The words you are searching are inside this book. To get more targeted content, please make full-text search by clicking here.
Discover the best professional documents and content resources in AnyFlip Document Base.
Search
Published by johntss124, 2021-06-24 19:45:18

日语综合教程5

日语综合教程5

普通高等教育“十一五”国家级规划教材 总主编谭晶华
新世纪高等学校日语专业本科生系列教材

日语综合教程

---------- 第五册----------

陆静华编著

\2Z上海外语教育出版社

外教社 SHANGHAI FOACIGN IANGUAG€ EDUCATION PR€SS

图书在版编目(C1P)数据

日语综合教程.第5册/陆静华编著・
—上海:上海外语教育出版社,2017 (202I重印)
(新世纪高等学校日语专业本科生系列教材)

ISBN 978-7-5446-4963-6

I •①日…11・①陆…IH・①日语ー高等学校一教材W •①H369.39

中国版本图书馆CIP数据核字(2017)第120500号

出版发行: 上海•タト语费;育出脚岸t
(上海外国语大学内)邮编:200083

电 诂:021-65425300 (总机)
电子邮箱:[email protected]
网 址:http://www.sflep.com
责任编辑:江龙娣

印 刷二上海信老印刷厂

开 本:787X1092 1/16 印张24.25 字数 "6千字

版 次:2017年6月第1版 2021年1月第6次印刷

书 号:ISBN 978-7-5446-4963-6 / H - 2191
定 价:55.00元

本版图书如有印装质量问题,可向本社调换
质量服务热线:4008-213-263 电子邮箱:[email protected]

新世纪高等学校日语专业本科生系列教材编委会

总主编:
谭晶华

编委:(以姓氏笔画为序)

王勇 浙江工商大学

王健宜 南开大学

叶琳 南京大学

皮细庚 上海外国语大学

许慈惠 上海外国语大学

纪太平 厦门大学

杨说人 广东外语外贸大学

严安生 北京外国语大学

吴侃 同济大学

吴大纲 上海外国语大学

陈岩 大连外国语学院

张威 清华大学

陆留弟 华东师范大学

庞志春 复旦大学

胡振平 解放军外国语学院

修刚 天津外国语学院

洪栖川 东北师范大学

高宁 华东师范大学

高文汉 山东大学

宿久高 吉林大学

谭晶华 上海外国语大学

总涔

21世纪是ー个国际化的高科技时代,也是ー个由工业社会进ー步向信息社
会转化的时代。科学技术的高速发展、新兴交叉学科的涌现、人文文化与科学
技术间的相互渗透和融合 、社会的信息化以及知识 、信息传播技术的日新月异
加强了世界各国文化的交流、碰撞与合作。要想在激烈的世界竞争中立于不败・
之地,就要占领人才培养的制高点,培养出世界一流的高素质 、高水平人才。

由于社会对外语人才的需求已呈多元化趋势,以往那种单ー外语专业的基础
技能型人才受到挑战。今后我们仍然需要培养《源氏物语》的专门研究家,但
是高校外语专业的教学必须从过去的“经院"式”人才培养模式向宽口径、应用
性、复合型人才培养模式转化。社会要的不光是懂外语的毕业生,还需要思维
敏捷、心理健康、知识广博、综合能力强的精通外语的专门人才。

我国的外语教学界已充分认识到,对国家建设发展急需的外语专业人才加大
培养カ度,提高其能力和素质是一项迫在眉睫的任务。随着我国日语专业教学
点设置的不断增加和招生规模的逐年扩大,日语专业本科生的教学改革、学科
建设及教材出版亦取得很大的成绩,各地先后出版了一批在全国有影响的优秀
教材。正因为社会对日语人才的培养提出了更高的标准,同时对日语学科的建
设也提出了新的要求,因此,日语本科生教材的编写和出版也应该顺应潮流,开
拓创新。

我国外语教材和图书出版的基地、领头羊之一的上海外语教育出版社 (外教
社)以高度的责任感和高瞻远瞩的视野,在充分调研的基础上,抓住机遇,于2003
年8月邀请了全国主要外语院校和教育部重点综食大学日语专业的近 20位专家
在上海召开了 “全国高等学校日语专业本科生系列教材编写委员会会议。”代表
们完全认同编写“新世纪高等学校日语专业本科生系列教材”的必要性、可行
性及紧迫性,并对编写立意、教材构建、编写审校程序提出了许多积极、中肯
的建议和要求。之后,外教社又多次召开全国及上海地区专家学者会议,分头
撰写编写大纲,确定教材类别、项目,讨论审核样稿。•经过两年多的努力,终’
于迎来了第一批书稿的付梓。

本套教材共分语言知识、语言技能、语言学与文学、语言学与文化、语言学
与翻译(中日对译)、人文科学、经济贸易、测试与教学法等若干板块,可以说几
乎涵盖了当前我国日语专业所开设的全部课程 。编写内容根据因材施教的原则,

总序1

深入浅出,反映各个学科领域的最新研究成果;编写体例采用国家最新有关标
准,カ求科学、严谨;编写思想贯彻了在帮助学生打下扎实的语言基本功的基础
上,培养学生分析和解决问题能力的原则,全面提高学生的人文、科学素养,养
成健康向上的人生观,成为合格的外语专门人才。

本套教材编写委员会云集了我国日语界学者专家,其中不少是高等学校外语
专业指导委员会的委员。每ー种教材均由编写委员会的专家们仔细审阅后确定,
有的是从数种候选教材中遴选,总体上代表了中国日语教材学发展的方向和水
平。•我们相信,外教社这套“新世纪高等学校日语专业本科生系列教材”的编写
和出版,一定会促进我国日语专业本科生教学质量的稳步提高,其前瞻性、先进
性和创新性也将为日语教材的编写拓展更为广阔的视野 。

谭晶华
上海外国语大学常务副校长

2 日语综合教程第五册

哧言

日语专业教学大纲中指出:教材是师生在教学活动中的依据,选用或编写合
适的教材是搞好教学的保证。教材的题材要广泛,并且比例适当,要注重实践
性,适当编写包括日本社会 、文化、风俗习惯以及科普常识方面的文章。语言
要规范、生动、丰富。文章体裁要多样化,掌握好教材的难度。

日语专业高年级教材在过去20多年间出过少量的几套,由于当时日语专业
高年级教学大纲尚未制定,现在看来,已出的教材与教学大纲的规定尚有一些
距离,也不很符合教学大纲的规定。近年来,随着我国高等教育走向大众化,设
置日语本科专业的学校越来越多,各校都急切地期待着高质量的日语专业高年
级教材更早更多地问世,以备各大学择优使用。

本套日语专业高年级教材作为本科高年级综合日语课的主干教材,力图贯彻
教学大纲规定的要求,编出符合目前日语专业现状的适用教材,既注重语言知
识的传授、语言技能的训练,又顾及日本社会、文化的介绍和理解。本套教材
的框架设计、布局结构将有助于提高学生的思维创造和分析鉴赏能力。

本套教材经申报,已批准为教育部“十五”重点教材建设项目,谭晶华教授
为总主编,第五册由陆静华教授编写,第六册由陈小芬教授编写,第七册由季
林根教授编写,第八册由皮细庚教授编写,编成后的油印教材均经过两轮以上
的使用,并广泛听取了中、外教师的意见,几经修改而成。

愿本套教材的推出・为中国日语专业本科教育更上一层楼贡献绵薄之カ,相信
我国的日语本科专业建设一定会有更蓬勃的发展 。

总主编
2006年6月

編者的话

〈〈日语综合教程》第五册教材的编写工作启动于2002年,先后经过两轮试用
和反复修改,历时近4年时间,终于和广大读者见面了。编者衷心希望本教材能
获得广大读者的喜爱。

本教材为高等学校日语专业高年级阶段精读课教材,供三年级上学期使用,
亦可供具有一定日语基础的自学者使用 。

参照《高等院校日语专业高年级阶段教学大纲》的要求,充分考虑到与基础
阶段教材的衔接和过渡,选材时编者充分注意到文章的难易程度和题材的多样
化,尽可能选择ー些可读性强,语言表达规范,遣词造句丰富优美的文章。文
章的内容涉及日本文化、文学、社会、科学、语言学等不同领域,カ求使学生
通过本教材的学习,在原有的基础上得到进ー步提高,并对日本的社会风土人
情有更多的了解。

本教材由小说、随笔、论说文等不同体裁的12篇文章组成。每课分别设有
“课文、注释、单词、语句学习、近义词学习、练习、文学・语言小知识和阅读”
八个部分。注释、单词、语句学习、近义词学习栏目主要用来学习该课文中出
现的ー些新的,包括一些在基础阶段虽有涉及,但接触不深,讲解尚不够全面
的语法、词汇、句型、习惯表达及各种日语知识。通过这些内容的学习,使学
生的日语综合理解和运用能力得到进ー步巩固和提高 。

本教材新设了 “近义词学习”栏目,主要介绍ー些课文中出现的意思相近用
法不同的词汇,目的在于通过这些内容的学习,加深学生对这些词汇的感性认
识,为在今后的学习工作中真正掌握和正确使用这些近义词打下良好的基础。
与此对应编者也编写了该项目的配套习题,旨在通过反复练习,达到加深理解,
增强语感的目的。在这里我们并不强求学生立即做出正确的解答,增强语感是
练习的目的。因为没有感性知识的积累,很难真正获得理性知识 。

各课的练习部分由10个项目组成,大致可以分为两大类。ー类是围绕课文
.编写的练习,希望起到温故知新的作用;另ー类则是以提高日语综合能力为目

的而编写的练习题。练习中设有口头问答题,旨在检查学生对课文内’容的理解

情况。同时也为学生提供了 口语综合表达的机会。编者希望教师在教学过程中
能够重视ロ语练习,教与学双方如能很好地配合,相信学生将会在高年级阶段
继续获得良好的口语训练 。“文学・语言小知识”和“阅读”栏目的设立,则是
为了拓宽学生的知识面,增加阅读量。这可以丰富学生的词汇量,提高阅读同
类文章的能力。

本教材选用了辻邦生、上笙一郎、西江雅之、梅原猛、森本哲郎、渡辺武信、
上田笃、安房直子、椎名诚、本川达雄、白井健策、辰浓和男、大悟法利雄、竹
西宽子、三浦哲郎、铃本修次、井上ひさし、井伏鱒二、芥川龙之介、高田宏、
山本学治、谷川俊太郎、渡辺淳一等各位先生及女士的作品,大悟法静子等不少
作者家属也欣然允诺使用相关作品。

本教材在编写过程中主要参考了原上海外国语大学陈生保教授主编的《日
语》第5〜6册和日本的各中小学国语教科书及其他文献资料,还先后得到上海
外国语大学日本籍专家池田滋先生 、大西进先生、永岛靖夫先生以及本院周平
教授等的大力支持,他们分别对本教材进行过仔细的审阅 。编者还曾得到许多
日本友人的相助。上海外国语大学的有关领导和日本文化经济学院的领导对本
教材的编写工作给予了关心・和支持;日语三年级教学小组的戴宝玉老师、许慈
惠老师、陈小芬老师和周星老师也在教材的试用过程中提出了许多中肯的意见
和宝贵的建议。

本教材还附有课文的录音,录音特请吉田清子女士录制。
在此谨向以上各位给予过帮助的先生及女士,ー并表示由衷的感谢。
本教材在编写过程中,编者尽可能从教学第一线的角度进行思考和编写,但
是由于水平有限和时间仓促,不免存在错误・不足之处,恳请广大读者批评指
jE 〇
最后,向支持本教材编写工作的上海外语教育出版社和责任编辑江龙娣
女士表示衷心的感谢。

编者
2006年6月

2日语综合教程第五册

目次 1

海の中に母がいる 29
目次 1
疇本文
♦注釈
♦新しい言葉

言葉の学習
ー、〜とすると
二、 〜といっても
三、 心ゆくまで
四、 何としても
五、 〜だけでも
六、 気が遠くなる
七、 さながら
ハ、〜心地
九、〜み
十、〜てやまない
♦類語の学習
ー、しやがむ・蹲る•屈む
二、寝そべる•寝転がる-寝転ぶ
<練習
<文学・語学の豆知識随筆とは
♦読み物 小さな旅から大きな旅へ

第2課‘; 田中正造

<本文
♦注釈
♦新しい言葉
❖言葉の学習

ー、〜放題
二、 かたわら
三、 〜つくす
四、 〜に終わる
五、 目も当てられぬ
六、 胸を撫で下ろす
七、 ひた+動詞連用形+に+同一動詞
ハ、〜とする

九、〜あまり

十、一つ〜ない
|奪類語の学習

ー、まみれ•だらけ ・

二、たまたま・偶然
;♦練習

:♦文学・語学の豆知識 伝記とは
♦読み物伝え合い

第3課 日常の思想.... .... ..... .............. . 62

:♦本文
.♦注釈
!標新しい言葉
:♦言葉の学習

• ー、〜から
二、 〜以外の何物でもない
三、 〜を余儀なくされる(させる)
四、 もとより
五、 ゆえ
六、 〜と並んで
七、 のみ
ハ、すら
九、はたして
十、〜としても

♦類語の学習
一、 もはや•すでに

二、 再び・再度
:疇練習

:♦文学・語学の豆知識 文章表現の技巧
;♦読み物ニ-一世紀のおそろしさ

第4課 !庭............. 87

:♦,本文
:♦注釈

;♦新しい言葉

:♦言葉の学習

! ー、〜というものは

! 二、〜極まりない
! 三、思いを馳せる
! 四、思うに
! 五、〜に足る

2 日语综合教程第五册

六、 〜ことで
七、 〜にせよ
ハ、〜わけが(は)ない
九、〜(の)ならともかく
十、いかに〜(う)ようと

#類語の学習

ー、さりげなく •それとなく

二、ほの暗い・薄暗い・暗い

♦練習 符号のいろいろな使い方
<文学・語学の豆知識
♦読み物縁

木の葉の魚............................. 116

:♦本文
:<注釈
:<新しい言葉

:♦言葉の学習

: ー、〜かげん

« 二、〜といったら
!一
! ——、 っ

! 四、願ったりかなったり

五、 同一語(文節)の重ね表現

六、 やたらに(と)

七、 〜たて
ハ、〜につき

九、まだしも

十、それからというもの

♦類語の学習

ー、養う・育てる

二、どっしり•ずっしり

<練習

奪文学・語学の豆知識 童話について
<読み物ふろ場の散髪

第’6課 なぜ車輪動物がいないのか 149

<本文
奪注釈
蠱新しい言葉
♦・言葉の学習

一、 〜であれ〜であれ
二、 心を躍らせる

目次3

三、 余計 179
四、 〜分には
五、 〜ときた日には
六、 〜に目を向ける
七、 〜ない(ぬ)ともかぎらない
ハ、ものではない
: 九、〜からみれば
! 十、〜に越したことはない
:夺類語の学習
! ー、ひとまず•差し当たり•とりあえず

: 二、たちまち•たちどころに

I 練習

!帝文学•語学の豆知識説明文とは

i ♦読み物時計はなぜ右回りなのか

紅山桜...............................

