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Published by johntss124, 2021-06-25 19:33:46

日语综合教程6

日语综合教程6

まとめ

以上の例を詳しく分析してみると例①②は対比的、例③〜例⑦は対照的、例
⑧〜⑩は対立的というふうに三つのグループに分けられる。

「〜に対して」は中間的な立場で冷静にふたつのことを対比させている。対比
の対象になるふたつの状況は必ずしも反対の性質を持っているとは限らない 。
「くらいなら」はどちらの状態も満足しているわけではないが、Aを選択するよ
りはBのほうがましだという表現である。

「一方(では)/反対に/対照的に/かわりに/にひきかえ」などはいずれも
対照的に二つの対立することがらを言っている。ただし、「にひきかえ」は前の
事柄とは反対に、前の事柄とは大きく変わって、というような主観的な気持ち
を込める。

ひとつの事柄の中に、まったく反対の性格をふたつ持っている意味を表す場
合は「反面」を使う。「とは反対に/に反して」は予想や期待とは逆に、の意で、
予想、期待、命令などの言葉につくことが多い。「わりに」は評価意識が強く、
予想されていた基準から外れているという話し手の気持ちを込めていて、ふっ
う硬い文体にはあまり使わない。

上邳語や語句の構成 ............................. I

1.〜きわまる

名詞か形容動詞の語幹につく。「きわまる」の漢字表記は「極まる」も「窮ま
る」も可能であるが、前者は「この上ない」の意で、「極まりない」と同じ意味
の用法である。後者は「行きづまる」「困り果てる」という意味を表すときに使
う言葉である。よく使うものとしては、「無作法•狡猾•残念・貪欲•不愉快・
素朴・卑劣•失礼•危険•鄭重・感・進退」などが上げられる。

❶ 断りなしに部屋に入ってくるとは、無作法極まる行為だ。(不敲门就进来是极
不礼貌的行为。)

❷ 水泳は退屈きわまるスポーツなので、ひとりで泳ぐのはやりきれない。(游泳
是ー项单调的运动,1个人游会受不了的。)

❸ この中国のビジネス風土の弱点といわれているところを見たが、なぜこれほ
どまでに低評価なのか残念きわまる思いだった。(当我读到被罗列出来的中国
商务环境方面存在的这些问题时,对中国在这方面获得的评价竟然会如此之
低,感到十分遗憾。)

❹ 賄賂をうけたり、公金に手をつけたりして、本当に貪欲極まる人だ。このよ
うな人を指導者陣から追放しないと、国民の不満を招くことになるに決まつ
ている。(受贿,挪用公款,真是个贪得无厌的人。不把这些人从领导的岗位上

236 日语综合教程第六册

清除出去,肯定会引起老百姓的不满。)
❺ ことはすでに重大な事態にまで発展した。彼も進退きわまる苦境に陥った。

(事情已经闹到这个地步,他也陷入了进退维谷的境地。)

2. 〜はずれ

名詞の後にきて複合名詞になる。ある範囲、仲間から除いたり、予測や目標
からそれたり、大きさなどが規格外にあったりするなどの意味を表す。「季節外
れ•調子はずれ•期待はずれ・道はずれ・仲間はずれ」などがある。

❶ 今年の5月の連休中に、この山麓一帯が突然季節はずれの雷雨に襲われ、落
雷で家屋一棟が焼けた。(今年5月连休时,山脚ー带突然遭到这个季节不常见
的大雷雨的袭击,有栋房子被落雷击中烧了。)

❷ たまに近所の子供たちが遊びに来ても、すぐ仲間はずれにされてしまう。仲
間たちと協力して遊ぶということが嫌いなのだ。(偶尔邻居家的孩子们来玩,
也马上就被排斥在外。因为他不喜欢和小伙伴们ー起玩。)

〇 見当はずれの治療を行っている間に、取り返しのつかない事態を招いてしま
う。(诊断错误的治疗会引起无法挽回的后果。)

❹相変わらず客は私たちだけだった。店内には季節はずれの、けだるいボサ・
ノバが流れていた。(仍然只有我们几个顾客。店里放着过时的、软绵绵的波萨
诺伐舞曲。)

❺ 私の父の生まれ故郷は、東北の岩手県の北はずれ、青森県との県境に近い小
さな村である。(我父亲出生在东北岩手县北端靠近青森县县界的ー个小村庄。)

3. 〜まわる

動詞の連用形を受け、「そのあたりを〜する」という意味を表す。「走り回る・
駆け回る•逃げ回る・見回る•歩き回る•持ちまわる」などがある。

❶ 彼はあわててドアから飛び出し、病院じゆうを逃げまわった。(他慌慌张张地
从门里蹿了出来,在医院里到处乱逃。)

❷ 廊下を勢いよく駆けまわっていたふたりが、その曲がり角でぶつかったの
だ。(俩人在走廊上到处猛跑,并在拐角处撞上了。)

❸ 一軒一軒を見まわったあげく、この部屋を選んだのだ。(一家一家四处查看了
之后オ选的这里。)

❹ その男を見たのは、20分近く歩きまわった頃だ。(我见到那个男人是在街上
逛了近20分钟之后的事。)

❺ 大切な書類だから、やたらに持ちまわっては困る。(这个文件很重要,别到处
乱拿。)

第8課企業内の聖人237

練習

ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。

連中 売掛金 括る 事態 麻雀 下積み 一味 疚しい
酒癖 剥げる 詐欺 筋書き
償う 付き纏う 陰口 嫌悪 権化 脅かす 底力 取締役
矛先 長引く 肴 棚卸し
隨落 大義名分 重荷 開拓

徳目 お膳立て 表裏 発露

二、次の文の下線部の片仮名を漢字になおしなさい。
1. 彼は大学で二度もラクダイしたそうだC
2. 政治的なシュワンがある人だ。’
3. 役所にニッサンして許可をもらった。
4. ホンショウさらした怠け者の生活だ。
5. 外科が内科の意見を押し切ってゴウィンに手術をした。
6. こっちのほうに重大なオチドがあったのは、ほぼ間違いない。

7. 私の目をハバカるようにして、それを食べていた。

8. 夫とともに翻訳のシタウケの仕事をやったりして生計をたてていた。
9. 社会に害が及んだ、会社創立以来の大フショウジだった。
io.神が遣わされたキュウセイシュだ。

三、 次の質問に口頭で答えなさい。
1.試験委員たちはどうしてその男にいい点ばかりつけたのか。

2その男は集金の仕事をうまくやったのか。
3「上役は複雑な心境だった」とあるが、どんな心境だろう。そんな複雑な心境に

なった原因について話してください。

4. その後、男は何回も仕事を変えさせられたが、毎度どんな姿勢を示していたか。
5. その男はどうして周囲の人たちから愛されていたのか。
6. 男の人はどうして自殺したのか。
7. 男の人は「救社主」と呼ばれた。なぜそのように呼ばれたのか。
8. この小説は何を言おうとしているのか。読んだ後の感想をいってみなさい。

四、 次の文の下線部の意味を説明した上で、全文を中国語に訳しなさい。
1.その当人に、火のないところに煙をでっち上げ、上役に向かっての彼に不利な告

げ口はちょっとできない。

238日语综合教程第六册

2. あいつだって、何らかの意味で社に貢献している。
3. 当人は落ち度はなにもなく、愛社精神の権化なのだ。
4. なんということなく、周囲では一つの結論に到達した。
5. 企業にとってはお荷物だ。
6. 筋の通らない金にはまったく手をつけようとはしない。
7. 各新聞社から記者がやってきて、だれかれとなく聞きまわった。
8. 炎は燃え上がらず、丸く収まらざるをえなかった。

五、文頭にあげた言葉の用法として、次の文の下線部ではどのように使われているか。
意味あるいはその用法を説明しなさい。

/,たね
① 桃は果物のうちで一番仙人めいている。第一種の恰好が無器用だ。
② その子が実際太郎の種かどうか、誰も知っているものがいない。
③ うっかりして犯した誤りは後でみんなの笑い話の種になった。
④ 領土問題は、両国が戦争を起こす種になった。

2.念

① ぐずぐずしてはいけない。しかし念には念を入れて見ますから、ちよつとご
めんなさい。

② 不安の念に駆られ、仕事が終わり次第、両親のうちへ行って安否を確かめて
みょうと思いついた。

③ お客さんに不快の念を抱いて帰らせるようなことは、この店では絶対許さな
い。

④ わたしはすぐたたみかけて一言念を押しておいた。

3例
① ぼくたちは例のバーで会うことにした。
② 昨年の地震で全滅に近い被害を蒙った例地である。
③ 寝る前にすこし小説を読むのが例になっている。
④ 父は例によって、おまえがよければという態度だった。
⑤ 経営者たちはほかの自動車会社の例に怪空生産規模の縮小にとりかかるそ
うだ。
⑥ ありそうにもないことが、実はよく起こるのだという例のひとつだろう。

第8課企業内の聖人239

六、次の語群から最も適切な言葉を選んで( )に入れなさい。 必要な場合は適当
な活用形にすること。

ア矢先 イ事態 ウ抜け目のない エ足手纏い
; オさかなに カ口火を切る キ戸惑う クしわ寄せ
コ頭を悩ます サ肝をつぶす シ重荷
ケ大義名分 セ音を上げる ソ空しい
ス下積み

7.彼は課長と 、お互いに刃をかくした世間話を( )酒を飲んでいた。

2. 小寺から電話がかかってきたのは、仕事に追われている間に、いつのまにか約

束のことなどを忘れてしまったのかもしれない、と考え始めた( )だっ

た。

3. 人の機嫌を損ねることは絶対しない( )やつだ。

4. 予想しなかった質問をされてずいぶん( )ました。

5. 社長は( )を深刻に受け止めているとみえ、ずっと眉をひそめている。

6. 小さい子供が急に飛び出してきた。すぐ、ブレーキを踏んだから大丈夫だった

が、( )〇

7. どの会社も程度の差こそあれ、不況時の会社運営に( )ている。

8. 私には( )になる人もいないし、出かけようと思えばいつでも出かけら

れる。

9彼は10年前一度失脚してから、停年まで( )で過ごした。

10. 中村の好意を、信子は次第に( )に感じた。

11. 過去のことを顧みると、( )月日を送ったことを悔いてならなかった。

12. 自由競争という名の( )で、事実上の不平等がまかり通る。

13. その事件の複雑さには警察庁も新聞も( )てしまった。

14. 緊縮財政の( )が労働者の賃金低下となる。

15. 小林はこの仕事の( )男だった。今はさておき、当時は困難に満ちた

仕事だったそうだ。

七、次の語群から適当な対比を表す表境を選び、_______ に入れて文を完成させなさ
い。ただし、一つのことばは1回しか使えない。

反面 対照的に 一方 わりに くらいなら
反対に 対して 反して かわりに ひきかえ

1.文句を言っているようだが、その声は言葉とは なぜか明るかっ

た。

240 日语综合教程第六册

2. この室内の飾りの多くは役に立たない、邪魔にもならない。

3. これは努力の 報われることの少ない仕事だ。

4. 税金とは国民が政府を信頼して納めたものだ。それを国民に無断で勝手にそ

んなばかげたことに使う……と思っている人もいる。

5. 夏になると、南方では台風が襲来し、そこここで洪水が起こる。

北方では、水不足で日照りに見舞われるニュースもよく耳にする。

6. きやしやな体つきとは 彼女の粘り強さは相当なものだ。

7. 年初の予想に、今年の成長率は伸びないどころか、少し下がった。

8. 何事にも娘に甘い父に、母は厳しい。

9. 調査の瀬戸際で佐山が死んで大打撃だ。我々が悔しがっている、小

躍りしているものがある。

10.この映画はテレビで放送されてからずっと高い視聴率が保たれているのに

、よくなると予見したあの映画はあまり人気がないようだ。視聴者

の好みって本当に見当がつかないものね。

ハ、括弧の中の言葉を使って次の中国語を日本語に訳しなさい。

1.没有任何铃木记者的新消息,大家都认为他活着的可能性很小。甚至他的亲友

都开始相信他已经死了。(ところから〜と見られる/〜かける)

2他那很有自信的样子像似在说我们已经完全准备好了 。(お膳立て)

3. 我听人说上海是中国的第一大城市,只要想干,工作要多少有多少。于是就

来上海了。(何しろ〜から)

4. 怎么说我都不愿意每天光吃饺子。拜托了,你就为我们炒几个好吃的菜吧。

(いくらなんでも)

5. 朋友的婚礼,即使不参加,礼还是要送的。(ないまでも)

6. エ厂几百个年轻女工依我看没有一个人及得上我的阿姨漂亮。当然我觉得自己

有充分的理由值得在别人面前吹。(見るところ/に及ばない/に足る)

Z水是生物繁殖绝对必要的条件。那么沙漠水量的增减马上就会影响到生物的总
数量。(となると)

8.老师刚离开教室,学生们简直像是等着这个机会似地马上就开始闹了起来。全

•是些淘气鬼。(とばかりに/のかたまり)

第8課企業内の聖人241

9.想去旅游来着,可是既没有钱也没有空,所以结果是哪儿都去不成。(よう

にも〜ない)

10.那不知名的行星靠得更近了。驾驶舱里正用望远镜了望的人大声叫了起来:

“简直神了,行星上竟然有森林、河流和湖泊。草原上像是开着鲜花呢。”(惑星/
なんということだ)

11.路上有交通事故的遇难者,鲜血染红了路面。当时我很平静地走了过去。可

是走了一会儿,突然感到很不舒服,于是就蹲在路旁呕吐了起来 。(何という
こともなく/見過ごす)

九、言葉の決まり

1.次の文の( )に入れるのに最も適当なものを、ア・イ・ウ・エから一つ
選びなさい。

①昨日の同僚の集まりでは 、山田と野口が大声でけんかをして( )〇

アみすぼらしかった イみぐるしかった

ウむさくるしかった 工みかねた

② 部屋の内装の費用を業者に( )もらった。

ア見計らって イ見積もって ウ見込んで エ見通して

③ この企画の実施は皆さんの助力に( )ところが多いから、ぜひご協力

願います。

ア負う イ借りる ウ活かす エ働かす

④ もとより人間の体にはウィルスなどと戦う力が( )いるから、軽い

風邪なんか薬を飲まなくてもすむのよ。

ア 持たれて イ 構えて ウ 備え付けて 工備わって

⑤ 長年にわたる医療保険制度は高齢化社会を迎えるにつれ( )はじめ

た。

アこわされ イはずされ ウくずれ ェうしなわれ

2.次の に漢字1字を入れて四字熟語を作ってみよう。そして各熟語の意味説

明として最も適当なものをあとから選んで( )にその番号を書き入れなさ

い。

一戦一ー闘(①____________ ) ②意気______ ______ ( )

