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Published by johntss124, 2021-06-24 19:45:18

日语综合教程5

日语综合教程5

宿泊カードには痩せた女文字でそう書いてあった。住所は、青森県三戸
郡下の村。番地の下に、光林寺内とある。

近くに景勝地を控えた北陸の城下町でも、裏通りにある目立たない和風
の宿だから、こういう遠来の客は珍しい。

日が暮れて間もなく、女中が二人連れの客だというので、どうせ素泊り
の若い男女だろうと思いながら出てみると、案に相違して地味な和装の四
十年配の女が一人、戸口にひっそり立っている。連れの姿は見えない。

女は、空きがあれば二泊したいのだが、といった。言葉に、日頃聞き馴
れない訛りがあった。

、「おー人様で?」
「いえ、二人ですけんど。」
女は振り返って、半分開けたままの戸の外へ鋭く声をかけた。ちゃんづ
けで名を呼んだのが、なおちや、と聞こえた。青白い顔の、ひょろりとし
た、ひよわそうな少年が戸の陰からあらわれて、はにかみ笑いを浮かべな
がらぺこりと頭を下げた。両手に膨らんだボストンバッグを提げている。も
う三月も下旬だというのに、まだ重そうな冬外套のままで、襟元から黒い
学生服が覗いている。そういえば、女の方も厚ぼったい防寒コートで、首
にスカーフまで巻いていた 。

「これ、息子でやんして……oJ

女もはにかむように笑いながら、ひっつめ髪のほつれ毛を耳のうしろへ
搔き上げた。

初めは、近在から市内の高校へ受験に出てきた親子かと思ったが、女中
によれば、高校の入学試験は半月も前に済んだという 。そんなら、進学準
備の買物だろうか。下宿探しだろうか。それとも、卒業記念の観光旅行だ
ろうか—— いずれにしても、二泊三日とは豪勢な、と思っていたが、書い
て貰った宿泊カードを見ると、なんと北のはずれからきた人たちである 。

これは、ただ物見遊山の旅ではあるまい。宿泊カードの職業欄に、主婦、
とか、今春中学卒業、などと書き入れるところを見ると、あまり旅馴れて
いる人とも思えないが、どうしたのだろう。

「まさか、厄介なお客じやないでしょうね。」
と女中が声をひそめていった。

「厄介な、というと?」

「たとえば、親子心中しにきたなんて……oJ

「阿呆らしい。」
「だけど、あの二人、なんだか陰気で、湿っぽいじゃありませんか。めっ

Jたに笑顔を見せないし、口数も妙にすくないし……〇

「それは田舎の人たちで、こんなところに泊まるのに馴れてないから。

236 日语综合教程•第五册

第一、心中なんかするつもりなら、なんでわざわざこんなとこまで遠出し
てくるのよ。」

「ここなら、近くに東尋坊もあるし、越前岬も……。」
「景色のいい死に場所なら、東北にだっていくらもあるわ。それに、心
中する人たちが二晩も道草食う?」
「案外、道草じゃないかも、奥さん。まず、明日は一日、死に場所を探し

Jて、明後日はいよいよ 〇

「よしてよ、薄気味悪い。」
もちろん、冗談のつもりだったが、翌朝、親子が、食事を済ませると間
もなく外出の支度をして降りてきたときは 、ぎくりとした。母親は手ぶら
で、息子の方がしぼんだボストンバッグを一つだけ手に提げている。
「お出かけですか。」

「はい…… oJ

この親子は、なにを話すときでも、きまってはにかむような笑いを浮か
ベる。客のことで余計な穿鑿はしないのがならわしなのだが、つい、さり
げなく、
「今日は朝から穏やかな日和で……どちらまで?」
と尋ねないではいられなかった。

「え…… あちこち、いろいろと…… oJ

母親はそう答えただけであった。あやうく、東尋坊、と口に出かかった
が、

「もし、郊外の方へお出かけでしたら、私鉄やバスの時間を調べてさし
上げますが。」
といって顔色を窺うと、
『いえ、結構で…… 交通の便は発つ前に大体聞いてきましたすけに。日暮れ

までには戻ります。」
母親は、別段動じたふうもなくそういうと 、んだら、いって参ります、と

丁寧に頭を下げた。

親子は、約束通り日暮れ前に帰ってきたが、それを玄関に出迎えて、思
わず、あ、と驚きの声を洩らしてしまった。母親は出かけたときのままだっ
たが、息子の方は、髪を短く伸ばしていた頭がすっかり丸められて、雲水
のように青々としていたからである。

あまりの思いがけなさに、ただ目を膛っていると、
まんず、こういうことになりやんして……やっぱし風がしみると見え
て、くしやみを、はや三度もしました。」

母親は、仕方なさそうに笑って息子をかえりみた。息子の方はにこりと

第8課蘭237

もせずにうつむいて、これまた仕方がないというふうに青い頭をゆるく左
右に振っている。どうやら、どちらも納得ずくの剃髪らしく、

「なんとまあ、涼しげな頭におなりで。」
と、ようやく声を上げてから、ふと、宿泊カードに光林寺内とあったのを
思い出した。

「それじゃ、こちらがお坊さんに……?」
「へえ、雲水になりますんで。明日から、ここの大本山に入門するんでや
んす。」
母親は目をしばたたきながらそういった。
それで、この親子にまつわる謎がいちどに解けた 。大本山、というのは、
ここからバスで半時間ほどの山中にある曹洞宗の名高い古刹で、毎年春先
になると、そこへ入門を志す若い雲水たちが墨染めの衣姿で集まってくる。
この少年もその一大で、北のはずれから母親に付き添われてはるばる修行
にきたのである。
それにしても、頭を丸めた少年は、前にも増してなにか痛々しいほど可
憐に見えた。さっき青々とした頭に気づいたとき、まるで雲水のような、と
は思ったものの、本物の雲水になるための剃髪だとは思いも及ばなかった
のは、そのせいだが、母親によると、得度さえ済ませていれば中学卒で入
門が許されるという。
けれども、ここの大本山での修行は峻烈を極めると聞いている。果たし
てこの幼い少年に耐えられるだろうかと、他人事ながらはらはらして、
「でも……お母さんとしてはなにかとご心配でしょうねえ 。」
というと、
「なに、こう見えても芯の強い子ですからに 、なんとか堪えてくれましょ
う。父親も見守ってくれてます 。」
母親は珍しく力んだ口調で、息子にも、自分にもいい聞かせるようにそ
ういった。
—ー息子が湯を使っている間、帳場で母親に茶を出すと、問わず語りに
こんなことを話してくれた。自分は寺の梵妻だが、おととしの暮れ近くに、
夫の住職が交通事故で亡くなった 。夫は、四、五年前から、遠い檀家の法
事に出かけるときは自転車を使っていたが、町のセールスマンの口車に乗
せられてスクーターに乗り換えたのがまずかった。凍てついた峠道で、ス
リップしたところを大型トラックに撥ねられてしまった。
跡継ぎの息子はすでに得度を済ませていたが、まだ中学二年生である。
仕方なく、町にあるおなじ宗派の寺に応援を仰いでなんとか急場を凌いで
きたが、出費も嵩むし、いつまでも住職のいない寺では困るという檀家の
声も高まって、一刻も早く息子を住職に仕立てないわけにはいかなくなっ

238日语象合教程第五册・

た。住職になるには、大本山で三年以上、ほかに本科一年間の修行を積ま
ねばならない。ゆくゆくは高校からしかるべき大学へ進学させるつもりだっ
たが、もはやそんな悠長なことはいっていられない 。十五で修行に出すの
はかわいそうだが、仕方がなかった。

自分は明日、息子が入門するのを見届けたら、すぐ帰郷する。入門後は
百日面会はできないというが、里心がつくといけないから面会などせずに、
郷里で寺を守りながら、息子がおよそ五年間の修行を終えて帰ってくるの
を待つつもりでいる 。

「それじゃ、息子さんは今夜で娑婆とは当分のお別れですね。お夕食はう
んとご馳走しましょう。なにがお好きかしら。」

そう訊くと、母親は即座に、
「んだら、とんかつにして頂きやんす。」
といった。
「とんかつ.... そんなもんでよろしいんですか?」
「へえ。あの子は、寺育ちのくせに、どういうものかとんかつが大好物で

やんして……OJ

母親は、はにかむように笑いながらそういった 。
だから、夕食には、これまででいちばん厚いとんかつをじっくりと揚げ
て出した。しばらくすると、給仕の女中が降りてきて、
「お二人・はしんみり食べてますよ。いま覗いてみたら、お母さんの皿はもう
空っぽで、お子さんの方はまだ食べてます。お母さんは箸を置いて、お子
さんがせっせと食べるのを黙って見てるんです。」
とレ、った。
それから一年近く経った翌年の二月、母親だけが一人でひょっこり訪ね
てきた。面会などしないと強気でいても、やはり、いちど顔を見ずにはい
られなくなったのだろうと思ったが、そうではなかった。修行中の息子が、
雪作務のとき僧坊の屋根から雪と一緒に転落し、右脚を骨折して、いまは
市内の病院に入院しているのだという。
「もう歩けるふうでやんすが、どういうことになっているやらと思いまし
てなあ。」
相変わらず地味な和装の、小鬢に白いものが目につくようになった母親
は、決して面会ではなく、ただちょっと見舞いにきただけだといった。
息子の手紙には、病院にきてはいけない、夕方六時に去年の宿で待って
いるようにとあったというから、
「じや、お夕食はご一緒ですね。でも、去年とは違いますから、なにをお出
しすればいいのかしら。」

J「さあ••…・修行中の身ですからになあ 。したが、やっぱし……〇

第8課蘭239

「わかりました。お任せください。」
と引き下がって、女中にとんかつの用意をいいつけた。

夕方六時きっかりに、衣姿の雲水が玄関に立った。びっくりした。わず
かー年足らずの間に、顔からも軀っきからも可憐さがすっかり消えて、 見
違えるような凛とした僧になっている。去年、人前では口をつぐんだまま
だった彼は、思いがけなく錬れた太い声で、

「おひさしぶりです。その節はお世話になりました。」
といった。それから、調理場から漂ってくる好物の匂いに気づいたらしく、
ふと目を和ませて、こちらを見た。

「……よろしかったでしょうか。」
彼は無言で合掌の礼をすると、右脚をすこし引きずるようにしながら、
母親の待つ二階へゆっくり階段を昇っていった。

(『高校国語ー』大修館書店より)

!注釈

〇 三浦哲郎(みうら てっお)(1931〜)
小説家。青森県生まれ。八戸高校を経て早大第二政経学部に入り、いったん中退、再び文学部仏
文科に入り、在学中「新潮」の同人雑誌推薦特集に「十五歳の周囲」が掲げられる。自らの暗い
家族とみずみずしい恋愛をからませた『忍ぶ川辺』により芥川賞を受け、小沼丹、庄野潤三とと
もに、井伏鱒二の知遇をえて、師事した。長編『海の道』のほかは、つねにすぐれた短編を書く
ことに熱意を示し、現在はその方面の代表者。『拳銃と十五の短編』により、野間文芸賞を受けた。

❷ 三戸郡下の村(さんのへぐんかのむら)
青森県南東部の三戸郡内のある村。

❸息子でやんして
青森方言。「息子でございまして」の意。

❹東尋坊(とうじんぼう)
福井県の北端にある、断崖で知られる景勝地。

❺越前岬(えちぜんみさき)
福井県中部にある岬。

❻聞いてきましたすけに
方言。「聞いてきましたから」の意。

〇雲水(うんすい)
主に禅宗の修行僧のこと。

240 日语综合教程第五册

本文 「的」の文化

•鈴木修次

現代の日本語で「的」のつくことば、とくに修飾語として形容動詞や副詞
になることばは、「端的」とか「大大的」とかの少数例を除いて、ほとんどが
まず日本製漢語であると考えてよい。