♦本文
♦・注釈
♦新しい言葉

L ♦言葉の学習

・ ー、調子に乗る
二、〜じみる

! 二、〜ぞい
四、 腰を据える
五、 しょせん
六、 肩を落とす
七、 たまる(もの)か
ハ、ー+助数詞—+助数詞
九、体を張る
十、〜なしの

[卷類語の学習
!ー、とりわけ・特に・殊に

; 二、もどかしい•歯がゆい
! ♦練習
:卷文学・語学の豆知識 春と秋の七草
! ♦読み物湯ヶ島の桜

♦本文
♦注釈
争新しい言葉

4 日语综合教程第五册

、嫌言葉の学習

ー、〜かかる
二、 〜がけ(掛け)
三、 耳に立つ
四、 疑問詞+動詞過去形+もの(だろう)か
五、 見るからに
六、 〜てのこと
七、 いやおうなしに
ハ、〜からいいようなものの
九、心持ち
! 十、身を任せる

; <類語の学習
! ー、しきりに•ひとしきり•ひっきりなし
: 二、ひっそり•こっそり•そっと

! ♦・練習
! ♦文学・語学の豆知識小説とは
« ♦読み物とんかつ

「的」の文イ匕............................. 241
j奪本文

:♦注釈
: <新しい言葉
; <言葉の学習

! ー、〜的
: 二、おのずから

二、〜ような〜ような
四、あえて
五、 あたかも
六、 どうしても
七、 〜に見る
ハ、ともあれ
九、〜からすれば
善類語の学習

ー、あえて•しいて

•二、馴染む・慣れる
参練習

卷文学・語学の豆知識 「エッセイ」とは
♦読み物日本語

屋根の上のサワン .. ................................. 269

: <本文

目次5

:♦注釈 300
i ♦新しい言葉
「奪言葉の学習
: ー、さもなければ

! 二、〜でもって
: 三、〜でいる
! 四、〜てからでなくては〜ない

五、 どうやら
六、 時として(は)
七、 数字+もの+名詞
: ハ、よほど
; 九、〜ようによって(は)
:♦類語の学習
" ー、置き去り•放置する•ほったらかす
; ニ、けたたましい・甲高い•声高だ
!奪練習

:讎文学・語学の豆知識 主要部首の読み方
:♦読み物蜜柑

第//W 島で見たことから

i <本文
:卷注釈
!尊新しい言葉
;♦言葉の学習

! ー、〜っき
: 二、〜づたい
; 三、ハラハラ(と)

'i 四、〜こと
五、 〜となると
六、 〜でしかない
七、〜と見える
ハ、〜という
九、早計
十、すっぽり(と)

♦類語の学習
一、 せがむ・ねだる・せびる
二、 すれすれ•ぎりぎり

♦練習
♦文学・語学の豆知識伊呂波歌
♦読み物森の恵み

6 日语综合教程第五册

留歳時記 328
357
•<本文
•注釈
<新しい言葉
<言葉の学習

ー、かといって
二、 とんと
三、 働く
四、 やりきれない
五、 〜きまって
六、 辛うじて
七、 〜がかる
ハ、思い出したように
九、.〜といえども
十、〜てよこす
廓類語の学習
ー、かすか•ほのか
二、せっかく •わざわざ

e練習

疇文学・語学の豆知識時候のあいさつ用語
噂読み物残酷の美しさ

新&い言葉リスト

0次 7

驢本文 海の中に母がいる

•汁邦生

山好きの血が父方から流れていると

すると、海好きは間違いなく母から伝

わっている。終戦間もなく、不忍池の

ほとりを通りかかると、池端に、母が

しやがみこんで池の面をじっと見てい

る。声をかけると、母は照れたような

顔で立ち上り「ちょっと海が見たく

なって」と言って笑った。

当時、東大のそばに住んでいたので 、 不忍池
買物のついでに不忍池で休んでいたの

だろうが、そのときの母の言葉が妙に忘れられない。小学六年の夏、母の故

郷の鹿児島の辺鄙な漁村でひと月暮らしたことがある。母の父は背の高い、

こわい人で、そこでずっと医者をしていた。家から五十メートルほどで海に

出る。桜島や開聞岳の見える美しい浜辺だった。母が海を見たいと言ったの

は、その故郷の浜辺のことを考えていたのかもしれない。今なら二時間もか

からない鹿児島は、その頃は夜行や連絡船で二日かかる遠い国だった。望郷

の思いに駆られても当然だったような気がする 。

海好きといっても、心ゆくまで海と親しんだのはその夏だけで、あとは学

校から海水浴にゆく程度だった 。おそらく海と切りはなされた状態がかえっ

て海への憧れを搔き立てたのだろう。大学を出る年、何としても海に関係す

る職業につきたいと思い、日本郵船に入社できないか聞きに行った。対応に

出た人事課長は「うちも、ほかの会社と同じですよ。文学部出身では、どう

もね」と気の毒がってくれた。船会社だから、全員が船に乗れるものと勘違

いしていたわけだ。

それでも、船に乗って、海を思いのたけ味わいたいという気持ちは、いつ

1第1課海の中に,母がいる

こうに衰えなかった。幸いフランスにゆくことになり、留学生は船に乗るよ
うに、という指示があった。マルセイユまで三十三日の船旅——考えただけ
でも嬉しさで気が遠くなりそうだった。しかし仲間の留学生たちは、なんで
そんな無駄な旅をさせるのか、と不満顔だった。

私はひとり海の喜びを満喫するため、四等船室を選んだ。ここは季節労働
者用の船室で、留学生が近寄らないばかりでなく、船底なので、海に近く、丸
窓の外は青い波がすれすれにうねっている。海が荒れると、船員が鉄の覆い
で丸窓をふさぎにくる。ベッドは鉄パイプの二段棚にカンバスを張っただけ。
飾りなど何もなく、牢獄さながらだ。

しかし文明の居心地よさはつねに、大自然との直接の接触を遮断する。た
とえば灼熱の紅海では、船底は四十度を越え、甲板でも燃える暑さだ。もち
ろんー、二等船室は優雅に冷房されているが、それでは、コンラッドの描く
この熱帯の海という荒々しい野獣のようなものの実体に触れることはできな
い。限りなく強烈な、素肌ならすぐに火傷を起こす太陽の下でしか、紅海の
目くるめく壮大さは味わえないのである。

私は朝、甲板で激しい海の風に吹かれながら飲む大カップのコーヒーに満足
した。中国人、マレー人、インドネシア人、ヴェトナム人たちの喧噪のなかで 、
甲板に寝そべってヘミングウェイを読むのが 、たまらなく嬉しかった。舶先に
立って風を受けていると、まるで大航海時代の冒険者になったような気がした。

東シナ海の冷酷な青い波、くらげの浮ぶボルネオ海の白緑色のねっとりし
た波、インド洋の壮麗な落日の下で黄金色に砕けていた波、地中海の凄味を
帯びた青黒い波—— いずれも刻々に私の魂を奪ってやまなかった。朝から晩
まで私は舷側からただ海の青さ、広さに見入っていた。

人間は愛するもののそばに長くいたいと思う。ただいるだけで幸せなので
ある。人が退屈するのは、ひたすら愛するものを失ったからではないだろう
か。この大航海の間、私は自然の素晴しさと同時に人生の過ごし方も学んで
いたような気がする。

あれからもう三十年。いまも海が恋しいとき、なつかしい三好達治の詩を
読む。

「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西人
の言葉では、あなたの中に海がある。」(フランス語の母はmere,海はmer)

(『生きて愛するために』中央公論新社より)

注釈

❶辻邦生(つじくにお)(1925〜1999)

2日语综合教程第五册

昭和時代〜平成時代の小説家。フランス文学者、大正14年9月24日生まれ。パリに留学し、帰国
後の昭和38年『回廊にて』で近代文学賞。昭和44年『安土往還記』で芸術選新人賞。昭和48年
『背教者ユリアヌス』で毎日芸術賞、平成7年『西行花伝』で谷崎潤一郎賞。人間精神の高貴さを
追求する独自の文学世界を展開した。随筆『海辺の墓地から』『季節の宴から』などがある。昭

和50年学習院大学教授。芸術院会員。平成11年7月29日死去、73歳。東京都出身。東大卒。
❷不忍池(しのばずのいけ)

東京都台東区、上野公園の池。江戸時代からの行楽地。低湿な沼地で、ハスの花で知られる。水

上動物園がある。
❸鹿児島(かごしま)

九州地方南部の県。もとの薩摩・大隅にあたる。面積は9185平方キロメートルで、人口179.5万。
❹桜島(さくらじま)

鹿児島県、鹿児島湾にある火山島。標高1117 メ ートル。噴火記録の多い活火山で知られ、大正3
(1914)年の噴火で、大隅半島と地つづきとなった。
❺開聞岳(かいもんだけ)

鹿児島県、薩摩半島南端にある火山。標高922 メートル。霧島屋久国立公園の一部。薩摩富士とい
われる。
0マルセイユ(Marseille) 马赛
フランス東南部、地中海に面した商工業都市、貿易港。ローヌ川の河口に近く、古代から重要な

港。近郊の工業地域とともにマルセイユ大都市圏を形成。大口 80. 8万(1990)。
〇 季節労動者(きせつろうどうしや)

季節によって、その業務に著しく繁閑のある労働に従事する人。また、本業のできない季節に他

の労働に従事する人。

❽紅海(Red Sea)(こうかい)

アラビア半島とアフリカ大陸との間にある細長い海。面積44万平方キロメ ートル。北はスエズ運

河を通じて地中海に、南はバベルマンデブ海峡を通りアラビア海に至る。

❾ コンラッド(Joseph Conrad)(1857〜1924) 康拉德

イギリスの小説家。ポーランド生まれ。初期に海洋物語を、のち政治小説を書く。人間のモラル

の探求者として知られる。作品『闇の奥』『ロード=ジム』『ノストローモ』『密偵』など。

❿ マレー人(Malayじん) 马来西亚人

マレー語を話す民族。

❿ ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)(1899〜1961) 海明威

アメリカの小説家。ロスト・ジェネレーションの代表作家。簡潔で乾いたハードボイルド・スタ

イルの文体で、第一次大戦後の不安と幻滅・虚無感を描く。1954年ノーベル文学賞受賞。作品『日
はまた昇る』『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』『老人と海』など。
大航海時代

15〜16世紀、ポルトガル・スペインが地球規模の大航海を実現した時代。ディアス、ガマ、コ
ロンブス、マゼランらが活躍。西欧大が新航路を開いて地理上の発見をした時代。
®東シナ海

中国の東海、東側にあり、長江河口より南で、台湾、南西諸島に囲まれた海域。「シナ」は「秦」
の転訛で、中国に対する日本の昔の呼び名で、軽蔑の意味が含まれていたが、今では必ずしもそ

うではない。

礎)ボルネオ海(Borneo) 婆罗洲海

東南アジア南西部、南海南部の海域。

(£)三好達治(みよし たっじ)(190〇〜1964)

詩人。大阪生まれ。東大卒。叙情詩の多面的な可能性を追究。のち文語定型詩に移る。詩集『測

量船』『駱駝の瘤にまたがって』、評論『萩原朔太郎』など。

3第1課海の中に母がいる

新しい言葉

父方(ちちかた) [名] 父親の血筋に属しているほう。/父系,父方血统。
終戦(しゅうせん) [名] 戦争が終わること。特に第二次世界大戦におけ

池端(いけのほとり・い る日本の敗戦を指して言うことが多い。/战争
けのはた) 结束。
[名] 池のほとりの意。/池塘边。
面(おもて)
[名] 「表」と同様。①顔。顔面。/面,脸。②仮面。

