すなわち、二年かかって社史の一年
分がやっと進行するという形なのだ。とんでもない仕事ぶりだ。といって、な
んの手落ちもなく、社のためと大喜びで励んでいる者を排斥できぬこと 、こ
れまでと同じだった。
こうなってくると、またあれをやる以外にない。祭り上げ方式だ。社内に
おいても、彼に対するこの手はずには 、みながなれてしまっていた。文句も
出ず、彼がいなくなると、その社史編集室の事務は以前の適当なる速度と、適
当なるいい加減さを取り戻し 、すべてがうまく行き始めるのだった。
しかし、部長にしようにも、彼に適当なポストがなかった。どの部も敬し
て遠ざける。なるべく遠いところへ祭り上げたいというムードなのだから 。
必要は発明の母。新しい部がそのために作られた。企画調整部という。何
もしなくていいという部なのだが、心の底からわきあがる愛社精神を押えら
れぬ彼は、じっとしていられない 。おれは何か仕事をしなければならぬのだ 。
しなければ社のために申し訳ない。
例によって、熱心に何かやろうとするのだが 、その結果は他人の邪魔にな
る。つまらぬ企画をたて、他の部に口を出し、手伝おうとする。善意の現れ
なので、他の部はその相手をしなければならない 、ほかの部長たちは、いい
迷惑だ。こうなると、いつもの手段、祭り上げをやるしかない。
このような経過で取締役になった例は、ほかになかったのではなかろうか。
いずれにせよ、部長たちはほっとし、各部門の運営はすべて能率的な回転と
なった。
この昇進ぶりを見て、まねを試みようと考える社員が、ないでもなかった。
しかし、平凡な人間にできるものではない 。苦痛でもあり、すぐに化けの皮
222日语综合教程第六册
がはげる。彼のごとき、生まれつきの聖人でなければむりなのだ。
かくして問題は取締役会にしわ寄せされた。前例のない若い役員なのに、
それが一番の非能率なのだ。いちいち、かんでふくめるように説明してやら
ねばならず、それはさらにくだらぬ次の質問となって返ってくる。その合間
に、この社に勤めていることへの感謝の辞がはさまり、会議はとめどなく長
引くのだ。
それが悪意にもとづくものだったら扱いは簡単だが、表裏のない愛社精神
の発露となると、どうしたらいいのだ。批判の口火を切ることはだれにもで
きない。残された道はただひとつ。祭り上げだ。すなわち、社長へ。
新しい社長が生まれた。社内すべてにとっていい社長といえた。社員たち
が連絡を取ってひそかにお膳立てをし、社長はそれに判を押すだけ。あとは
公式的な行事に出て、公式的なことをやるだけ。社内はすっきりと満足すべ
き状態となった。祭り上げられるべき人物が、それにふさわしい地位におさ
まったのだから。
企業を悪用して私利をはかる心配もなく、人柄は穏やか、仕事の邪魔にも
ならない。社員からの反感もまったくない。
しかし、彼にとってはその逆だった。飾りのお人形と化しては、なんにも
することがなくなった。とめどなく湧き出る愛社精神をもてあました。気力
のもってき場がないような、気力が失われていくような……。
その憂鬱さは高まる一方。呆然と社にやってきて、ロボットのごとく書類
に判を押し、あとは新聞も見ず、ただ沈みこんだままという毎日。
そして、ある日、彼は発作的に社長室の窓から飛びおりた。五階であり、も
ちろん地上に達するとともに死んだ。
当人はそんな精神状態だったので、新聞も書類の内容も見ず、社員も報告
していなかったので、社が危機にあったことも知らなかった。つまり、その
社の製品の品質不良がもとで、社会に害が及んだという創立以来の大不祥事 。
新聞がそれを取り上げかけていた。大衆の怒りがここに集中しようとしか
けていた時だったが、その矢先に社長が自殺してしまったのだ。こぶしの振
り上げようもない。
各新聞社から記者がやってきて、だれかれとなく聞きまわった。そして、い
たるところで死んだ社長をほめる言葉を聞く。だれもがほめ、けなす人はい
なかった。
社会的な責任を一身にしょって、天下に罪を謝すための覚悟の自殺をした