日本製漢語の「——的」には、おのずから日本人独自の感覚がともなう。た
とえば「好意的姿勢を感じた」という場合の「好意的」、それはこちらに対し
て好意があるような、ないようなというところから、ひょっとすると相手は、
こっちとつきあいたいのかもしれないという、好意はたしかにわかるが、そ
のていどのほどが正確にはわからないというあたりまでの範囲を示すことば
として用いられている。それはかなり幅と含みとをもったことばである。そ
れとともに、あとで相手にまったく好意がないことがわかったときでも 、い
やあのときはあえて「好意的」と述べたのでして、別に「好意を感じた」と
は申しておりません、と逃"ることもできる。議会における官僚答弁の用語

として、あたかもふさわしい。それはまた、一方では正確にものをいおうと
する心理を満足させる。それゆえに「的」を用いたことばは、インテリの書
くものに、とくに学者の書くものに多くあらわれる。まさに、「学者的発想」
にかなうというものである。

ときにそれは、アンダーステートメントにものをいおうとする場合にもつ
ごうがよい。とくに悪い方向においてものをいおうとする場合に、そのもの
をズバリといわずに、それらしいにおい、それらしい雰囲気を感じたという
逃げ道を用意して、遠慮がちな姿勢でものをいうことができる。「封建的なも
のを感じます」というとき、相手を封建主義者だとはっきりきめつけるより
も抵抗が少なくてすむ。「反抗的な言辞はよしたまえ」と目下にいいきかせる
ときでも、相手のことばを反抗のことばだとはきめつけていない。

自分のことに関連していうときには、いくぶん自分をかばいたいという心理
をも充足させることができる。たとえば「屈辱をおぼえた」というべきところ

第9課「的」の文化241

でも、「屈辱的だ」といったりする。親しい相手などに対していうときは、あ
いまいさがう・まく生きて、かえって効果的なはたらきを示すおりもある。「君

はすばらしい」と単純にいってしまうよりも、「君は魅力的だ」といった方が、
相手のいいしれぬ素質がかえってそこはかとなく示されるというものだ。

ことばにニュアンスをともなわせる接尾語として、日本語における「的」と
いうことばは、日本人の体質にかなった、ふしぎな交響をただよわせる、お
もしろいことばである。「ドイツ的」とか「ブルジョア的」とか、外来語にも
「的」は自由につけられる。ついこのあいだまで、やまとことばにじかに「的」
をつけたことばとして「どろてき」(泥的)「とりてき」(取的)ということばが
あった。本職のどろぼう的な「こそどろ」が「どろてき」であり、本職のす
もうとり的な「ふんどしかつぎ」が「とりてき」であった。ほんものとはい
いがたいもの、ほんものより一歩さがったもの、という意識をこめたのが 、
「どろてき」「とりてき」の「的」の心理である。それは漢語に「的」をつけ
て用いる心理と共通している。

このあいだ、これも料理番組であったが、ある若いアナウンサーが、「あじ
(味)的にどうですか」とやっていた。日本語の「的」には、まったく無意味
なそえ字としての「的」もあり、たとえばよくアナウンサーなどが相手に問
いかける「気分的にはどうですか」などがそれであるが、「あじ的」の「的」
は、「気分的」の•「的」と同類の用法なのであろう。どうもやまと•ことばにじ

かに「的」をつけるのは、なおいささかなじめないものを覚えるのであるが 、
それはわたくしが年をとった証拠なのかもしれない。若い人々は、いっこう
に頓着せずに、「まるであらし的な雨だ」とか、「あそび的にはともかくおも
しろいぞ」などとやってのける:そうした用法を耳にす危と 、さっそく日本

語の乱れなどと世の識者はいうかもしれないのであるが 、しかしそれもよい
ではないか。「どろてき」「とりてき」の例もある。とらわれずに新しいいい
かたを自由にくふうしてゆくのが、若者の特権でもある。そうしたことから
次の世代のことばが生まれてくるというものだ 。

日本には「奥ゆかしい」という美意識がある。なんとなくもっと奥へ進ん
でみたい、もっと実体をつかんでみたい、という雰囲気をただよわせるもの
が、「奥ゆかしい」という美意識の内容である。その美意識は、逆には、はつ
きりいいきってしまうこと、明確にわかってしまうことは、かえってものご
とのあじわいをこわすものだという心理に展開してゆく。日本人が好きな芸
術論である「有心」にしても、「幽玄」にしても、「象徴」にしても、みな「奥
ゆかしさ」を求める心情とかよいあっている。そのことについてわたくしは、
「幻暈嗜好」と題して何回かにわたって論じてきたが、ことばに、それらしい
もの、それに準ずるもの、それにあやかるもの、それに近いもの、などの余

242 日语综合教程第五册

情を示す接尾語をつけて使おうとするのは 、やはり日本人に固有の幻暈嗜好
のあらわれである。

日本人は、ものごとを明確にいいきるのを避ける傾向が、いささか強いよ
うだ。平安時代以来、ものがたりでも「らし」とか「なんめり」とかのこと
ばが頻用されている。漢語は、元来、より明確にものをいおうとする方向に
たつ言語で、したがって少しでも違う現象には、それに即した語彙がくふう
されるのであるが、日本人が使用する漢語は、なにかそこに「ぼかし」がほ
しくなって、明確な漢語をかえってあいまいにして使おうとするし、また、日
本製漢語においても、たとえば「的」の造語のようなものが、日本人の体質
にあったものとしてしきりに愛用されるようになるのではなかろうか 。

また、こうしたこともいえるかもしれない。中国の生活から生まれ、中国
人の感覚に根ざした漢語は、結局日本人に的確にはつかまえられないという
こともあって、自信もないままに、漢語そのものを、それとして用いずに、そ
れらしい感覚だという「ぼかし」をつけ加えて用いようとする傾向もあるの
ではないか。漢語に「臭い」とか「そう」とかの接尾語をつけ加える心理は、
主要にはそうしたものとして理解できよう。それは「てれ」の心理から発す
るということも可能である。

外国人とくらべたとき、日本人には「てれや」が多い。無意味な愛想笑い、
はにかみ笑い、それは日本人の無気味ななぞとして外国人にうつる場合も少
なくないのであるが、その心情の底にあるものは、ほかでもない、単純な「て
れ」である。そうした「てれ」の心にあたかもかなうものが、「的」というこ
とばであったのかもしれない 。中国の人々は、昔から、日本人のようにやた
らにてれるということをせず、つねに堂々と、自己の伝統文化に自信をもつ
て生活しているのだ。それに対して、国語を写す文字すら借用したものです
まさねばならなかった日本人は、どうしても「てれ」の気持がつねにつきま
とう。いま自分が使っている漢語は、本当の使い方ではないのではないか。ど
こかに誤解があるのではないか。そうした心理がつみ重なってゆくと、いき
おい「てれ」の表情に走ってゆくものである。

明治の知識人は、たくましく、ヨーロッパの近代文明にたちむかっていっ
た。そこには、従前の漢語ではとうてい充足しきれない新しいものがみちみ
ちていた。日本人はその瞬間、「てれ」を忘れて、勇敢に、猛然と、新漢語を
造語しながらこの新しい文明にとびかかっていった。こうしてたくさんの、
近代文明にまつわる日本製漢語を作り出したのであった。当初のヨーロッパ
文明をうつしかえた日本人の漢語は、いずれも毅然といいきっている。

ひとまずそうした言語の格闘が終わったあと、また日本の知識人には「て
れ」の心がまいもどってきたのかもしれない。それ以後に使う漢語には、や
たらに「的」というぼかしをつけ加えるようになった。現代の日本人は、「的」

第9課 「‘的」の文化 243

をつけた漢語を使ったり、「的」のついた漢語を造語したりする気力をも失っ
て、やたらと外国語をなまのままで使おうとしている。あるいはまた、「漫両
チックだ」などのことばに見るように、日本人にとっては便利であった「的」
をすら、外国語的いいまわしにおきかえようとしている 。

ともあれ、現代日本語において用いられている「的」をつけた漢語、それ
はほとんどが日本製の漢語で、中国語とはまったく別の日本語なのである。
その中にはたとえば「理想的生活」などの「理想的」の例のように、ごくま
れには中国語として用いられるものもあるにしても 、しかしそれもまた日本
語に発する漢語であることにはかわりない。このような、日本独自のことば
を大量に生み出した裏面には、日本人独特の体質というものを感じとること
ができる。ともかく「的」の文化は、日本特有のものである。

ただし「的」の文化は、すべてをあるひとつのことばでズバリといいきろ
うとはせず、他のことばに適当に「的」をつけてとりあえず間にあわせてお
くということにもなるので、気にいらなければ、別のことばに「的」をつけ
てとりかえることもできる。「的」がつくことばには、気にいらなければかえ
ればよいという気やすさ、自由さ、融通むげさがある。それもまた、一面か
らすれば、日本人の性格に発するものである。そうした融通むげさが、日本
人のたくましい応用力をつちかってきたのだ 。

(『漢語と日本人』みすず書房より。一部削除あり)

七注釈

〇鈴木修次(すずきしゅうじ)
1923(大正12)年〜1989(平成元)年。東京都生まれ。1946年東京文理科大学漢文学科卒業。中国文
学者。中国古代文学、唐詩などの研究の傍ら日本語における漢字、漢語の問題についても示唆に
富んだ意見を発表している。主な著書『漢魏詩の研究』『唐代詩人論』『中国古代文学論』』漢字そ
の特質と漢字文明の将来』など。

❷有心(うしん)
思慮・分別の深いという意味であるが、中世の歌学における美的理念の一つ。心情と言葉とが統
ーされ、華やかさの中に寂しさを漂わす妖艶な余情美。心あり。

❸幽玄(ゆうげん)
物事の趣が奥深くはかりしれないという意味であるが、中世の文学・芸能における美的理念の一
つ。歌論などで、優艶を基調として、奥深い静寂な余情、象徴的な情調のあること。能楽論で、優
雅で柔和な美しさ。美女•美少年などの優美さや、また、寂びた優美さを言う。

❹象徴(しょうちょう)
抽象的な思想•観念•事物などを、具体的な事物によって理解しやすい形で表すことの意である
が、「象徴主義」は自然主義や高踏派の客観的表現に対して、内面的な世界を象徴的に表現しょう
とする芸術思潮。19世紀末、フランスに興った象徴派の詩を始まりとする。

244日语综合教程第五册

〇 平安時代(へいあんじだい)
桓武天皇の平安遷都から鎌倉幕府の成立まで約400年の間、政権の中心が平安京すなわち京都に
あった時代。

新しい言葉 文の成分の一つで、次にくる語句を修飾する文
節。連体修飾語(体言を修飾するもの)と連用修
修飾語(しゅうしょくご)[名] 飾語(用言を修飾するもの)とがある。/修饰语。
①わかりやすく、はっきりしている様子。/明
端的(たんてき) [形動] 显,清楚。②手つ取り早い様子。/直率,直截
了当。
大大的(だいだいてき) [形動] おおがかりな様子。とりわけ規模が大きい様
ほど(程) [名] 子。/大大的,很大的,大规模的。
①(物事の)度合い。限度。/程度。②空間的•時
含み(ふくみ) [名] 間的度合い。距離。ころ。時分。/限度,分寸。
③身分の限度。/分寸,身份。
述べる(のべる) [他ー] ①口に含んでいること。/含,含有。②表面に
逃げる(にげる) [他一] は現れていないで、そのなかに込められている
意味や内容。/含蓄,暗示。
官僚(かんりよう) [名] 意見などを語る。説く。/叙述,陈述,说明,
阐明。
アンダーステートメント [名] ①捕らえられたところから抜け出す。逃亡す
[副] る。/逃跑,逃走,逃脱。②自分の責任を問わ
(understatement) れるような面倒な物事から手をひいたり、近づ
ずばり かないようにしたりする。/避开,逃避,月果避,
回避,避免。
封建的(ほうけんてき) [形動] 役大。官吏。特に国家機構に直接携わって、政
府の実権を握っている、上級の役大。/官僚,