面。/假面。③外面。表面。/表面。

照れる(てれる) [自ー] きまりが悪くて、恥ずかしがる。/难为情,羞涩。
ついでに(序に)
[副]. (ある物事をした)ちょうどその機会に。機会に

乗じて。/顺便,就便,顺手。

辺鄙(へんぴ) [形動] 都会から離れていて、不便な様子。/偏僻。
漁村(ぎょそん)
[名] 主に漁業によって生計をたてている海辺の

村。/渔村。

夜行(やこう) [名・自サ] (自サ)夜、行くこと。夜、行動すること。/夜

行。(名)夜行列車の略。/夜间火车。

連絡船(れんらくせん) [名] 海や湖などで、両岸のあいだや島のあいだを定

期的に運行する船。/联运船。

望郷(ぼうきょう) ’ [名] 故郷を懐かしく思うこと。/望乡,思乡。
駆る(かる)
[他五] ① (動物を)追い立てて走らせる。/驱赶,追赶。

Z② (ある行動をするように)むりにやらせる。

迫使,驱使。③心をある感情の方向に強く動か

す。/受••・支配,驱使。

切りはなす(きり離す) [他五] つながっているものや、一つになっているも
憧れ(あこがれ)
搔き立てる(かきたてる) のを切ったりして、わける。/割开,断开,分

开。

[名] 憧れること。自分が理想とするもの、なりたい

もの、行きたいところなどに強く心ひかれるこ

と。また、その心。憧憬。/憧憬,向往。

[他ー] ①勢いよくかきまぜる。/搅拌。②(光を強くす

るために)灯芯を引き出す。/拨旺,挑亮。③(強

い刺激を与えて)ある気持ちをさかんに起こす

ようにする。/挑动,煽动。

入社(にゅうしや) [名・自サ] 社の名のつく団体に入って、その一員になるこ
対応(たいおう)
と。/进公司(工作),入社。

[名・自サ] ①相手の動きやまわりの様子を見ながら、それ

にふさわしい行動をとること。/适应,应付。②

4日语综合教程第五册

勘違い(かんちがい) [名・他サ] 調和する。バランスがとれる。/协调,均衡。③
思いのたけ(おもいの丈) [副] 二つの関係することがらが、互いにつりあうこ
と。/对应,相对,对立。
衰える(おとろえる) [自ー] うっかり思いちがいをすること。/错想,错认。
船旅(ふなたび) [名] ある人を思う心のありったけ。思いの限り。多
不満顔(ふまんがお) [名] く、男女間の愛情に用いる。/(尤指男女间的)倾
満喫(まんきつ) [名・他サ] 心思慕,痴情。
丸窓(まるまど) [名] カや勢いが弱くなる。/衰弱,衰老,衰退。
すれすれ [形動] 船に乗ってする旅のこと。/坐船旅行。
思い通りにならなくて、不愉快な表情。/不满
うねる [自五] 意的表情。
じゅうぶんに満足するまであじわい、また楽し
荒れる(あれる) [自ー]* む。/吃足,饱尝;玩味。
輪郭の円い窓。船舶などに多い。/圆窗。
覆い(おおい) [名] ①もう少しで、触れてしまうほど近い。/几乎
ふさぐ(塞ぐ) [他・自五] 接触,差一点碰上。②もう少しで限度を越えて
しまうようす。/几乎接近,逼近。
鉄パイプ(てつpipe) [名] ①道や川が左右に大きくまがりくねりながらっ
二段棚(にだんだな) [名] づく。/弯曲,蜿蜒。②波の表面が大きくゆっ
カンバス(canvas) [名] たりとゆれうごく。/滚动,翻滚。
①天気が悪くなり、ひどい状態になる。/闹(天
气),(海浪)汹涌;海上起风。②人の精神状態や
行動が乱れる。/荒唐,胡闹,纷乱。③その場
の状態がめちやくちやになる。/荒芜,荒废。④
なめらかでなくなる。がさがさになる。/皺裂,
变粗糙。

ものがかくれるように、上にかぶせるもの。/蒙
盖物。
①あいているところになにかをかぶせて、とじ
る。/占;挡道。②なにかを置いて、通ったり
使ったりできなくする。/堵,塞。③憂鬱にな
る。気分が優れない。/不痛快,郁闷。
鉄で作った管。特に、水・ガスなどの輸送に使
う鉄の管。鉄の導管。/铁管子;管道。
二つの段になっている、ものを載せる台。/两
层的架子。
①麻をあらく織った布。/麻布。②油絵の画布。Z
画布。③亜麻布。丈夫なので運動靴•帆布•テン

卜などに用いられる。キャンバスとも。/帆布。

5第1課海の中に母がいる

牢獄(ろうごく) [名] 捕まえた罪人を閉じこめておくところ。牢屋。/
居心地(いごこち) [名] 监牢,牢狱,监狱。
接触(せっしょく) [名・自サ] そこにいるときの気分や感じ。/心情,感觉。
①近づいてふれること。ものや人がふれあうこ
遮断(しやだん) [名・他サ] と。/接触。②人と人、国と国などがつきあう
灼熱(しやくねつ) [名・自サ] こと。/来往,交往,交际。
優雅(ゆうが) [名・形動] っづいていたものの流れを遮って、とめるこ
冷房(れいぼう) [名・他サ] と。/切断,遮断。
荒々しい(あらあらしい) [形] 焼けつくようにあついこと。/加热,烧热;灼
野獣(やじゅう) [名] 热,炎热。
限りない(かぎりない) [形] ゆったりしていて、上品なこと。/优雅,温文
強烈(きょうれつ) [形動] 尔雅。
素肌(すはだ) [名] クーラーなどで室内を涼しくすること。また、
その設備。/冷气设备;冷气。
火傷(やけど) [名・自サ] やさしさや思いやりがなく 、乱暴である。’/粗
目くるめく(めくるめく) [自五] 暴,粗野。
壮大(そうだい) [形動]
ヴェトナム(Vietnam) [名] Z野生のけもの。 野兽。
舶先(へさき) [名]
冒険者(ぼうけんしや) [名] ①きりがない。/无限,无止境,无穷无尽。②
冷酷(れいこく) [形動] この上ない。/无比,极大,非常。
くらげ(水母・海月) [名] 相手に与えるショックが非常に強い 。/强烈。
①化粧をしていない自然のままの肌。/不抹脂
浮(か)ぶ(うかぶ) [自五]
Z粉的皮肤。②衣服を着ていないむきだしの肌。

露出的皮肤。

Z火や熱湯などにふれて、皮膚がただれること。

烧伤,火伤,烫伤。
目がくらくらする。/目眩。
目を見張るほど大きく堂々としていて、りっぱ
なこと。/雄大,宏大。
国名、普通「ベトナム」と書く /越南。
船体の前の方。/船头,船首。
危険を押し切って行う人。/冒险者。
思いやりの気持ちがまったくない。/冷酷无情,
铁石心肠。
海に住む腔腸動物の一種。体はぶよぶよした傘
のような形で、たくさんの触手がある。種類が
多く、食べられるものもある。/海董,水母。
① (水中などに)沈まずにある。浮く。/漂,浮。
②表面に現れる。/浮起,浮出。③(考えなどが)
意識の中に現れる。/想起,想出;浮现,露出。

6 I日语综合教程第五册

白緑色(はくりょくし [名] 白みを帯びた緑色(色専用辞書では「びや
よく) くろくしょく」と読む)。/湖绿色,淡绿色。

ねっとり [副] きわめて濃い汁や油などが物の表面にねば

壮麗(そうれい) ついて、すぐにはしみ込んだり流れ出たり
落日(らくじつ)
黄金色(こがねいろ) せず、またふき取ろうとしても容易には取
帯びる(おびる)
れない様子。/胶粘,粘粘糊糊。
青黒い(あおぐろい)
刻々(こっこく ・こく [形動] とても大きくて、美しい。/壮丽,壮观。

こく) [名] 沈もうとする太陽。夕日。入り日〇/落日’

魂(たましい) タ阳。

奪う(うばう) [名] 黄金のように黄色に光る色。きんいろ。こ

舷側(げんそく) んじき。/金黄色。
見入る(みいる)
退屈(たいくつ) [他ー] ①身につける。/佩带,携带。②ある性質

ひたすら や感じをもつ。/带有,含有。③引き受け

恋しい(こいしい) る。/担任;负担,负重。

[形] 青みを帯びて黒い。/青黑色,蓝黑色。

[名・副] 時間のひとくぎりひとくぎり。また、着実
に時間のたっさまや、時間がたつにつれて
の意で、副詞的にも用いる。/每时每刻,时

时刻刻。
[名] ①心の活力。精神。気力。/精神,精力,気

魄。②なくなった人の霊。霊魂。/魂,灵

魂,魂魄。

[他五] ①相手から無理に取ってしまう。/剥夺,抢

夺,夺取。②他人の注意や関心を、こちら

にひきつけてしまう。/迷人,惊人。

[名] 船の横腹。/船舷。

[自五] 夢中になってじっと見る。/注视,看入迷,

看得出神。

[名・形動・ 自サ]何もすることがなくてつまらないこと。興
味を引くようなところがなくて、つまらな

いこと。/无聊,闷,寂寞,厌倦。

[副] ほかのことにはとらわれずに、そのことだ

けをするようす。/一味,只顾,ー个劲儿

地。

[形] 愛する人や好きなものに、せつないほど今
すぐ接したいという思いがする。/怀恋,眷



7第1課海の中に母がいる

言葉の学習

〇…ー〜とすると 要是…,如果…一 __一…一一一….:

助詞「と」に「すると」をつけて文型をなしたもので、活用語の終止形にっき、
前項は仮定条件を表すことが多く、もしそれが事実だと考えた場合は、後項はそ
のように考えた場合に成立する判断の表現が続く。また、「その事実から判断す
ると」というふうに、前項は確定条件を表す場合もある。接続詞的な用法もある。

❶ 西洋人である彼は肉食を好むとすると、このような毎日の和食生活は耐え
られないのではないかな。(他是西方人喜欢吃肉,现在每天吃这样清淡的日本
菜他受得了吗?)

❷ 今からお金を貯めるとすると、10年後には500万円ぐらいたまって、小さ
な会社を起こすぐらいの資金にはなるだろう 。(如果从现在开始存钱的话,
我想10年后大约可以存到500万日元,办一家小公司的资金应该不成问题吧 。)

❸ 彼女が彼のことを知らないとすると、その日にここに来たのは彼ではな
い、ということになる。(假如她不认识他,那么那天到这里来的人就不是他
了。)

❹ デザインを勉強するのに毎年200万円ぐらいかかる。とすると、留学生と
しては諦めるしかない。経済的には無理だから。(如果学习设计每年要花200
万左右日元的话,作为留学生我只好放弃了。因为我没有这样的经济实カ。)

会・…〜といっても」虽说•二

前項のはずだが、しかし、後項になっている。前項に対する一般的なイメー
ジと後項の現実が違うので、それについて説明をつけ加えるときに使われる。
接続詞的な用法もある。

❶ このノートパソコンは古いといっても、どこも壊れていないからまだ十分使
えるよ。このまま捨てるのはもったいない。(这个笔记本电脑虽说旧了,但没
有任何损坏,还可以用,就这样扔了太可惜。)

❷ 運転免許を持っているといっても、1週間前に取ったばかりで1人で運転す
る場合は、まだ怖い。(虽说有驾照,也只不过是一个星期前刚拿到的,所以1
个人开车时还很害怕。)

❸ 長年海辺に住んでいるといっても、海が好きだというわけではない。(虽说长
年住在海边,但我并不喜欢大海。)

❹ 日本は小さい島国である。といっても、北と南とでは気候は異なり、生活
の条件もかなり違う。(虽说日本是ー个很小的岛国,可是南北的气候差异彳艮
大,生活条件也大不相同。)

8日语综合教程第五册

三、心ゆくまで(こころゆくまで)尽情,心满意足

満足して、思いのこすことがないほど十分に、気が晴れるまでにという意味
を表す。

❶あの娘は飴玉が好きだから、これをもし開ければ、心ゆくまでなめること
ができるだろう。(那女孩喜欢吃糖,如果把这个打开 ,她可以尽情地享用它。)

❷ 10年ぶりの彼女との再会で、お互いに生活の変化も大きいことが分かった。
だから、私たちは温泉で心ゆくまで語りあった。(我与她10年没见面了,彼
此的生活都发生了很大的变化。我俩ー边泡温泉ー边开怀畅谈。)

❸ その店は定額料金さえ払えば、後は心ゆくまで飲み食いができ、時間の制限
もないし、彼らにとっては最適のたまり場であろう。(只要支付规定的入场
费,就可以到那家店无限量地畅饮畅吃,而且没有时间限制,这对他们来说是
最合适的聚会场所。)

❹ 今日はここに宿営すると決まったので、彼らは心ゆくまでビールを味わ
い、夜遅くまで騒いでいる。(决定今晩在此留宿后,他们尽情地喝着啤酒
一直闹到深夜。)