高潔な人物にみえる。非難しようにも、矛先がにぶる。それどころか、賞賛
すべきことでもある。炎は燃え上がらず、丸くおさまらざるをえなかった。
しばらくの時がたち、社員たちはなにかというと思い出す。
第8課企業内の聖人223
「この社を救うために、神がつかわされた救世主じゃなかったのかな、あの
人。いや、正しくは救社主と呼ぶべきかな……」
神なんか信じない連中なのだが、ふとそんなことをつぶやいたりする 。
(『未来いそっぷ』新潮社より 漢字表記の改正あり)
、注釈
星新一(ほし しんいち)(1926-1997)
小説家。東京都に生まれた。主な作品に、『おせっかいな神々』『エヌ氏の遊園地』『ひとにぎりの未来』
などがある。短い短編といわれるだけに、だいたい1500語の中に新鮮なアイディア、完全なプロット、
意外な結末を持つ彼の作品はS Fの感覚、スピード感、知的なスマートさなど、時代感覚にもぴったり
合って、多くの愛読者を持っている。
k新しい言葉
口利き(くちきき) [名] 当事者の間に入って両者をとりなす人また事。
抜け目のない(ぬけめの 狭義では、有力者をさす。/中间人,调停人;斡
ない)
旋,调解。
連中(れんちゆう/れん
じゅう) [連語] 自分の不利益になるようなことを一切せず、巧
落第(らくだい) みに物事を行う様子。/处世精明,用心周到。
ためらう(躊躇う) [名] 同じことをする人々。仲間同士と見なされる
丸め込む(まるめこむ) 人々。/伙伴,同伙,ー伙。
てこずる(梃子摺る) [名・自サ] ①試験•検査などにうからないこと。/不及格。
売掛金(うりかけきん) ② 留年。/留级。
手腕(しゅわん)
[自五] 本当はそうしたいのだが、うまく行くかどうか
とまどう(戸惑う)
事態(じたい) 自信がないので、思い切って実行することがで
きないでいる状態。/踌躇,犹豫。
[他五] いろいろうまいことを言って、他人を自分の思
うようにする。/笼络,拉拢,连哄带骗。
[自五] 面倒な事態にぶつかって、解決に手間取る。/棘
手,难对付。
[名] 掛け売りの代金。売り掛け。/欠款,赊款。
[名] 物事を実際にやってのける、優れた腕前。/手
腕,才能,本领。
[自五] どうしたらよいか迷う。まごつく。/不知所措。
[名] 物事が進行して行き着いた好ましくない状
224 日语综合教程第六册
態。/(多数指不好的方面)情况。
肝を潰す(きもをつぶす) [慣] 意外な・大変怖いことに出会って、極度にびっ
くりする。/吓破了胆,吓得魂不附体。
寄り道(よりみち) [名・自サ] 目的のところへ行く途中、ついでに他の所に立
ち寄ること。回り道。/绕远儿,顺便绕到。
日参(にっさん) [名・自サ] (頼みごとなどがあって)毎日同じ社寺へ出か
けて行く。目的があってある人・所へ毎日通う
こと。/每天到。
没入(ぼつにゅう) [名・自サ] すっかり入り込むこと。/投入。
頭を悩ます(あたまをな [慣] あることを解決するためにあれこれと考えを
やます) めぐらす。/伤脑筋,困扰。
新規(しんき) [名・形動] ①新しいこと。/新,新来的,新开的。②新し
い客。/新客。
引き締まる(ひきしまる) [自五] 体・精神などに緩んだところがなくなる。/绷
紧。
徳目(とくもく) [名] 博愛•慈善•孝行など。一つ一つの徳の名。/德
目。
持ち合わせる(もちあわ [他ー] ちょうどその時持っている。/随身携带。
せる)
礼賛(らいさん) [名・他サ] ありがたい(すばらしい)と感じて、ほめたた
えること。/颂扬,赞美。
陰口(かげぐち) [名] その人のいないところで言う悪口。/背地里骂
人,造谣中伤。
図(ず) [名] さま。様子。/情况,情景。
棚卸し(たなおろし) [名] 他人の欠点を一つ一つ数え上げて、悪口を言う
こと。/挑别人的毛病。
さかな(肴) [名] 酒の席を持たせるための話題。/酒宴上助兴的
话题。
麻雀(マージャン) [名] 竹を裏につけた、136枚のパイを使い、4人で勝