③_____ 一期ー一会( ) ④______ ー往( )

⑤危機ー () ⑥八方ー ()

242 日语综合教程第六册

⑦身 頭() ⑧乾燥()

ァー生に一度会う。

イ 平伏して頭をたれ、恐縮している意。

ウきわめて危なく差し迫った状態。

工味気なく、潤いのないこと。

才互いに気持ちが合うこと。

カ混乱してあちこち動き回ること。

キ 誰に対してもいい顔で応対すること。

ク 強い敵に対する苦しい戦い。

3. A.次の文の( )に適当な接続表現を入れて文を繋ぎなさい。

自然を美しく保つにはどうしたらよいか。端的に言えば、何もしないほうがよ

い。( )、「あるがままに」が一番よい方法だと思う。

最近、河川敷利用の計画のひとつとして、河原にグラウンドを作ろうとするも

のがある。もともと、河原は地盤がしっかりしていないから、そこに土を積んで

作ったグラウンドは、一雨降ればドロドロになってしまう。( )、ほかから

運んできた土が、河原の生物によいはずがない。(’ )、川の有効利用にと計

画したことが、かえって、悪い結果をもたらしているのである。

川を真に美しくするには、何もしないで、( )、生物が生きられる、そう

いう自然が大切なのである。

B.( )に適当な助詞を入れなさい。

① いくら電車が込んでも揺れても、ちやんと文庫本を読んでいる人が2、3人

( )いるのだ。

② 駅までは十分( )かからないから、一時を過ぎて出ても充分だ。

③ 百人( )集まらなかったが、80人ぐらい( )いると思う。

④ あの人は気が短いから、5分( )待っていられないよ。

⑤ 1時間、また1時間( )過ぎてしまったが、手術はまだ終わっていない。

⑥ 今朝の診療所はすいていて、診察まで10分( )待たなかった。

十、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

池袋から私鉄で約1時間半、秩父へ入る手前に奥武蔵と呼ばれる地域がある。秩
父山地に接する盆地を高麗川、越辺川、名栗川などの清流が細かく①蛇行しながら

流れている。
電車が奥武蔵に(I )と、こんな。深山幽谷が東京の近辺にあるのか、と驚

くような美しい山や川が車窓(II )現れる。
この景色は、十七、八年前には、ほとんど知られていなかった。しかし、池袋か

第8課企業内の聖人 243

らの私鉄が秩父まで開通してからは、(III )日帰りの行楽地として注目される
ように(IV )〇

⑦コトに清流は、釣り人や川遊びの家族連れに人気があって、春夏秋の休日には

川辺に人々の姿の絶えたことがない。
川から帰った森田さんは、前日に炊いたご飯と残り物のみそ汁(ア)朝食をとる。

テレビに目をやりながら、①もそもそと口を動かす。
一人暮らしは、「a 〔10年になる。奥さんを亡くしてから、ずっとである。
息子がふたりいるのだが、!"一」独立して、東京(イ)家庭を持っている。
「70過ぎてのひとり暮らしは心配だよ。["c」②観念して、うちに来たらどう

かね。」
電力会社に勤めている長男が、そう言ってくれている。子供のない長男夫婦に

とって、マンションの一室を①ティキョウするのは、お安い御用かもしれない。し
かし、嫁と差し向かいで昼御飯を食べる光景を頭に描いただけで、森田さんはうん
ざりしてしまう。

次男は高校教員で、こちらは子たくさんである。大学生の息子を頭に2男2女が
いる。「ー〇 夏休みの度に親子そろって奥武蔵に長逗留したものだが、末つ子が
中学生になった近年(ウ)、③その習慣も途絶えている。| e [受験で忙しくなっ

たのだそうだ。
森田さんは、どちらの家族ともいっしょに暮らすつもりはない。今更生活を変え

るのはつらいことだ。今のままの暮らしでいいと思っている。——食事も、御飯に
わかめのみそ汁と青菜のお浸しがあれば十分である。

「ハンバーグだ、シチューだと油っこい料理ばっか食わされたんじや 、かなわ
ねえよ。」時々、嫁たちの料理を思い浮かべながら、森田さんはつぶやく。殊に
次男の家族が長逗留していたころの、孫たちとのにぎやかな食事風景を思い出す
と、⑷なぜか憎まれ口になる。

「……おまけに子供らがうるさくて、食った気がしねえ。あんなのは、かなわね
えよ。」

朝食の後、森田さんはしばらく食卓を前に、うたた寝をする。テレビがっけっ
放しなので、眠っている森田さんの額やはげた頭に、青や赤の薄い光がせわしな
くめオドっている。

OD下線部⑦©は、読み方を平仮名で記し,®@@の片仮名は漢字に改めな

さい。

® ®@®®

244日语综合教程第六册

IBB次は(i )〜(hi )に入ることばの意味の説明である。それにあて
はまる語をそれぞれ考え出し、適当な活用形にして書き入れなさい。
(I)その場に行きかかる—
(ii)目標とするものが近い

(hi)自分にとってはちょうどいい一

(BB ( iv )に入るものを、次の中から選んで、それに〇を付けなさい。

アなる イなっている ウなった

個E)(ア)(イ)(ウ)に適当な助詞を入れなさい。
(7) (イ) (ウ)

OB | ー〜[e [に入る適切な言葉を、次のア〜才の中から選んで、記

号で答えなさい。同じ記号は2度使わないこと。

アとうに イかっては’ウもう エそれぞれオそろそろ

a( ) b( ) c( ) d( ) e( )

(IB下線部①ついて、これから「森田さん」のどのような様子が伺えますか、適
切なものを次からひとつ選びなさい。
ア 前日の残りを食事としていることに、嫌気がさしている様子。
イ テレビを見ているので、食事があまり進まない様子。
ウ ひとりきりでの食事であり、孤独で寂しさが感じられる様子。
エ 自分の好きなものを食べており、静かながらも満足している様子。

詹®下線部②について、1、「観念する」の語句の意味を記しなさい。2、何を
観念するのか、文中の語句を用いて説明しなさい。
1、
2、

dB下線部③「その」が指している内容を文中の語句を用いて30字程度で書き
なさい。なお、「〜習慣」の形で答えること。

(〇 下線部④について、憎まれ口になる理由を4〇字程度で説明しなさい。

第8課企業内の聖人 245

文学.語学の豆知識

描写の方法

描写は、説明と並んで、文章にとって欠くことのできない大切な要素であ
る。説明が、筆者の判断によって、考えや状態を述べることであるのに対し
て、描写は、見たり聞いたり感じたりしたことを、あるがままの事実として、
生き生きと描き出すことである。

描写は、一般に、小説や随筆などの文学的な文章に多く用いられる 。

A雨は、羅生門を包んで、遠くから、ざあっという音を集めてくる。夕闇は
しだいに空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜めに突き出した薑の
先に、重たく薄暗い雲を支えている。(芥川龍之介『羅生門』)

B空が曇って船が揺れたとき、一人の女が手すりに寄りかかって、しきりに
泣いていた。目を拭くハンカチの色が白く見えた。しかし体には更紗のよ
うな洋服を着ていた。(夏目漱石『夢十夜』)

Aは自然描写で、Bは人物描写である。Aでは、聴覚と視覚によって、雨や
雲などが描かれており、Bでは、しぐさや服裝などから、一人の女が描かれて
いる。

c「玉蜀黍はあるか。」
男の顔は曇ったが、相変わらず「ユー、アー、ウェルカム。」を繰り返しな

がら、いざなうように先に立ち、小屋の裏へ回った。そこに土を掘って火を
仕掛け、大きな鉄鍋がかけてあった。(大岡昇平『野火』)

Cは会話を交えた人事的な描写である。
描写する視点としては、時間の推移に基づく場合や遠近法による場合もあ
る。
描写をするときには、次の点に注意しよう。
① 観察した事実から、印象深い部分を選ぶこと。
② その描写の意図にふさわしい視点を選ぶこと。
③ それを描写するのに適した言葉を選ぶこと。

246日语综合教程第六册

読み物

たそがれ

•星新一

夜中に起きた時、既に異常さは周囲にあった。その男はベッドの上で寝
返りを打とうとし、様子の違っていることを感じた。なぜか自分のベッドの
柔らかさが、なくなっているようだったのだ。そのために、ふと目が覚めて
しまったのかもしれない。

目が覚めたついでだ、トイレに行くかな。男はそう思い、手探りでまく
ら元のスタンドを探り、スイッチを入れた。灯はついたが、それは薄暗い光
だった。男は眠そうな声でつぶやく 。

「おかしいな。これはもっと明るい電球のはずだ。球が切れたのなら、明か
りはつかないはずだし.... 」

トイレの照明も、また同様だった。いつもの明るさでなく、薄ぼんやり
とし、ゆっくりとまたたくように息づいていた。

「おれの視力が弱まったのだろうか……」
男は目をこすりながら、便器への水を流すハンドルを動かした。普通な
ら勢いよく水が出るはずなのに、水は音を立てることなく、静かにちょろ
ちょろと流れ始めるのだった。変だな。どうしたのだろう。
しかし、男の頭は半ば眠りの世界にあり、それ以上は考えようともせず、
彼はベッドに戻り、再び眠りについた。いつもの寝心地と違うことも気には
なったが、眠気のほうが強かった。男は得体の知れぬ不安の夢を見続けた。

翌朝。男のまくら元で目覚まし時計のベルが鳴った。しかし、彼はなか
なか目を覚まさなかった。熟睡のためでも、疲れているせいでもない。

ベルの鳴り方が変だったのだ。いつもの、眠気を吹き飛ばす激しい鳴り
方でなく、弱くゆっくりした、ちんちんという.音だった。時計が疲れている
かのようだ。

だから、男は目が覚めるまでに時間がかかった。彼は時計を見つめ、首
をかしげる。

「ぜんまいを巻き忘れるはずはない。この時計、故障でもしたのだろうか。
まだ買って間もないのに……」

曇った朝だった。どんよりした雲。窓の外の天候は、すがすがしいもの

第8課企業内の聖人247

ではなかった。それを補おうとして、男は言った。
「さあ、元気を出そう。」
自分に言い聞かせるように叫びながら、ベッドの上で少し跳ねてみた。そ
うすることによって、自分の体力が衰えていないことを確認できた。
体に異常はなさそうだったが、おかしな感覚はあった。彼は夜中の体験

を、ふと思い出した。柔らかいはずのベッドに、弾力が感じられなかった。
手で触り、押してみる。ふわふわしているはずのマットレスが、なんだ

かごわごわしている。不審感は高まり、更にマットレスの下の、ベッドのス
プリングをも調べる。それもおかしかった。手ごたえのある強い弾力を示さ
なかったのだ。

男はベッドの下をのぞいてみた。木製のベッドの脚。それに塗ってある
ニスがつやを失い、はがれかけていた。その下の材質は、かさかさした感じ
になっている。何十年と使い古したベッドではないのに 。

「変だなあ.... 」
男はまたつぶやき、テレビのスイッチを入れる 。それが彼の毎朝の習慣
だった。しかし、この朝のスイッチには、いつものようなぴしりとした手ご
たえがなかった。チャンネルを回す時も、どこかが引っかかるような、だら
しない感覚が伝わってくる。
やがて、のろのろと画面が明るさを帯び始めた。どこからともなく幽霊
が漂ってくるかのように、画面が出るまで時間がかかった。いや、出たとい
うより、出たのか出ないのかわからないような画面だった。
薄ぼんやりとしていて、鮮明さがまるでない。かすかに弱々しく揺れて
いる。前面のガラスが汚れているのかなと思い、男はてのひらでこすってみ
た。しかし、依然としてぼやけたままだった 。
テレビの音声部分も、画面と同じように生気がなかった。疲れた病人の
ような、かすれたかぼそい声で、よく聞き取れない。
「おい、しっかりしろよ。」
男は手でテレビのセットをたたいてみた。機械類の故障は、たたくこと
によって、さっと直ることがある。しかし、今回はそうもいかなかった。た
たいてから数秒間は、瞬間的に画像や音声が鮮明になるのだが、すぐ気力を
失うかのように、ぼやけたものへと戻ってしまう。チャンネルを切り換えて
も、ダイヤルをいじっても、その状態に変わりはなかった。
男は手を額に当てる。自分ではそう思っていないが、急に年を取ったの
じゃないかとの疑念が頭に浮かぶ。老いという言葉が、心の中で明滅する。
視力、聴覚、触覚の神経、それらが老化したため、辺りのものがこんなふう
に感じられるのじやないだろうか。嫌な気分が、体の中を通り抜けていつ
た。

248日语综合教程第六册

玉手箱を開けた浦島太郎のようなことが、おれの身に起こったのだろう
か。眠っている間に、いっぺんに老年へ移ってしまったという現象が……〇

そんないたたまれない気分を振りはらおうと、男は洗面所の鏡の前へ行
き、のぞき込んだ。曇っているというのか、鏡もまた反射力をだいぶ失って
いた。不安におびえながらも、彼は顔を近づける。

しかし、そこに映っている自分の顔は、昨日とそう変わっていなかった。
歯もしっかりしているし、髪も白くはなっていない。おれはまだ老化しては
いないんだ。何かの気のせいに違いない。彼は元気づく。ひげでもそった
ら、さっぱりした気分がよみがえるんじやないかな。

男はそれに取りかかろうとした。だが、蛇口をひねっても水の出方は弱々
しかった。石けんを使っても、泡はあんまり出ない。昨日取りかえた刃なの
に、切れ味はよくなかった。安全かみそりの道具そのものも、ねじが緩んだ
のか、がたがただった。時間をかけたけれど、ひげはよくそれなかった。