;曲 何としても(なんとしても) 无论如何,怎么也.....—二]

副詞。
/,どうしても、どんな方法を使っても必ず絶対に何かを実現させるという気持ち

を表す。

❶ そんなすばらしいところなら、何としても子供を連れて行って見せてやりた
いと思う。(既然那里这么美,无论如何我也要带孩子去看看 。)

❷ 日本は台風の進路に位置するとはいえ、何としてもその被害を最小限に食い
止めなければならない。(虽说日本处于台风必经的地理位置,但无论如何也
要把灾害控制到最低程度。)

❸ 私は何としても父親のないあの子を立派な人間に育てたいと思っている。
(无论如何我也要把那个没有父亲的孩子培养成一个出色的人才 。)

❹ 普通の人はオリンピックに出るチャンスはない。しかし、オリンピックに
出場するからには何としてもメダルをねらいたい。(一般的人没有机会参加
奥运会。但是,我既然参加了,无论如何也要拿块奖牌。)

2後に来る打ち消しの言葉の意味を強めて、なんとしても無理だ、できない、ど
うやってみてもだめだという意味を表す。

❶ 確かに困ってはいるけれど、あのお金だけは何としても受け取りたくないの
だ。(我的确很困难,可那钱我无论如何都不能接受。)

9第1課海の中に母がいる

❷ 助けてもらいたいが、自分の口からは何としても言いたくないのだ。(虽然我
很希望能得到他的帮助,可是无论如何都不想自己开口。)

❸ 彼は感情的な人間だから、こういう場合は何としても我慢できないだろう。
(他是个性情中人,这种场合肯定会受不了的。)

❹ こういう汚い話は、何としても耳にしたくないので、僕は1人で庭に出た。
(我实在不想听这么肮脏的话,便1个人走到了院子里。)

上〜だけでも单・•・就…,光…就…

名詞や動詞の終止形について、物事の種類や分量や程度などを限定して、そ
れを限度とし、その限度外のことにはとても力が及ばない、という意味を表す。

❶ せっかく日本に来たのだから、中に入れるように交渉してあげようと考えて
いる。しかし、これは1人入れるだけでも難しい交渉なのに、2人も3人も
となるなら、力が及ばないだろう。(你难得来一次日本,我想试着去替你交涉
一下,看能否让你进去。但是光你1个人就已经很难交涉了,如果还有两三个
人的话,那我就无能为カ了。)

❷ あの大学の合格率は50人に1人の割合なので、聞いただけでもその難しさ
が分かる。(那所大学的录取率为1/50,光是听听就能知道它有多难考了。)

❸ 電話で知らせてくれた登空もし有り難いと思っていたのに、彼は心配して
わざわざここまで訪ねてきてくれた。本当に優しい人だ。(只要打个电话通
知我,就已经万分感激了。可他还为我担心专程跑来看我,真是个体贴入微的
人。)

❹ 似たようなことは以前も何回かやったことがあるが、この度の話は聞いた
ぬすMも大変そうで、はやく断ったほうがいい。(类似的事情我以前也曾做
过几次,但是这次事情光听听就让人觉得够呛,还是赶快拒绝为好。)

%ふ気が遠くなる(きがとおくなる)

1.ショックや驚きなどのため意識を失う。ぼうっとなる。気絶する。(晕过去,失

去知觉)

❶ かんかん照りの暑い夏の日に、彼女は人ごみの中を歩いていて、疲れと喉の
渇きで気が遠くなって倒れてしまった。(在烈日当头的炎夏,她走在拥挤的人
群中,又累又渴,结果体力不支晕倒了 。)

❷ みんなとテレビを見ていた時、彼女は突然気が遠くなって、床の上に顔をう
つ伏せに倒れた。(她和大家在ー起看电视,可是突然脸朝下ー头栽倒在地下晕
了过去。)

❸ 彼女は駅の階段を五六歩駆け上がり、駆け込み乗車で電車に間に合ったが、

10日语综合教程第五册

乗車後目が眩み、気が遠くなってしまった。(在车站上她跑了五六级台阶,赶
上了快开的电车。可是上车后感到眼前发黑,接着就晕过去了。)
❹ 気が遠くなったおばあさんを、みんなは救急車を呼んで病院へ運んだ。(大家
叫来了救护车,把晕过去的老大娘送到了医院。)

2•意識がぼうとなってしまいそうなほど、物事の規模やあり様が並外iしていて、

冷静な判断ができなくなるようすを表す。(程度高得吓人,使人感到吃惊,仿
佛要晕过去似的)

❶ 目の前にポンとお金を置かれた。気が遠くなるような大金を見せられて、彼
は心が動いた。(砰的一声在他眼前放了一大堆钱。看到这堆令人难以置信的
钞票时,他的心动了。)

❷ 貧富の差が大きくなると、一部の金持ちは一夜にして気が遠くなるような大
金をかけて賭博をしたりしている。(贫富差距拉大后,一部分有钱人开始赌
博,他们一夜的赌金大得令人吃惊 。)

❸ やっと終わったオリンピック。しかし選手たちには次期4年後の大会に向
けて気の遠くなるような試練が待ち受けている。(本届奥运会终于结束了。
但是为迎接4年后的下届奥运会,等待着选手们的是严酷的训练。)

❹ 1人でノミと金槌だけで岩を掘り、トンネルを作った彼の偉業は気の遠く
なるような努力の日々の結果であったと想像する。(他1个人用凿子和铁锤
挖岩石,为开通隧道建立了丰功伟绩,可以想像那是无数个日夜努力的结果。)

・さながら

副詞。文語的な表現で、ある物事・状態を他の物事・状態になぞらえていう
ときに、両者そっくりなほどよく似ているようすを表す。次のような用法があ
る。

/,名詞について「〜そのまま」「〜そっくり」という意を表す。(跟----般,就
跟--- 样)

❶ 雇われた季節労働者は朝起きるとすぐに畑に連れ出され、3度の食事も野外
で取り、帰ると寝るだけ。その間は奴隸さながらだ。何ら自由は許されな
い。(被雇用的短エー早起来后就被带到大田里,一日三餐也在大田里吃,回来
后只是睡觉。雇用期间他们犹如奴隶一般,没有任何自由。)

❷ 彼は入社してまだ間もないが、機械の組み立てから梱包まで熟練工さな先ら
の手早さで仕事をこなしている。(他刚进公司不久,可是从组装到打包,他都
已经能像熟练工人ー样干得迅速麻利。)

❸ 雇われの身の彼女が、その家の生活に慣れてくると、まるで主大さながらに
家の中のことを取り仕切っている。(虽然她是被雇佣来的,但是当她习惯了这

11第1課海の中に母がいる

里的生活后,就像主人ー样一手包揽了这个家庭的一切家务。)
❹ それは実戦さな龙らの迫力を感じさせるすばらしい作品なので、おじいさん

は気に入ってすぐに買ったのだ。(那是一幅十分优秀的作品,给人以ー种亲临
实战的感觉,扣人心弦,所以爷爷十分中意,马上把它买了下来。)

2ある事物、状態が他の事物、状態に非常によく似ている様子。ちょうど。(好像,
仿佛,宛如)

❶ あの屋敷はたいへん豪華に飾られていて、さながら宮殿のようである。僕は
あの屋敷での最初の夜は君とともに過ごしたいのだ。(那幢房子装饰得十分豪
华,好像宫殿ー样。我要和你ー起度过在那幢房子里的第一个夜晚。)

❷ 雪の積もった景色の眺めはき地邑一幅の絵のような美しさで 、私は寒さも
忘れしばらくはうっとりと見入っていた。(那一片积雪景色优美如画,我甚至
忘却了寒冷,出神地在那里看了一会儿。)

❸ 大きな翼と鋭い嘴、それはとても現実のものとは思えない、さながら神話に
出てくる怪鳥の化身のようだ。(大大的翅膀和尖尖的嘴,仿佛是神话中出现的
怪物的化身,不敢相信它是现实生活中的东西。)

❹ 彼女は若者に似合わず物静かで、微笑んだその顔はさながらモナリザを彷彿
とさせる。(她跟一般年轻人不同,非常文静,那微笑的脸蛋就像蒙娜丽莎ー样。)

七应 〜心地(〜ごこち) 感觉,心情 !

接尾語。動詞の連用形や名詞について複合名詞をつくる 。ある場面、状況、
環境が「快適(不快)」で、精神的、肉体的抵抗がない(ある)状態を表す。

❶ 美しい音楽を聴きながら、乗り心地のよい車を運転するのは快適だ。(ー边听
着优美的音乐ー边驾驶舒适的小车,感觉太惬意了 。)

❷ そのソファーは実に座り心地が良く、友と待ち合わせの時刻をつい、うと
うととしてしまった。(这张沙发实在舒服,我坐在上面等朋友,不觉迷迷糊
糊地打起了瞌睡。)

❸ 部長に昇進したとの知らせを受けると彼はすっかり上機嫌になって、夢見
心地で周りからの祝福を受けていた。(接到晋升部长的通知后他极度兴奋,
好像陷入梦境一般,接受着周围人的祝福。)

❹ この靴はちょっと値段は高かったが、履き心地がとてもいいので、もう1
足ほしいくらいだ。(这双鞋子虽然价格有些贵,但是穿起来很舒服,真想再

买1双。)

~み …的情况、样子、状态、程度

接尾語。主に形容詞、形容動詞の語幹について名詞をつくる。物事の性質や

12日语综合教程第五册

状態、程度を表す。この時の「み」は「味」と書く場合がある。また、一種の
感じや状態を表したりもする。

❶ どんなことでも冷やかに対処するあの人のことだが、この事件の処理で私は
彼に人間としての温か次を感じた。(虽说他对什么事情都很冷漠,但是我却从
这件事情的处理上,感受到了他人性的温暖。)

❷ こんな取り返しのつかない事件になってしまったのは、彼自身に弱次があっ
たからだ。(之所以发生如此不可挽救的事件,是因为他自身有弱点 。)

❸また連続殺人の映画か。新鮮巫がないね。ほかにおもしろいのがないかな。(又
是讲连续杀人事件的电影啊,一点新鲜感都没有,有没有其他有趣的片子啊?)

❹ この縁談では彼女は最初から真剣次を見せてくれなかった。だから、成功し
なくても何もショックを感じない。(这次相亲她从ー开始就没抱认真的态度,
因此不成功也不足为奇。)

上4〜てやまない非常…,•••不得了 i

書き言葉。動詞「やむ」の否定形、「終わりにならない」「どこまでも〜する」
「強く〜する」という意味で、ある行動や状態、または相手に対する一種の強い
気持ちを表す文章語である。

❶ その時、彼の見送りをしなかったことを後悔してやまなかったC (我为那时没
去送他而后悔不已。)

❷ヨーロッパ旅行に憧れ続けてやまなかった彼女の夢は、大学を卒業して
やっと叶った。(她一直向往去欧洲旅行,大学毕业后终于圆了这个梦。)

❸ 先週、突然の事故で足を骨折してしまった彼の1日も早い復帰を願ってや
まないC (上周他突然因事故骨折,我衷心希望他能早日康复归来。)

❹科学の進歩を求めてやまない人間の欲望は、やがて発明した物によって苦
しめられることにもなるであろう。(人们为满足自己的欲望不断追求科学进
步,而不久又将为自己发明的东西所困扰。)

類語の学習

三二》しやがむ・蹲る・屈む :

1.しゃがむ 蹲,蹲下

ひざを曲げ、腰を低く落として、尻が地面にすれそうな格好をする。

❶ 中国の山奥に行くと、そこの人たちは椅子があるにもかかわらず、食事の時
にはお碗を手に持ってしやがんでご飯を食べているc (来到中国的山区,看

13第1課 海の中に母がいる

到那里的人吃饭时,明明有椅子却不坐,总是端着碗蹲着吃 。)
❷ 父親はいらいらして子供に当たりちらすが、子供は疲れと空腹でしゃがんだ

きり動かない。(父亲心里着急冲着孩子出气,可是孩子由于疲劳和饥饿蹲在
地下不动。)
❸ このごろ、どうも膝の関節に不自由を感じ、しゃがむことさえ難しくなっ
た。膝になにか病変でも起こったのだろうか。(最近一段时间总觉得膝关节’有

些不舒服,甚至连下蹲都有些困难,该不是膝盖有什么病变吧 。)
❹ 私も子供が自由に立ったりしゃがんだりする機敏な行動をするのを見て、羨

ましく思うような年になってしまった。(我也已经到了看见孩子们敏捷灵活地
站上蹲下都深感羡慕的年龄了。)

2蹲る(うずくまる) 蹲,踞,蹲坐,蹲伏

しゃがむよりも更に体を低くし、膝を抱くようにして体全体を丸めてしやが
む格好を表す。

❶ みんなで一緒にワーワーキャーキャーと騒いでいたところ、彼女は突然腹痛
に襲われ、両手をお腹に当てて蹲った。(正当大家一起吵吵嚷嚷时,她突然
感到ー阵腹痛,双手按着肚子蹲了下去。)

❷ 電子ボードに絶えず変動する株価を見詰めていた彼は、自分の持ち株がいき
なり急落するのを見て、その場に蹲ってしまったc (他死盯着电子屏幕,看着
那不断变化着的股价。当他看到自己所持有的股票的价格忽然剧跌时,一下子
蹲在了地上。)

❸ 君、こんなうす暗い物陰に蹲っていると、なにか悪いことでもしようと企ん
でいるのではと疑われても仕方がないよ。(你在这样昏暗的地方蹲着,被人
怀疑搞什么阴谋也是正常的。)

❹ ふと前方に目をやると崖の上に豹が前足を立てて僵り、こちらをうかがって
いる。戦慄が全身を走った。(忽然抬头ー看,只见前方悬崖上有只豹前脚着地
蹲踞而坐在上面正盯着这边看,顿时我感到毛骨悚然。)

3.屈む(かがむ) 弯下腰,蹲

腰や手足の指がまっすぐ伸ばせないさま。また、足腰をまげて低い姿勢をとる。

❶ 私は、腰が屈まないように気にするあまり、無理やりにいい姿勢をとろうと
して背を反らすことで、かえって腰痛がひどくなったり、足が痺れたりする
ことがある。(走路时我过于注意不能弯腰,硬是让自己挺起腰板,这样反而加
剧了腰疼和脚麻。)

❷ 父は娘の側に歩み寄り、娘の視線と合うまで腰を低くして屈むと、「稽古が
嫌になったかい?」と、やさしく穏やかに聞いた。(父亲走到女儿的身旁,弯
下腰看着女儿的眼睛,温和平静地问道:“你不愿意做练习吗?”)