負を争う室内遊戯。/打麻将。
本性(ほんしょう) [名] 生まれつきの性質。/本性,真面目。
酒癖(しゅへき/さけくせ) [名] (さけぐせとも)酒に酔った時に出てくる癖。Z
酒癖。
けなす(貶す) [他五] 悪く言う。/贬低,诋毁。
たたり(祟り) [名] 神仏や怨霊から受ける災い。比喩的にあること
をしたために受ける、悪い報い。/报^应。
持ち上げる(もちあげる) [他ー] 相手を得意にさせるようなことを言う。ほめて
おだてあげる。/奉承,抬举,过分夸奖。
でっちあげる [他ー] 実際にはないことをあったことのように作り上
げる。/捏造,编造。
第8課企業内の聖人 225
告げ口(つげぐち) [名•自他サ] 他人の悪行・秘密•過失などをひそかに人に
告げること。/告状,传舌,搬弄是非。
強引(ごういん) [形動] むりやりに物事をする様子。/强行,强制,硬
干。
寝覚めが悪い(ねざめが [連語] ①眠りからさめたときの気分がよくない。/睡
わるい) 醒后情绪不佳。②過去のよくない行いなどが
思い出されて、良心がうずき、気持ちがすっ
きりしない。/ (受良心谴责)寝食不安。
落ち度(おちど) [名] 過ち。手落ち。/错处,过错。
権化(ごんげ) [名〕 ①仏•菩薩が衆生を救うため、仮に姿を変え
てこの世に現れること。/菩萨下凡。②ある抽
象的なものがはっきりした具体的な形をもつ
て現れたように思える。/化身。
労組(ろうそ) [名] 労働組合の略称。Z工会(略称)〇
首を括る(くびをく くる) [連語] 首吊り自殺をする。/上吊自杀。
足手纏い(あしでまとい) [名・形動] 物事をするとき、邪魔になること(人)。/累赘。
祭り上げる(まつりあげる) [他ー] 大勢である人をおだてて、格別の地位にっか
せる。/捧上台。
ムード(mood) [名] 雰囲気。情緒。気分。/气氛。
やましい(疚しい) [形] 良心に恥じるところがあって後ろめたい。気
が引ける。/受良心苛责,心中有愧。
下積み(したづみ) [名] いつまでも人の下に使われて出世しないこと
(人)。/居于人下,无法出头(之人)。
いい加減さ(いいかげんさ) [名] あまりやりすぎない、ほどほどの程度。/适
度,适可而止。
重荷(おもに) [名] 重い荷物。転じて、行動の妨げとなる重い負
担。/沉重的负担。
しょいこむ(背負い込む) [他五] せおい込む。/背上,担负,承担。
憚る(はばかる) [他五] 気にかけて避ける。/忌惮。
一計を案じる(いっけい [連語] ひとつのはかりごとを考え出す。/心生一计。
をあんじる)
おとり(画) [名] 鳥・獣を招き寄せて捕えるためにつないで
おく同類の鳥・獣。転じて、人を誘い寄せ、
陥れるために利用する人(物)。/诱饵,诱惑
物。
大義名分(たいぎめいぶん) [名] (後ろ指をさされずにある事をするために掲げ
る)誰もがもっともであると認める道理・理
由。/大义名分;正当而充分的理由。
226 日语综合教程第六册
下請け(したうけ) [名•他サ]親会社が引き受けた仕事をほかのものがさらに
請け負ってやること。/承包。
いいふくめる(言い含める) [他ー] 計画などをあらかじめ言って承知させてお
< 〇 /仔细说给•••听。
リベート(rebate) [名] 支払い代金の一部を、謝礼金•報奨金などの形
で、支払い人に戻すこと。割戻し。/回扣,佣
金;贿赂。
陥れる(おとしいれる) [他ー] 人をだまして不利な立場に追いやる。ひどい状
態にさせる。/陷害,使•••陷入。
仕組む(しくむ) [他五] わからないように悪いことを計画する。/故意
安排,筹划。
堕落(だらく) [自サ] 品行が悪くなり生活が乱れること。/堕落。
筋の通る(すじのとおる) [連語] 確かな理由・根拠に基づいて、納得しやすい。/
合情合理,通情达理。
手をつける(てをつける) [慣] 使いかかる。/摸,・碰,使用。
詐欺(さぎ) [名] 他人をだまして金や品物をとったり損害を与え
たりすること。/欺诈。