官吏。
物事を控えめに、遠慮がちに言ったりしたりす
ること。/谨言慎行。
①刀などで一気に気持ちよくたち切るよう
す。/锋利切下,脆块。②物事の急所を正確に
っくようす。/击中要害,一言道破。
封建時代のような非民主的なやり方(考え方)で
あるようす。/封建性的。

第9課「的」の文化 245

きめつける(決め付ける) [他ー] ①厳しく叱る。/指责,申斥,驳斥。②一方
的に断定する。/单方面做出判断。
反抗(はんこう) [名•自サ] (積極的に)手向かうこと。逆らうこと〇/反
抗。
言辞(げんじ) [名] ことば。:ことばづカ、い。/言辞,言论,讲话。

言い聞かせる(いいきかせる) [他ー]. Z納得するように話し、さとす。教え諭す。

いくぶん(幾分) [名・副] 说给... 听,劝说,忠告,教诲。
①いくつかの部分にわけた。その一部
かばう(庇う) [他五] 分。/几分,一部分。②ある程度。いくら
充足(じゅうそく) [名・他サ] か。/一点儿,少许,多少。
屈辱(くつじょく) [名]. 他から害を受けないように守ってやる。/庇
おり(折) [名] 护,袒护。
十分に補い満たすこと。また、満ち足りるこ
いいしれぬ(言い知れぬ) 漣] と。/充足,充裕,补充。
素質(そしつ) [名] 押さえつけられて受ける恥。はずかし
そこはかとない [形] め。/屈辱,耻辱,侮辱。
①折ること。/折,折叠。②折り目。/折叠
体質(たいしつ) [名] 物,折缝。③その時。時機。場合。時節。機
会。/时候,当ロ,当儿。④薄い板、厚紙な
交響(こうきょう) [名・自サ] どで作った浅い箱型の入れ物。折箱。/小盒,
ブルジョア(bourgeois) [名] 小匣。
言うに言われない。なんとも言いようがな
やまとことば(大和言葉) [名] い。/说不出来的,难以表达的。
生まれつき備わっている性質。/素质,性质。
天分,天资。资质。
はっきりした理由、場所などを表せないが、
全体的にそのような雰囲気が感じられる状
態を表す。/没有理由地,难以形容地。
①(医学上から見た)その人が生まれつき
持っているからだの性質。/体质。②(比喩
的に)あるものごとの本来の性質。/素质。
互いに響きあうこと。/交响。
①資本家。資本主義社会の金持ち。/资本

家;富豪,财主。②ブルジョア革命の担い
手となった、新興の市民階級。/新兴的市
民阶层。
①日本固有の言葉。漢語・外来語以外の言
葉。/日本固有的语言。②日本の雅言。主に

246日语综合教程第五册

平安時代の言葉。/平安时代的日语。

じかに(直に) [副] ①間に他のものを入れないで、直接に。/直接,

亲自。②肌につけて。/贴身。

本職(ほんしょく) [名] ①本来の職業〇/本行,本职。②その道のくろ

うと。専門家。/行家,内行。

そえ字(添えじ) [名] 本文の文字の横に小さく書き添えた、送り仮名

などの文字。/注解文字,注音文字。

問いかける(といかける) [他ー] ①それを予期しない相手に向かって一方的に質

問する。質問をしかける。/问,打听。②質問

をしはじめる。たずねはじめる。/开始问。

なじむ(馴染む) [自五] ①(人・物事に)なれて親しみを持つ。/熟,适应。
②一つに解け合う。調和する。/融合,溶合。

頓着(とんじやく •とんち [名・自サ](あるーつの物事に)こだわって気にかけること。

やく) 気を使って心配すること。/放在心上,介意,在

意,讲究。

やってのける(遣って退 [連語] (普通ではしにくいようなことを)しとげる。(困

ける) 難な問題をうまく処理する)/(很好地)做完,干

完,对付完,将就过去。

識者(しきしや) [名]• 知識が深く、物事を正しく判断するカのある

人 有識者。見識者。/有识之士,有见识的人。

奥ゆかしい(おくゆかしい) .[形] 深みと品があって心が引かれる。/优美,文雅,

娴静,典雅。

美意識(びいしき) [名] 美に関する意識。美に対する感覚や判断力。/美

的感受,审美意识,审美感。

実体(じったい) [名] 正体。本体。実質。内容。/实质,本质,内容,

真相。

あじわい(味わい) [名] ①食物のうまみ。風味。/味,味道。②物事の

おもしろみ。/趣味,•妙趣。

幽玄(ゆうげん) [名•形動](たやすく知ることができないほど)奥深く味わ

い深いこと。深い趣。余情などがあること。/玄

奥,深奥;奥妙,言外余韵。

心情(しんじょう) [名] 心の中の思い。気持ち。/心情。

準ずる(じゅんずる) [自サ] (あるものを手本として)それと同等の扱いをす

る。または(あるものを基準にして)それとの釣

り合いを取る。/以…为标准,按…看待。

あやかる(肖る) [自五] ①感化されてそれに似る。/相似。②幸せな人

に似て(影響されて)幸せになる。/效仿。

余情(よじょう) [名]. ①あとまで心に残る、しみじみとした味わい。/

余味,余音,耐人回忆的味道。②詩歌、文章な

第9課「的」の文化1247

どで言外に込められた趣。/余韵。

固有(こゆう) [名•自他サ] そのものが本来持っていること。本来そな

わっていること。/固有,特有。

頻用(ひんよう) [名・他サ] 頻繁に使用すること。/频繁使用。
元来(がんらい) [副] (物事の)はじまりから。もとより。/本来,

原来。

即する(そくする) [自サ] (ある事態や行為から離れず)ぴったりつくよ

うにすること。適応する。即応する。/适应,

符合,结合。

ぼかし(暈し) [名] ①ぼかすこと。ぼかしたところ。/朦胧,模

糊。②(美)日本画の手法の一つ。濃い色から

だんだん薄い色にしていく方法。/由浓渐淡。

造語(ぞうご) [名•自サ] ①(語学)すでにある単語や造語成分を組み合

わせて、新しい概念をもつ単語をつくること。

また、その単語。/新词,复合词。②新しく言

葉をつくること。/创造新词,造复合词。

根ざす(ね差す) [自五] ①植物の根が地中に張る。/生根,扌し根。②

もとづく。/起因,由来。

的確(てきかく ・てっかく) [名・形動] 的をはずれず確かなこと。間違いのないこ
と。的確(てきかく)。/正确,准确,恰当。

てれや(照れ屋) [名] すぐきまり悪がって顔を赤くするような人た

ち。恥ずかしがりや。/爱害羞的人。

愛想笑い(あいそわらい) [名] 相手によい感じを持たれようとしてする笑

い。追従笑い。/讨好的笑,陪笑。

はにかみ笑い(はにかみ [名] 恥ずかしそうな笑い。/羞答答的笑容。

わらい)

つきまとう(付き纏う) [自五] (人、事柄や事情などが)いつもうるさくそば

について離れないでいる。/纠缠,缠住。

いきおい(勢い) [名・副] (名)①(他を押さえつけるような)盛んなカ。
勢力。/势カ,气势。②人の動作や物の動き

などに表れる、強さ・早さなどのカ。/气势,

气焰,劲头。③(ものごとの)弾みのカ。成り

行きのカ。/趋势。(副)そのときの成り行き

で。その結果として当然。/势必,自然而然。

たちむかう(立ち向かう) [自五] ①(大きなものに)向かい合って立つ。/面临,

对待,应付。②(強いものや困難なことなど

を、恐れたり避けたりしないで)正面からぶ

つかっていく。対抗する。/顶撞,对抗。

248 日语综合教程第五册

従前(じゅうぜん) [名] 今より前。以前から今まで。従来。/从前,
みちる(満ちる)
以前。
猛然(もうぜん)
まつわる(纏わる) [自ー] ①(ある物や感情的なものが)いっぱいにはい
毅然(きぜん)
格闘(かくとう) る。/充满,满。②極限のところまで押し寄せ

まいもどる(舞い戻る) Zる。/涨。③定められた期日、数量に達する。
おきかえる(置き換える)
ごく(極) (期限)满。④欠けたところがなく完全な形に
まれ(稀)
問合せる(といあわせる) なる。/圆,盈。•
気やすい(き安い)
融通むげ(ゆうずう無碍) [形動] 勢いが荒々しく激しいようす。/猛然,猛地;
つちかう(培う)
激烈地,猛烈地。

[自五] ①からみついて離れないでいる。/缠绕。②つ

きまとって離れないでいる。しっこくついて

くる。/纠缠。③関係する。/关于,有关。

[形動] 意志が強く心がしっかりしているようす。断

Z固とした態度をもって物に動かないようす。

毅然,坚决。

[名・自サ] ①互いに組み付いて戦うこと。とっくみあ
い。/格斗,搏斗。②(比喩的に)ある物事を成

し遂げるために非常に苦労すること。/苦战,

苦干。

[自五] (いろいろな所を経て)もとのところにもどっ

てくる。/(又)回到,重返,返回。

[他ー] ①物を現在の場所から他へ移して置く。/换

到,挪到。②ある物とある物との位置を入れ替

えておく。取り替える。/调换,互换,替换。

[名・副] ①(名)(極上)の略。最良。/极好,顶好。②(副)
もっとも。極めて。この上なく。/非常,极,

最,至,顶。

[形動] めったにないこと。たまにしかないこと。/少,

稀少,罕见,稀罕,稀奇。

[他ー] よくわからない点などを手紙や電話でたずね

て確かめる。/问,打听,询问,查询。

[形] (付き合いなどに)遠慮をしない。気兼ねをし

ない。気が置けない。心やすい。/不拘泥,不

客气,无隔阂,随随便便。

[名・形動] 考え方や行動にとらわれるところがなく、自

由であること。また、そのさま。/畅通无阻。

[他五] ①根に上をかけて草木を育てる。/培植。②(転

じて)養い育てて、大きくする。/培养,培育。

第9課「的」の文化 249

〜的(〜てき)

接尾語。名詞及びそれに準ずるものについて形容動詞語幹を構成し、以下い
くつかの用法がある。訳は文脈による。

7.「〜に関する」「〜にかかわる」「〜について」などの意を表す。

❶ 科し堂的なデータがないかぎり証拠とはなれず、裁判所に訴えても無理だろ
う。(只要没有科学的数据就不能成为证据,即使上诉法院恐怕也是无济于事
的吧。)

❷ ぼくは教育的な立場に立って言っただけで、正しいかどうかは君自身で判断
しなさい。(我只是站在教育的立场上说的,是否正确你自己作判断 。)

0 彼は頭が固くていつも曜的な考え方で考えるので、周りの人はとてもつい

ていけない。(他头脑僵硬,总是哲理性地思考问题,所以周围的人无法跟他交
谈。)
❹ それはたいへんユニークな意匠だが、残念なことに商品化ができないのでお
金にならない。われわれは現実的に考えなければならないのだ。(虽然这是个
非常独特的设计,可遗憾的是它无法制成商品变成金钱。我们必须现实地考虑
问题。)