「どういうことなんだ……」
原因がわからないのでいらいらし、男は大声をあげたが、その声の反響
も弱々しかった。老齢のような、ひっそりとした無気味さが辺りに沈殿して
いた。
部屋の隅の方で、電話のベルが弱々しく鳴っていた。なんとか力を振り
絞って、電話機としての義務を果たそうとしている。そんな印象を与える鳴
り方だった。
電力が弱っているのかなと思いながら、男は受話器を取った。
「もしもし・一J
と応答すると、相手は名を告げた。親しい友人だと分かったが、なんだか別
人の声のようだ。男は言う。
「いやに元気のない声だな。どうかしたのかい……」
「いや、こっちは元気な大声だぜ。そっちこそ、どうかしてるんじやないの
か。活気が伝わってこないぜ。」
という相手の返事で、男はしばらく考え、そして言う。
「ははあ。とすると、電話機がおかしいんだな。テレビがおかしくなったよ
うに……」
「なるほど、そっちもそうなのか。いやね、朝起きてから、身辺の様子が、
どうもいろいろとおかしいんで、君に電話してみたというわけさ。電話の呼
び出し音も変だったな。いやいや鳴ってるようだった。そっちもそうなのか
い。これで、自分の頭が狂ったのじやないことがはっきりした。しかし、だ
からといって、安心したものかどうか、ますますわからなくなってきた。ど
うして、こんなことになったのだろう。」
「こっちだってわからんさ 」

第8課企業内の聖人! 249

男は答えた。お互いとも持っているのは不審感と疑問ばかり。与えよう
にも解答や説明材料は何もないのだ。電話は一応終わった。

男は考えをまとめようと、タバコをくわえた。しかし、ライターの火花
は燃えつきる寸前の線香花火のように弱く、なかなか点火しなかった。やっ
とともった炎も、弱々しく小さく、頼りなかった。タバコの味も、どこか気
が抜け、おいしくなかった。

「今日は、何もかもだめときやがる。しようがないな。ひとつ、コーヒーで
も沸かして飲むとするか.... 」

それに取りかかったが、ガスの炎もまた、息も絶え絶えという感じだっ
た。蛍の光と大差ないみたいだ。この調子だと、時間がかかりそうだな。そ
れに、なんとか沸いたとしても、コーヒーがいつものような味と香りを示し
てくれるかどうか....。

それを待つ間にと、男は新聞を取ってきた。紙面はぼやけている。印刷
インキが水で薄められたかのように、字がかすれていた。紙も黄色っぽく、
かさかさしており、どことなく老人の皮膚を連想させた。あまり読みにくい
ので、男はあきらめ、それをくずかごに捨てた。

男は窓の方へ歩く。スリッパの糸が切れたのか、ぱっくり口を開けた。彼
は脱ぎ捨てる。窓の外を見ると、そこの光景は昨日とずいぶん違っていた。

木や草花の葉、日照りが続いた後でもないのに、どれもぐったりと力な
く・しおれている。枯れかけているのだろうか。眺めていると、風もないの
に、ぽとりと葉が地面に落ちていった。

隣の家の庭に犬が見えた。いつもはむやみと高い声でほえ、暴れる犬な
のに、今日はだらしなく地面に寝そべったまま、じっとしている。しかし、
死んでいるのでないことは、かすかに尾を動かすことで分かった。

向こうの道を自動車が走っていた。いや、とても走っているなどと形容
できるようなものではなかった。よたよたと動き、すぐに、力つきたといっ
たように止まり、またあえぎながら少しだけ進む。そのあとの道路上には、
何かが散っている。塗料のはげ落ちた粉か、金属のさびか何かのようだ 。

止まったきりの車もある。弾力を失ったタイヤ。それが醜くゆがみ、表
面がぼろぼろにひび割れている。それを見守る、困りきった表情の持ち主。
押して動かすのも無理だと知ったからだろう 。

男はテレビのそばへ戻り、音声のボリュームをいっぱいに上げてみた。ぜ
いぜいという雑音が入るが、なんとかアナウンサーの声を聞き取ることはで
きた。〈ニュースを申しあげます。各地において、牧場の牛や馬、家畜小屋
の豚や鶏、それらが今日の早朝から、皆ぐったりとしております。疲れきっ
たような様子。動物ばかりでなく、至る所で、農場の植物もまた……〉

アナウンサーは必死に異常事態を告げているのだろうが、テレビを通じ

250 日语综合教程第六册

ての声は、かすれた悲しげなものとなっている。画面には、それらしき光景
が映っていた。もうろうとしていたが、活気のなさという感情だけは、はつ
きりとこっちに伝わってくる。

〈 調査の結果では、なんのビールスも検出されていません。細菌でもな
く……〉

それを聞き、男はうなずく、ビールスのせいなんかじやないだろうな 。生
物ばかりでなく、これは物品や無機物にも及んでいる。

「一体、どうしたんだ……」
男はテレビをたたいて叫ぶ 。それに応じるかのように、アナウンサーの
声が言った。
〈どうしたのかとの問い合わせが、各官庁に、またテレビ局にも殺到してお
ります。今までに分かった、それに対する、こうではないかとの仮説。い
や、これ以外に説明しょうがない考え方はこうです。この現象に共通してい
る印象は、疲労といえましょう。森羅万象、世のすべての自然や物品が疲れ
果てたのだということです。あまりに長い長い間、人間たちに使われ、人間
たちに奉仕し続けてきた。今日に至って、その疲れが一度に出た。もはや存
在することにも疲れたのでしょう。幸いなことに、人間だけは健在です。し
かし、それ以外のすべては、人間による酷使に耐えかね、老衰という状態に
なってしまったと称すべきで 〉
テレビの音声は、息切れしたように小さくなった。男は大きくうなずく。
「そうなのか。そう言われると、そんなふうにも思えるなあ。分かるよ。自
然界の持っていた精気を、何もかも人間が吸い尽くしてしまい、こうなった
というわけか J
そして、男は周りの物品に呼びかける。
「頼むよ、元気を出してくれ 」
しかし、なんの答えもない。老衰が一段と進んだような静かさ。その中
で、ベッドの脚が、もう力を使いきったというように折れた。続いて、机の
脚も……。

(『未来いそっぷ』新潮社より)

第8課企業内の聖人 251

本文 香住から白兎海岸へ

•啊部电

海を見て来いと言われて、わざわざ海を見に出かけるなんていうのは初め
てだ。

子供の頃からざっと四十年、湘南の海辺で暮らしてきて、ことさらしげし
げと海を眺めたことはない。私が元来景色というものに鈍感な人間だからか
もしれないが、相手が海のような茫洋たる代物では、こっちがいくら力んで
も仕方がない。そっとしておくほかはない。あれはお日様と同じようなもの
で、まともに観賞したりできるものじゃない、そこにちやんと控えていてく
れれば安心していられるという、そういう性質のものだと思っている。

山のふところで育った人は、山に対して、やはり私と似たような気持ちを
抱いているにちがいない。私のほうでは、山の奥深くに入ると、妙に落ち着
かなくて、すぐにも逃げ帰りたくなるのであるが。

そんなわけで、海も山も、景色のほうはもっぱら新婚さんやお年寄りの団
体さんにお任せして、当方が面白いのは、

景色よりもやっぱり人間、
どんな名所よりもやっぱり東京、
と、日頃から田舎の人たちの反感を買うようなことを公言してきた。
しかし、今度ばかりはそうも言っていられないらしい。なにがなんでも三
日間は海を見て暮らすこと—— それをやらないことには、帰るに帰れないと
いう悲壮な旅のようである。
実は私、日本海を見るのはこれが初めてだ 。玄界灘をチョイと遊覧船みた
いなもので走ったことがあるにはあるが 、そんなのは見た部類には入るまい 。
それに先刻も言った通り、海辺育ちの心やすさで、どこの海を見たって、
(あ、やってますなア)
ぐらいにしか思わない。あんなもの、三十秒以上眺めたことはない。
日本海だって、おおかたそんなものだろうとタカをくくっている。全然期

252日语综合教程第六册

待がない。見る前から、何も報告することがないんじやないかと心配してい
る。それで、途中で厭になって逃げて帰ってくるといけないからと、一計を
案じて、タフな友人を一人連れて行くことにする。

昔、テレビ局で一緒に仕事をしていた頃からの永年の飲み友達で 、気心の
知れたM君というのに電話して、「山陰へ二、三日、カニを食いに行く気はな
いかね?」と持ちかける。

「きみは何もしなくていいのだ。毎晩温泉に入って、酒を飲んでりやあいい
のだ」

などとうまいことを言って、その実、彼をカメラマン兼レンタカー用のお
抱え運転手として活用しようという悪い魂胆である。ワニザメをだます因幡
の白兎みたいなものだ。

かくして、無粋な男二人づれで出かけた。

来てみれば、日本海は、荒海だった----

これでは俳句としても字あまり、結論としても馬鹿馬鹿しすぎて話になら

ないが、私としては実感だから致し方ない。それも遠目に見ての印象ではな

い。二時間近く小舟の上で揉みに揉まれて、いい加減うんざりしたあげくの

正直な感想だ。

前日の午後京都を出て、山陰本線のジーゼルカーでゴトゴトと北上、まだ

うっすらと、あるいは斑に雪を残した但馬の山あいを縫って行くと、城崎あ

たりで日が暮れかかる。それからトンネルを抜けて、またしばらく行ったと

ころでようやく日本海が姿を見せる。地図でいえば竹野浜のあたり、山陰海

岸国立公園のただなかである。

私としては初対面だが、相手の顔まではよくわからないといったところだ 。

初春の夕闇の中に、あるかなきかの幽かなたたずまいを見せて、ひっそり

と息づいているかのごとくである。さしあたっては、

(なるほどね)

と言うだけにとどめ、詳しくは明朝とい

うことにして、浜坂で下車、その晩は湯村の

温泉にとっぷり浸かって寝てしまう。陸から 楮

海を見るばかりが能じやないから、あしたは

浜坂から香住まで遊覧船に乗って、海中公

園を探勝してやろうという寸法だ。 白兎海岸
朝起きてみると、空は予想に反して上天

気、遊覧船もちょうど本日—— 三月十五日—— から運航を開始する由で、朝

風呂でつるつるする顔を撫でながら、タクシーで船着場に馳せつける。

浜坂港はどこにでもありそうな山蔭の漁港だが 、まるで電気屋の店先みた

第9課 香住から白兎海岸へ253

いに沢山電球をぶらさげた漁船がずらりと並んでいるのは、あれがイカ釣り
ぶねか。

足もとにひたひたと寄せる水に、朝の陽がさして、勢いのいい藻が揺れて
いるのが透いて見える。どこの海を見ても、このごろはまず水を透かして見
る。きれいか、濁っているか。昔の人はそんなことは考えもしなかったろう
と思う。海の水はどこだろうと澄んでいるのが当たり前だったろう。

それともこれはわれわれが穢い海しか知らなくなって久しいからで、この
土地の人には真つ黒な海を想像しろと言っても、無理な注文かもしれない。
とにかく、初めて見る日本海の水のきれいなこと 、これはやっぱり印象的で
ある。

防波堤ごしに、沖はと見ると、ほとんど波もうねりも見せず、青々と大海
原がひろがっている。波荒き灰色の日本海、なんていう概念的な言葉を口に
したら罰が当たりそうな、明るい、のどかな眺めだ。

ところが、これがそうじやなかった!だまされた。いざ船で沖へ出てみて、
やっとわかった。

素人の甘さというか、遠目に望むと近寄って見るとは大違いというか 、急
転直下、日本海はやはり荒海、という大発見に達したのであった。わからな
いものだ。

われわれの乗り込んだこの船、「雄壮を誇る大型観光船」第一にほんかい
丸、触れ込みはともかく、普通の漁船をちょっとふくらましたような小型船
で、定員五十名とあるが、身軽なだけに、それだけ揺れもはげしい。揺れる
だけでなく、水面をバッタのように跳ねる感じである。

乗り合わせたのは、老大が目立つ三十名ばかりの団体客だが、こういう場
合のつねとして、お年寄りと女性を畳敷きのキャビンに入れて、若い者は
デッキに居残るかたちになったから、たまらない。

揺られる、跳ねる、水をかぶるで、うかうかしていれば、ベンチもろとも
海中に放り込まれかねない。右へ左へと転げたひょうしに 、鉄柱に頭をぶっ
つけそうになる。

(だいじょうぶかね?)
内心そう思わない者は、よほど命の惜しくない人間であろう。私は泳げな
いわけではないが、今回は日本海を見るだけのつもりで来ているのだから 、
水泳は又の機会にしたい。
そんなことを考えながら、臟で両足を踏んばり、片手でしっかりと鉄柱を
握りしめて、自分の転落を防いでいる。.
春先とはいえ、海上の風はまだ身を切るようだ。朝風呂で温もった顔も手
足もたちまち冷え切って、感覚がなくなった。それでも私は、横着な代りに
慎重だから、レインコートの中にはちやんと冬のマフラーを着込み、毛の手

254日语综合教程第六册

袋まではめて完全武装である。
われわれのすぐ後を追って出航したはずの第二にほんかい丸には、女子学

生とおぼしい一団が乗っていたが、いまごろは盛大に悲鳴の嬌声を発してい
るだろう。あっちに乗っておればよかったと、残念でならぬ。

ガイド嬢がいないとかで、船長兼機関士のおっさんがワンマンでアナウン
スを始める。流暢ではないが、これがなかなか味のあるガイドである。もつ
とも風がひどいので、艙にいる私にはとぎれとぎれにしか聞えないが。

なにしろ浜坂から香住まで二時間足らずのあいだは、奇岩怪石の連続で、
その一つ一つに名前がついているから 、解説するほうも忙しい。ひっきりな
しにやっている。

亀に似ているから亀島
穴が二つ空いためがね島
本のページのような横皺があるから頁岩
頂上に松が生えているから松島 、
窓岩蜂の巣岩鎧の袖
といったぐあいで、中には両面あって反対側から見るとインデアンの顔に
そっくりというのもある。洞門の命名も然りで、
朝日がさし込むから旭洞門
内部の形状から釣鐘洞門
というようなものだ。
世の中には大きな岩石や洞穴を目にするとむやみに興奮してしまう人もい
るらしいから、そういう人にはさぞかしこたえられない景観だろう。どうも
人間、洞窟があると入って寸法を測ったり、岩を見ると何に似ているか当
てつこしたりする習性があるようだ。
瀬戸内でいえば、鷲羽山といったようなものだろうか。そういえばたしか
あの辺の入江に象岩というのがあった 。
親切に説明してくれるのはありがたいのだが、よく聞き取れないのと、最
初の水しぶきの一撃で眼鏡が潮でべとべとに曇ってしまったので 、どれがど
の岩だか、さっぱり見分けがつかない。いきなり目つぶしをくらったような
ものだ。
絶壁沿いに船は一定速度で進むが、洞門には近づかない。アナウンスによ
れば、
「本日は少々波がございますので」省略して、先へ進むという。
なるほど、日本海は荒海だ、と思ったのはこの瞬間である。
(これで「少々」かね?)
どうして「相当」なものだ。私は広島や岡山でヨットやボートに乗ったこ
ともあるが、こんな「雄壮」な気分を味わったことはないし、自衛艦に乗っ