取込み詐欺(とりこみさぎ) [名] 代金を支払う意志を初めから持たず、注文した
多量の商品を転売するなどして、現金を詐取す
る詐欺。/赊货赖账的诈骗行径。
筋書き(すじがき) [名] 演劇・映画の内容のあらましを書き記したも
の。ノ梗概,情节。
足を棒にして(あしをぼう [慣] 八方捜し回りくたびれはてる形容。/腿跑直了。
にして)
一味(いちみ) [名] 同じ目的を持った仲間。普通、悪いことをする
場合にいう。/同伙。
突っぱねる(つつぱねる) [他ー] 相手の要求・依頼などを強く拒絶する。/严厉
拒绝。
脅かす(おどかす) [他五] 相手に恐怖心を起こさせるようにする。/威胁。
あげくのはて(挙句の果て) [連語] 「あげく」を強めた言い方。/结果,到头来。
音を上げる(ねをあげる) [慣] つらさに耐えられずに、声を立てる。弱音をは
< 〇参る/叫苦,发出哀鸣。
手を引く(てをひく) [慣] 今まで関係していた物事からかかわり合いをな
くす。関係を絶つ。/断绝关系,洗手不干。
棒に振る(ぼうにふる) [連語] むだにする。/白白糟蹋,断送。
疼く(うずく) [自五] 過去の過ちなどが思い出されて、いたたまれな
い気持ちになる。/(心)疼。
底力(そこぢから) [名] ふだんはわからないが、いざというときに発揮
第8課企業内の聖人 227
される強い力。/潜力,底力。
手落ち(ておち) [名] 不十分な点がある。/过失,过错,疏漏。
手はず(手はず) [名] 物事を行うのに、前もってする必要な準備。/准
备,程序,步骤。
敬して遠ざける(けいして[慣] 敬って近づくのを避ける。敬遠する。/敬而远
とおざける) 之。
はげる(剥げる) [自一] ①表面に塗ったもの、貼り付けたものなどが取
れて離れる。/剥落。②色が薄くなる。/退色。
かくして(斯くして) [副・接続] 文語。このようにして。こうして。/这样ー来。
取締役会(とりしまりやく [名] 株式会社で、業務執行に関する会社の意思を決
かい) 定する機関。取締役全員で構成する。役員会。/
董事会。
しわ寄せ(しわよせ) [名・他サ] 物事のうまく行かないことから起こる悪い影響
が、ほかに及ぶこと。/不良影响的后果。
かんでふくめる(嚙んで含[慣] (食物を嚙んでやわらかくして 、口に入れる意
める) から)よく理解できるように分かりやすく言っ
て聞かせる。/详细解释。
とめど(が)ない(止め処 [慣] 限りのない。/没完没了。
(が)ない)
長引く(ながびく) [自五] 予定・予想した時間以上に続く。/拖长,拖延。
表裏のない(ひょうりのな[連語] 言動に表と裏がないこと。かげひなたがないこ
い) と。/表里一致。
発露(はつろ) [名・自サ] その人の心に働いているものがある形をとって
表面に現れ出ること。/流露。
口火を切る(くちびをきる)[慣] 物事を最初から始める。/开端,开头。
お膳立て(おぜんだて) [名・他サ] いつでも始められるようにすっかり準備するこ
と。/事先做好的充分准备。
沈み込む(しずみこむ) [自五] 悩み•悲しみのために元気がなくなる。Z消沉。
不祥事(ふしょうじ) [名] あってほしくないこと。/不幸的事,不名誉的事。
矢先(やさき) [名] 予定の行動にかかろうとする、ちょうどその
時。或は行動の直後。/正要做•••时;做••・之后
马上…。
こぶし(拳) [名] 五指を折り曲げて握ったもの。拳骨。/拳头。
振り上げる(ふりあげる)[他一] 手を勢いよく高く上げる。/挥起,扬起。
矛先(ほこさき) [名] 矛のきっさき。広義では、非難などの鋭い勢い
や、その攻撃の目標をも指す。/矛头。
つぶやく [自他五] 独り言を、または独り言のように小声で言う。
ぶっぶつ言う。/嘟哝,嘟嚷。
228日语综合教程第六册
言葉の学習
じ—なんという
ん「なんということ(理由・考え)もない」の形で用いられ、特に具体的に限定する
ことの不可能または不要な内容をさす。「特に」「どうという」言い方と同じ意