2「〜のような性質を有する」「〜らしい」「〜に似る」「〜状態にある」などの意

味を表す。

❶ 彼の講義は抽象的なものばかりで、聞いていても分からないので、結局居眠
りしてしまうのだ。(他讲课的内容净是些抽象性的东西,听也听不懂,结果我
就打瞌睡了。)

❷ 彼女は親の言うことにも、親友の言うことにも、耳を傾けようとしないの
で、こんな悲劇的な結果になるのも予想のうちだよ。(她根本不听父母和好友
的劝说,现在落得悲剧性的结局也是意料中的事。)

0 顔立ちはそれほどきれいではないが、むしろ彼女の貴族的な気品が満場の注

目を引いたのだ。(她的脸长得并不怎么好看,倒不如说是她那贵族型的气
质引得满场注目。)
❹ この会社は給料はそれほど高くないが、家庭的な雰囲気があって居心地がよ
いのだ。(这家公司的工资并不高,但有一种家庭式的气氛,呆在那里心情比较
舒畅。)

250日语综合教程第五册

三点おのずから自鈴皿笈地 J

副詞、時間の進行や人為的な努力の有無とは関係なしに、ほうっておいても
物事が自然に成就する様子や、ある常識や論理に従うと、必然的な帰結となる
という意味を表す文章語である。

❶ 先生は努力すれば道はおのずから開かれるものだ、ともっとも困難なときに
励ましてくださった。(在我最困难的时候,老师鼓励我说只要努力,自然会有
光明前途的。)

❷ この町のよさは住んでいるうちにおのずから分かってくると思うよ。そのと
き、あなたも永住したいと言い出すだろう。(这个地方的优点你住了自然会明
白的。恐怕到那时你会说要永远住在这里了。)

❸ 失恋の痛手は時がおのずから癒してくれると思うから、今はそっとしておい
てやろう。(失恋的创伤会随时间的流逝而被抚平,所以现在别去管它。)

❹ 春はおのずからめぐってきたが、温かい日差しは皮膚に快く、朝の炊事の苦
労も軽くなった。(又一个春回大地,温暖的太阳光照在皮肤上,感觉非常舒
月艮,早上做饭的辛苦也有所减轻。)

空ー〜ような〜ような…又像…又像…… _ «

正反対の内容や、矛盾する内容の事柄を並べ上げて、意味的に対立したり、矛
盾する感覚、印象が話し手の中に共存することを表す話し言葉的な表現である。

❶ 彼はいつも肯定しているようないないような言い方をするので、なかなか真
意がつかみ難い。(他说话总是似是而非,让我很难摸清他的真意。)

❷ 彼女は久しぶりに会うわが子を前に、その成長ぶりがうれしいような寂しい
ような複雑な気持ちをどうすることもできないでいた。(好久未看到孩子了,
现在面对孩子看到他的成长,她心里既高兴又有点寂寞,怎么都无法控制这种
复杂的心情。)

佃 ここで働いた5年は長かったような短かったような歳月で、たくさんの思い
出が走馬灯のように次々と胸の内を駆け巡る。(在这里工作了5年,说长不长
说短不短,许多回忆就像走马灯似的一个接ー个地在我脑海里回旋。)

〇 その人とはどこかで会ったことがあるようなないような、記憶はぼんやりと
•して定かでない。(我好像在什么地方见过他,又好像没见过他,记忆彳成糊,
连自己都吃不准。)

饱あえて(敢えて) 「 !

副詞。文章語:次のような用法がある。 第9課 「的」の文化251

Aあえて〜する(还是要…)(類語の学習を見る)
2「あえて〜ば」の形で、「言う、説明する」など発言を表す動詞を伴い、反対さ

れるのを覚悟した上で、自分の意見を述べるときに用いる。また、前置きとし
ての用法もある。(非要说的话,勉强地说)

❶ 恨みを買うのを承知の上であえて言えば、彼女は波風を立たせる人間で、入
れるべきではないと思う。(我也知道说了会遭恨,可非要说的话,她是个会兴
风作浪的人,我认为不应该要她。)

❷ これは言いにくいことですが、あえて言わせていただければ、お宅の息子さ
んがこの事件の張本人ですよ。(这话不太好说,可我还是要说,你儿子是这起
事件的罪魁祸首。)

❸ 読む価値のある本ではないと思うが、あえて説明すれば、作家の自伝のよう
なもので、しかも自分の恋愛経験を元に書いたおもしろくないものだよ。(我
认为这不是一本值得看的书。如果非让我说明的话,这是一部作家的自传,而
且是以他自己的恋爱经历为蓝本而写的书,不好看 。)

❹こんな盛大な宴会で小生の出番ではありませんが、あえて述べさせていただ
ければ、これから弊社のようなところにもやらせていただけたら、と考えて
おりますので、何卒よろしくお願いいたします。(这么盛大的宴会不是我这种
小人物出场的地方,但如果非要说两句的话,我想说,希望今后也能给我们这
样的公司创造ー些效劳的机会,请务必多加关照 。)

3後ろに打ち消しの表現を伴い、「あえて〜ない」の形で、「〜する必要がない」

「〜しなくてもいい」という意味。「あえて〜及ばない」も同様の意味を表す。
(没必要…,不必要…)

❶ 彼は昔みんなを裏切ったことがある。そんな人のために、あえて危険を冒し
てまで助けようとは思っていない° (他以前曾经背叛过大家,我认为没有必
要为了帮助这种人甚至去冒险 。)

〇 高い熱を出していながら、あえて同窓会に出ようとは思わないc (没有必要发
着高烧去出席同学会。)

❸ 事故を起こしたからといって、あえて彼の名前を名簿から取り消すことはな
ビが、事故発生の原因を彼とよく分析すべきだ。(没有必要因为他是事故的肇
事者就把他的名字从名册中划掉,但是应该与他一起很好地分析一下事故发生
的原因。)

❹ 相手が上司だからといって、あえて自分の腰を低くするには及ばないだろ
う。(没有必要因为对方是上司就让自己卑恭屈膝吧。)

252 日语综合教程第五册

え型あたかも(恰も)

副詞。次のような用法があるが、いずれも文語的な表現である。

1.ちょうどその時。まさにという意味を表す。(正值,正好)

❶ 時あたかも午前零時である。日付が変わるこの時をもって、私はメールで皆
様にお別れのごあいさつを申し上げたい。(时值半夜零点。在变换日期的这ー
时刻我用电子邮件谨向各位道别。)

❷ 時あたかもスキーシーズンである。しかし、新聞の「スキー場だより」にょ
ると、暖冬気味の今年はどこも積雪状態がよくないようだ。(时值滑雪季节。
可是根据报上“滑雪信息”栏的报道,今年有点暖冬现象,所以各处的积雪情
况不佳。)

K❸ 私が杭州を出る時はあたかも杓 の花が満開で、白やピンクの花が枝いっぱい

についていた。(我离开杭州的时候,正是桃花盛开的季节,那白色和粉红色的
桃花开满了树枝。)
❹ 今日は好天に恵まれ、あたかも日曜のこととて行楽地もにぎわいを見せてい
る。(今天碰上好天气,又逢星期日,游览地也呈现一片热闹景象。)

2 (多く後ろに「のようだ」「のごとし」などを伴って)形状、様態、性質などを、

よく似ている物にたとえて形容する語である。まるで。(宛如,恰似)

❶「人生はあたかも重い荷物を背負って旅する旅人のごとし」と言った人があ
るが、真にそういうことかもしれない。(有人说人生就好像是背负行囊的游
者,这或许是真的。)

8❷ 柱時計は静かに 時をうちはじめた。あたかもその音に合わせるように、ド
8アをノックする音がした。約束どおり彼女が来た。(挂钟静静地敲响 点。就

好像是跟钟声约好了似的,敲门声也同时响了。她如约到来。)
〇戸棚の奥に眠っている古本のかび臭い匂いは、あたかも亡った父の匂いその

もののように思わせる。(沉睡在书橱里的旧书本散发出阵阵霉气,让人感到
它就是已故父亲的气息。)
❹ あたかもその事件を見ていたかのように電話のベルが鳴り、今日の行事が中
止になったことを知らせてきた。(就像亲眼看到那起事件似的,电话铃声响
起来了,通知我说今天的活动取消了。)

会—とつGても……—…一ー——・ーー—…—............—….一一.…一 —―:

副詞。三つの使い方がある。

/,どんなことがあっても。必ず。ぜひとも、という意味を表す。よく 「どうし

第9課「的」の文化253

ても〜たい」の形で、その望みの実現は難しいが、困難を乗り越えてでもし
たい、という強い願いや望みを表す。(一定,无论如何也要;一定想,无论如
何也要想)

❶ 予定は詰まっているが、どうしても行くということであれば、あけられない
ことはない。(日程是排得满满的,但是如果你一定要去,也不是一定腾不出空
来。)

❷ 君がどうしてもそれが欲しいというのなら、僕は借金をしてでも買ってあげ
る。(如果你一定要的话,我就是借钱也给你买。)

❸ 周りの人はみな引き止めているのに、彼はどうしても今の職を辞めたいと
言っている。(他不顾周围人的阻拦,坚持说无论如何也要辞掉现在的工作 。)

❹ 競争が激しいのは知っているが、どうしても公務員試験に挑戦したい。(我知
道竞争很激烈,但是无论如何也想要挑战一下公务员考试。)

2よく「どうしても〜ない」の形で、多くは打ち消しや否定を表す表現を伴って、

どう努力してみても、どんな経路をたどってみても、目標は達せない、できな
いという意味を表す。(无论如何也(不)…,怎么也…)

❶ あなたの考えはすばらしいが、それを実現させる条件はどうしても揃えられて
ていない。(你的想法非常好,但是实现该想法所必需的前提条件却很难具备。)

❷ この問題を幾日も考えたが、どうしてもその原因が分からなかった。(这个问
题我考虑了好几天,却怎么也弄不明白其原因 。)

❸ 入社してずっとがんばっていたが、部長にはどうしてもなれなかった。(进公
司以来我一直很努力,但是却怎么也当不了部长。)

❹ 病院側はあらゆる方法を使ってみたが、どうしてもお祖父さんの命を助ける
ことができなかった。(医院方面已经尽其所能,但怎么也救不了祖父的命。)

3.前に条件を表す文につき、その条件のもとでは当然で好ましくない結果になる

傾向を表す。(当然要…,自然会…)

❶子どもが大学に受からないと、家の中はどうしても暗くなるのだc (孩子要是
考不上大学,家里的气氛自然不会好。)

❷ 一度学校をサボると、どうしても二度、三度とサボりたくなるものだ。(只要
有了第一次逃学,那么以后就会有第二次、第三次。)

❸ 年を取れば、どうしても記憶力が弱くなるものだ。やはり若いうちにたくさ
ん勉強しておかなくてはならない。(年纪大了,记忆カ自然会减退的。所以还
是应该趁年轻的时候多学ー些东西。)

❹ 家庭の経済条件がよくなると、どうしても子どもが勉強しなくなる。といわ
れているが、必ずしもそうではないと思う 。(有人说一旦家里的经济条件变
好,孩子就会不想读书。可我认为并非一定如此。)

254 日语综合教程第五册

三食〜に見る(〜にみる)(从…可以看到) 【

体言について、「〜に見られる」という意味を表す。書き言葉としての硬い表
現である。

(p❶ 最近の新聞の論調女性偏重の傾向は目に余るも がある。(从最近报上

的论调中可以看出,偏向女性的倾向彳艮严重,让人看不下去。)
❷ このアンケート調査に史屋今日の学生生活の贅沢ぶりには言語に絶するもの

がある。もちろん、そういう学生はわずかしかないが。(从这个问卷调查中可
以看到,如今的大学生中有的人生活奢侈得简直令人发指。当然这种学生是极
少数的。)
❸ ただ今の彼女の発言に見るように、一部の若者にとって老人は余計な邪魔者
でしかない。(从她刚オ的发言中可以看到,对于一部分年轻人来说,老人只不
过是多余的累赘而已。)
❹ 彼はけっしてこの写真に見るようなきれいな顔をしていないということを
断っておきたいが。(我得事先声明,他长得可没这张照片上看起来那样好看。)