14 日语综合教程第五册

❸ 夜中に帰宅した父親は屈んで、ぐっすり眠っているわが子の顔をのぞき込ん
でいる。(父亲半夜回到家里,弯着腰凝视着熟睡中儿子的脸 。)

❹ 上体は伸ばしたまま、両膝を曲げて屈む。それと一緒に両手の掌を軽く下へ
押さえてゆく。目は前方を見る。頭は何も考えない。これは太極拳をする時
の大事な姿勢である。(保持上身舒展,屈膝下蹲。同时双手轻轻向下压,双眼
正视前方,什么也不要想。这是打太极拳时很重要的姿势。)

まとめ

腰や膝を折り曲げて上体を低くするという意味では三語とも共通しているが、
「しゃがむ」はお尻を下げて地面にすれそうな格好を表すが、「蹲る」はしやが
み込んで頭を下げ、膝を抱くようにした格好で、体を丸くするような状態を表
す。「屈む」は膝が曲がってお尻が下がらず、背の高い人が門をくぐったり、低
い位置にある節穴をのぞく場合のような姿勢を表すことばである 。

三,寝そべる・寝塹がる…・J蔓転ぶ j

7.寝そべる (ねそべる) 随便躺卧,伸腿伏卧

体を倒して腹ばいになったり、横になったりして、体を伸ばしてくつろいだ
姿勢を表す。

〇 父は野良仕事のあとで、昼食をとりに帰ったとき、縁側で寝そべって一体み
するのが習慣になっている。(父亲干完农活回到家里,吃饭前总会躺在廊子
里休息一会儿,这已成了他的习惯。)

❷ ソファーに寝そべって昼寝をしている良子ちゃんの格好が可愛らしく、それ
をカメラで写してパソコンにとり込んだ。(良子躺在沙发上午睡的样子十分可
爱,我用照相机把^她拍下来输入了电脑。)

❸ 芝生に仰向けに寝そべる彼と、うつむきに寝そべる私は、夕日が西に傾くま
で、お互いに無言のまま、一言も言葉を交わさなかった。(他仰面朝天躺在草
地上,我卧躺在草地上,我俩就这样无言地躺着,直至タ阳西下,没有交谈。)

❹ 玄関のところへ行くと、犬が長々と寝そべっているのが見えた。(走到大门
ロ,看见一条狗拉长着身子躺在那里。)

2.寝転がる(ねころがる)随便躺下

疲れたり、何もやる気が起こらなかったりして、体の力を抜いてごろりと体
を横にする。

❶ わたしという人間は今計算機を動かすだけの空間と自由に寝転がる空間があ
りさえすれば、さほどの不便は感じない。(我这个人现在只要有一个能使电脑
运转的空间,有一块能随意躺下的地方,就不会感到太大的不便。)

15第1課海の中に母がいる

❷ 天体の観察には望遠鏡などの機材が必要であるが、懐中電灯、防寒具、地面
に寝転がるシートやマットなどの附随装備も欠かすことはできない。(观察天
体需要有望远镜等器材,但手电筒、防寒用具、躺在地上时用的苫布等附属用
品也是必不可少的。)

❸ うちの犬が、仰向けに寝転がる行為にはいくつかの意味がある。戯れで飼い
主に撫でてもらいたいとか、服従の態度を積極的に示すとかなどである。(我
家小狗仰面躺着的动作表示很多意思。比如淘气地希望主人抚摸它,积极地示
意自己乖顺等等。)

❹ 昨日は久しぶりに一日中何もしないで家で寝転がっていたC (昨天1天我什么
也没干,在家里休息了1天,我已经好久没这样了。)

3寝転ぶ(ねころぶ)横卧,随便躺下

人間などがむぞうさに横になる。ごろりと体を横にする。

❶ 晴れた暖かい日に、子供たちを連れて海岸へ行き、砂浜に寝転んでいると、
穏やかな日ざしに照らされ、うつらうつらしてくる。(在天晴温暖的日子里,
我带着孩子们去海边,躺在沙滩上,晒着暖暖的太阳,昏昏欲睡 。)

❷何もやる気が出ないときは、僕は草原で寝転びたくなるc昼は流れる雲を、
夜は瞬く星々を見上げながら、何も考えないでただボーツとして過ごした
い。(什么都不想干的时候,我就想躺在草原上。白天仰望流动的云朵,晚上看
着眨眼的星星。什么也不想,只是呆呆地躺着。)

❸ この温泉の特徴は足湯だ。膝から下を折り曲げて湯に浸け、そのあとでごろ
んと板の間に寝転ぶと、とてもゆったりとした気分になる。(这个温泉的特点
是足浴,把膝盖弯曲起来浸在温泉里,然后向后仰身躺在木板上,这时的感觉
非常舒适。)

❹ 真つ白な画面が現れた。そしてマジックインキ特有の音と共に1本の線が描
かれ、だんだん画面の左端に仰向けに寝転ぶ1人の女の姿が現れたC (出现ー
个雪白的画面,伴随着万能笔特有的声音展现出一条线来,慢慢地在画面的左
边出现了1个仰面躺着的女人的身姿。)

まとめ

体を横にするというのは三語とも共通しているが、「寝そべる」は手足を伸ば
して腹ばいになったりする様子を表し、.くつろいだ状態で、だらしない、あま
り行儀のよくない姿勢のように見える。また、動物にも使う。「寝転ぶ」と「寝
転がる」は、どこということなく気軽にごろっと横になるという点では同じだ
が、「寝転ぶ」は何かをするのに横になっているほうが楽だという理由で横たわ
ることを表すのに対して、「寝転がる」は何もすることがないので横になり、カ
を抜いて何もしないでゴロゴロしている状態を強調した言い方で、「寝転ぶ」よ
りも怠けた感じがする。

16 日语综合教程第五册

練習

ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。 満喫 開聞岳 接触 遮断 強烈
甲板 二段棚 優雅 野獣 落日
父方 不忍池 池端 辺鄙 退屈 壮大 喧噪 舶先 舷側
望郷 連絡船 船底 丸窓
灼熱 居心地 桜島 素肌
冷酷 地中海 壮麗

二、次の文の片仮名の部分を漢字になおしなさい。
1. そんなことを言われて、彼女は乏れてしまった。
2. 僕はハマべに寝転んでぼんやりと空を眺めるのが好きだ。
3. 彼女はまだ見たことのない土地に切三ガれているのだ。
4. わが家の屋根が見えてくると、急に気力がオトロえてしまった。
5. 「目を归:って部屋から出てくるように」という指示を受けた。
6. この部屋はレイボウが効き過ぎているよ。
7. こういうアラアラしい振るまいはやめなさい。
8. 危ないから、ヤケドをしないように気を付けてください。
9. 朝、学校へ来るとガラスがをけていたのだ。
10.そこには祖先のタマシイが祭られているc

三、 次の質問に口頭で答えなさい。
1.筆者の海好きは母からの遺伝だと言っているが、それはなぜか。

ゝ2母はなぜ照れたような顔で立ち上がったのか 。

3. 「ちょっと海が見たくなって」とあるが、「母」はどこの海でも見たいのか。
4. 「母」はなぜ海を見たくなったのか。
5. 筆者が船会社に就職したかったのはなぜか。
6. 海に対する憧れが叶うチャンスとはなんだったのか。
7. なぜ四等室だと、海の喜びを満喫できるのか。
8. 筆者はどのようにその船で過ごしていたか。
9. 「人生の過ごし方も学んでいた」とあるが、それはどのように理解すればいい

か。

io.筆者は「海よ、〜」という詩が好きなのか。それはなぜか。

四、 次の文の下線部を辞書で引いて日本語で説明した上、全文を中国語に訳しなさい。
1. この冬、姓に暖かいのは地球温暖化のせいだろうか。
2. 通な借金とりがどこまでも追ってくる。

17第1課 海の•中に母がいる

3. 午後になると、台風の勢力も衰えてきた。
4. うねった山道に沿っていくと、はずれに小さな村があった。

15. 海に 人で見入っているその様子が島の快活な女たちとは違っている。

五、次の下線部の言葉の意味が、それぞれのはじめの文と最も近い意味で使われている
文を、①、②、③、④から一つ選びなさい。
1. 僕は彼らの行動に競争心を搔き立てられ、つい級長選挙に立候補したのだ。

① 彼は欠伸をしてローソクをかすかに搔き立てて、また読書の世界に没頭した。
② こうやってストローで十分搔き立ててから砂糖を入れてくださいね。
③ あの二人の親しさに嫉妬心を搔き立てられ、つい悪口を言ってしまった。
④ このビールは十分泡を搔き立ててから飲むとおいしいよ。

2. 僕は一種の好奇心に駆られて挑戦に応じた。

① 欲望が人々を戦争へと駆ることは昔からあった 。

② あの選手は健脚を駆2X_42キロを走りぬいた。

③ 夕日が西に傾くころになると、人々は牧舎に牛を駆る。
④ 彼は得意な速筆を駆空ー晩で書き上げた。

3. 彼は長い論文を書いたが、月干心なところには触れなかった。

① 彼は性格の荒い人間なので、彼の怒りに触れるようなことは絶対口にしない。
② テーブルの上には何もないように見えるが、その下では二人の手が地合っ

ていたのだ。
③ 私は彼に手紙を書いたが.、そのことについては全然触れなかった。
④ 「法に触れるようなことだけは絶対にしてはだめだ」と、再三注意した。

六、次の語群から適切な言葉を選んで、必要な場合は形を変えて( )に書き入れな
さい。

刻々 照れる ねっとり たまらない 思いの丈
勘違い つねに ひたすら 目くるめく 限りなく

1.こんな( )として甘味のある里芋を生まれてこの方、食べたことがない。

2人の大事なものをなくしてしまって 、弁償のできない私は( )相手に謝

るしかなかった。

3彼は毎晩毎晩を、いや、( )の「時」さえも、いかに有効に過すべきかを

考えている。

4.その時、親切に指導してくださった先生に、私は( )感謝した。

5何だか、話が大変おかしくなってきたようだが 、君は少し( )をしてい

るのではないかな。

18日语综合教程 第五册

6. 口下手な彼は、得意なギターで自分の作った曲を弾くことによって( )

を彼女に伝えた。

7. そこの夏のあの( )ような暑さにはとても堪えられたものではない。

8. 彼氏と腕を組んで歩いているのをクラスメートに見られて 、彼女は( )

顔を俯けた。

9. どんなに弱くても、男は( )男としての自尊心を持っているわけで 、そ

れを傷つけてはいけない。

110.私にとって 人で横になってあれこれと空想するのが( )愉快なことで

ある。

七、次の文中の 部分に入れるのに最も適切なものを選びなさい 。必要な場合

は、語の形を変えてもよい。また、答えは必ずしも一っとは限らない。

1. その子は父親譲りの天然パーマの髪の毛、誰もが触りたくなるようなかわいら

しい頰をしている。また ようなポーズでこちらを見上げる表情が実に

可愛らしい。

①寝そべる ②寝転がる ③寝転ぶ

2. ここは駅前とはいえ、都会の駅のような喧噪はどこにもない。市街地の中心に

いるとはとても思えないくらいだ。芝生は広く、好きな時、好きなところに

ことさえできる。

①寝そべる ②寝転がる .③寝転ぶ

3. 昔からほとんどテーブルと椅子を使わず、部屋の片隅で肘枕で ながら

の執筆である。

寝①そべる ②寝転がる ③寝転ぶ

4. 長時間___:_____ 草取りするのはつらい。ほかの仕事をさせてくれ。

①屈む ②蹲る ③しゃがむ

.5.私の幼少のころのある夏の日、外の遊びから家に帰るなり、突然天井から一匹

の大きな蛇が目の前に落ちてきた。私は「キャー」と叫んでその場に、

動けなくなってしまった。

①屈む ②蹲る ③しゃがむ

6.あそこで 小石を拾っている子は田中さんの子供じゃないか。

①屈む ②蹲る ③しゃがむ

ハ、括弧の中の言葉を使って次の中国語を日本語に訳しなさい。

11. 如果无故旷エ长达 个月的话,从目前这个公司的现状来看,想要复职恐怕比较

困难。(〜とすると;无故旷エ->無断欠勤)