味の用法である。(没什么特别的)
❶ 雨戸を開けると、まぶしいひざしがなだれ込んできた。明るい室内を振り
返ってみて、彼は、なんということもなく、今日は食事前に部屋をすっかり
掃除してしまおう、と思い立った。(打开木板套窗,耀眼的阳光照射进来。他
回头望了望明亮的屋子很自然地萌发出了一个念头:今夭吃饭前把屋子好好打
扫一下吧。)
❷4貫れてしまえば、なんということなかったが、何かの都合でいつも顔が見え
ない時などは、逆にこちらのほうが、どうしたのだろうと思うようになっ
た。(习惯了也就不觉得别扭了。倒是由于某种原因好长时间不打照面时,反而
会去猜测其中的原委。)
〇 私はそれを見るとなんということなしに涙が目頭に滲み出てきた。(看到这
些,泪水不由得从我的眼角处渗了出来。)
❹ なんという考えもないが、少し気にかかっているだけだ。(没什么想法,只是
有点儿担心。)
0 なんという理由はないが、今年は旅行をやめようかと思った。(也没有什么特
别的理由,只是今年不想出去旅游了。)
2「なんという名詞だ/なんという+連体修飾句+名詞」の形で用いられ、「どう
いったらよいかわからないような」の意を表す。驚いたりあきれたり、すばら
しいと思ったりしたことを、感嘆の気持ちを込めて表現するのに用いる 。(简
直是太…,真是太…。)
❶ なんということだ、ふだんおしゃべりな王さんが今日は一言も言わなかつ
た。(这究竟是怎么回事,平时爱说话的小王今天一声不吭。)
❷なんということ。あなたも感染したようですねCすぐ入院してくださいC (这
究竟怎么啦。好像你也被感染了。快住院接受治疗吧。)
❸ 初めての宝くじなのに100万円も当たったなんて、なんという運のいい人だ
ろう。(第一次买彩票就中了100万日元,真是幸运的人啊。)
❹ なんというすばらしいところだろうCこれこそ私が長年捜し求めていた桃源
郷にちがいない。(这地方简直是太美了。这真是我长期以来一直梦寐以求的桃
花源。)
❺ つまらない、いやしい女に一目ぼれをし、すぐ夢中になるなんて、なんとい
うことでしょう。(一眼就喜欢上了那个平庸、出身卑贱的女人,并且迷上了
她,我这算是怎么回事呀。)
第8課企業内の聖人229
匕ご^〜のかたまり 极端前(人),有强烈倾向的(人)
「〜のかたまり」の形で、ある性質・傾向などが極端に強いことを表す。
❶ 孫どもふたりは、大きいほうも小さいほうもエネルギーのかたまりみたいな
もので、少しもじっとしていない。(两个孙子无论大的还是小的都像是精力过
剩,一刻也静不下来。)
❷ 氏はまさに学ぶ意欲が旺盛な、好奇心のかたまりだったC (他真是个热爱学
习,有着强烈好奇心的人。)
❸ 右半身マヒで失語症の私が、一体どうやって生きていけるのかと、不安のか
たまりとなったC (我因右半身瘫痪失去了语言能力,心中非常不安,真不知道
以后该如何才能生活下去。)
❹ こいつはばかでかい小説を4つか5つか書き、それでポックリ死んでしまつ
た誇大妄想のかたまりみたいなやつだった° (那家伙写了 4部还是5部大型长
篇,然后突然死了,是个极端的妄想狂。)
❺ あんな愛社精神のかたまりのような人は今ではもうどこにもいないのだ。
(像他那样执迷不悟地爱着公司的人现在不多了。)
三旦 それはそれでいい 那样做也没有什么不好,只是…;(要是
I••・的话)那也就算了,可是…ノ
前に述べていたことは一応了承するが、それと対照的に後の事柄を持ち出し
て議論するときに使う。
❶ ひとつのことにとりかかると、それに心から没入してやりとげ、あとに好印
象を残す。それはそれでいいことなのだが、給料分の働きになっていない。
(一旦着手做起某件事来,他是全身心地投入,给人印象不错。那样做也没有
什么不好,只是没能做出那份エ资该做的工作来 。)
❷ 暴力をふるう夫と別れたいというなら、それはそれでいい。しかし、後の暮
らしをどうしょうかと考えたことがありますか。(想和有暴力倾向的丈夫分
手,这也没什么不好。不过,你想过分手以后的生活吗?)