ともめれ あ论如何,不管怎么说,姑且不论 )

副詞、話し手が物事を判断する場合に使われる。二つの用法がある。なお、文
頭に用いられる場合は、接続詞と見られる場合もある。

んいずれにせよ。とにかく。他のことはともかく、とりあえず先に何かをやらな
ければならない、という意味を表す。「何はともあれ」の形もある。

❶ ともあれ、今年も無事に終わったので、今晩は思う存分に飲み明かそうでは
ないか。(不管怎么说,今年已经平安地度过了,今晚我们就尽情地喝个通宵
吧。)

❷ 何はともあれこの問題のカギは、君たち自身にあるということをしっかり考
えてくれ。(不管怎么说,这个问题的关键在于你们本身,这一点你们要好好想
想。)

❸ 何はともあれ、今晩なくてはならないのは酒だから、今すぐ自動販売機でも
いいから、それを買ってこい。(不管怎么说,今晚不能没有酒,哪怕是自动售
货机也行,你马上去买回来。)

❹ いろいろと感情の行き違いもあったが、ともあれ友達同士じゃないか、これ
からも仲良くやろうな。(彼此之间有点误会,可大家不都是朋友吗,今后大家
还是要友好相处。)

2.「〜はともあれ」の形で上の事柄は別にして、一応の判断を述べるときに使う。

❶ 学歴はともあれ、家柄や人柄がよければいいとぼくは考えている。(且不管学

第9課 「的」の文化 255

历如何,我认为只要家庭和本人人品好就行。)
❷ 成績はともあれ、よく努力したことを認めてやらないといけない。(且不管考

试成绩如何,我们应该承认她作出的努力。)
❸ 事故の原因はともあれ、先にけがをした人を病院に送ろう。(姑且不问事故的

原因,先把受伤的人送到医院去。)
❹ 細かい問題はと地れ、全体的にはまずまずよくできていると思う。(细节问

题姑且不说,就总体而言我觉得做得还是挺不错的。)

〜からすれば 从…来说,从•••来看,按…来衡量 ・

体言について、話し手の見方、すなわち話し手が出した判断や評価の基準 ・
根拠や視点、立場を表す。「〜からすると」「〜からして」と同様である。

❶ 王さんの今日の態度からすれば、彼は趙さんに好意を持っていることは間違
いない。(从小王今天的态度来看,他肯定对小赵有意思。)

❷ 田中さんが今これほど高い家賃を払えているところからすれば、彼の給料は
相当いいはずだ。(从田中先生能支付如此昂贵的房租这一点来看,他的エ资
应该彳艮高。)

〇 資本主義の理論からすると、インデックスに縛られるファンド・マネー
ジャーの行動は不合理かもしれないが、それも現実である。(从资本主义的理
论来看,资金管理者的行动受指标束缚,这也许并不合理,但却是现实。)

❹ 今君は非常に困っているようだが、私の考えからしてそれは君の身から出た
サビと言いたいよ。過去のことをよく反省することだ。(你现在好像彳艮困难,
但是在我看来,我得说这是你咎由自取。你应该好好反省自己过去的行为 。)

のん j

・〇ーあえて:…しいてーーー ..........................................

1.あえて(敢えて)还是要…

副詞。(下に意図性をもった動詞句を伴って)困難な状況や心理的な抵抗をおし
て物事を積極的に行うさま。そうするだけの価値があるものとして言う語であ
る。また、(しなくてもよいことを)押し切って、強いてという意味を表す。

❶ お母さんは毎日とても忙しいが、可愛いわが子のためにはあえて一針ー金・丁
寧に手作りしたブラウスを着せることで愛情を表現している 。(妈妈每天很
忙,可是为了心爱的孩子,她硬是认认真真地ー针ー线地亲手为孩子缝制衬
衣,以此来表达对孩子的爱。)

256日语综合教程第五册

❷ 僕がこんなことを言ったら君は怒るかもしれない。でも、君を親友と思えば
こそ君のためにあえて言うことにした。だから気を悪くしないで聞いてほし
い。(我说出来也许你会生气。但是就因为我把你看成是自己的好朋友,为你着
想,オ决定说出来的。因此希望你不要生气,好好听我说。)

❸ 母の機嫌を直したくて、あえて深夜母の部屋に忍び込んで枕元に母が好きな
食べ物を置くというようなことをした。(为了讨好母亲,我还是在深夜偷偷潜
进母亲的房间,在她的枕边放上她喜欢吃的东西。)

❹ 今日この喜びの会場で苦情を言うのはふさわしくないが、機会は今しかない
のであえて苦言を呈する。(我也知道在今天这样喜庆的场合诉苦不太合适,但
是只有这个机会了,所以我还是想谈谈自己的苦衷 。)

2.しいて(強いて) 勉强,一定

副詞。困難、反対、不都合などを押し切って物事を行うさま。あえて、むりやり。

❶ 勉強が嫌いなら、しいてさせることはないだろう。その子にはその子に適し
た進路があるはずだから。(既然他不喜欢学习,就没有必要勉强他。这孩子会
有他自己的出路的。)

❷ 卓球とバレーボールとどちらがしたいかと聞かれても、私はもともと運動は
苦手なんだ。しいてするとしたら卓球かな、動きが小さくてすむから。(问我
想玩乒乓球还是排球,我本来就不擅长运动,如果一定要选择的话,乒乓球的
运动强度比较小,还是打乒乓球吧。)

❸ この事実に間違いはないが、言い出したら争いになりそうなので、言わない
でおきたい。でもしいて言うとすれば、それとなく暗示する程度に留めてお
こう。(这确实是事实,可要是说出来有可能会引起争吵,所以我想还是不说为
好。但如果一定要说的话,我想还是婉转地给她ー个暗示吧。)

❹ この子は父親にも、母親にも似ていないね。しいていえば、目元がおじい
ちゃん似かしら。(这孩子既不像她父亲也不像她母亲。如果一定要说的话,眉
眼之间倒是像她的爷爷。)

まとめ

いろいろな状況を押し切って、強引に何かを行うという意味では二語共通し
ている。「あえて」は特にそうする必要もないのにという意識を伴う。困難や無
理を自ら進んで、という積極的な態度で何かを行う。また、下に打ち消しの語
を伴って、「わざわざ」「決して」の意にも用いる。「しいて」は、多少の無理を
押して何かを強行する場合に用いるが、他人の意志や気持ちに逆らって行う、
行わせるという意味合いの語である。「あえて」の「無理にそうする必要がない
がする」という意味と違って、「しいて」は、そうする方が望ましい、そうする
必要があるという前提に立って、強い反対や心理的抵抗はあるが、無理にする
といったニュアンスがある。

第9課「的」の文化257

0馴染む・慣れる

ん馴染む(なじむ) 熟、适应;融合、溶合;调和、谐调
自動詞。人になれて親しくなったり、また、物事や場所になれて親しみを持つ

たりするという意味や、味わいや調子などが一つ溶け合い、ほどよく調和する、
という意味を表す。

❶3ヶ月頑張ってみたが、やはりこのような雰囲気に馴染めない。このごろ、彼
は転勤のことを考えはじめた。(他试着努力了 3个月,可还是不能适应这种氛
围。最近他开始考虑调动工作了。)

❷ ど、こへ行ってもすぐ新しい環境に馴染んでしまうのは彼女の長所である。 (无
论到什么地方,她都能很快地适应新的环境。这是她的长处。)

❸ 女の子は一旦悪習に馴染んでしまうと、なかなか救われないのだ。(女孩子ー
旦染上恶习,就很难挽救了。)

❹ この絵は洋風的なもので、金色の額縁とはよく馴染むが、むしろそばにある
中国式の時計とはちょっとしっくりこないと思う。(这幅画有点西洋风格,因
此与金色的镜框很オ目配。倒是与旁边那只中国式的钟,有点不太协调。)

2慣れる(なれる)习惯、习以为常;熟练;惯、合
自動詞。「馴れる」「熟れる」「狎れる」もあるが、ここでは「4貫れる」に限る。

ある物事をたびたび経験したため、特別なもの(こと)と思わなくなって習慣に
なったり、いつもやっているので、そのことに熟達したりする、という意味を
表す。また、道具などが使い続けているうちに、具合の悪いところがなくなっ
たりする、という意味もあるが、この場合は多く「(動詞連用形)+なれる」の
形で使われるようである。

❶ 最初は緊張していたが、何回もやっていると、緊張が解けて、気持ちもずい
ぶんイ貫れてきた。 (ー开始我很紧张,可是重复几次后,紧张消除了,心理上也
已经相当习惯了。)

❷ 私は生まれは南の方だが、5年も北のほうで生活したので、もうすっかりそ
この気候に慣れた。(我虽然出生在南方,可是在北方生活了 5年,已经完全习
惯了那里的气候。)

❸ 来月のコンサートは非常に大事なので、司会に慣れた人に頼んだほうが無難
である。(下个月的音乐会非常重要,所以让ー个有经验的人做主持比较保险。)

❹ この時計はだいぶ古くなったが、長年来使い慣れたもので、なかなか捨てら
れない。(这块手表虽然很旧了,但是那么多年来都已经用惯了,所以舍不得扔
掉。)

258 日语综合教程第五册

まとめ

時間が経つにつれて違和感がなくなるという意味では二語共通しているが 、
「馴染む」は、時間が経つのにしたがって、二つの物が異質でなくなり、人間が
環境や生活に溶け込んで、それにすっかり慣れて調和を保つようになる、とい
う意味のやや古風な言い方である。それに対して「慣れる」は、時間が経つの
にしたがって、人間が環境や生活に不自然な感じがなくなるなど、という状態
変化を表す言葉である。

練習

ー、次の漢字にふりがなをつけなさい。

端的 猛然 満ちる 幾分 充足 屈辱 素質 幅
造語 的確 従前 大大的
格闘 余情 逞しい 元来 漂う 些か 愛想 融通無碍

毅然 頻用 即する 幽玄

二、 次の文の片仮名の部分を漢字になおしなさい。
1. 科学技術の進歩にトモナって、生活が簡略化する。
2. 話には翌みを残しておいたほうがいい。
3. 余裕を持ったほうがいいので、予算をヒカえメに見積もってください。
4. いじめられている子を丸がってやる。
5. 環境保護の運動がすでに民衆の中にネザした。
6. 困難に玄ちムかう精神を表彰すべきである。
7. 家のテレビは電波障害でよく 空らない。
8. 彼の捨てぜりふがいつまでも脳裏にをわる。
9. 彼はとても親切な方だから主巨く付き合ってください。
io.お坊さんは座禅で強い精神をツ乏左うのだ。

三、 次の質問に口頭で答えなさい。
1. 「的」がつくとどんなよさがあるか。
2. 「奥ゆかしい」のよさはどこにあるのか。
3. 「幻暈嗜好」とはどういう意味か、説明しなさい。
4. 日本人はなぜ「的」という言葉を愛用するのか。
5. 「ぼかし」というのはどんな役割があるか。
6. 「てれ」の表情に走る原因はどこにあると言っているか。
7. 日本語を習っているあなたには漢語を使う場合、日本人のような「てれ」はな