第9課香住から白兎海岸へ 255

て太平洋上に出た時は、実に春風馬台蕩たるものだった。それで私はなんとな
く了解したような気持ちになる——どうやら、これぐらい波があっても、こ
の程度の小船でどんどん行ってしまう、その辺が日本海の流儀というものら
しい。

そう思って眺めると、やや離れた海上に一つだけぽつんと突き出した岩礁
を、海鵜のむれが占拠して、しきりに首を伸ばしてあたりを睥睨している。そ
んな何でもないような光景も、いやに黒々と不吉に見える。不気味で、底知
れぬ、こわい海という感じだ。これで空が曇っていたら、もっとこわさを増
すにちがいない。

太平洋側に住んでいると、海のむこうはアメリカ、というぐらいに考えて
別に怪しみもしないくせに、ここでは水平線のかなたは昔の満州か(日本の侵
略によってかって現在の中国東北部に「満州国」という国家が作られたー編集者注)ソ連
領土か、など頭の中で地図を描いているうちに、ばかに果てしないような気
がしてくる。

灯台のある伊笹岬を過ぎてから、背後を振りあおぐと、崖の上にはりつい
たように、一かたまりの部落がある。ガイドの言葉を借りれば、「平家の落ち
ぶれました部落でございます」ということで、この落人部落は往時は電気も
水道も電話もなく、周囲からまったく孤絶していたそうだ。それが戦時中そ
こに軍の監視所が出来たので、道路も通り、おかげで便利になったという。私
には奇岩怪石の説明よりも、こういう話のほうが興味がある。会ってきたわ
けじゃないが、平家部落には美男美女がわんさといるそうである 。

そうこうしているうちに、キャビンの中の女性たち何人かが船酔いで吐いた
模様である。やっと香住港について、出てきたのを見ると、ハンカチを口に当
てた人や、顔面蒼白で船着場の便所に駆け込む人もいる。お婆さんが多かった
のは可哀相だったが、船には強いはずの私もいささかグロッキーである。

波しぶきを浴びながらさかんにカメラのシャッターを切っていたM君も顔
色冴えない。彼は来月取材でタンカーに乗り込んで 、ペルシャ湾に行くそう
だ。マンモスタンカーも結構だが 、「雄壮を誇る大型観光船」もなかなかのも
の、「遊覧」というよりは「荒行」に近く、船に弱い人には奇岩怪石が地獄の
光景にも見えようという貴重な二時間であった。

静かな香住の町を、足元もおぼっかなげにさまよい歩いて、蕎麦屋に入り、
熱いきつねうどんを食べたら、息を吹き返した。

「やっぱり海は遠くから見るに限りますなア」
「いや、まったくですなア」

ということになり、今後は陸地からのんびり海を眺めることにして 、鳥取
県に入る。

256 日语综合教程第六册

鳥取で駅レンタカーを借り、私よりも車に強いM君の運転で、大砂丘はひ
とまず横目に素通りして、網代、田後、浦富と、観光道路をたどる。奇岩怪
石にうなされたあとでは、このあたりの海のうららかな表情には、ホッとさ
せるものがある。

民宿がずらりと並んでいる。低い軒先に漁網が干され、漁具が掲げられ、洗
濯物がひるがえり、狭い路地では子供たちが遊んでいるという 、型通りの漁
師部落へ、そろそろと車で入って行く。その生活のにおいにも、旅行者をホッ
とさせるものがある。

どうしてだろう、私が柄にもなく、しんみりしてしまう。ほんとうに旅情
を動かされるのは、私の場合、素晴らしい景色を見たからでも名所旧跡を訪
ねたからでもないようだ。何ということもない田舎町の、昼下りの人気のな
い通りに、埃だらけの赤いポストがぽつんと立っていたりするのを目にして
も、なんだかしんみりしてしまう。

旅をすると宣言して、生活から逃げてきたつもりが、結局よその土地へ
行っても他人の生活に目が行ってしまうのでは、出てきた意味もないような
ものだ。私はやはり「景色よりも人間」派、徹頭徹尾野暮な生活派であるら
しい。

田後港の船着場へ向かって、ごたごたした細い坂道を下りて行きながら、
私は勿論こことは地形も風光も違うが、伊豆の仲木を思い出した。昨年の下
田沖の地震で全滅に近い被害を蒙った例の部落である。テレビの番組を作っ
ていた頃、私はロケであそこの民宿に一週間ほど泊まったことがある。十年
も前だが、ちょうど民宿がブームになりかけていた。魚もうまかったし、家
族ぐるみのサービスも旅館の比じやなかった 。居心地満点で、言うところは
なかった。だのに、どうもうしろめたく、心が安らかでない。今ならわかる
ような気がするが、私はどこへ行っても、そんなふうに他人の生活に心を奪
われてしまうのだ。すると、もう旅どころではなくなるる

波止場の突端に車を止めて、降りる。
どうやら漁船は出払って、長い防波堤に囲まれたプールのような水面に釣
り糸を垂れている人がいるぐらい。森閑としている。
それにしても、いい天気だ。山陰では〈弁当忘れても傘忘れるな〉と言う
らしいが、私は傘は力バンの底にしまったまま、弁当げことばかり考えてい
る。さっきもここへ来るのに、駅弁のカニずしを買い込んできたばかりで、目
の前の海を見ながら、二人して車の中でそれを食べる。
ここから浦富を回って鳥取砂丘へ引き返すわけだが、私はしかるべく時間
を調整して、砂丘の落日なるものを見てやろうと思っている。しかし、それ
にはちょっと早すぎるようだ。
「なる典くゆつ < り行ってもらいたい。ちょうど砂丘のかなたに日が沈むと

第9課香住から白兎海岸へ257

ころへ行き合わせたいんだから」
などと、初めて見る場所なのに勝手知ったようなことを言って、M君の運

転に注文をつける。
私は、しかし、砂丘の入口にはあんまりいい感じは受けなかった。店の看

板が立ち並び、ロープウェイが走っているのを見ただけで、また記念撮影用
のラクダがいると聞いただけで、御免こうむりたい気がしている。

そこで、砂丘に入る前に、その少し手前で、つまり砂丘の北端につづく海
岸ぷちで、車を停めてもらった。

ここらは、背後に防砂林の迫った、ごくありふれた、狭い砂浜で、ちょっ
と見には湘南あたりの海岸と変わらない。だが海の青さにまして、なんと砂
のきれいなことだ。

私は海を眺めるのも忘れて、しやがみ込み、砂を手にすくってみる。白い
というのでもない、黒いというのでもない、よく見れば茶色の粒や不透明な
ガラスの粉のようなのも混っている。それが明るい大きな空の下で、遠目に
白々と映えるのであるらしい。

私は手に取ってみるだけでは足りなくて、空きビンを拾って、地質学者み
たいにこれに詰めた。それはいま私の机の上に砂時計のように立っている。
小さな黒い海鳥の羽毛も一本、そこにささっている。

なんとも子供じみた振る舞いと思われるかもしれないが 、海辺育ちの私は、
こんな砂を前にしては平静でいられない。昔のことがいちどきに戻ってくる
ようだ。まわりにまるで誰も人がいないのも、遠い昔にかえったみたいだ。

ひょっとすると、今度の旅行の最大の印象は、日本海の「雄壮を誇る大観
光船」についではこの砂粒かもしれない。勿論このあとで歩いた大砂丘でも、
つぎの日に見に行った白兎海岸でも、私は砂の研究を怠らなかったが、最初
の感激でもう十分のようであった。

国鉄の急行の呼称にも、観光バスの愛称にも、はては饅頭の名前にもなっ
ている「白兎」——その名を冠した海岸には私は幼稚園以来興味を抱いてい
る。まさかワニザメはいないだろうが、蒲の穂ぐらいは生えているだろうと
思っている。

来てみると、何のいわくもなさそうな、のどかな浜辺で、こまかく打ち寄
せる白波が目にしみる。子供の頃、近所に稲葉君という子がいたので、私は
「稲葉の白兎」という綽名をつけてやったことがある。そんなつまらぬことが
思い出される。

沖のほうに、薄墨色の雲が張り出して、その末端がおかしなぐあいに垂れ
下がっている。あそこまで雨が来ているのか。

「おいおい、あれは竜巻じゃないか?」
私はM君に呼びかけたが、竜巻というものを目撃したことがあるわけじや

258日语综合教程第六册

ない。しかし、いかにも暗雲といった、陰悪な雲だ。
さて、このあとも、またあくる日も、海沿いのドライブを楽しんだが、こ

れ以上海の描写は勘弁していただく。私はどうも文章で海を写すのは苦手で
ある。皆さんそれぞれ御自分の目で見られるのがよかろうと思う。

また、どの場所のどんな位置から眺望した日本海がよかったか、私にも若
千意見はあるが、これも差し控える。論争してもはじまらない。

とにかく、海を見て来て、私はやや希望を取り戻したようである 。

以下は余談——
雪がちらつく頃がシュンだという山陰の名物松葉ガ二、やや時季外れだっ
たが、東京から行ったわれわれにはやはり珍しい。折角だからというので、帰
途鳥取駅で一匹ずつ一番大きな奴を買い込む。籠にドライアイスを入れてく
れたが、みそは保証しかねるという 。
こういう時、旅慣れた男というのは頭が働くもので、暖房のきいた客席に
持ち込むと傷みも早いから、グリーン車の車掌専務室の横にある戸棚(?)に
カニを預かってもらおう、とM君が言い出した。
車掌さんをつかまえて交渉する。相手は微笑しながら聞いていたが、
「実はカニはお預かりしないことになっているんです 」
と、やんわり断られてしまった。
理由を聞けばもっともな話で、われわれも引き下がらざるを得なかった。
——以前やはり乗客のカニを何人分か 、親切心から預かったことがあったが、
先に降りた客が他の客の大きなカニを持って行ってしまったので、車掌はその
差額を弁償させられた。それ以来、カニだけは預からない方針であるという。
「最近はカニも高価ですからね」
と車掌さんは慨嘆して、
「それに、あのロッカーはカニを入れるところではないんで」
そう言って一礼して行ってしまった。
さいわい、山陰本線も新幹線もさして暖房が利いていなかったから、われ
われは少々寒かったが、カニにはよかった。カニ一匹無事に東京へ運ぶ苦労
からいっても、日本海はやはり遠い海のようである。

(『現代日本紀行文学全集』補巻三 ほるぷ出版より一部削除)

第9課香住から白兎海岸へ 259

注釈

❶香住(かすみ) 兵庫県豊岡市にある。
❷白兎海岸(はくとかいがん)

鳥取県鳥取市西部にある海岸。
❸湘南(しようなん)

神奈川県南部の地域名。三浦半島から伊豆半島の基部にかけての相模湾沿岸一帯。
❹ 玄界(玄海)灘(げんかいなだ)

福岡・佐賀両県の北方に位置する海。
❺「山陰」と「山陰本線」

「山陰」は山陰地方の略。中国山地の北側、日本海に面する一帯。鳥取、島根にあたり、広くは、
山口県、兵庫県、京都府の日本海側を含む。「山陰本線」は山陰地方を走るJR本線。東海道本線
京都駅から日本海岸に沿い、鳥取・島根両県を抜け山陽本線幡生駅に至る。

0因幡(いなば)

山陰道の一国。古くは「稲葉」をあてた。現在の鳥取県の東部にあたる。
❼但馬(たじま)

旧国名。今の兵庫県の北部。
❽城崎(きのさき)

兵庫県城崎町のこと。
❾竹野(たけの)

兵庫県城崎郡にある。
❿山陰海岸国立公園

京都、兵庫、鳥取の一府二県にまたがり、日本海に面する国立公園。京都府網野町から鳥取砂丘
まで。海食景観と海岸砂丘とが特色。
”浜坂(はまさか)
兵庫県美方郡にある浜坂町のこと。
®鷲羽山(わしゅうざん)
岡山県倉敷市南東部にある山。
® 伊笹岬(いささみさき)
兵庫県城崎郡香住町余部にある岬。平家の落人伝説が残る。

• ペルシャ(Persian)湾 波斯湾

アラビア半島とイランに囲まれた湾。
®網代(あじろ)

鳥取県東北部にある地名。
爲田後(たじり)

鳥取県岩美郡岩美町にある。
浦富(うらどめ)
鳥取県岩美郡岩美町にある。
够下田(しもだ)
静岡県南東部の地名。伊豆半島の南東部にあり、港として古くから繁栄。

260日语综合教程第六册

!新しい言葉

鈍感(どんかん) [名・形動] 感覚や物事に対する感じ方などが鈍いこと。Z
感觉迟钝。
茫洋(ぼうよう) [形動] 文語的な表現。広々として限りのない様子。/广
阔无垠Q
代物(しろもの) [名] ある評価の対象となるもの、または人。多く
侮っている。/家伙。
力む(りきむ) [自五] ①息を詰めて力を入れる。/使劲,用カ。②勢
いをはる。/虚张声势。
そっとしておく [連語] 相手の気持ちをかき乱したりせず、静かな状態
のままにしておく。/不惊动,不去动(它)。
買う(かう) [他五] 自分から自分の身に招く。/招致,惹起。
灘(なだ) [名] 波が荒くて、航海が困難な海。/浪高难航的大
海,波涛汹涌的大海。
ちょいと [副] わずかである様子。少しばかり。/稍微,有点。
先刻(せんこく) [名•副] ①副詞的に使う。さきほど。さっき。/方オ,刚
オ。②すでに。とうに/早就,早已。
心安い(こころやすい) [形] ①特に親しく、遠慮のいらない間柄である。/知
心朋友(关系),不分彼此的好朋友(关系)。②心
大方(おおかた) [名・副] 配ない。安心できる。/放心,安心。
①(名)大半。大部分。/大部分,多半。②(副)大
タフ(tough) [形動] 体。ほとんど。あらかた。/大・既,大约,大致。
たくましい様子。疲れを知らない様子。/健壮
気心(きごころ) [名] 的,不知疲倦的。
その人が本来持っている気質からくる、外面に
持ちかける(もちかける) [他ー] 現れにくい考え方•気持ち。/脾气,性情,性格。
話をして、相手に働きかける。/主动提出,先
レンタカー (rent-a-car) [名]
お抱え(おかかえ) [名] 开口。
賃貸しの自動車。/租用的汽车。
わにざめ(鰐鮫) [名] あることをさせるために専従の人を雇うこと 。
また、その雇われている人。/私人雇佣的,私
因幡の白兎(いなばのしろ [慣] 人包的。
うさぎ) 「ワニ」は鮫類の古名。「ワニザメ」は猛悪な鮫
の俗称。/凶恶的鲨鱼。
「古事記一神代」に見える出雲神話のひとつ。白
兎がワニザメを欺いて隠岐の国から因幡の国へ
渡ろうとして、失敗し、皮を剥がれたが、大国
主命に救われて恩返しをする。インド、南洋の