❸ わからなかったらそれはそれでいいが、わかっているのに黙ってわからない
ふりをするなんて、わたしにはとうていできない。(要是不知道的话也就算
了,可是明明知道却装着不知道,这我可做不到。)
❹ 理由があって来られないのならそれはそれでいいが、何の理由もない欠席は
ずる休みとするほかはない。(如果有什么理由不能来的话那也就算了。可是没
有任何理由的缺席只能算是旷课。)
❺ 彼ときたら、毎日朝から晩まで働くことに夢中で、帰りが遅い。それはそれ
•でいいが、休みの日になると、またお客付き合いがあるので家族とゆっくり
230日语综合教程第六册
話すひまはまったくない。(他呀,每天从早到晚埋头工作,很晚回家,这我也
认了。可是到了的反日又有应酬,根本没有时间和家里人相处。)
匕竖となると那样的话 I
接続詞のように用いて、「そのような事実をふまえる」という意味を表す。前
半にはその場で話し手が新たに知ったことがらや、他の人の発言内容が述べら
れ、後半ではそのような情報に基づいてそこから話し手が導き出した判断が表
される。「だとなると」「そうだとなると」のような形をとることもある。
❶ 外出したのは今日の午前中だけである。となると、マーケットに寄ったとき
に財布を落としたのだろうか。(我只是在今天上午外出过。那,钱包是在顺路
去菜市场时丢的?)
❷ 林と約束したのは今晩であり、私が聞き間違えているはずはなかった。とな•
ると、林のほうが勘違いしたか、忘れたか、どちらかしかありえなかった。
(和小林约的是今天晚上,我不可能听错。那,只能是小林犒错了,或是忘了。)
❸ 天気予報によれば今年の夏は猛暑とのことだ。となると、エアコンなどの値
段の高騰や電力不足の心配が予想される。(天气预报说今年夏天会很热。果真
如此的话,可以预计空调等的价格会上扬,电力也会不足。)
❹「山田さんのお母さんは病気で昨日入院しました。」「となると、山田さんは
今日学校に来られなくなりますね。」(“山田君的母亲昨天生病住院了。” “那,
山田君今天不能来学校上课了吧。り
❺ 一般消費者はカタログで商品を購入することに抵抗感を抱いていない。とな
れば、どうやって吉野さんが考えたプランに消費者の目を向けさせるか。そ
の最初のきっかけをどう作るかが極めて重要になる。(一般消费者并不拒绝根
据商品目录选购商品。这样,如何才能使吉野的计划引起消费者们的注意呢?
这初次机会的制造就显得非常之重要了 〇)
いくらなんでも 怎么说…都… j
副詞的な慣用句。「いろいろな事情を考慮に入れてみてもやはりおかしい/ふ
っうではない/常識の範囲を越えている」というような非難か恐縮の気持ちを
表す。
❶ いや驚いた。いくらなんでも、それはひどいよ。(这太让人吃惊了。无论如何
那太过分了。)
❷ いくらなんでも、この部屋はあなたには高すぎないか。月給の半分近くなっ
ちゃうよ。(这房子对你来说也未免太贵了吧。月工资将近一半没有了。)
❸ いくらなんでも、そのお金は受け取れません。あるいは慈善事業にでも寄付
第8課企業内の聖人231
してください。(怎么说这钱我都不能收。或者你们把它捐赠给慈善机构好了。)
❹ いくらなんでも、お父さんにそんな言い方をするのはあんまり失礼だ。親は
親、子は子だよ。(不管怎么说对父亲用这样的口吻说话太没礼貌了。父亲就是
父亲,孩子就是孩子嘛。)
❺ 私は頭を振って、湧いて出てきた思いを打消そうとした。いくらなんでも、
荒唐無稽にすぎる。(我摇了摇头想打消这突然冒出来的想法。无论如何这事太
荒唐了。)
~ないまでも 即使不・•・至少也要…;没有・••至少也…
動詞の否定形を受け、「AないまでもB」の形で「たとえAまでの程度には至
らなくても、せめてBぐらいは」という意味を表す。Aに、程度の高いことが
らが提示され、Bにはそれより低い程度のことがらが続く。文末には「すべき
だ」「ほうがいい」「てほしい」のような義務•命令•希望などの表現がよく用
いられる。
❶ 徹夜はしないまでも、、 せめて夜12時くらいまでは勉強したほうがいいん
じやないか。(即使不熬夜,至少也要学到12点左右吧。)
❷ ことばには表れないまでも、不賛成の意向は彼の態度から十分読める。(就算
是嘴上没说,可是从态度上完全可以看出他并不赞成这么做。)
❸ 日が暮れるまでとは言わないまでも、せめて明るいうちは手伝ってほしい。
(不说帮到天黑,至少在天没黑之前你可一定要帮我。)
G 大金持ちとは言えないまでも、十分豊かな生活ができるのだからいいじゃな
いか。(虽然说不上是个大富翁,但可以生活得十分富裕。这就够了嘛。)
❺春休みだったので、映画館は満員とは言えないまでもけっこう混んでいたC
(因为放春假,电影院虽然说不上客满,可人还是相当的多。)
j_なにしろ…攻也,一由・•于........... . .................................. 一—.—.— ...............