いか。その理由を言いなさい。

8. 最近、言語に現れる新しい現象はなにか。

第9課「的」の文化259

9.本来の中国語の意味と違って、和製漢語になったことばを一つ挙げてその違い

を説明しなさい。

io・中日両国語にある「的」という言葉の異同について述べなさい。

四、 次の文の下線部を辞書で引いて日本語で説明した上、全文を中国語に訳しなさい。
1. 風が窓から吹いてきたが、それはそこはかとなく春の到来を感じさせる風だっ

た。

2. 彼は、会議でどうとも取れる含みのある言い方をした。
3. 初対面だったが、彼女のはにかみ笑いを浮かべた顔はとても印象深かった。

,彼のあの、勇気を出して強敵に立ち向かう態度がすばらしい。

5.中学校を卒業して以来ずっと都会に出ていた男がふらりと町に舞い戻ってきた。

五、 次の下線部の言葉の意味が、それぞれのはじめの文と最も近い意味で使われている
文を、①、②、③、④から一つ選びなさい。
1. 彼の落ち着いて幅のある動作が、非常に頼もしく思えた。

① 来年から不動産は値上がりし、しかも値上がりの蝠が広いと聞いた。
② 規則に幅を持たせたほうが、かえって社員のやる気を惹き起こすかも。
③ あそこは道の蝠が狭いので、とても運転しにくい。
④ 彼女は亡くなってもうio年になるがぐ音域に蝠のある美声は未だに多くの

人々を魅了してやまない。

2. 十砂くずれで逃げ道をたたれた人の救助に、ヘリコプターが現場へ向かった。

① つまらない内容なので講演の途中、席をたつ人が多かったC
② 芥川龍之介は自ら命をたったのだC
③ 波がたつ海のことだから、危険がないとは言いきれない。
④ 若手教師は授業中、質問攻めにあって窮地にたたされた。

3. どんなに困っても悪いことだけにははしってはいけない。

① こんな場合に感情にはしっては困るのだ。
② 一生懸命ペンがはしっても1日に5枚ぐらいしか書けない。
③ 日本は南北に山がはしっていているので植物移動の邪魔にならなかった。
④ 地震のため、せっかく建てた新居の天井に亀裂がはしったC

六、 次の語群から適切な言葉を選んで、必要な場合は形を変えて( )に書き入れな
さい。

融通無碍 ずばり ひとまず かわりない 間に合う
あやかる 気安い ものを言う いくぶん なま

260 日语综合教程第五册

1.普段はバイトばかりするので成績はあまりよくなかったが、こんな場合だとバ

イトの経験が( )ね。

2( )言えば、この件に関しては君が間違っているのだ。

3. 彼女は( )ためらいがちに笑顔を見せた。

4. 何かわからないことがあれば、( )声をかけてください。

5. 会議上、彼は( )なものの見方をみんなに聞かせた。

6. 私は3年忑りに彼女と再会したが、彼女は、見た目は( )が、どこか違っ

た匂いを感じた。

7. 顔ははっきり見えなかったが、それは彼の( )の声であることは間違いな

い。 ’

8. 成功した実業家に( )ように、父は私にその人と同じ名前をつけた。

9. 今日は社員がみんな出かけているので、あの子を派遣して( )よう。

1〇.ようやく娘は就職した。これで( )安心だ。

七、次の文中の 部分に入れるのに最も適切なものを選びなさい。必要な場合

は、語の形を変えてもよい。また、答えは必ずしも一っとは限らない。

1. 店1軒を構えるには商品を売る場所だけでなく、商品を補充するための品物を置

く場所が必要であるが 商品の種類を限定し、商品の補充を配達にたよ

る、いわゆるコンビニエンス•ストアが成功を収めたのは、このスペースの問題

をクリアしたからである。

し①いて ②あえて

2. 台風が来ているというのに、学校に行かせることはなかったのではない

の。結局授業は中止になり早帰りしてきたでしょう。

①しいて ②あえて

3. これほどの努力を するのだから、こうした人々は相当英語の話せる人

に多い。

①しいて ②あえて

4. 僕はどちらも気に入らない。でも、選ぶなら、こっちかな。

①しいて ②あえて

5. 油と水は ないように、この2人は仲良く見えても絶対一緒にならないの

ね。

①なれる ②なじむ

e何も驚くことはない。io年も夫婦生活をしてきたので、もう妻の気紛れには

①なれる ②なじむ

7. ずっと田舎で生活してきた両親は、なかなか都会生活に ない。
いる。
①なれる ②なじむ

8. まだ微熱があるが、でもこういう微熱には昔から

第9課「的」の文化 261

①なれる ②なじむ

ハ、括弧の中の言葉を使って次の中国語を日本語に訳しなさい。

1.并不是说由父母应酬了本人就可以什么都不说了。本人的谢意和父母的应酬自然

是两码事。(おのずから;应酬ーあいさつをする)

2她像是在说他的坏话,又好像没说他的坏话,总之是ー种非常高明的说法,让我

不得不佩服。(〜ような〜ような;高明的说法一上手な言い方)

3. 从这封给父母亲的信中你们可以明白了吧,对小孩子来说夫妻吵架该有多么可怕。

(〜に見る)

4. 如今对孩子的抚养并不是只要他们健康成长,大学毕业,有了工作就算结束。(〜

的)

5. 终于,老人停止了呼吸。就在这瞬间,他ー贯宠爱的小鸟像是知道似的在笼中乱

蹦乱跳。(あたかも;停止了呼吸一息を引き取る、乱蹦乱跳一大暴れ)

6. 家里人都极力反对,只有他本人抱着一定要做这份工作的决心在拼命努力,到处

奔波。(どうしても〜たい;他本人ー当の本人)

Z工作固然重要,但是我认为也没有必要为了工作,甚至去损害自己的健康。(あえ

て〜ない)

8. 不管怎么说,不试用一下你怎么知道产品的优点呢。就怕你用了以后,再也离不

了它呢。(何はともあれ;离不了它一手放せなくなる)

9. 就我个人的经验而言,即便价格稍微贵一点,还是住带浴室和厕所的房子比较安

全。(〜からすれば;带浴室和厕所ーバス・トイレっき)

7Q由于战争,这个村庄里除了这个孩子以外已经没有男人了。(〜を除いて)

九、言葉の決まり

1.次の下線部にあたる漢字をそれぞれ選びなさい。

① 彼の話はカンゲンすれば、今後これが最重要課題であるということだ。

ア還 イ勘 ウ勧 工換 オ敢

② 朝から交通事故が起こった。その事故を処理するために交通をシャダンして

262日语综合教程第五册

いる。

ア斜 イ赦 ウ射 工遮 オ舎

い③くらなんでも 、もう僕は高校生なんだから、あれこれカンショウしないでく

ださい。

ア傷 イ渉 ウ奨 工照 オ請

2. 次の①〜⑤の文の| |にあてはまる語句を、後のア〜オから選んで記号で答

えなさい。

① なぜか彼とは んだよ。

② そんなことをすれば、かえって ようなものだろう。,

③ こんな練習で なんて、だらしがない。

④ 彼は強くて、ぼくはとても「 |。

⑤ あんなやっとは| ]つもりだ。

ァ音をあげる イ馬が合う ウ手を切る
エ 歯が立たない オ 火に油を注ぐ

3. 次の文を読んで後の問いに答えなさい。

日本の吉田茂元首相はユーモアの名人だと言われた。あるとき、ある人が聞い
た。

「総理はいつもたいそうお元気そうにしていらっしゃいます。お肌もつやつや

して…… なにか特別なものでも|(A) |いらっしやいますのでしょうか。」

どうせお世辞にきまっている。吉田茂はにこりともせず(こういう場合、自分
で先に笑うものではない)、おもむろに答えた。

「なにしろ、人を食っていますからね。」
そのころの吉田は、世間の一部から、人を人とも思わぬ、傲岸(ごうがん)なお
やじのように悪く言われていた。それを逆手にとって使ったところがおもしろい。
自分にこだわらず、見方を変えるところからユーモアは生まれるのである。

問い:下線部と、空欄3Hについて説明した次の文の空欄に適切な語を補い

なさい。

「いらっしやいます」は、敬語のうち(①)語と言われるものである。もとは
「(②)」という語であり、この語の謙讓語は「(③)」という語になる。空

EH欄 に入る語は、「食べる」の(①)語である「(④)」という語である。

① ② ③④

十、次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

私たち日本人は相手の気持ち、他人の考えを顧慮する前に、一応自分としてはこ
う思うという自己の主張の原点を明らかにすることが、どうも苦手のようだ。相手

第9課「的」の文化 263

の出方、他人の意見を基にして、それと自分の考えをどう調和させるかという相手
待ちの方式がむしろ①得意のようであるCそれどころか、他人が意見なり願望なり
を言語で明確に表明しないうちに、いちはやく②それらを察知して、自分の行動を

合わせて行くことも少なくない。「察しが良い」「気がきく」「思いやりがある」など

の表現がほめ言葉であり、またヨーロッパ語に直接は翻訳しにくいものであること
を見ても、対象への③且旦同化が日本人にとって美徳ですらあることが分かる。ま

Iた「親切の押し売り」や④「有難迷惑 とか「人の気も知らないで、いい気なもの

だ」なども、相手の気持ちや希望を先取りすることが、日常普通に行われる社会で

なければ、意味をなさないのである。日本文化が「察しの文化」とか「思いやりの

文化」だと称せられるのはこの点をついたものである。自分を相手に同調させ、相

IT手の気持ちになることが大切であるから、[ 正面から対立する個と個の意見の

交換、両者の利害の調節としての言語の機能は極度に押さえられる。このような

タイプのコミュニケーションは悪くすると相手の腹を読み、相手の気持ちを忖度す

Iることから、遂には「「A 」まで落ちて行きかねないが、まだ反対に「相客に
|_B_!」という茶道の哲学にまで高まる可能性も含んでいるわけである。ただ最

後につけ加えたいことは、日本人が国内で日本人を相手にしている限り、甘えにせ

よ対象同化にせよ、それはそれなりに有効に機能しているのだから問題はないのだ

Iが、 2」日本人でない相手と接することになると、この⑤日本的特性は有効性を

失ってしまうという点である。

3相手に同化し、甘えることに馴れている日本人は、匚 □自己を相手に投射し、

相手に依存する。そして相手もまたこちらに同調してくれることを期待してしまう。

強烈な自己主張をぶつけないで、相手に自分をわかってもらうのは、日本人が相手

OZJ,でない限り無理な話だということが、日本人にはのみ込めていない。 前に

述べたように、私たちは相手が「厂 できないうちは、自分の意見なり主張なり

を確立することが不得手ときている。そこで日本の対外的な交渉は、外交、政治、経
済のすべての点で出おくれになる。大勢がつかめないうちは、自分の位置づけがで

きないからである。日本人が外国語が不得手で、国際会議でも、学会でも実力の割
にさきんぜられるのは、語学力そのものの点よりも、M□問題は、自分を言葉で

充分表現する意志の弱さ、それも相手の主張や気持ちとは一応独立して、自分は

少なくともこう考えるという自己主張の弱さに原因の大半があるように思えてなら

ない。

周D 空欄LZJ〜I堂Iに最も適切な語を次の中からそれぞれ選びなさい。

①しかも ②つい ’③むしろ ④従って ⑤ひとたび

1. 2. 3. 4. 5.