2. 虽说中了彩票,但只不过中了1个六等奖3000日元而已,没有必要高兴得跳起

来。(〜といっても)

19第1課海の中に母がいる

3. 在日逗留期间,我无论如何也要去看看被称为日本之最的美丽的富士山。(何とし

ても)

4. 轮船犹如ー叶扁舟在海浪中疯狂地飘舞着,仿佛马上就要翻船。让人担心不已。

(〜さながら;疯狂地飘舞着ー舞いくるう)

5. 我光是抚养妻子儿女就已经很吃力了,根本没有经济能力去买那种奢侈品。(〜だ

けでも;很吃力T精いっぱい) ,

6. 我从小由外婆一手带大,与父母不太亲近。可是通过这件事情,我深深感受到做

父母亲的不容易。(ありがたみ;与父母不太亲近一両親としっくり行ってな
かった)

7. 尽管我们父子俩相处了 30年,可是我从未与父亲尽情地交谈过。(心ゆくまで;

• 从未ー一度たりとも〜ない)

8. 爷爷受不了空前的炎热,一大清早就晕过去了。大家七手八脚地把他送到了医

院。(気が遠くなる;七手八脚ーあわてて)

9. 妹妹结婚后一直没有孩子,去年总算怀孕了。我衷心祝愿高龄生育的妹妹能平安

无事。(〜てやまない;高龄生育一高龄出産)

10. 那地方很安静,空气新鲜,购物和交通也方便。我认为对老人来说这是ー个居住

舒适的好地方。(〜心地)

九、言葉の決まり

1.次の下線部の漢字と同じ字を用いたものを 、それぞれ後のア〜工から選びなさ
い。

①登山というものには、労働のテンケイが純粋に保たれている。

アテン火 イ昇テン ウ反テン 工祭テン

②都会の人口も今や主之ワ状態だ。

アホウ酸 イ同ホウ ウホウ食 エホウ任

③この本は中学生をタイショウとしている。

アショウ賛 イ参ショウ ウ気ショウ エショウ拠

④この国の人々は、豊かな文化をユウゾ、ウした。

ァ競ソウ ィソウ飾 ウソウ意 エソウ遇

20日语综合教程第五册

2次の①〜④の慣用句の空欄にあてはまる共通の漢字一字を答えなさい。

① ()を出す ()に負えない ()を抜く

② ( )を持つ ( )の荷がおりる ( )で風を切る

③ ( )が高い ( )をへし折る ( )にかける

④ ] )を長くする ( )を突つ込む ( )をひねる

3.次の短文を読んで後の問いに答えなさい。

1 3あるとき、?歩いて いると、にわかに黒い雲がわいて湿った風が吹き出しま

しな〇空一面に白鷺の群れが、まるで風に揉まれる綿毛のように、いまにも吹き

飛ばされて落ちそうに散らばっていました。くそのうちに雨がきました。ビルマ

の雨は猛烈です。みるみるうちに、う四方が濛々としたしぶきにとざされ、さな

がら水の中を泳いでいるときのように、呼吸も難しいくらいでした。

しばらくすると雨がやんで、晴れ上がりました。天も地も°さっと明るくな

7り、空一杯に 大きな虹がかかりました。
① 下線1、4、6、7のうち、品詞の異なるものはどれか。記号で答えなさい。

()

2 3② 下線 と の関係は、次のどの関係か。記号で答えなさい。

、ア主語•述語の関係 イ並立の関係

ウ 修飾•被修飾の関係 エ 補助の関係

5③ 下線 の述語を一文節で抜き出しなさい。

()

十、次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

服装というものは、人間の社会生活のなかでもっとも単純、明快で、しかもしば
しば忘れられがちなコミュニケーションの媒体である。自分が誰であるかを自ら表
現し、同時に他人に伝えるために、身につけている衣服は極めて有効な手段なのだ。
ことばを使って、人間どうしが何かを伝え合うというのは、コミュニケーションの

a方法として一般的だけれども、 ことばだけが意志を伝え合う媒体なのではない。

ある人間が身につけているものを見て、その人間が何者であるかが〕«一に分か
るとすれば、衣服はその人間の社会的な位置づけを無言のうちに語る媒体なのであ
る。卑近な例でいうなら、ホテルその他のサービス業の場合、お客の服装をじろり
と一瞥するだけでそのお客の氏素姓が分からなければ一人前ではないという。服装
は、それ自体何かを「語る」のだ。

まず、基本的には服装はコを語る。西洋では男がズボン、女がスカート、
というのは、中世のゲルマン民族にはじまったものといわれるが、着ているもので
男か女かが分かる。そしてルネッサンス期を迎えると、男はますますその男らしさ
を、女は女らしさを服装によって語らせることを考えはじめた。性の強調によって、

第1課海の中に母がいる 21

男と女の服装は、ぐんと際立って違いのあるものになった。ギリシア、ローマ時代

bの風俗では、男女の服装の差があまりなかったのと、 それは対照的である。

しかし、近世以後の社会では、服装はしばしばそれを着ている人間のを
語った。それが一番はっきりと制度化されたのは軍服である。どこの国でも、軍人と
いうのは戦場で戦うことをその職業としており、そこでは敵味方の区別をつける必要
があり、さらに味方どうしの内部でも上官、兵卒の区別がつかなければならない。着
ているものがはっきり見分けがついてはじめて戦闘もできるし、軍隊の統制もとれ
る。みんながかってな服装をしていたら、戦争なんかできっこないではないか。

それに、明らかにそれと識別のつく服装をした人たちが、百人も千人も集団で動
けば、まさしくロコとして、「カ」というものを感じさせられる。ナチスの軍隊の

行進をいま古いニュース映画などで見ると、一方では、恐ろしい気持ちになるけれ

Eども、他方では、これだけ整然とした行進に、一種の有無を言わせぬ匚 □感を

覚えさせられてしまうのだ。
こんなふうに職業的誇示は、集団的なデモンストレーション効果をも伴うもので

cあるから、 衆をたのんで人々を戦慄させ、少なくとも感服させるために、ある集

団に属する人間たちが揃いの衣服を着てのし歩くということも、しばしば行われた。
たとえば、日本の町の夏祭りなどでは、町内揃いの浴衣というのを誹えて、それ

ぞれの町が一種の示威効果を作り上げた。
私はかって徳島の阿波踊りというのを見物したけれど、なんとか連というそれぞ

れのグループは、趣向を凝らして揃いの衣服を身につけ、グループが変わるごとに、
観客席から、ため息とも喚声とも聞こえる不思議なざわめきが起きるのであった。
集団が集団であるためには、その集団のメンバーである人間どうしを結びつける媒
体が必要であり、その媒体としては、衣服というものが一番手つ取り早い。

若い人たちの間では、恋人どうしが同じ柄のシャツを着たり、というペア•ルッ
クなるものも流行している。ちょうど、すき焼き鍋などを囲んで、同じものを食べ
ることが、共通の経験を人間たちの間で作り上げるのと同じように、同じものを着
る、というのも集団的共通経験を作り上げるのである。服装の共通ということは、
別な言葉で言えば、集団的を形成する媒体なのである。

OD a下線部 に最も見合う慣用句を書きなさい。

dB A D匚 !匚 コに入れる最も適切な語句を各項から選びなさい 。

A ①一瀉千里 ②簡単明瞭 ③一目瞭然

④以心伝心 ⑤一視同仁

D ①威風堂々 ②意気揚々 ③唯々諾々

④小心翼々 ⑤虎視眈々

匚瓦]匚互 にあてはまる最も適切な語句を次からそれぞれ選びなさい。

22 日语综合教程第五册

①H寺代 源業 ③K族 ④性別 號カ 砂ti!位
B( )
C( )

瓯 ロコ^□に入れる最も適切な語句を次からそれぞれ選びなさい 。

①連帯 ②威圧 ③虚無 ④緊張 謎抗 ⑥不信

E( ) F( )

晴局 下線部b「それ」の指す内容を自分の言葉で書きなさい。

(1D 下線部c「衆をたのんで」の意味として最も適切なものを次から選びなさい。
① 多くの人たちにお願いして
② 大勢であることを力として
③ 多数の人たちの便宜をはかって
④ 大衆と連携して
⑤ 多くの人と協力して

詹〇 この文章の主題として最も適切なものを次から選びなさい。
① 服装は職業的誇示によって人々を戦慄させる。
② 服装には集団的デモンストレーション効果がある 。
③ 服装は集団的連帯を形成する。
④ 服装は時代と性別を語る。
⑤ 服装はコミュニケーションの媒体である。

文学;語学の豆知識
随筆とは

随筆とは、見聞、体験、感想などを筆にまかせて記した文章である 。した
がって、読者を予想せず、自分の思いついたものを自由に書いているので文
体も自由で個性的である。

随筆の種類は次の三つあり、それは随想文、記録文と紀行文である。随想
文は、思い浮かんだことを次々と書いていく、連想の変化におもしろさがあ
る。回想文も含む。記録文は、観察記録ともいうが、観察したことがらを、そ
のまま書いたものである。’紀行文は、旅行で経験したことを書く。自然や風
俗のことが主となる。

随筆を読む場合は、作者がどんなことにふれて筆をとったか。そのことが

23第1課海の中に母がいる

らを「どのように」作者が書き表しているか。その動機が「主題」へと展開
していくのが普通である。したがって作者が最も多く筆をつかっているとこ
ろに動機があり「主題」があるとみてよい。

日常生活における平凡な経験や事件が、鋭い観察力によって述べられてい
ることがあるからその点に注意する必要がある。随筆は作者の心の記録であ
るとも言われている。情景描写にしても、作者の独特な世界が描かれている
から、その世界に自分もとけこむことが大切である。

随筆はほかの文とちがって、作者の個性がよく出ている。したがって、そ
の作者独自の文章表現に親しむことによって、その作者の生活環境もっかむ
とよい。文章はだいたい、肩のこらない、軽く、さらっとしたものが多い。

読み物

小さな旅から大きな旅へ

•汁邦生

旅とは、広い意味で、定住した場所から他の場所へ移動することです。そ
の移動の目的によって次の三種類に大別できます 。

第一は日常生活の必要からする旅で、これは、日常離脱などは考えられ
ないし、考える必要もない旅です。冠婚葬祭のため、商用のため、留学の
ためなど実用目的のための旅で、あくまで一定の目的地に着くのを目ざし
た移動です。途中で面白いものを見たり、おいしいものを食べたりするこ
とはあっても、それはこうした必要の旅の付随的なことで、早く目的地に
着くことが本当の意図です。これを「手段の旅」と呼ぶことができるでしょ
う。「手段」は的確で、経過が短ければ短いほうがいいのです。より早く目
的に達するのが「最良の手段」ということになります。交通手段が時代と
ともに発達したのは、旅の大半が商用、会議など実用的旅行で、旅の経過
をできるだけ短くすることが求められているからです 。私がフランスまで
乗ったフランス郵船の大型旅客船は実に見事な旅行手段でしたが、時代の
要請に合わず一九六〇年代に廃止されました。その頃北極経由の航空路が
開かれたからです。

二番目の旅は、旅そのものに実用的•実際的意味を持つ旅です。例えば

24日语综合教程第五册

バートン、リヴィングストン 、スタンレーらのナイル河探検 、へディンの
シルクロードの調査旅行、ヘイエルダールのコンティキ号漂流などは、旅
そのものが目的です。旅によって経験できるものを知的に考察する —— そ
れがこの移動の目的です。ここでは科学的調査が目的ですから、未知なる
ものを体験しようとして外に向かってゆく、西欧的な旅の典型です。ここ
には抒情的要素は全くなく、感情を味わう場合にも驚異、感嘆といった非
日常的な対象の喚び起こす観念が問題となります。つまり個人の内部に旅
の感情が波動を惹き起こす抒情ではなく、ヒマラヤ山脈とかゴビの砂漠と
かが持つ性格を情念の形(崇高、広大など)で表わしたものなのです。それ
は情念=観念の具体化であり、「知の旅」に付随しているものであって、感
情を目指されたものではありません。ただ、アイガー北壁登攀とかヒマラ
ヤ登頂とかは、北極点到達と同じく、科学的調査より、目的地へ到着する
ことが旅の意味なので、その点、第二のグループに入りますが、旅を味わ
うという性格から見ると、幾分次の第三のグループに属する部分もあります。

三番目の旅は、「手段の旅」でもなく「知の旅」でもなく、旅そのものの
ための旅—— つまり目的地はあっても、それが旅の目標ではなく、移動を
成立させる契機にすぎず、もし目的地なしに旅が成立し得るなら(例えば漫
遊旅行など)、そんなものはなくてもかまわない 、といった旅です。