第9課 香住から白兎海岸へ 261

説話の影響があるとされる動物報恩説話。/因

幡的白兔。

無粋(ぶすい) [形動]. 人情味・色気•風流気などに欠けていること。人

うんざり 情の機微や物事の面白みを解さないこと。/不
ジーゼルカ ー(diesel car)
风流,不懂风雅。
ごとごと
斑(まだら) [副] すっかり飽きていやになる様子。/厌腻,厌烦。

山間(やまあい) [名] 「ディーゼルカー」ともいう。ディーゼル機関を
縫う(ぬう)
ただなか(直中) 原動機とし、旅客や貨物を乗せて走る鉄道車

夕闇(ゆうやみ) 両。/内燃机车。
明朝(みょうちょう)
とっぷり Z[副] 重いものが何度も触れ合うときの音の形容。
陸(おか)
能(のう) 嘎吱嘎吱。
探勝(たんしょう)
寸法(すんぽう) [名・形動] 地色と異なった色、または同色の濃淡が、あち
こちに点々と混ざること。はだら。/斑驳,斑
由(よし)
斑点点。
馳せ着ける(はせつける)
ひたひた [名] 山と山との間。山峡。/山沟,山谷,峡谷。

藻(も) [他自五] 物と物との間を曲折しながら進む。/穿行。
防波堤(ぼうはてい)
うねり [名] 文語。①広いところや多くのものの真ん中。/正

中间。②ある物事が行われている真つ最中。/正

当〜之际。
[名] 夕方。夕方の暗さ。/暮色,黄昏。

[名] みようあさ。/明早,明晨。

[副] すっかりあるものの中に入る様子。/饱蘸,浸透。

[名] 「りく」とも読む。陸地。陸上。/陆地。

[名] 自慢できること。得意とするところ。/本事。

[自サ] 文語。景色のよい所へ出かけて行き、それを眺

めて味わうこと。/探访名胜。

[名] 事を行う順序。計画の手順。段取り。/(预定的)

计划,安排,步骤,顺序。

[名] ①伝聞の内容を示す。〜とのこと。/听说,据

说。②わけ。事情。/缘故,原委。③原因、理

由。/理由。④手段。方法。/手段,方法。

[自ー] 急いで走って行き着く。/赶到,跑到。

[副] 波が静かにくりかえし打ち寄せる様子。また、

その音の形容。/浪涛滚滚而来,波涛哗啦哗啦

地拍打着。

[名] 水中に生える草。/藻类。

[名] 外海の荒い波をさえぎって港内の水面を穏やかに

保っために、港の外側の海中に築いた堤。/海堤。

[名] 波が上下に大きく揺れること。またその波。/滚

滚的浪潮。

262 日语综合教程第六册

大海原(おおうなばら) [名] 広々とした海。/大海。

罰が当たる(ばちがあたる) [慣] 人間の悪事に対する神仏のこらしめ。/遭报应。

急転直下(きゅうてんちょ [名] 自動詞サ変•副詞的にも使う。行き詰まってい

っか) た物事の状態や様子が急に変わって解決に向か
うこと。/急转直下。

触れ込み(ふれこみ) [名] 実際とかけ離れた内容の前宣伝。/吹嘘。
キャビン(cabin) [名] 船の客室。/客舱。
デッキ(deck) [名] 船の甲板。/甲板。
かぶる(被る) [他五] 水・波などを浴びる/浇,冲。
うJかう:か [副] ① 不注意で、ぼんやりしている様子。うかつで、
気がつかないでいる様子。/马虎大意,不注意。

② はっきりした目的もなく、のんびりしている

様子。/悠悠忽忽,稀里马虎。

もろとも(諸共) [副] 文語。副詞的にも使う。一緒にすること。/连
同--- 起。

鱸(とも) [名] 船の後方。船尾。/船尾。
踏ん張る(ふんばる) [自五] 開いた足に力を入れて体を支え、倒れまいとし

てこらえる。/叉开双脚使劲站住。

身を切る(みをきる) [慣] 寒さ、つらさなどの厳しい様子。身を切られ

る。/寒风刺骨。

温もる(ぬくもる) [自五] 暖まる。/暖和起来。

横着(おうちやく) [名・形動 できるだけ骨を折らないようにして、得をしよ

•自サ] うとすること。転じて、怠けること。/偷懒,耍

滑。

おほしい(思しい) [形] 〜と考えられる。〜思われる。/好像是,仿佛是。
さぞかし [副] 下に推量を表す語を伴い、「さぞ」を強めた言い

方。/想必,一定是。

当てっこ(あてっこ) [名] あてくらべ。/比赛猜谜。
水しぶき(みずしぶき) [名] 「しぶき」を強めていう語。激しい勢いで細かく

飛び散る水。/飞溅的水沫,飞沫。

べとべと [副・形動] 物が粘りつく様子。べたべた。/发粘。
見分けがつく(みわけ
[連語] 見分けられること。区別できる。/能区分,能

がっく) 辨别。

目つぶし(めつぶし) [名] 灰や砂などを投げつけて相手の目を見えなくす
ること。またその灰や砂など。/扬沙土等迷住

眼睛。

食らう(くらう) [他五] 受ける。蒙る。/蒙受,挨。
絶壁(ぜっぺき) [名] きりたった険しい崖。断崖。/绝壁。
春風馬台蕩(しゅんぷう [形動] 春風が穏やかに吹く様子。転じて、人柄のお
おらかな様子。/春风荡漾,春风彩荡;(转指)胸
たいとう)

第9課 香住から白兎海岸へ263

襟豁达。

流儀(りゅうぎ) [名] 学問・技芸などで、その家・流派などに古くか

ぽつん ら伝えられている、それぞれのやり方・しきた
海鵜(うみう)
睥睨(へいげい) り。転じて、物事の独特のやり方。しきたり。/
ばか
果てしない(はてしない) 流派;(转指)作风,做法。
振り仰ぐ(ふりあおぐ)
落ちぶれる(おちぶれる) [副]. ほかから離れてひとつだけある様子。ぽつり。/
落人(おちうど)
孤零零地,孤单单地。
往時(おうじ)
孤絶(こぜつ) [名] う科の水鳥。日本・韓国・ウスリー地方に分布
わんさ
顔面蒼白(がんめんそう し、沿岸にすむ。/海鹃鹳。

はく) [名・他サ] 文語。横目でじろりと睨みつけること。周囲を
グロッキー (groggy)
冴える(さえる) 睨みつけて勢いを示すこと。/斜视;睥睨。
タンカー (tanker)
マンモスタンカー (mam­ [形動] 程度が甚だしいこと。程度が並外れているこ

moth tanker) と。Z异常地,特别地。
荒行(あらぎょう)
おぼっかない(覚束無い) [形] どこまで行ってもきりがない。/无边无际的,没

尽头的。

[他五] 急に顔を上に向けて遠くを見る。/仰视,仰望。

[自ー] 地位•生活状態などが惨めな状態になる 。/落

魄,衰败。

[名] 「おちゅうど」とも読む。「おちびと」の変化。戦

いに負けて、人目を忍んで逃げていく人。比喩

的に物事に失敗して、世間の人目を避けて逃げ

ていく人の意でも使う。/败逃者,逃亡者。

[名] 文語。過ぎ去った時。昔。/往时,往昔。

[名・自サ] ひとつだけぽつんと離れていること。ほかとの

関係が絶えて孤立すること。/孤绝,孤独无靠。

[副] 大勢の人が押しかける様子。/ー拥而来,彳艮多。

[名] 顔色が青白いこと。血の気がなく青ざめてい

ること。/脸色苍白。

[名・形動] ひどく疲れて、ふらふらになる様子。/站不稳,

累得头昏眼花。

[自ー] 色が鮮やかに感じられる。特に顔色などが生き

生きとする。/清澈,鲜明。

[名] 石油を運送するタンクをつけた船。油送船。/油

轮。

[名" 超大型油送船。/巨型油轮。

[名] 肉体の苦しみをこらえてする修行。/艰苦修行。
[形] しっかりした所を欠き、不安を感じさせる様

子。/不稳当,不稳定。

264 日语综合教程第六册

きつねうどん [名] 油揚げ・ねぎなどを入れた、かけうどん。/加
油炸豆腐干和葱花的汤面。

素通り(すどおり) [名・自サ] 立ち寄らずその前を通り過ぎること。/过门不
入,过而不停。

うなされる [自ー] 恐ろしい夢などを見て眠ったまま、苦しそうな
うなり声をあげる。/魇。做了可怕的梦。

うららか(麗らか) [形動] 空が美しく晴れて、太陽がやわらかく照ってい

る様子。天候が暑くも寒くもなく穏やかな様

子。うらら。/明媚,晴朗。

路地(ろじ) [名] 家と家との間の狭い通路。/胡同,小巷,弄堂。

型通り(かたどおり) [名・形動] 決まりきった方式どおり。型のごとく。/老ー
套,照例。

柄にもない(がらにもない) [慣]• 地位・能力•性格などにふさわしくない。/不
合身份(地位或性格)。

しんみり [副] ①静かに落ち着いている様子。/平心静气。②
心が沈んでさびしい様子。/沉寂地。

昼下り(ひるさがり) [名] 午後2時前後をさす。/过晌。
始めから終わりまで方針•考えなどが変わらな
徹頭徹尾(てっとうてつび) [副]

野暮(やぼ) い様子。Z彻头彻尾。
ロ ケ(location) [名・形動] 洗練されておらず田舎くさいこと。/土里土气。
[名] 「ロケーション」の略。撮影所の外で映画の撮影

をすること。野外撮影。/外景拍摄。

ぐるみ [接尾] 名詞について、「〜もあわせて」「〜と一緒に」。/

连,带,包括在内。

突端(とったん) [名] 長くつき出たものの一番先。/突出的一端。

出払う(ではらう) [自五] ①物がすっかり出てしまう。出尽くす。出切

る。/全都出来。②人が残らずそとへ出て、あ

とに誰もいなくなる。/倾巢而出。•

森閑(しんかん) [形動] 人気がなくあたりがひっそり静まり返っている

様子。/万籁俱寂,鸦雀无声。

駅弁(えきべん) [名] 鉄道の駅で売る弁当。駅売り弁当。/车站上卖

的盒饭。

ロープウェイ(ropeway) [名] 空中ケーブル。/空中缆车,空中索道。
御免を蒙る(ごめんをこう [慣] ①相手の許しを得る。/允许。②相手の許しを

むる) 得て失礼する。/失陪了。③(「〜は御免蒙る」の

海鳥(うみどり) 形で)〜は断る。/不干。
[名] 海や島などにすむ鳥の総称。Z海鸟。

ささる(刺さる) [自五] 先のとがったものが、他の物に突き立つ。/剌,

扎。

第9課 香住から白兎海岸へ265

一時に(いちどきに) [副] いっぺんに。同時に。一度に。/ 一次,同时。
怠る(おこたる) [他五]
しなければならないことをしないでおく。怠け
はては(果ては) [副] る。/怠慢,疏忽,玩忽。
ある物事をし続けて、終わりのころに至って。
饅頭(まんじゅう) [名] しまいには。ついには。とうとう。/最后,终
于,末了。
蒲(がま) [名] 小麦粉で作った皮の中に餡などを包み込み、蒸
して膨らませた菓子。/包子。
穂(ほ) [名] 蒲科の多年草。池や沼に直立して生え、高さ1、
2 メートル。/宽叶香蒲。
いわく(日く) [名] 花や実が長い花軸のまわりに群がりついたも
の。稲などに見られる。/穗。
目に染みる(めにしみる) [慣] ①いうことには。/日。②いわれ。わけ。由来。
理由。/理由,缘由;隐情。
稲葉(いなば) [名] 見た印象の強いこと。目に強い刺激があるこ
綽名(あだな) [名] と。/醒目。
姓氏。/(姓氏)稻叶。
薄墨色(うすずみいろ) [名] 人の特徴を表した、本名のほかにつけて呼ぶ名
張り出す(はりだす) [自五] 前。ニックネーム。/外号,绰号。
竜巻(たつまき) [名] 薄い墨色。/淡墨色。
外へ出つ張る。/突出。
差し控える(さしひかえる) [他ー] 局部的におこる激しい旋風。水、家、人畜など
を空中に巻き上げる。/龙卷风。
余談(よだん) [名] 物事の程度を控えめにする。遠慮してやらな
・い。/控制,节制。不谈。
ドライアイス(dry ice) [名] 話題の本筋からそれた話。/闲话,废话,多余
的话。
グリーン車(greenしや) [名] 炭酸ガスを冷却・圧縮して固体にしたもの。/干
冰。
やんわり [副] JRで、もとのー、二等車にあたる客車。/软席
车’一等车。
やわらかに。おだやかに。/柔软的,委婉的,温
和的。

言葉の学習

そ〉何が何でも 无论如何,不管怎么样,非…不可

連語である。後ろの文にくるのが話し手の意志を表す表現であるか、それと
266日语综合教程第六册

も非難を表す表現なのかによって意味が違う。前者は「どんなことがあっても」
「なんとしてでも」の意味で、話し手の物事をやり抜くという意気込みを示し、
後者は、マイナス評価表現で、「いくらなんでも」「どんな理由があったにして
も」の意味を表す。
❶ わがチームがオリンピックに出場できるかいなかは今度の試合にかかってい

るのだから、何が何でも勝たなければならない。(这次比赛关系到我们队能不
能参加奥运会,所以无论如何一定要赢。)
❷ 大地震の破壊が却って人々に、市の姿を何が何でも元に戻そう、さらにもつ
と素晴らしい、もっと美しい市を建設しようという強固な感情を強く引き起
こした。(大地震的破坏激起了人们无论如何要恢复城市面貌,要把城市建设得
更好、更美丽的强烈愿望。)
❸ 案の定、術後のコバルト治療も、一向に痛みを和らげなかった。本人に、何
が何でもよくなろうという気力があり、ベッドに起き上がっているうちはま
だよかった。(果然,手术后的钻疗也没能使疼痛减轻 。本人有无论如何都要使
病好起来的毅カ,起身在床上坐坐时还算可以。)
❹ 何が何でも人にものを頼むときには、あれこれ注文をつけてはいけない。(不
管怎么说托人办事时不该提这样那样的要求。)
❺ これはお母さんが一生苦労して稼いだお金で、何が何でもこちらの都合でい
い加減に使ってはいけないのだ。(不管怎么说这些钱都是你母亲ー生辛苦赚来
的,我们不能因自己的需要随意地乱花。)