de空欄! a—]|"茸tに最も適切な語句を、次の中からそれぞれ選びなさい。

A ①”他人の宝を数える ②他人の念仏で極楽参り

264 日语综合教程第五册

③他人の疝気を気に病む ④他人の飯を食う
⑤他人の中を見てくる

B①まなべ ②こころせよ ③まかせよ ④そむけ ⑤つくせ
C①肯定 ②指定 ③否定 ④同定 ⑤決定

(ED 文中下線部①の主語を書きなさい。
dD 文中下線部②「それら」の指す内容を書きなさい。

文中下線部③「自己同化」の意味を文中の言葉で書きなさい。

dD 文中下線部④「有難迷惑」の意味を書きなさい。

dD 文中下線部⑤「日本的特性」とは何か、文中の言葉を使って書きなさい。

文学・語学の豆知識
「エッセイ」とは

「エッセイ」(essay)ということばの原語は、フランス語のエッセエ(essai)
である。そして、その「エッセエ」は、試みにものを書いてみる—— っまり、
「試筆」あるいは「試論」というくらいの意味である。エッセエの元祖と見
られているフランスのモラリストであるモンテーニュの『随想録(エッセ
ェ)』は、「ク・セ・ジュ」、すなわち「私は何を知っているだろうか?」と
いう精神に貫かれている。また、イギリスの代表的なエッセイストであるラ
ムは、Ilove a fool.(私は愚か者が好きだ。)と言っている。厳密に言えば、
エッセイとは、懐疑的な知性によって綴られた、断定を避けた試論である。
良い意味で懐疑的な、押しつけがましくない、謙遜な精神に根差した、しか
し、個性的な、論理の運びを軽んじるわけではない。むしろ心理的な連想
の運びに忠実な、必ずしもまとまっていることを必要としない、そして
ユーモラスな文章である。

第9課「的」の文化 265

読み物

日本語

• 井上ひさし

ヒトをヒトたらしめたのは疑いもなく言葉である。さらにヒトはその言
葉を発展させて文化をつくり出した。こうしてヒトは「言葉にのせて文化を
伝える」という遺伝外の情報伝達に成功した 。これに加えてヒトは文字を発
明することで、それまでの聴覚に頼った伝達(=話し言葉)の致命的な弱点
であった伝達の瞬間性を永続性のあるものに変えた。当然、文字による遺伝
外情報は重視され、尊敬された。言ってみれば活字が崇拝されていた。——
これが敗戦当時の日本語の状況だった。

もとより敗戦の衝撃や戦前戦中の日本精神の過度の押しつけへの反感か
ら、「非合理な日本語を捨ててフランス語を国語に採用せよ。」と唱える人た
ちも少なくなかった。占領軍の一部には、「日本語はそのままでよいが、文
字が非能率すぎる。仮名や漢字を廃してローマ字を使わせてはどうか。」と
いう意見もあり、これに賛意を表す人たちもまた少なくなかった。しかしこ
れらの考えは日本語や日本語の表記法への不信や不満ではあっても、言葉そ
のものに向けられたものではない。日本語よりもっと優れた言葉があるはず
だという信仰がその底に潜んでいた。つまり文字による遺伝外情報を重視
し、尊敬すればこその、日本語への不信であり不満であったのである 。もつ
とも異国語の国語採用案や日本語表記のロ ーマ字化はやがて沙汰やみとな
り、昭和二十一年の四月ごろまでには収まったが、すぐに国語改革が始まつ
た。そして四十年近い歳月がたった。

いま、日本語は簡略化し、単一化し、単純化しつつある。ひと言で言え
ば、均質の、平べったいものになりつつある。

方言の使用量は激減している。その地方にしかない事物や習慣や生活感
情を表現しようとすれば、その地方にしかない言葉が必要となる。そこに方
言が成立していたわけだが、大量生産 大量消費という物流の巨大な網が
全国を覆ってしまい、いまや「その地方にしかないもの」は少なくなった。•
方言が存在しにくくなったのである。また、平等意識の表面的な普及と中流
意識の幻想とが待遇表現(敬語)を衰退させている。同じことが差別語につ
いても言えるだろう。もちろん差別そのものが消滅したわけではないが、そ

266日语综合教程第五册

れは見にく くなり、社会の底層をこっそりと陰気に流れるようにな,った。
そして社会の上ッ面では新造の、急造の差異をつける言い方が氾濫して

いる。いわく 「ダサイ」「ネクラ」「イモ」「トラ(ディショナル•伝統派)」
..... 。これらの差異をつける言い方は猛烈な速度で変わっていき、その速
度に幻惑されてほんものの差別が見えなくなっている。そのほかカタカナが
増えて漢字が減り、若い世代はみな似たような丸っこい字を書き、文章は広
告コピーの影響か息が短い。——といったようなわけで、確かにこの四十年
間に日本語は単純化し、均質化している。社会の構造が球型(あるいは梯形)
から平べったくなって凸レンズ型に変わったのを、日本語が忠実に映してい
るのである。

かなでも文字の衰運は著しく、文字による情報は、その王座を映像によ
る情報に明け渡した観がある。文字がどれほど軽んじられているかは近ごろ
の商品の命名法にもよく現れていよう。長い間、企業は、「まじめで、それ
でいて魅力があって、できれば永続して売れるものを」と願って商品に命名
していた。十かそこいらの文字に社運を賭け、またそれぞれ社の良識をも賭
けていたのである。しかし今はどうか。例えば日本人によくある姓をそのま
ま「〇〇くん」などと商品名に使っている。今日の商品が、大氾濫のせい
で、すべて均質になりアウラ(霊気・雰囲気)’を消失してしまっているので、
そのアウラを出すために人名という人懐かしいものを持ってきたのだという
指摘もあるが、筆者には、各企業に「他の商品より少しでも目立つなら、名
前などどんなにメチャクチャでもよろしい。」とする思い切った言語道具説
が支配し始めているように見える。

遺伝外情報としての言葉の値打ちの下落、そして映像への熱狂的な支持 。
これらを用意したものの代表はテレビであろう。確かにテレビは時間と空間
と記号の束縛から情報を解き放った。事件が発生する。その模様は、あっと
いう間に(時間の束縛からの解放)、どこででも(空間)、たとえ字の読めな
い人にも(記号)わかる。ところが文字による情報伝達には、執筆•印刷・製
本に時間がかかり、流通手段なしではどこへも届かず、記号が解読できなけ
れば情報を受容できないという制限がある。映像が時代の寵児になるのは当
然かもしれない。

さらに我々は、歴史を直線と見なし、進化論を是としている。この論法
でゆけば、常に「いま」が歴史の頂点であるから、常に「いま」が最良の時
代で、常に「新しいもの」が正しいという見方が生まれる。この見方が新し
<登場した遺伝外情報媒介手段である映像をもてはやしもしたのだろう。だ
が、映像への過度の信仰が、思考や経験を伝え新しい知恵を生み出す 「学
び、考えるための言葉」の衰えにつながらなければ幸いである。言葉には欲
求を伝える道具としての働きのほかに、この〈学び、考えるための働き〉が

第9課「的」の文化267

ある。だれかがだれかに「死ねつ」と罵声を放つとき、また物事を見ても
「うつそ!」「ほんと」「かわゆーい」としか言えないとき、言葉は道具の役
割しか果たさない。もっと言えば、相手からの情報を感じる能力に欠け、自
分から相手に向かうだけの粗末で尊大な情報しかないとき、ヒトは粗末で尊
大なエゴイストでしかなくなるのである 。

ところで映像による情報は次の二つの理由で、まだまだ文字による情報
には及ばないところがあると思われる。例えば、「細胞内小器官—— 細胞
——組織一器官一器官系——個体一団——社会—— 生態系—— 地球
..... 」という生物の階層構造は、これからますます重要になる概念である
と信じるが、こういった大切な情報を映像だけで表現しょうとしても、それ
はほとんど不可能である。「会社」「国家」「制度」といった概念もまた映像
では表現できない。次に、文字による遺伝外情報は膨大であるのに、歴史の
浅い映像にはまだその情報量は少ない 。

生命の目的は「存続すること」にある。ヒトなら長生きすること、人類
なら絶滅しないこと。我々はそのために、ほとんど無限に近い、文字による
遺伝外情報を持っている。加えて我々には「学び、考えるための言葉」があ
る。この二つを活用しない手はない。映像による情報伝達の助けを借りなが
らも、どれだけ言語に関しては保守的になれるか、過去の遺産を再生できる
か。そこに未来がかかっていると、私は信じている。

(『新版高校国語二』日本書籍より)

I注釈

〇 井上ひさし(いのうえ・ひさし)(1934〜)
小説家、劇作家、放送作家。山形県生まれ。仙台一高を経て上智大学仏語科を卒業。大学在学中か
ら、演劇の台本、戯曲を書き、芸術祭脚本奨励賞や岸田戯曲賞などを多数発表して注目を集めた。
日本語の現状についても積極的な問題提起をしている。小説『新釈遠野物語』『吉里吉里人』、戯曲
『頭痛肩こり樋口 一葉』『国語事件殺人辞典』など。

268日语综合教程第五册

10

本文 屋根の上のサワン

•井代鲤二

おそらく気まぐれな狩猟家か悪戯ずきな鉄砲うちかが狙い撃ちにしたもの
に違いありません。私は沼池の岸で一羽の雁が苦しんでいるのを見つけまし
た。雁はその左の翼を自らの血潮でうるおし 、満足な右の翼だけ空しく羽ば
たきさせて、 水草の密生した湿地で悲鳴をあげていたのです。

私は足音を忍ばせながら傷ついた雁に近
づいて、それを両手に拾いあげました。そ
こで、この一羽の渡鳥の羽毛や体の温かみ
は私の両手に伝わり、この鳥の意外に重た
い目方は、そのときの私の思い屈した心を
慰めてくれました。私はどうしてもこの鳥
を丈夫にしてやろうと決心して、それを両
雁 手に抱えて家に持って帰りました。そして
部屋の雨戸を閉めきって、五燭の電燈の下でこの鳥の傷の治療にとりかかっ
たのでありました。
けれど雁という鳥は、ほの暗い所でも目が見えるらしく、洗面器の石炭酸
やヨードフォルムの瓶を足蹴にして、私の手術しようとする邪魔をします。
そこで少しばかり手荒らではありましたが私は彼の両脚を糸で縛り 、暴れる
彼の右の翼をその胴体に押しつけ 、そうして細長い彼の首を私の胯の間に挟
んで、
「じっとしていろ!」
と叱りつけました。
ところが彼は私の親切を極端に誤解して、私の治療が終わってしまうまで 、
私の胯の間からは、あの秋の夜更けに空を渡る雁の声がしきりにきこえたの
です。
治療が終わってからも、私は傷口の出血がとまるまで彼を縛ったままにし

第io課屋根の上のサワン269

ておきました。さもなければ彼は部屋のなかを暴れまわって、傷口に塵が入
るおそれがあったからです。

私は治療の結果が心配でした;羊術の器械など私は持っていないので 、鉛
筆削りの小刀でもって、彼の翼から四発の散弾をほじくり出し 、その傷口を
石炭酸で洗って、ヨードフォルムをふりかけておいたのです。六発の散弾が
翼の肉の裏側から入り込んで、そのうちの二発は肉を裏から表に突きぬけて
いました。多分この鳥を狙い撃ちにした男は、雁が空に舞いあがったところ
を見て、銃の引き金を引いたのでしょう。そして弾丸にあたった雁は、空か
ら斜めに落ちて来て、負傷の痛手が治るまで水草のなかで休んでいるつもり
でいたのでしょう。ちょうどそこへ私が通りかかったわけで 、そのとき私は、
言葉に言い現わせないほどくったくした気持で沼池の岸を散歩していたので
す。 •

私は、縛ったままの雁を部屋のなかに置き去りにして、隣の部屋で石炭酸
のにおいのする手を洗ったり、雁に与える餌をつくったりしていました。け
れど私自身はたいへん疲れてしまっているのに気がついて、私は火鉢に凭れ
て眠ることにしました。こういう眠りというものは屡々意外に長い居眠りと
なってしまうものです。そして夜更けになってからでなくては 、目がさめな
いというようなことがあります。