代名詞「なに」に動詞「する」の命令形「しろ」がついてできたものである。
他のことはさておいて、ひとつの判断や主張を、強める気持ちを表わす。
「何しろ〜だから(ので)、〜だ」の形式で用いることが多い。「何しろ」で示
される事柄はいずれも状態的なものである。
❶ 何しろその動物は体重が10トンもあるので、寝た場所と立ち上がるときに
足を踏みしめた場所は、雨が降るとそのまま水溜りになってしまう。(由于这
动物的体重有10吨,所以它睡过的地方,和站起来时用脚使劲踩过的地方下
雨都会成水坑。)
232 日语综合教程第六册
❷ 残念だが、私も知らないんだ。何しろ、卒業して以来、一度も会っていない
んだから。(很遗憾,我也不知道。毕业以后我们一次也没有见过面。)
❸ 何しろこの出来事が余り滑稽なので、ほかの事を何も考えずに、私たちはげ
らげらと、大笑いしてしまった。(这件事实在太滑稽了,大家什么都没想就哈
哈哈地大笑了起来。)
❹ 長谷川さん、重ねておめでとうございます。何しろ、いい仕事を幸運にも手
に入れられたわけですからね。(长谷川君,再次祝贺你。你很幸运地得到了一
个好工作。)
❺ 何しろ学校のすぐ近くなので、授業の鐘の鳴るのを聞いてから、走って登校
しても間に合う。(因为家就在学校旁边,所以听到上课的铃响了之后跑着去学
校也来得及。)
んふ〜しようにも〜ない 想・•・也做不了 !
動詞の意向形を受けて、後ろには否定の意味の表現が続き 、「そうしょうと
思ってもできない」という意味を表す。用法上は「〜ようにも+同じ動詞の可
能の否定形」とほぼ同様である。動詞の基本形に「にも」がつく場合もある。話
し手自身も不可能なことを認めているニュアンスが込められている。
また、「〜たくても〜ない」にも近いが、こちらは、話し手はしたいと望んで
いるが、制限されているのでできないという気持ちである。
❶ あなたを全面的に信用しようにも、それだけの根拠がないではないか。(即便
我想完全地相信你,也没有足以使我相信的证据啊 。)
❷ 夢の中で、私は恐くて助けを呼ぼうにも声が出なかった。(梦中我害怕极了,
想喊救命来着,可就是喊不出声来。)
❸ 相手国消費者のニーズを調査さえしないで、むやみに輸出の拡大を図ろうに
も限度がある。(不了解出口对象国消费者的需求盲目打算扩大出口那是不行的。)
❹ 19のとき、私は何もしないでぶらぶらした。職を見つけようにも雇ってく
れるところがなかった。(19岁那年我整天无所事事,想找工作也没有地方愿
意要我。)
❸ 駅のベンチで眠るのは寒すぎるし 、といってあの付近の宿屋に泊まろうに
虫、お金を持っていない。(睡在车站的长凳上太冷了,想住进附近的旅馆又没
有钱。)
りら〜とばかり几______________________
体言や用言の終止形を受けて、「まるで〜と言うかのように」という意味を表
す。言葉では言わないが、それを様子で表している場合に使う。この場合、用
第8課企業内の聖人 233
法上は「〜と言わんばかりに」とほぼ同様である。
❶ 山本さんは、意見を求められると、待っていたとばかりに自分の説を展開し
始めた。(征求山本意见时,他急不可待地说起了自己的看法。)
❷ 資本主義のもとでは、生産と競争が無秩序に行われる。なにか儲かりそうな
ものがあると、資本は我先にとばかり、そこに殺到する。(资本主义制度下的
生产和竞争处于无政府状态。什么东西看似有钱可赚,资本就会蜂拥而至,唯
恐落后。)
❸ みんなは、こんなごたごたに巻き込まれたら大変だとばかりに、適当にお
茶を濁しておいた。(大家的言词含糊了起来,像似不愿被卷入到这场纠纷中
去。)
❹ これで最後だとばかりに、金をたたきつけて出ていった。(他把钱ー扔就走
了,简直就是在说这可是最后一次了。)
❺ 鈴本さんは、責任はお前にあると言わんばかりの態度だったc (铃木的态度就
像是在说责任在你〇 )
❻ それはまるで、会いたくて身も焦がさんばかりに待ち焦がれていた人間に
やっと会えた、と言わんばかりの視線だった。(那目光就像是在说我终于见到