匕3〜ないことには要是不…,如果不… :

仮定条件を表し、「なければ」「なくては」と言い換えられる。後ろの文には、
「前の状態が実現されないと、次のマイナス状態になる」と、「前の状態が次の
状態を実現する前提条件となって、つまりAがないと、Bも成立しない」とい
うふたつの場合が可能である。

❶ わたしがだれかに話をしないことには、このことはだれにもわからないだろ
う。(这件事如果我不告诉别人谁也不会知道的 。)

❷ 実際に行ってみないことには本当の様子はわからない。(要是不实际去看一看
的话,就不能了解真实的情况。)

❸ ともかく現物を見ないことには、なんともお答えできません。(总之不看到实
物我无法给你答复。)

❹ 会社が総力をあげて取り組まないことには、この問題を解決することは不可能
だ。(公司如果不动员所有力量来专心做的话,这个问题是不可能得到解决的。)

❺ 彼を疑うにしても、そのアリバイが崩れないことには、どうすることもでき
ないだろう。(即便对他有所怀疑,但只要他能证明自己不在现场,就对他无可
奈何。)

第9課 香住から白兎海岸へ 267

ョ 塹風 には同一動詞が(做)倒是(做过),但是…

同じ動詞を二度繰り返し用いて「一応はそうしたけれども、望ましい結果に
なるかどうかわからない」という意味を表す。

❶ 誰も知らない札幌で、ひとりで住むのは気楽で、自由を楽しめるには楽しめ
るが、なんとなく淋しい。(在没有熟人的札幌1个人生活,的确可以享受轻松
自在的独身生活,但也会感到寂寞。)

❷ 手伝うには手伝うが、あまり当てにしないでね。(忙是可以帮的但别指望我。)
❸ ヨーロッパ旅行は行きたいには行きたいが、今のところは金もないし時間も

ないからあきらめよう。(欧洲旅游想倒是想去,问题是我现在既没有钱也没有
时间,所以就算了吧。)
❹ 受け入れるには受け入れるが、やりかけている仕事を一応済ましてからと
断っておかなければならない。(这工作,接受倒是可以接受下来。但是话必须
说在前头,要等我把手头做到一半的工作做完了之后才能开始。)
❺ 僕はまだこの計画をあきらめたわけではありません。作るには作りますが、
ただいますぐにはできません。(我并没有放弃这个计划。造是要造的,但不是
现在马上就造。)

w或毫をくくる轻视‘小看,不当回事 j

たいしたことはないと思って軽く見る。

❶ こんな背筋が寒くなるような話を耳にしても「しょせんアメリカでのこと、
日本にとっては対岸の火事」と高をく くってきた。(即便是听了这些令人毛骨
悚然的事情,也还是不屑ー顾,以为“这毕竟是发生在美国的事,对日本来说
只不过是隔岸观火。”)

❷ 黄山だって、おおかたそんなものだろうと高をく くっていた。ぜんぜん期待
していなかったが、行って見たら、この世にはたしてこんなに素晴らしい眺
めがあるのかと非常に驚いた。(原以为黄山嘛也不过如此,没抱太大的希望。
可是去了一看大吃ー惊,人世间竟然还有这么美的风景啊 。)

❸ どうせたいしたことではないと高をく くっていた小林さんも、関係者たちの
間で、「怪談」と呼ばれていつまでも話の種になっている理由がようやく理
解できた。(小林一直满不在乎地以为这是区区小事。现在他总算理解了这件事
为什么会被有关人士称之为“怪事”,并一直成为他们谈论的话题。)

❹ 親の援助なくしてもこの問題を解決できると高をく くっていたが、完全に失
敗してしまった。(我一直乐观地认为无需父母的帮助也能解决这个问题,但失
败了。)

❺ 田舎だから何もないだろうとたかをく くっていたが、洗面所や台所にも最

268日语综合教程第六册

新設備が整っていて、びっくりした。(原以为乡下嘛一定什么也没有,看来真
是小瞧了。盥洗室啦厨房啦全都是最新的设备,让人惊叹不已 。)

匕拿〜というところだ差不多是…,也就是… I

動詞・名詞・数字のあとにつき、おおよそのレベルや大体の数を表す。「と
いったところだ」も言う。
❶その身なりなら、まあほどほどというところだが、この前着ていたのがもっ

といいんじゃないの。(那身穿戴还算过得去。不过上次穿的那身衣服不是更好

吗?)
❷ 毎晩そんなに酒を飲むわけではない。せいぜいビール一本といったところ

だ。(不是每晚都喝这么多酒的,最多也就是ー瓶啤酒吧 。)
❸今の状態はにっちもさっちもゆかなくなったというところだ。でももしかす

ると、諦めたところに開けるかもしれないよ。(现在可谓是山穷水尽了。可是
也许会是柳暗花明又一村呢。)
❹ 奥さんの病気は、はっきり言うと全治の見込みは薄いのです。目下新しい薬
などで持たせている状態で、寝たり起きたりというところでしょうね。(夫人
的病实话说治愈的可能性很小。目前是靠使用新药维持着。也就是睡睡起起

吧。)
❺ どこかで働きたい。何もしない日々はつまらない。父も母ももう若くない。

もう肉体労働をするには体力がないのだ。だから、親孝行半分、自分のため
に半分というところだ。(我想工作,无所事事的日子实在太无聊了。父母亲都
老了,已经没有力气干体力活了。所以也算是一半尽孝道一半为自己吧。)

院急 〜にかぎる_一.最好是…............................. I

「〜のほかにまさるものがない。〜もっともよい」、という意味を表す。強い
アドバイスだから、相手に相談された場合や相手のことを心配して言う場合の
ほかは目上の人や親しくない人にはあまり使わない。会話では「〜のが一番だ」
もよく使う。

❶ 日本に行くなら4月にかぎるよ。どこへ行っても桜が咲き乱れていて、とり
わけそよ風に吹かれて花びらがちらちら散っているときの美しさはとても言
うに言われぬものだ。(去日本最好是4月。到处是盛开的樱花,尤其是微风轻
拂花瓣飘落时的美啊真是无法用语言形容。)

❷ ほかに、鮭と、ジャガイモと、玉葱など何でも入っているので、ごった鍋と
いっているのだが、すごくうまいんだ。冬の寒い時はこれにかぎる。(此外,
大马哈鱼、土豆、洋葱等,里面什么都有,所以叫做煲大杂蜂嘛。真是好吃极
了。冬天寒冷的天气吃这个最好了。)

第9課 香住から白兎海岸へ269

❸「司会を頼まれちやったんだけど、代わってくれない。」「君がやるにかぎる
よ。上手なんだから。」(“他们让我主持会议,你来代替我好吗? ” “非你莫属
啦。你主持得很好嘛。り

❹ 私たちは試行錯誤を繰り返しながらここまで発展してきたのだ。なにごとも
やってみるにかぎる。(我们就是在不断摸索中发展起来的。任何事情都要试着
去做。)

❺ こうしたことは専門家にまかせるにかぎる。餅は餅屋、ということわざがあ
るだろう。(这种事最好是让专家来做。不是有句老话“做什么都还得靠行家”
嘛。)

上分〜にもまして胜过,比…更… ]

・ 「Aはもちろん〜だが、Bはもっと〜」という意味を表す。Aと比較すること
で、Bの程度の高さを強調する表現である。

❶ こういうすばらしい話を人々に知らせずにおくべきではないと、このふたり
は考えた。私も確かにその通りだと思ったし、今では以前にもましてそう確
信している。(她们俩认为这么美好的故事应该让大家知道。我也是这么想的,
而现在比以前更坚信这一点。)

❷ ほかのどんな日にもましてよく覚えているのは、その日に、思うだに恐ろし
いことが起きたからだ。(唯独记着那一天是因为那天发生了一件连想都不敢想
的可怕的事。)

❸ その時、あなたは誰にもまして緊張していただろうc実験の結果が会社の今
後の発展に大きく影響するのだから。(当时你比任何人都紧张吧。实验的结果
对公司今后的发展影响太大了。)

❹ 一位だ、と先生から教えられたその瞬間、私はどんな時にもまして幸せに
思った。(当老师告诉我得了第一名时,那一瞬间我比任何时候都感到幸福。)

❺ 日本のアニメはどこの国でもたいへんな人気だ。ストーリーの面白さはもち
ろんだが、それにもまして映像がうつくしい。(日本的动画片在任何国家都很
受欢迎。不用说动画片的故事有趣,更值得称道的是画面漂亮。)

... 〜こふだ/ことか !

1.話し手の驚き、感動、皮肉、感慨などを表す。感慨の気持ちを表す場合、「疑問

詞+ことか」の形でも使う。(多么地…)

❶ 海の青さにもまして、なんと砂のきれいなことか。(多美的沙滩啊,胜过了蔚
蓝的大海。)

270 日语综合教程第六册

❷ あのころ兄と一緒に村の家で過ごした週末や長い休暇は、なんと楽しみやと
きめきに満ちていたことか。一生忘れられない思い出だ。(那时和哥哥ー起在
农村的家里度过的周末或长假是多么的令人感到愉快兴奋啊。真是终生难忘的
回忆。)

❸ 旅行するときは仕事も悩みもきれいに忘れ、自然の中に自分を入れると心が
純化される。なんと心身ともに開放されることカ、。(旅游的时候,要把工作、
烦恼全都忘得一干二净。把自己融入于自然之中,就会感到心灵的净化。真是
全身心的放松啊。)

❹ 押し寄せる波にまかせて、サーフボードに乗って進むのは、なんと刺激的
で、スケールの大きいことか。(乘在冲浪板上乘风破浪地前进是多么地富有
刺激,真是海阔天空啊。)

❺ こんなことにならないように今まで何度注意したことか。今にして考えれば
馬耳東風だったのだ。(为了避免这种事情的发生迄今为止我不知道提醒过她多
少次了。现在看来全都是耳旁风了。)

2間接的に忠告や命令の機能を果たすのに用いる。相手に相談された場合や相
手のことを心配して言う場合は目上の人にも使える。話し言葉。(就得)

❶「コンピューター買ったばかりで、まだ使い方がよくわからないんだ。」「ま
ずは、キーボードに慣れることだ。」(“我刚买了台电脑,还不会用呢。” “你得
先习惯键盘。リ

❷ 日本語の会話力をつけるには、日本人の友達を作ってたくさん話すことです
よ。(要想提高日语ロ语能力,就得和日本人交朋友,与他们多交谈。)

〇とりあえず、卒業までにパソコンと英語の資格、また車の免許は取っておく
ことだよ。(总之,在毕业之前你要获得电脑和英语方面的资格证书,还有驾车
执照。)

❹ 早く彼女を忘れることだよC元気出して、仕事、仕事。(你最好早点儿把她忘
了。打起精神来工作。)

❺ 子供は子供同士、われわれ大人が中へ入ってかかわらないことだよC (孩子们
之间的事我们大人就别在里面掺和了。)

〜てもはじまらない・•・做也是无济于事的

何にもならない、むだだという意味を表す。

❶ ここで抽象的な原則論を振り回してみてもはじまらない。実際に当てはめて
みることがキーポイントだよ。(在这儿摆弄抽象的原则论是徒劳的。重要的是
要结合实际。)

❷ 失敗したらしたさ。いまさらいくら後悔してもはじまらない。(失败就失败了

第9課香住から白兎海岸へ271

嘛,现在就是后悔也已经来不及了。)
❸ そんな人にいくらお詫びしてもはじまらないよ。最初から許すつもりはな

かったのだから。(向这种人道歉是没用的,他原本就没想要原谅你。)
❹ 泣いてもはじまらないことだから、泣くより落ち着いてよくよく考えてくだ

さい。そうすると、問題を解決する方法が出てくるかもしれない。(这事哭也
解决不了问题,还是静下心来好好想想,说不定会有办法的 。)
❺ いまさらがたがたしてもはじまらない。奴らの勝手にさせろ。(现在唠叨也没
用,随他们去吧。)

そ4さして〜ない算不上

それほど特別にはないという意味を表す。「これといって〜ない」「さほど〜
ない」「あまり〜ない」などの言い方に近いが、文語的な言い方。

❶ 考えてみれば、さして難しい仕事とは思えないが、なかなか思ったとおりに
進まない。(想来也算不上是一件多难的工作,可就是进展得不如想像的那么顺
利。)

❷ この地方は、さして名物はないが、景色だけはすばらしいところだ。(这地方
没有什么可以算得上是特产的东西,只是风景还不错。)

❸ わたしのような年の人間はいわゆる会社人間で、さして趣味もない。(像我这
样年龄的人就是所谓的公司人,也没什么特别的嗜好 。)

❹ さして広くも・部屋はとてもきれいに片付けてある。(算不上宽敞的屋子被
收拾得干干净净。)

❺ 写真展に行ったが、さしておもしろい作品には出会わなかった。(我去看了摄
影展,没看到什么特别吸引人的作品。)

礦の学習

q勧請を枣す枣現...... 一..... .. 一_ _ 」

勧めるといっても実際には「〜することを勧める」と「しないことを勧める」
とのふたつがある。前者には、「ませんか/〜てもらえない/〜ほうがいい/〜
ば(たら)いい/〜ことだ/〜にかぎる」などがあり、後者には、「〜までもない/
〜ことはない/〜なくていい」などがあげられる。