こう見ますと登攀とか極地旅行などは、旅そのもののための旅ですが、最
終目標への到達なしには旅の意味がなくなりますから、やはり第二の旅に
入れるべきでしょう。

そうしますと、この第三グループの旅は、旅そのものが目的の旅—— つ
まり楽しみの旅、遊びの旅ということになります。例えば「ローカル線の
旅」などは、わざわざ田舎の汽車旅をするわけですから、速く到着するこ
とを願う「手段の旅」でもなく、科学的観察眼によって外界を眺める「知
の旅」でもなく、ローカル線のひなびた、のどかな人情味を味わう 、趣味
の旅、享受の旅、詩的味わいの旅ということになります。これを「楽しみ
の旅」と呼んでおきましょう。

私たちが旅に憧れるとき、ほとんどこの「楽しみの旅」です。「私は通り
すがりに誰かがイタリアという言葉を口にするのを耳にした。突然、全身
にイタリアに旅したいという欲望が燃え上がった 。あのとき私を引きとめ
ることのできたのは、ただ死だけであったろう」というジョージ・ギッシ
ングの『イタリア旅行記』の文章は、この「楽しみの旅」への渇望を実に
鮮やかに描いています。ボードレールが空想した「旅への誘い」、プルース
卜を捉えたヴェネツィアへの誘惑、スティーヴンソンの辿った南仏セヴェ
ンヌの桟道など.、いずれも「楽しみの旅」「詩的喜びに満ちた旅」だったの
です。

25第1課海の中に母がいる

この「楽しみの旅」は旅そのものが快楽の味わいを持っています 。旅が
あたかも「甘い蜜」を入れた容器であって、旅立つと、すぐ甘い蜜を味わ
えるというわけです。

「楽しみの旅」の特徴は、旅全体が想像の中で何か素晴らしいものと思わ
れることです。例えば南太平洋に旅したいと思う。すると、円い珊瑚礁に
囲まれたラグーンの透明な青や、椰子の並ぶ海岸の白い砂や、濃い南海の
紺碧の波や、沖に盛り上がる崇高な積乱雲の塊りが、息苦しいまでの幸福
のイメージとなって浮かんできます。それはたまらなく素晴らしいもの、生
命を活気づけるもの、楽しくしてくれるものですね。

私たちが日常生活のルーティーンの中で灰色の、面白味のない、単調な
暮らしを強いられていると、それだけ余計に南太平洋の空は蒼く、海の風
は香わしく、島のみどりは輝かしく見えてくるのです 。そしてそれは私た
ちを一挙に幸福の国へ、歓喜のパラダイスへと導いてくれるように思えま
す。私たちはもう南海の島のイメージを心に浮かべただけで、身体が痺れ
たようになる。旅への誘惑が全身に燃え立ちます。

そうです、これが「楽しみの旅」の特徴です。つまり想像のなかで、ま
ず何か〈素晴らしいもの〉として掴まれること。そしてその〈素晴らしい
もの〉にむかって私たちは旅立ってゆくのです。国際空港でパリヘ、ニュー
ヨークへ、東南アジアへ、インドへ、旅のプランを胸にして旅人たちが集
まって出発を待っています。彼らはたしかに空路現実の都会や島や観光地
へ出かけて行くわけですが、しかしその心は、すでに空港のロビーから〈旅〉
を楽しむ思いで満ちているのです。彼らは現実の国々に飛んで行きますが、
本当は〈素晴らしいもの〉の中に飛び込んでゆくのです。それを全身で数
日間、数十日間、味わってこようとしているのです。

この〈素晴らしいもの〉が遠くの国にあると思うからこそ、旅立ちへの
思いが胸に衝きあげるのです。

(『言葉が輝くとき』文藝春秋より)

!注釈

❶ バートン(Bichard Francis Burton)(1821〜1890) 伯顿
英国の探検家•文筆家。インド・アフリカ・アラビアなどの探検記録を著した。また、「アラビア
ン•ナイト」の英訳はバートン版として有名。

❷ リヴィングストン(David Livingstone)(1813 ~1873) 利文斯顿
「リビングストン」とも表記する。英国の医師•宣教師・探検家。1840年医療伝道師としてアフリ
力に渡り、アフリカの探検をつづけ1866年にはナイル川水源調査の探検に出発し、タンガニーカ

26日语综合教程第五册

湖付近で消息を絶ったが、スタンリーに救出された。奴隸貿易の廃止にも貢献。

❸ スタンレー(Henry Morton)(184I〜1904) 斯坦利

たいていは「スタンリー」と表記する。米国の探検家•ジャーナリスト。英国生まれ。アフリカ

を探検し、行方不明となったリビングストンを救出。ナイル川の水源、コンゴ川の流路などを発

見した。著書『暗黒大陸の横断旅行』など。
❹ ナイル川(Nileがわ) 尼罗河

アフリカ大陸北東部を北流する世界最長の大河。全長6690キロ。古代エジプト文明を生み、「エ
ジプトはナイルの賜物」と称された古代文明の発祥地。

❺ へディン(Sven Anders Hedin)(1865 〜1952) 海定

スウェーデンの地理学者・探検家。1893年以来、数回にわたって中央アジア•チベットを探検。
楼蘭遺跡やトランス・ヒマラヤ山脈を発見し、ロプノールの周期移動を確認した。
❻ シルクロード(Silk Road) 丝绸之路

中央アジアを横断する古代の東西交通路の称。中国から、タリム盆地周縁のオアシス都市を経由

し、パミール高原を経て西アジアとを結ぶ道である。絹が中国からこの道を通って西方に運ばれ

たところから、ドイツの地理学者リヒトホーフェンが命名。
❼ ヘイエルダール(Thor Heyerdahl)(1914 - 2002) 海尔达尔

ノルウェーの探検家•大類学者。ポリネシア文化は古代ペルーに起源があるという説を立証する

ために、1947年に筏(いかだ)コンティキ号でペルーからポリネシアへの漂流実験を行い、70年に
は葦舟ラー号で大西洋横断を行った。著書『コンティキ号探検記』など。

❽ ヒマラヤ(Himalaya)山脈(さんみやく) 喜马拉雅山脉

古代サンスクリット語で、雪の住居の意。インド亜大陸とチベット高原との境を東西に連なる世

界最高の大山脈。全長約2400キロ。東部に世界最高のエベレスト山(標高8848 メートル)がある。
❾ ゴビ(Gobi ・戈壁) 戈壁大草原

モンゴル語で砂礫を含む草原の意。モンゴルから中国北部にわたる大砂漠。標高約千メートル。ゴ

ビ砂漠。

アイガー (Eiger) 艾格峰

ドイツ語。スイス中部、アルプスの高峰。標高3970 メートル。北壁は困難な登頂ルートとして知

られる。•
(D ローカル線(Loca!せん) 地方上的线路

ある地方・地域に限定された列車の運転のための線路。地方的な鉄道線路のこと。

® ジョージ・ギッシング(George ■ Robert Gissing)(1857 〜1903) 吉辛

英国の小説家。貧窮と放浪の体験に基づく写実的作品を書いた。小説『暁の労働者』『群像』『新

三文文士街』など。自伝的随筆、秀作『ヘンリー・ライクロフトの手記』、評論『ディケンズ論』

など。 德莱尔
膨 ボードレール(Baudelaire, Charles Pierre)(1821〜1867)

フランスの詩大・評論家。象徴派の先駆、芸術至上主義•頹廃主義の代表。
® プルースト(Proust, Marcel)(1871-1922) 普鲁斯特

フランスの小説家。彼の小説『失われた時を求めて』は20世紀の小説に決定的な影響を与えた。
焰 ヴェネツィア(Venetia) 威尼斯

ベネチア(Venezia)のこと。イタリア北東部、アドリア海に臨む港湾都市。市街地は約!22の小島
を約400の橋で結んだ水の都で、運河が176あり、ゴンドラによる交通が有名。サンマルコ寺院な

ど歴史的な建物が多い。7世紀ころから貿易で発展。中世末に共和国樹立、東地中海に多くの植民
地を獲得して繁栄した。1866年イタリア王国に編入。ガラス・宝石・皮革などの工芸品を産する。
英語名ベ二ス(Venice) 0

27第1課海の中に母がいる

❿ スティーヴンソン(Stevenson, Robert Louis)(1850 ~1894) 斯蒂文生
「スチーブンソン」とも表記する。英国の小説家・詩人。

® セヴェンネ(Ceveimes) 塞文
「セベンヌ」とも表記する。フランス中央高原の東南部にある山脈。

28 I日语综合教程第五册

田中正造

本文

•上笙一郎

1

ー八九一年(明治二十四年)の十二月二十五日、

日本に国会が開設されて第二回目の議会でのこと

である。年齢は五十歳ぐらい、がっしりとした体

っきの男が演壇に立ち、政府への質問演説に熱弁

をふるっていた。満場、きちんと洋服を着た議員

ばかりなのに、その男の身に着けているのは、粗

末な木綿の着物と袴。しかも、髪は乱れ放題で、気

田中正造 にかける様子は全くない。
彼は、かたわらの袋から、死んだ魚や立ち枯れ

た稲など、不気味な物を取り出しては、「足尾銅山の流す鉱毒のため、渡良瀬

川の流域では、これ、このとおり魚は死に、作物は枯れてしまう。政府は、直

ちに銅山に命じて鉱石を掘ることをやめさせ、銅山の経営者は、農民たちの

被害を償うべきであります。」

と叫ぶのだった。

この男の名は田中正造。正義と人道のために一身を捧げつくして、後に、

「明治の義人」と呼ばれるようになった人物である。

関東地方の地図を開くと、栃木県の西北部、有名な中禅寺湖の近くに、足

尾という銅山の在るのが分かる。江戸時代にも鉱石が掘り出されていたが、

一八七七年(明治十年)にある実業家がこの銅山を買い取ってからは、鉱夫の

数は三千人、年間四千百トン余りもの銅を産出するようになり、それととも

に、鉱毒の害があらわになってきたのである。

雨が降ると、捨てた鉱石の滓から毒が染み出て、近くを流れる渡良瀬川は

青白く濁り、何万匹もの魚が白い腹を見せて浮き上がる。その近くの畑に植

えた作物は、根から腐って枯れてしまう。そして、一八八七年(明治二十年)

29第2課田中正造

ごろからは、渡良瀬川沿岸一帯の村々の田畑が不作となり 、農民たちは貧苦
の底に沈むようになったのだった。

ー八四一年(天保十二年)-一月三日、今の栃木県佐野市に生まれた田中正
造は、元の名を兼三郎といったが、二十八歳のとき、
「人間にとって一番大切なのは、正しく生きることだ。人生五十年とすれば、
わたしは、もうその半ばを過ぎている。せめてこれから先は、正義を貫いて
生きたいものだ。」
と考えて、自ら「正造」と改名した。

そして.、昼間学校へ通えない青少年のために夜学会を開いたり、「栃木新
聞」という新聞を出して、民衆の権利を主張し、郷土の人々の役に立つ記事
を載せたりした。しかし、正造が正しいと信じることは、なかなか世の中へ
広まっていかない。そこで、正造は、一ハ八〇年(明治十三年)には栃木県会
議員に、一八九〇年(明治二十三年)には衆議院議員になって、自分の考えを
実際の政治の上に生かそうとしていたのだった。

そういう正造だから、今、足尾銅山の鉱毒に苦しむ農民たちを見て、黙っ
ていることはできない。彼は、農民の代表として、
「山から銅を採って、日本の国を豊かにするのは、確かに大切なことでありましょ

う。だが、そのために多くの農民を犠牲にすることは、絶対に許されませぬ。」
と訴え、鉱毒問題と真剣に取り組み始めたのである。

2

正造が、国会で火のような弁舌をふ

るって忠告したにもかかわらず、明治

政府は、

「群馬・栃木の両県の田畑で作物が枯れ
たりしているのは事実だが、足尾銅山

の鉱毒が原因かどうかは分からない 。」

と言って、問題を採り上げようとしな

かった。 足尾銅山
しかし、正造は、確かな証拠を持って

いたのである。というのは、すでに前の年、正造と農民たちは、農科大学(今

の東京大学農学部)の古在由直助教授に頼んで、足尾銅山の鉱石の滓と被害地

の土・水の調査をしてもらっていた。その結果が、正造たちの予期していた
とおりだったのである。足尾銅山から流れ出る水は、銅•鉄分および硫酸を

おびただしく含んでおり、動植物が死んだり枯れたりするのはそのせいであ

るというのだ。

そこで正造は、翌年五月に開かれた第三議会で再び演壇に立ち 、動かぬ証

30日语综合教程第五册

拠を示して言葉鋭く政府に迫った 。科学的な調査の結果を見せられては 、政
府も足尾銅山の鉱毒を認めないわけにはいかない 。政府は、銅山を経営する
会社に注意を促し、会社はようやく粉鉱採集器というものを備え付けて、鉱
石の細かな滓が散らばらないよう処置したのである。
「もう大丈夫。これも、田中のとっさまのおかげです。」
農民たちはそう言って喜び、稲も麦も豊かに実ってくれるものと期待したの
であった。

だが、農民たちのその期待は失望に終わった。粉鉱採集器もさっぱり効き
目がなく、二年たっても、三年たっても、渡良瀬川の魚の死ぬのはやまない
し、作物もはかばかしくは実らない。いや、それどころか、鉱毒の害はます
ますひどくなっていくのだ。