了我一直渴望见到的人了。)
/ごとき/ごと< 犹如…,宛如…......................... j
「ごとき」は文語助動詞「ごとし」の連体形で、「ごとく」はその連用形であ
る。現代日本語にもよく使われていて、文法上「ようだ」と同じ用法である。「ご
とくに」はその古い言い方である。「体言の」「活用語の連体形」を受ける。
❶ あんな大きな船でも、大波に本の葉のごとく揺れているc中に乗っている人
は立っていられないだろう。(偌大的船在大浪中犹如一片叶子般地摇晃着。船
上的人连站都站不稳吧。)
❷周知のごとく、世界の大口は限りない増加を続けている。ところが、わが国
の人口は減る気配を示している。(众所周知,世界人口正在不断地增长。而我
国的人口却有下降的趋势。)
❸時間というものは矢のごとくはやく過ぎ去っていくものだ。あっという間に
50になり、あと数年で定年になる。(光阴似箭,ー转眼已经50 了,再过几年
都要退休了。)
❹ これはあたかも木によりて魚を求めるがごときむだじやなレ、か。(这犹如缘木
求鱼,劳而无功啊。)
❺ 離合集散は大の世のならいである。まして零細なるわが社のごときは、大材
がとどまらないのは当然である。(聚散离合是人间常有的事。更何况我们这种
零散的小公司留不住人オ也是理所当然的。)
234日语综合教程第六册
表現の学習
モう対比を表す表現 J
対比といっても、ただ両者を比較しているにすぎない場合と 「これが最高だ」
という気持ちで述べる場合、また二つ以上のものを対立させていう場合、いろ
いろと考えられる。ここにまとめてあるものは、二つ以上のものを対立させて
述べたいときの言い方に限る。
❶ 会長が事業の拡張を目指すのに対して、社長は小さく質の高い企業を目標に
している。(会长旨在事业规模的扩大,而经理的目标是要把公司建设成规模小
质量高的企业。)
❷ 人に迷惑をかけるくらいなら、自分でやる。(与其麻烦别人还不如自己做。)
❸ 冬になると、日本海側の地方では、大雪のために交通が止まり、雪に閉じ込
められてしまうところがある。二方、太平洋側では、乾燥した、晴れた日が
多い。(到了冬天,日本海地区有的地方会因大雪交通堵塞,被雪封在里面。另
一方面,在太平洋沿岸却多干燥的晴天。)
❹ このように、自然の中にある物質を組み合わせることによって、新しい物質
を次々に作り出すことができる。反対に、自然の中にある物質をいくつかの
物質に「分解する」ことによって、新しい物質を手に入れることもできる。
(这样,通过对自然物质的重新组合能不断地造出新的物质。相反,通过把自
然物质分解成几种物质也可以得到新的物质。)
❺ 小説の『三国志』では、劉備という人は曹操とは対照的に典型的な善玉、こ
の上なく立派な人間として描かれている。(在『三国志』里,刘备这个人和曹
操相反被描写成典型的好人,绝顶的优秀。)
❻ 仕事が楽なかわりに、給料は高くはない。(工作轻松但工资也不高。)
❼ 日本人の書いた探検紀行文はうっとりするほど美しい反面、いっこうに後で
役に立たない。それにひきかえ、イギリス人のそれは、まったく無味乾燥で
おもしろくないが、百パーセント役立つ。(日本人写的探险游记美得让人入
迷,但以后却根本没有用。与此相反,英国人的探险游记虽然写得枯燥无味,
却百分之百有用处。)
❽ シルクは肌触りがいい反画、洗濯は面倒だ。ちょっと着てクリーニングに出
すのなら、その金額もばかにならない。(真丝穿在身上舒服,不过洗起来麻
烦。每回都要拿到洗衣店去洗的话,那也是ー笔不小的开支 。)
❾ ふたりが堂々としているのに反して、わたしはただでさえ貧相なのに、脳出
血のあとだったので一層貧相に見える。(俩人都是仪表堂堂,而我本来就是ー
副枯瘦的样子,加上脑溢血之后,所以看上去显得十分寒磅 。)
あの人はio年もここに住んでいるわりには、この辺のことをよく知らない。
(他在这儿住了10年,可一点儿不了解这ー带的情况。)
第8課企業内の聖人235