んすることを勧める

❶先生、一緒にお昼を食べに行きませんか。学校の向かいに新しい店ができた

272日语综合教程第六册

んですよ。(老师和我们ー起去用午餐吧。学校对面新开了一家餐馆。)
❷ 何はおいても、まず山へ行き、森を散策し、自然界の生の鼓動に耳を傾けよ

う。(首先要去爬山,去森林散步,去倾听自然界生命的跃动 。)
❸ 楊さんは一年生でしょう。このゼミは専門科目が始まってからでないと入れ

ないんだよ。あと一年待ってもらえない?(小杨你是一年级学生吧。这个研
究课程必须是专业课程开始之后才能参加的。能不能再等一年呢?)
❹(友達と)携帯、使わないほうがいいよ。電波の影響を受ける人もいるんだ
よ。(手机还是别用的好,有人已经遭电波辐射的影响了。)
❺「いつも英語のスペルミスが多くて。」「じやあ、パソコンのスペルチェック
の機能を使えば(使ったら/使うと)いいよc」(“我总有不少英语拼写方面的错
误。” “你可以用电脑的拼写检查功能嘛。”)
❻ 病気を早く治したいのなら、ゆっくり休むことだ。(想要病好就得好好休息。)
❶ やっぱり医者に診てもらうにかぎるよ。このままでは病気が重くなるから。
(最好还是去医院吧。这样下去病会变重的。)

まとめ

勧誘を表す表現は使・う人やその相手がどんな人であるかによって言い方も違
う。「ませんか」は自分と相手が一緒にすることにも、相手だけがすることに
も使う表現で、「よう」は呼びかける言い方で、ポスターなどに使うことが多
い。

「てもらえない?」は間接的に聞き手に行動を要求するのに使う。話し手の要
求を一方的に押し付けるニュアンスが強いから、社会的に上位の人物や、職差
上の権威をもつ人物などでないと使いにくい。親しくない人には「もらえませ
んか」「もらえますか」など言う。

「〜ほうがいい」はあまり強く勧めない場合に用いる。目上の人や親しくない
人には「〜ほうがよろしいのではないでしょうか」などを使う。

「〜ばいい(〜たらいい/〜といい)」は提案する場合に使う。使い方によって
は、相手に冷たい感じを与えてしまうので、目上の人などには、「〜たら(と)よ
ろしいのではないでしょうか」を使い、これより改まった言い方には「〜では
いかがですか/ではいかがでしょうか」がある。

「〜にかぎる/〜ことだ」は相手に相談された場合や相手のことを心配して言
う場合に使う点では共通しているが、「にかぎる」は目上の人や親しくない人に
はあまり使わないが、「ことです」は目上の人にも使える。

2.しないことを勧める

❶ あの映画ビデオは買うまでもないよ。借りて見れば十分だよ。(没必要买那部
电影的录像,借来看看就行了。)

❷ わざわざ買いに行くことはないよ、インターネットで予約すれば空港でチ

第9課香住から白兎海岸へ273

ケットを受け取れるから。(没必要特意去跑ー趟,可以先在网上预购,然后在
机场取票。)
❸ 私のは買ってこなくていいよC今日はお弁当を持ってきたから。(不用买我的
那份,今天我带盒饭来了。)

まとめ

「〜までもない」は、〜するほどの価値がないから、しないことを勧める。「〜
することはない」は、言い方によっては非難にもなるから気をつけて使ったほ
うがいい。そして親しい相手には「は」をとって「〜ことない」ということも
多い。「〜なくていい」は相手の提案や申し出を否定したりする場合に使うもの
で、目上の人や親しくない人にはあまり使わない。

桧語や語句の構成)

/.〜がきく
「薬がきく」のような効果や効能が現れる意、「体がきく」のような機能が働

く意、「自由がきく」のような可能の意味などを表す。

❶ どうにか頂上についたのであるが、急に濃い霧が吹き流れてきて、一向に眺
望がきかず、何も見えなかった。(总算爬到了山顶。但是突然ー阵浓雾飘来,
远处什么都看不清了。)

❷ 千恵はゆっくり外に出た。相変わらず外はけぶり、まといつくような霧雨が
降っていて視野がきかない。(千惠慢慢地走出门去。外面依然烟雨蒙蒙,密密
地下着细雨,什么也看不清。)

❸ しあさってからは、学校が夏休みに入り、図書館もいったん閉館することに
なっている。それからのほうがわたしは自由がきく。(学校从大后夭开始放暑
假,图书馆也要休息。那之后我就有空了。)

❹ 能力主義の社会だから、人間関係がまったくきかない。(这是个讲究能力的社
会,人际关系不起作用。)

❺ 思いがけない災難にあった場合、この保険がきくから参加したほうがいいと
思う。そのうえ加入料もそんなに高くない。(遇到意外灾难时这个保险很起作
用,还是参加吧。而且保险费也不贵。)

2〜目

接尾語的な用法である。形容詞の語幹を受けて普通の程度よりもそういう性
質や傾向を多く持つという意味を表すほかに、動作性名詞などにつき物と物と

274日语综合教程第六册

の接するところとか、状況が転換する時点などをも表せる。以下の例のほかに、
「大目•ひいき目•大き目・つなぎ目•縫い目•境目・結び目•上がり目」など
がある。

❶ 例の夏休みの旅行、是立に計画を立てておかないと、彼はまた、もうすでに
予定が入っていて行かれないなんて言い出すからね。(那个暑假旅游计划不早
点制定的话他又要说什么没空不能去之类的话了 〇)

❷ 消費低迷のため、今年の売上高は多めに見積もっても、そんなにたいしたも
のにはならないだろう。(受消费低迷的影响,今年的销售额估计得再高也不会
是什么惊人的数字吧。)

❸ 手紙は特製の便箋に書かれていた。上端に控え目な字体で〈ロバート・キン
ケイド 写真家=ライター〉とだけ印刷された、飾りけのない便箋だ。(信
是用特制的信纸写的。信纸不加修饰,上端只印着用端正的字体写的“罗伯
特・津凯托摄影家=撰稿人”)〇

❹ 風の強い日で、例年この日はちょうど季節の変わり目なのだろう。(今天风彳艮
大,往年的今天大概正是季节转换的时候吧 。)

❺ この花瓶は細いけど割れ目がある。水を入れると滲み出るだろう。(这花瓶有
一条细裂缝,装水后水会渗出来的吧。)

3.〜由

「由」は文か「名詞+の」を受け、「とのこと」の意味である。

❶ 遊覧船もちょうど本日から運航を開始する由、タクシーで船着場に馳せ着
けた。(听说游览船从今天开始运航,我坐出租车向船码头奔驰而去 。)

❷ 手紙によれば、近くご結婚なさる也、おめでとうございます。まことに粗品
で恐縮に存じますが、お祝いのしるしにお贈りいたしますので、ご笑納くだ
さいますよう、お願い申し上げます。(您在信上说最近要结婚,首先表示祝
贺。我给您寄去ー些薄礼以示祝贺,请笑纳。)

❸ アメリカ公費留学試験に合格の虫、ただいまそのお知らせを受け取りまし
た。(我刚收到通知,说他去美国的公费留学已获批准。)

❹ ご病気の也、心からお見舞い申し上げます。1日も早くご快復のほど、お祈
り申し上げます。(听说您病了,表示诚挚的慰问。并祝您早日康复。)

❺商談成立の虫、おめでとうございます。祝杯をあげたい気分ですが、い
かがですか。(听说您的生意谈成了,祝贺您。我想喝1杯庆祝一下,怎么
样?)

第9課香住から白兎海岸へ 275

練習

ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。

香住 型通り 代物 力む 反感 玄界灘 永年 春風馬台蕩
探勝 山蔭 鉄柱 急転直下
大方 鳥取県 斑 城崎 睥睨 海鵜 気心 瀬戸内
落日 防砂林 羽毛 蒲の穂
漁網 波荒き 習性

魂胆 伊笹岬 沖 茫洋

二、次の文の下線部の片仮名を漢字に直しなさい。
1. あたりにはいつもよりずっと早くユウヤミがたちこめていたC
2. 私は、こういうのが先生の座談のリュウギなのだと思い込んでいるC
3. 雪が吹雪いたり止んだりしていたが、山崎はそうした自然の変化にはドンカン

になっていた。

4. 野原を過ぎるとバスはヤマアイに入った。

5人ごみの中をユって歩く。

6.ふたりが玉纟冬した女は帽子やサングラスで顔を隠していたため 、判定でき

ないという返事だった。
/われながらブスイな質問をしたものだと思ったc

8. 崖からテンラクして死亡した。
9. M君も顔色が:tえない。
io.天津はスドオりで北京まで直行する。

三、次の質問に口頭で答えなさい。

7"「山のふところで育った人は、山に対して、やはり私と似たような気持ちを抱
いているにちがいない。」とあるが、私の気持ちとは具体的にどんなものなの
か、説明しなさい。

2 私はいままで海を30秒以上眺めたことがない。それはなぜか。

3. どうして「陸から海を見るばかりが能じゃない」というのか。
4. 「だまされた」とあるが、何にだまされたのか、筆者はどうしてこんなきつい

言い方をしているのか。

5. 海の「雄壮」な気分とは、具体的に海の何をさしているのか、説明しなさい。
6. 海はどうして遠くから見るに限るのか。
7. 漁民生活のにおいにある、旅行者をホッとさせるものは果たして何であろう

か。

8. 私はどうしてもう旅どころではなくなったのか。
9. 「最初の感激でも十分のようであった」とあるが、最初の感激とはなんだろう

か。

io.私は近所の稲葉君にどうして「稲葉の白兎」という綽名をつけたのか。その理

由を言ってみなさい。

276日语综合教程第六册

四、次の文の下線部の意味を説明した上で、全文を中国語に訳しなさい。
1. そこにちゃんと控えていてくれれば安心していられる。
2. 海も山も、景色のほうはもっぱら新婚さんや年寄りの団体さんにおまかせして

3明日は浜坂から香住まで遊覧船に乗って、海中公園を探勝してやろうという寸
法だ。

4. 海の水はどこだろうと澄んでいるのが当たり前だ。
5. この土地の人には真つ黒な海を想像しろと言っても、無理な注文かもしれな

い。

6. 波荒き灰色の日本海、なんて概念的な言葉を口にしたら罰が当たりそうな、明

るいのどかな眺めだ。
/素人の甘さというか、遠目に望むと近寄って見るとは大違いというか……

8.マンモスタンカーも結構だが、「雄壮を誇る大型観光船」もなかなかのもの

9.右へ左へと転げた拍子に、鉄柱に頭をぶっつけそうになる。
1〇.記念撮影用のラクダがいると聞いただけで、ごめんこうむりたい気がしてい

る。

五、文頭にあげた言葉の用法として 、次の文の下線部ではどのように使われているか 。
意味あるいはその用法を説明しなさい。

ん買う
① 日頃から皆の反感ををようなことを公言してきた。
② 田中先生は松江キャンパスの近くに部屋を買ったそうだ。
③ 社長は彼の努力を高く買っているようで、年末のボーナスも去年より大幅に

増えた。
④ 母の看病には仕事を持ってない私が一役買った。

2.冴える ’

① 始めは妙に目が冴えて眠れなかったが、そのうち、うとうとしたらしい。

② 11時ごろから月光は物凄いほど冴えてきた。
③ カーテン自体が色褪せて、冴えなくなっているのだ。

④ あんなにも自然の心と溶け合ったのに、どうして私の作品は冴えなかったの

だろう。

⑤ こういうときの父の勘は、実に冴えるのだ。

3.柄

① 一遍ぐらいは親孝行をしておいてもと、柄にもないことを考えたのだ。
② 知らない人は何かひどく柄の悪いことのように思いがちだが……
③ ただいま柄の大きい人があなたを尋ねてきた。
④ しぶい柄のほうが似合うかしら。

第9課香住から白兎海岸へ277

六、次の語群から最も適切な言葉を選んで( )に入れなさい。必要な場合は適当な
活用形にすること。

ア ちょいと イ うっすらと ウ しみる 工うんざり
才 ありふれる 力 身を切る キ 能じゃない クうねり
ケ 素通りする コ 果てしない

1.煙は風のないせいか、上へ昇って、部屋には吹き込まないけれど、やはり目に

• ( )〇

N 寺村の身体の奥を、何か大きな( )のようなものが通り過ぎた。それは

彼がこれまで一度も経験したことのない、奇妙な感動の波であった。

3. ( )料理の材料ばかりとはいえ 、だいたい1回で七、八千円の買い物に

なる。

4. 数学が1問も解けないばかりか、簡単な漢字すら正しく発音できない自分に

(')して、それきり食欲を失った。

5人間の欲望は( )て、満たされれば満たされるほど欲望が大きくなる。

6.ありふれたことをほんの( )本気で話しているのじやないか。

/吹き込んだ雪が足から腰にかけて( )積もっていた。

8. いくら女だって、堅いばかりが( )わ。

9. デッキに出ると( )寒い風でじっとしていられない。

io.男どうしの会話のやりとりは、大半は雪子の耳を( )〇

七、文の完成

1. 次の文の下線部に適当な勧誘を表す表現を入れ、文を完成させなさい。

① 「B社の社長のお葬儀が明日なんだ。君、行ってくれる?」「いやあ、B社と

は長い付き合いですから、やっぱり部長が 〇J

② (同僚と)「最近、毎日2箱もタバコを吸っちゃうんだ。」「少し。」

③ (後輩に)そのソフト、よ。もう入っているよ。

④ 「王君、例の冬休みの旅行だけど、今度どこにしよ.うか。」「寒いですから、暖

かいところに oJ

⑤ 「見学だけでもさせていただけませんか。皆さんの様子を見るだけでも勉強に

なります。」「勉強熱心ですね。じゃ、後ろのほうに?参加はできな

いけど、聞くだけということで。」・

⑥ 「この頃、ちょっと胃が痛い。とりわけ食事のあとだ。」「やっぱり医者に

よ。そのほうが安心だ。」

2. 次の文の に接尾語「目」を用いることばを入れて文を完成させなさい。

① 時代が に来たという感じを山口博に与えた。

278日语综合教程第六册

② 悪いところは に見ていただきたいのであります。

③ こんな不動産の に部屋を買うなんて本当にばかばかしい話だ。

④ 服装も化粧も で、小柄な中年婦人である。

⑤ 進んだ技術を持てるかどうかが勝負の だ。

ハ、括弧の中の言葉を使って次の中国語を日本語に訳しなさい。
1. 我的房子很宽敞,你不如暂时搬来与我同住。(ゆとりがある/たらいい)

2. 我买了辆小型的旧车,浅绿色,圆形的车头灯。车有了,出乎意外的是没有想去

的地方。(中古車/ヘッドライト/案外)

3. 完成这次订单公司就能摆脱几年来经营上的困难。所以无论如何我们都要在交货

期内完成。(注文を仕上げる/不振を乗り切れる/何が何でも/納期)

4当然,没有竞争就没有进步。在国际激烈的竞争中,厂家能否拥有其他公司没有
的独家技术就成了胜负的分水岭。(ないことには/分かれ目)