そして、鉱山拡大のため山の木を切り過ぎたことも祟って 、一八九六年(明
治二十九年)の秋、大雨のため渡良瀬川の堤防が切れると、鉱毒で汚れた水は、
たちまち沿岸八十八の村々を襲い、目も当てられぬ有様となったのである。

正造は、またしても議会の演壇に立ち、
「足尾銅山の採鉱を停止すること、それ以外に村々を救う道はありませぬ 。J
と叫ぶのだった。

正造の言うとおり採鉱をやめれば 、確かに鉱害はなくなるだろう 。しかし、
銅の産出量が少なくなれば、その分だけ日本の国力も弱くなる。そこで、政
府は銅山側に命令して、二十か所に鉱毒沈殿池と鉱毒濾過池を造らせたので
ある。銅山側は、
「これで、二度と鉱害は起こりません。」
と明言し、農民たちもようやく胸を撫で下ろした。

ところが、一八九八年(明治三十一年)の九月のこと、降りしきる雨に、沈
殿池と濾過池の堤防は脆くも崩れた 。そして、たまりにたまっていた鉱毒は 、
いちどきに渡良瀬川へ流れこみ、またたく間に、沿岸の田畑数万町歩を覆っ
てしまったのである。これでは、もう半永久的に作物は実らないだろう。

思い余った農民たちは、九月二十六日の夜明け前、蓑笠と新しいわらじに
身を固め、渡良瀬川中流の渡瀬村にある•雲龍寺の境内に集まった。その数は
およそー万大。彼らは、生きるために、大挙して東京へ押し出し、足尾銅山
の経営者と政府とに直接かけ合おうというのである。

やがて、東の空が白むころ、農民たちの大群は南へ南へと動き始めた。これ
に気付いた警察は、農民たちを東京へ入れまいとして、あちこちの橋を壊して
回る。そこで、農民たちが船で川を渡ろうとすると、警官はサーベルを引きぬ
いて、あくまでも農民たちを追い返そうとし 、多くの犠牲者が出たのだった 。

このとき正造は東京におり、風邪を引いて宿屋の一室で寝ていたが 、知ら
せを聞くとはね起きた。そして、人力車をひた走りに走らせ、埼玉県境の淵

31第2課田中正造

江村で農民たちに行き会うと、
「皆様、待ってくだされ。この正造の言うことを聞いてくだされ。」
と、両手を広げて押し止めた。それから、声を振り絞って、
「この田中正造、皆様の煮え繰り返る胸の内、ようく知っております。しかし
ながら、皆様、これだけの人数で帝都へ押しかけるのは穏やかでありませぬ
し、犠牲者をこれ以上増やしてもなーりませぬ。この日本は、法治国家であり
ます。われわれの希望や要求は、あくまでも議会を通して、平和のうちに実
現させなくてはなりませぬ。」

正造の真心からの言葉を聞くと 、農民たちはみな、ほこりまみれの顔を濡
らして男泣きに泣いた。そうして、胸の奥で正造を拝みながら、
「わしらは、田中のとっさまを信じております。お言葉どおりにいたしましょ
う。」
と、五十名の代表を残して、あとの者はおとなしく村々へ帰っていったので
ある。

それからというもの、正造は農民たちの信頼に応えようと、昼も夜もな
<働いた。議会では今夜食べる物もない農民たちの惨めさを涙ながらに話
し、町では鉱毒問題演説会を開いて、鉱毒地に目を注いでくれるよう人々
に訴えた。

鉱毒地を救おうという運動は野火のように広がった 。人々は鉱毒地の農民
に同情を寄せ、村々を視察したり、お金や衣類などを寄付したりした。

けれども、鉱毒のおそろしさは実際に被害を受けた者でなくては 、本当に
は分からない。農民たちはその後も東京へ押し出したが、犠牲者を出しただ
けで終わり、年月とともに世間は鉱毒問題を少しずつ忘れていった。そして、
ついには、
「足尾銅山の鉱毒問題かね。あれは、田中正造が選挙の票稼ぎを狙って、一人
騒いでいるだけさ。」
と言うようにまでなってしまったのである。

正造の心は重かった。一身や党派の利害をはなれて、ひたすら正義のため
に働いているというのに 、世間では選挙運動としか思ってくれないのだ 。し
かも、鉱毒地の農民たちの生活は年ごとに苦しくなり、芋粥も啜れない家や、
困り果てた末、家族が散り散りになる家さえも出てきているのである。
「この先、わしはいったい何をしたらよいのだろうか----〇 J

苦しみのため、額に深いしわが刻まれ、ひげの真つ白に変わった正造には、
腕を組んで考え込む日々が続いた。そして、ー九〇一年(明治三十四年)の秋
になって、正造は何事か決心をしたらしく、衆議院に辞表を出して議員をや
めたのである。

正造がなんのためにそんなことをしたのかは 、その年の十二月十日、第十

32日语综合教程第五册

六議会の開院式の当日明らかになった。

3

その日の午前一時二十分、開院式に臨んだ明治天皇の馬車が、車輪の音
もかろやかに、貴族院議長官舎前の道を左へ曲がったときである。道の両側
に居並ぶ人々の間から、黒い木綿の羽織袴に、足袋跣足の老人が、髪を振り
乱し、一通の大きな封書を片手に捧げ持って、
「—— 陛下にお願いがございます。お願いがございます。」
と叫びながら走り出た。

馬車のわきを守っていた騎兵が、槍を煌めかして老人を遮ろうとしたが、
弾みで馬がどうと倒れる。と、ほとんど同時に、その老人—— 田中正造も足
がもつれて前に転び、そこへ警官が二人走り寄って正造を押さえ付けてし
まったのである。

正造は天皇への直訴を決行したのだった。彼の捧げ持っていた封書は、天
皇に宛てた直訴状で、足尾銅山の鉱毒で荒れ果てた村々の有様と農民たちの
苦しみが、こまごまと記されていた。

正造は不敬罪で捕らえられて、監獄につながれるのはもちろんのこと 、裁
判次第では、死刑にされるかもしれないと覚悟していた。彼は自分が身を捨
てることによって、政府や社会が鉱毒問題に真剣に取り組むようになればよ
いと考えて、直訴を決行したのである。

それなのに、正造は警察にたった一晩とめられただけで、翌日は宿屋へ帰
された。彼の身を気づかって集まっていた人々に 、正造が苦笑いとともにも
らしたのは、
「役人のやつら、この正造を狂人にしてしまいおった。」
という一言であった。

その言葉どおり、政府は、正造を不敬罪で裁判にかける代わりに 、狂人と
してあつかったのである。狂人が発作を起こして、たまたま天皇の馬車の前
へ走り出ただけのことで、まじめに採り上げるようなことではない—— 政府
は、人々にそう思わせようとしたのだった。

正造の狙いは、ものの見事に外されてしまったわけだ。けれども、新聞や
雑誌がこの事件を書き立てたので 、正造の真意は広く伝わり 、政府が足尾銅
山の鉱害を見過しているのはけしからんとする世論が 、次第に強くなってき
たのである。

そうなると、政府は、渡良瀬川と利根川の合流点に近い谷中村を 、大きな
遊水池にするという計画を発表した。鉱毒の広がるのは渡良瀬川の洪水に
よってのことだから、大きな遊水池を造って洪水を防げば、鉱毒も広がらな
いだろうというのだ。そして、政府は、谷中村の村民に金を与えて無理に立

33第2課田中正造

ち退かせ、計画どおり遊水池の工事を始めたのである。
正造は、荒れ果てた谷中村の跡に立って、

「政府は間違っている。やるべきことは、谷中村を犠牲にして鉱害の範囲を小
さくすることではない。足尾銅山の採鉱を停止させ、鉱害が絶対に起こらぬ
設備を造らせることだ。」
と白い髭を振るわせて怒り続けた。

それからの正造は、鉱毒を完全に防止できる設備が完成するまで足尾銅山
の採鉱を停止させ、滅びた谷中村を元どおりにしようとする運動に 、残って
いるカのすべてを注いだ〇

国会議員をやめてしまった正造には、もはや国会で訴える術はない。やむ
を得ず、正造は、老いて疲れた体を引きずっては、著名な政治家や、知り合
いだった議員を一人一人訪ね、鉱毒問題を国会で採り上げてくれるように頼
んで回った。昨日は西へ、今日は東へと走り回る正造には 、たまたま自分の
家の前を通っても、立ち寄っている暇さえなかった。

だが、正造がけんめいになればなるほど、政治家たちは彼を避けようとし
た。彼らは、自分の利益にならない面倒な問題には、関係を持ちたくなかっ
たのである。

それでもなお、正造は諦めなかった。そして、運動に熱中するあまり、前
よりもいっそう身なりを構うゆとりがなくなって、あるときなど、初めて立
ち寄った宿屋で、
「じいさん、うちでは泊められないよ。」
と、断られたことさえあったという。

こうして、二十年間も足尾銅山の鉱毒と戦い、疲れ果てた正造は、ー九一
三年(大正二年)の八月二日、立ち寄った栃木県吾妻村の農家で急に倒れた 。
そして、心配して集まってきた人々に、正造は、
「わしの命を気づかう代わりに 、みんなが心を一つにして、鉱毒をなくす運動
を盛り上げてくれ。この荒れ果てた渡良瀬川の流域に、一本でも多く木を植
えてくれ。」
と遺言すると、およそ一か月後の九月四日、永遠に瞼を閉じたのである 。

このとき、正造は七一歳。その名前のとおり正直で、一身の利益や名誉
を顧みることなく、正義のため、人道のため、何者をも恐れず戦いぬいてっ
いに倒れた、壮烈な生涯であった。

死後に残された正造の持ち物といっては 、菅笠と小さな頭陀袋だけで 、そ
のほかには何一つない。翌晩、身寄りの者が集まってその頭陀袋を開けてみ
ると、入っていた物は、聖書一冊と日記が三冊、それに鼻紙が少しだけで
あった。

(『国語六(下)希望』光村図書より。漢字表記の改正あり)

34日语综合教程第五册

1..注釈

〇 田中正造(たなか しょうぞう)(1841〜1913)
明治の政治家、社会運動家。栃木県生まれ。衆議院議員として議会で足尾鉱毒問題を追及したが、

明治34(1901)年辞職して天皇に直訴。以後生涯にわたって鉱毒•治水問題に献身した。
❷上笙一郎(かみしょういちろう)

1933年、現在の埼玉県飯能市に生まれる。1954年、文化学院文科卒業。児童文化評論家。日本児

童文学者協会、日本児童文学学会、日本子ども社会学会等の理事を歴任。著書に『児童文学概

論』『日本子育て物語(育児社会史)』他多数。 、

❸足尾銅山(あしおどうざん)

栃本県西部、足尾町にあった銅山。江戸初期に発見された日本有数の銅山で、明治中期の足尾銅

山鉱毒事件は有名。昭和48(1973)年閉山。
❹渡良瀬川(わたらせがわ)

栃本・群馬県境の皇海山(すかいざん)に発し、赤城山(あかぎさん)東麓を東へ流れ、埼玉県栗橋

町(くりはしちょう)で利根川に合流する川。長さ94キロメートル。かつて足尾銅山の排水汚染で
知られたが、現在は農業、発電、上水道などに利用される。
❺ 明治の義人(めいじのぎじん)

「明治」とは明治天皇時代の年号。慶応から改元。元年(1868)9月8日〜45(1912)年7月30日。次
に、大正に改元。「義人」とは弱い人や貧しい人のために尽くす人。
❻栃木県(とちぎけん)

関東地方北部の県。県庁所在地は宇都宮市。北西部は山地、南東部は関東平野が広がる。農業が

盛んで、米、果実などを栽培。宇都宮、小山を中心に電機•自動車などの工業も発達。面積6414
平方キロメートル。人口196.938万(1994)。
〇中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)

栃本県日光市。男体山南麓の堰止湖(せきとめこ)。面積11.5平方キロメ ートル。最深163 メート

ル。
❽江戸(えど)

東京の旧称。平安末期、江戸四郎重継が麹町台地(こうじまちだいち)に居館を営んだことに始ま

る。長禄元年(1457)太田道灌が江戸城を築城。上杉家・北条家をへて、天正18(1590)年関東に移
封された徳川家康が入城。以後、幕府の所在地として全国の中心地となった。
❾天保(てんぽう)

江戸末期の年号。文政から改元。元年(1830)12月10日〜15(1844)年12月2日。次に弘化に改元

(1844年12月2日〜1848年2月28日)。

®佐野市(さのし) .

栃本県南西部の市°旧宿場町(しゅくばまち)。機業地として発達した工業都市で、機械工業など

も進出。人口 8.4225万(1994)。
❿群馬県(ぐんまけん)

関東地方北西部の県。県庁所在地は前橋市。三方を山地で囲まれ、南部は関東平野の一部。火山
や温泉が多い。全国一の養蚕県(ようさんけん)で畜産も盛ん。高崎、太田市を中心に内陸工業

地域が発展。面積6356平方キロメートル、人口199.591万(1994)。
®利根川(とねがわ)

関東平野を貫流する大川。新潟、長野、群馬3県の県界の三国山脈北部、丹後山付近に発源し、

第2課田中正造35


Click to View FlipBook Version