5.新药的研制已经结束,从下个月起差不多正式进入临床试验阶段 。(臨床実験/と

いうところだ)

6他乐观地认为,不就是5万日元嘛,只需给杂志写篇文章很容易就赚到了。(たか
をく くる)

7那类研究课题我们做倒是做过,但是从来都没有在设计上应用过。(〜には〜が)

8.樱花是美的,可是更吸引我们这些外国人的是在那盛开的樱花树下享受 、赞叹着

自然之美的日本人。啊,一首多美的风景诗啊。(にもまして/満喫する/賛美す

る)

9. 我对那个日本人感到说不出来的悲哀。怎么对自己国家的文化那么地没有自信,

那么地低声下气呢。(何という〜ことか/卑屈)

10. 日语有「バスガール」这个单词。于是有人说,“バス在英语里也是バス,ガー

ル在英语里也是ガール,因此英语自然应该也有バスガール这个词オ对”。其实
这么说是没用的。日本人可以随意地创造这个词来用,美国人 、英国人可不这么
说。(〜ても始まらない/勝手)

第9課香住から白兎海岸へ 279

九、言葉の決まり

1. 次の文の( )に入れるのに最も適当なものをあとの語群から選びなさい。

① あの選手は、走る( )がとてもきれいだ。

② 高速道路で制限速度を50キロ( )して走り、スピード違反でっかまっ
た。

(3)古い家の( )は大変お金がかかるそうだ。

④ 山田は仕事が( )だから、みんなに嫌われている。

⑤ なんでしたら協力をと持ちかけると、どの企業も好意を抱いてくれ、( )

探しが簡単だ。

アスポンサー イ リフォーム ウルーズ エオーバー

オフォーム カポーズ

2. 次の文には、一箇所ずつ誤りがある。その部分を訂正しなさい。

① 竹で鼻をく くったような彼の態度のために、一座の空気はすっかり白けてし
まった。

② その問題についてクラスの人たちに意見をきいたら、異句同音の答えが返っ
てきた。

③ 問いつめられて、彼はとうとう泥を出した。
④ いくら注意しても、彼には他山の石で、いっこうに通じない。
⑤ ふたりの話を聞いていると、僕たちまで楽しくなってくる。ふたりは気がお

ける友達なのだろう。

3. 次の文は、いずれも下線部の語句の係り受けに不自然なところがある。その部分
に注意して、文全体を整った表現に直してみよう。

① 説明会は、午前と午後に行いますが、なるべく午前が空いていますC
② 説明書を読めば、短時間に食べやすく栄養豊かな料理が作れますC
③ 今後の活動のしかたは、先輩の意見やみんなで話し合ったりして、解決した

い。
④ テストの結果が悪いと、投げ出さないで努力を続けてほしい。

十、次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

風、という漢字が、好きだし、KAZEという音も、好きである。漢字は、ー、と
いったごくごくシンプルな形のものから、鬱、といった複雑なもの、鳧、などと変
わったものもあれば、書く度にこれでよかったかと思案する、例えば黎明の黎の字
があったりする。

美しいという字は、上下、左右のバランスがぎりぎりのところでうまく取れてい
て、見た目にもまた音にも①説得性と迫力がある。清いという字も、水とすがすが
しい色の代表である青が組み合わさっていて、清流、清水の(A )まで伝わって

280日语综合教程第六册

くるすばらしい字だ。
(省略)
風の作る熟語にも②魅力的なものが多い。風土、風物、風景、風信、風姿、風狂、

風雪、風味、風格、風琴。風と組み合わさることによって 、土、物、景色、音信、
姿形、心理、味覚といったものが、茫洋たる広がりと複雑さ、光と影、奥深さを伴っ
て意識され、平板無彩なものが、たちどころに彩り豊かな生きた現実として間近に
迫ってくるのを覚える。風は物に明らかに命を与えるエネルギーなのだと、私は思
う。

先程から木々の間を吹き渡る風音がしきりである。故郷の家には濃緑の葉を透き
間なく付けた三本の桜の巨木、その桜を保護するように取り巻く杉の%立 、椿、
樫、模などの列があり、それぞれの木には、それぞれの異なった形の葉が。謹がっ
ている。木々の作り出す幹や枝、葉むらは、複雑な弦の役目をしており、風はそれ
ら何万、何十万という小さな弦に触れつつ、微細な音を(B )生み、音は重なり
響き合いもつれ合って、ひとつの風音を奏鳴している。

時折、宇宙に躍り出た風の束がヒューと笛を鳴らすときがある。風は音楽師で
あって弦をかき鳴らし、笛を吹き募り、家々の木部や、⑰金物やガラスをたたいて気
ままなシンフォニーをまき散らすC

人間の作り出す音は時に余りにも美しく聞く者の胸を締め付け、涙(c )催さ
せ、時に余りにも残暴力的で、人の神経を破壊することもあるが、吹き渡る風音は
概して地味で、それは、私たちの体内で㊂刻まれる鼓動にも似て、聞こえているよ
うで、いつしか耳元を離れている。つまりさして気にならないバックグラウンド・
ミュージックの©趣が強い。

もちろん気象の変化で、とてつもない暴風の吹き荒れる季節があり、また一定の
物理的条件のもとでは、不気味なシンフォニーを③奏でて、人を畏怖させるデモー
ニッシュなー面があることは事実だが、日常の緩やかな風こそが、風の本質なので
はあるまいか。

私は、風という字はそこはかとなく好きであったが、そして風音を聴くことも演
歌を聞く以上に好きではあるが、実際に風に吹かれるのはやはり厭うということが
あった。

田園の中で過ごした幼時、風を厭うことはおよそなかった。そこには自然な風の
音楽があった。田園は、風と共生する環境であった。ところが、都会で暮らすよう
になると、立て込んだ家やビルや工場やそうした人工的なものが不規則に風を齿遮
るせいか、風そのものに幾つものゆがみが生じ、その上、風は騒音や悪臭や、煤煙
やそうした汚濁の運び手に成り代わり、優美さや清冽さを著しくそがれているので
ある。

私は、いつの間にか、④風嫌いになっていた。風のある日はいつもよりしっかり
身じまいして街へ出た。涼をとるのは、風によってではなく、エアコンに頼るよう
になった。

第9課香住から白兎海岸へ 281

風嫌いから脱したのは、あるときベランダの空っぽの鉢に1本の露草が生じたと
きであった。露草の種を運んできたのは汚れた風以外には考えられなかった。汚れ
ながらも生あるものを運んでいる都会の風にそのとき⑤ひどく打たれて、再び風をい
とおしく思うようになったのだった。

dD 下線部0〜@の漢字の読み方を書きなさい。

®@ ® @

下線部①の意味を30字以内で説明しなさい。

個❸ 下線部②の理由として最も適当なものを後より選び記号で答えなさい。
ア茫洋たる広がりと複雑さが感じられるから。
イ 言葉の奥深さが意識されずに現実感が出てくるから。
ウ 語の意味が間近に迫ってくるようであるから。
工 語句に具体性と現実感が加わってくるようだから。

函 (A )に耳に聞こえる音の感じという意味を表す名詞、(B )に絶え間な
く続く様子を表す形容動詞をそれぞれひとつ入れなさい。
A: B:

個© ( c )に適当な副助詞を入れなさい。

dD 下線部③の主語を文中の語句を抜き出して答えなさい。

二重下線の外来語の意味を日本語で説明しなさい。

シンプル( ) シンフォニー( )

バックグラウンド・ミュージック( ) デモーニッシュ]

(〇下線部④の理由を説明しなさい。

下線部⑤の理由を説明しなさい。

•問10. 風の作る音と、人間の作る音について筆者の考えをそれぞれ簡潔に説明しな

さい。
風 音:
人の作る音:

282日语综合教程第六册

文学・語学の豆知識

紀行文の書き方

感想文のうち、旅行中の見聞や、それにまつわる感想を記す文章を紀行文
という。これは、単なる旅行の記録•報告、あるいは旅行案内書にみられる
説明の記事などとは本質的に違う。どこまでも、筆者自身の体験、それに伴
う感想が中心になるべきものである。

紀行文は、感想文の書き方に準じて書けばよい。感想文における体験が、こ
こでは旅行という一事に絞られているわけである。その旅行中に得た個人的
な体験•印象を大切にし、それらを実感をこめて述べることが、ここでは何
より必要である。そのためには、旅行中、気づいたことを簡単に逐一メモし
ておくとよい。そして、そのメモのとらえたその土地特有の風物や人間、ま
た時々の個性的な感想といった豊富な材料を駆使して、独創的で生気に富む
紀行文を作るように心がけよう。

[読み物

草原の記----モンゴル紀行

•司馬潑太郎

飛行機は、砂漠を通過した。赤さび色の岩が波立つ一種の山岳地帯の上
空も過ぎた。それらの不毛地帯を過ぎると、再び草の海に入った。急に高
度を下げたかと思うと車輪を出し、みるみる青い大地に近づいて、ちょう
ど飛行艇が着水するようにして滑らかに着陸した。無論、飛行場設備など
はなく、草原のただなかを滑ってゆく。

「ここが、南ゴビです。」
と、ツェベクマさんが言った。

空から見ると、なるほど、白い包が十七、八個ほど固まっている。彼女
の言うところではすべて今のところ空き家で、鍵でもって開けて入るのだ
そうである。

第9課香住から白兎海岸へ283

私どもの宿舎がそれで、どの包でも好きな包に泊まってもらう 、という。
これがつまり、私どものホテルであった。正確にはウランバートルホテル
が経営している包なのである。

飛行機はどんどん草原を滑って、包の群れの前に停止した。飛行機が横
付けになってくれるような宿舎は、世界じゆうのどこにもあるまい。

初め無人の村かと思っていたが、人影が一つ動いていた。包の村に隣接
して石造りでガラスをふんだんに使った平屋建てのしやれた建物がある。
後でわかったことだが、食堂だった。

動いている人影は、その食堂から出てきた。やがてその人が、タラップ
を引きずってきて、飛行機の乗降口にくっつけた。

そのタラップはどこでもある金属製だが、踏み板は木である。その木製
踏み板が一段欠けていて、どうも危なっかしい。万事手入れのいい国にし
ては珍しいことだが、恐らくモンゴルに木が少ないことと関係があるに違
いない。補修には板切れ一枚ありさえすれば足りるのだが、その一枚の貴
重な板がウランバートルからこのはるかな南ゴビまで容易に届かないのか
もしれない。

このため、私どもはタラップの最後から二段目から飛び降りねばならな
かった。靴の裏が、ゴビ草原にくっついたとき、驚くべきことは、大地が
淡い香水をふりまいたように薫っていることだった。風はなく、天は高かっ
た。その天の一角に、少女のほおのように仄赤い雲が浮かんでいる。その
雲まで薫っているのではないかと思えるほどに、においが満ちていた。

「これは、何のにおいですか。」
と、ツェベクマさんを振り返った。彼女は慣れているせいか、私の質問を
ちょっと解しかねる表情をした。が、やがて、

「ゴビのにおいよ。」
と、誇りに満ちた小さな声で言った。
•人さし指ほどの丈のニラ系統の草が、足元でごく地味な淡紫色の花をつ
けている。それがその辺り一面の地を覆い、その茎と葉と花が、はるか地
平線のかなたにまで広がっているのである。

その花のにおいだった。空気が乾燥しているため花のにおいも強いに違
いなく、要するに、一望何億という花が薫っているのである。

「羊の好物。」
と、ツェベクマさんが言った。このとき彼女の一人娘のイミナが、レニン
グラード大学の最初の休暇で帰ってきたときに言ったという言葉を、私は
思い出した。

「よその国の草はにおわない。」と、彼女は真つ先に母親に報告したそうで
ある。うその草のようだ、とも彼女は声った。さらには、卒業したらまっ

284日语综合教程第六册

すぐにモンゴルへ帰る、モンゴルが世界のどこよりもいい、と言って、そ
の母親を喜ばせた。イミナ嬢が言ったという言葉の意味が、私はゴビ草原
へ来てやっと理解できた 。

飛行機は去ったが、陽はなお、草はるかな西方の野に残っている 。幸い
風が強く雲が時間とともに吹き払われつつあるようで、地には小さな例の
香草が、花をつけた首を風の中で小きざみに振っている。何億という数の
草が、揺れているのである。

(ひょっとすると、今夜は宝石箱のような星空が見られるかもしれない 。)
と、遠ざかってゆく機影を見ながら、期待を持った。この星空への期待は
出発前から楽しみにしたもので、あるいは子供のころからのものかもしれ
ない。

私は、自分の包に近づいた。
包は羊毛の、真つ白なフェルトである。手で触れると、分厚くて柔らか
くて、皮膚にほどよい抵抗感が感じられる程度の硬さがある。
「我々モンゴル人は、包の暮らしを最も好んでいる 。」
という言葉を、ウランバートルで何度も聞いた。鉄筋住宅に住む労働者も
草原の包の暮らしを恋しがるし、政府の高官なども夏の休暇には家族ぐる
みで遠い草原へ行き、包で暮らすという。元来、固有文化を守ることにつ
いて頑質な民族なのだが、この包の外皮のフェルト感触の柔らかさに触れ
てみると、なるほど石や木の硬い材料の建築など、感覚的にやりきれない
という気分は当然かもしれないと思った。
包を膨らませているものは、本来、ヤナギの枝の骨組みである 。細い棒
の組み合わせの場合もある。私にあてがわれた包は、それであった。カラ
カサのように柄があり、その柄が中央を支える唯一の柱として地面に据え
られる。その柄の先に傘の骨のように数多くの放射状の棒が出ていて、フェ
ルトはその上に、ドーム状にかぶせられるのである。フェルトは、風では
がされないように麻の細引きで縛られている。その縛られている感じが、中
国人から見ればいかにも包という実感なのであろう 。
入り口は、茶室のニジリロのようにかがんで入れる程度のもので、木製
の観音扉がついている。この扉の感じも、恐らく上古以来、少なくとも中
世この方変わっていない。
室内に入ると、天井に、風呂敷を三角に折った程度の大きさの穴が開い
ていて、茜色の空が見える。煙出しと明かり採りのためのものである。
室内の広さは、八畳から十畳というところであった。
「慣れた者なら、十五分で包を一つ組み立ててしまう。」と言われているよ
うに、包はあくまでも遊牧のための移動性住居なのである。床はない。草
の上にじかに獣皮や毛皮を敷きつめるのだが、近ごろは(といっても、何世

第9課 香住から白兎海岸へ285


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