私は真夜中ごろになって目がさめました。けたたましい雁の鳴声によって
目をさましたのです。隣の部屋で傷ついた雁は甲高く且つ短く三度ほど鳴き
ました。足音を忍ばせて襖の隙間からのぞいてみると、雁は脚や翼を縛られ
たまま、五燭の電燈の方に首をさしのべて、もう一度鳴いてみたいような様
子をしていました。恐らくこの負傷した渡鳥は 、電燈の明かりを夜更けの月
と見違えたのでしょう。

雁の傷がすっかり治ると、私はこの鳥の両方の翼を羽根だけ短く切って、
庭で放飼いにすることにしました。この鳥は非常に人なつこい鳥らしく、私
が外出するときには門のところまで私の後をつけて来たり、夜更けになると
家のまわりを歩き廻ったりして、恰も飼犬がその飼主に仕えるのと少しも変
わりませんでした。私はこの鳥にサワンという名前をつけ 、野道や沼池への
散歩に連れて出かけたりしたのです 。

「サワン「サワン!」
サワンは眠そうな足どりで私の後について来ます 。
沼池は、すでに初夏の装いをしていました。その岸には私の背丈と殆ど同
じ高さに細い茎の青草が繁り、水面には多くの水草の広い葉や純白の花が成
育していました。サワンはどうやらこの沼池を好んだらしいのです。彼は水
に滑り込むと、短い翼で羽ばたきしたり尾を振ったりして、彼がこの水浴に

270日语综合教程第五册

倦きてしまわなければ、私がいくら呼んでも水から上がって来ませんでした 。
そういうとき、私は叢に寝ころんで常に私自身の考えに耽るのが慣わしであ
りました。なるほど私はサワンの水浴を見守るために沼池へ出かけたのでは
なく、私のくったくした思想を追いはらうために散歩に出かけたのです 。

サワンは水面に浮かぶことを好んだのみでなく 、水に潜ることをも好みま
した。時としては水中にひそんでいることさえもありました。しかし幸いに
してこの沼池の水はよく澄んでいたので、私はサワンが水中で餌を漁ったり
している姿を見ることができました。

雁という鳥は、元来、昼間の光線や太陽熱を好まないものらしいのです。私
がサワンをうつちやっておく時には、彼は終日、廊下の下にうずくまって昼
寝ばかりする習性でした。けれど夜は(私は庭の木戸を閉じて彼が逃亡しない
仕掛けにしておいたのですが)サワンは垣根を破ろうとしたり木戸を跳び越え
ようとしたりして、なかなか元気盛んでした。

やがて夏が過ぎ、秋になって、或る日のことです。それは木枯のはげしく
吹き去った夜更けのことでした。私は寝間着の上にドテラを羽織って、その
日の午後に洗濯して乾ききらなかった足袋をよく乾かそうとして、火鉢の炭
火で足袋をあぶっていました。こんな場合には誰しも自分自身だけの考えに
耽ったり、ふところ手をしたりして、明日の朝は早く起きてやろうなぞと考
えがちなものです。そうして炭火であぶっている足袋が焦げくさくなってい
るのに気がつかないことさえあります……そのとき私は、サワンの甲高い鳴
き声を聞きました。その鳴き声は夜更けの静けさを物々しい騒がしさに転じ
させ、たしかに戸外では、何かサワンの神経を興奮させる事件が起こったも
のに違いありません。

私は窓を開いてみました。
「サワン!大きな声で鳴くな。」
けれどサワンの悲鳴は止みませんでした。窓の外の木立はまだ梢にそれぞ
れ雨滴をためて、幹に手を触れれば幾百もの露が一時に降りそそいだであり
ましょう。けれど、すでによく晴れ渡った月夜でありました 。
私は窓を越えて外に出てみました。するとサワンは、私の家の屋根の頂上
に立って、その長い首を空に高くさし伸べ 、彼としてはできるかぎり大きな
声で鳴いていたのです。彼が首をさし伸ばしている方角の空には 、月が——
夜更けになって登る月の慣わしとして 、赤くよごれたいびつな月が光ってい
ました。そうして月の左側から右側の方向に向って 、夜空に高く三羽の雁が
飛び去っているところでした。私は気がつきました。この三羽の雁とサワン
は、空の高いところと屋根の上とで、互に声に力を込めて鳴き交していたの
であります。サワンが譬えば声を三つに断って鳴くと 、三羽の雁のいずれか
が声を三つに断って鳴き、彼等は何かを話し合っていたのに違いありません。

271第3課屋根の上のサワン

察するところ、サワンは三羽の僚友達にむかって、
「私を一しょに連れて行ってくれ!」

と叫んでいたのでありましょう。
私はサワンが逃げ出すのを心配して、彼の鳴き声に言葉をさしはさみまし

た。
「サワン!屋根から降りて来い!」
サワンの態度はいつもと異って、彼は私の言いつけを無視して三羽の雁に

鳴きすがるばかりです。私は口笛を吹いて呼んでみたり両手で手招きしたり
していましたが、ついたまらなくなって、棒きれで庭木の枝をたたいて阪鳴
らなければならなくなりました。

「サワン!お前、そんな高いところへ登って、危険だよ。早く降りて来い。
こら、お前どうしても降りて来ないのか!」

けれどサワンは、三羽の僚友達の姿と鳴声とが全く消え去ってしまうまで
は、屋根の頂上から降りようとはしなかったのです 。若しこのときのサワン
の有様を眺める人があるならば、おそらく次のような場面を心に描くことが
できるでしょう。ーー遠い離れ島に漂流した老人の哲学者が、十年ぶりに漸
く沖を通りすがった船を見つけた時の有様—— を人々は屋根の上のサワンの
姿に見ることができたでしょう。

サワンが再び屋根などに跳び上がらないようにするためには 、彼の脚を紐
で結んで紐の一端を柱にく くりつけておかなければならない筈です。けれど
私はそういう手荒らなことを遠慮しました。彼に対する私の愛着を裏切って、
彼が遠いところに逃げ去ろうとはまるで信じられなかったからです 。私は彼
の羽根を、それ以上に短くすれば傷つくほど彼の翼の羽根を短く切っていた
のです。あまり彼を苛酷にとりあつかうことを私は好みませんでした 。

ただ私は翌日になってから、サワンを叱りつけただけでした 。
「サワン!お前、逃げたりなんかしないだろうな 。そんな薄情なことは止し
てくれ。」
私はサワンに、彼が三日かかっても食べきれないほど多量な餌を与えまし
た。

サワンは、屋根に登って必ず甲高い声で鳴 夜空を行く雁
く習慣を覚えました。それは月の明るい夜に
かぎって、そして夜更けにかぎられていまし
た。そういう時に、私は机に肘をついたまま、
または夜更けの寝床のなかで、サワンの鳴き
声に答えるところの夜空を行く雁の声に耳を
傾けるのでありました。その声というのは、よ

272日语综合教程第五册

ほど注意しなければ聞くことができないほど、そんなに微かな雁の遠音です。
それは聞きようによっては、夜更けそれ自体が孤独のためにうち負かされても
らす溜息かとも思われて、若しそうだとすればサワンは夜更けの溜息と話をし
ていたわけでありましょう。

その夜は、サワンがいつもより更に甲高く鳴きました。殆ど号泣に近かつ
たくらいです。けれど私は、彼が屋根に登った時にかぎって私のいいつけを
守らないことを知っていたので、外に出てみようとはしませんでした。机の
前に坐ってみたり、早く彼の鳴き声が止んでくれればいいと願ったり、明日
からは彼の羽根を切らないことにして出発の自由を与えてやらなくてはなる
まいなどと考えたりしていたのです。そうして私は寝床に入ってからも、譬
えば物凄い風雨の音を聞くまいとする幼児が眠る時のように、蒲団を額のと
ころまでかぶって眠ろうと努力しました。それ故サワンの号泣は最早きこえ
なくなりましたが、サワンが屋根の頂上に立って空を仰いで鳴いている姿は、
私の心のなかから消え去りはしなかったのです。そこで私の想像のなかに現
れたサワンも甲高く鳴き叫んで、実際に私を困らせてしまったのであります 。

私は決心しました。明日の朝になったらサワンの翼に羽根の早く生じる薬
品を塗ってやろう。新鮮な羽根は、彼の好みのままの空高くへ彼を飛翔させ
るでしょう。万一にも私に古風な趣味があるならば、彼の脚にブリキぎれの
指輪をはめてやってもいい。そのブリキぎれには「サワンよ、月明の空を、高
く楽しく飛べよ」という文字を小刀で刻りつけてもいい。

翌日、私はサワンの姿が見えないのに気がつきました 。
「サワン、出て来い!」
私は狼狽しました。廊下の下にも屋根の上にも、どこにもいないのです。そ
してトタンの廂の上には、一本の胸毛が、明らかにサワンの胸毛であったの
ですが、トタンの継目にささって朝の微風にそよいでいます。私は急いで沼
池へも行ってみました。
そこにもサワンがいないらしい気配でした 。岸に生えている背の高い草は、
その茎の尖端にすでに穂状花序の実をつけて、私の肩や帽子に、綿毛の種子
が散りそそいだのであります。
「サワン、サワンはいないか。いるならば、出て来てくれ!どうか頼む、出
て来い!」
水底には植物の朽ちた葉が沈んでいて 、サワンは決してここにもいないこ
とが判明しました。おそらく彼は、彼の僚友達の翼に抱えられて、彼の季節
むきの旅行に出て行ってしまったのでありましょう。

(『日本短編文学全集36』筑摩書房より。漢字表記の改正あり)

第io課屋根の上のサワン273

Iづ主釈

❶ 井伏鱒二(いぶせ ますじ)(1898〜1993)
昭和時代の小説家。明治31年2月15日広島生まれ。昭和4(1929)年の『山椒魚』などで文壇にみ
とめられ、昭和12年『ジョン万次郎漂流記』で直木賞受賞。ユーモアとペーソスをにじませる独
自の文学を形成。昭和41年『黒い雨』で野間文芸賞受賞。同年文化勲章を授与される。平成5年
7月10日死去。95歳。早大中退。本名は満寿二。作品はほかに『本日休診』『漂民宇三郎』『荻窪
風土記』など。

❷ドテラ 和式棉袍
綿を入れた広袖の大形の着物。

、新しい言葉

気まぐれ(き紛れ) [名・形動] 考えや行動が一定しないで、その時々

狩猟(しゅりょう) の気分や思いつきで変わること。/心
悪戯(いたずら)
鉄砲うち(てっぽう撃ち) 情浮躁;•忽三忽四,反复无常,任性。
狙レ、撃ち(ねらいうち)
沼池(ぬまいけ) [名・自サ] 銃,網•縄などで、野生の鳥やけもの
雁(がん)
血潮(ちしお) をとらえること。•狩り。/狩猎,打猎。
うるおす(潤す)
[名・形動・自サ] ふざけて、ちょっとよくないことをす
忍ぶ(しのぶ)
ること。/淘气,恶作剧。
拾いあげる(ひろい上げる)
渡鳥(わたりどり) [名] 鉄砲を撃つ人。猟人/放枪(的人)。
羽毛(うもう)
[名] ある特定のものを、よくねらいをつけ

て撃つこと。/瞄准射击。

[名] 沼池にある池。/池沼。

[名] がんかも科の水鳥。渡り鳥。/雁,大雁。

[名「 体から流れ出る血。また、体の中の

血。/涌出的血;鲜血。

[他五] ①ほどよいしめりけをあたえる。/润,

弄湿。②利益・恩恵をあたえる。/使

受惠。

[動五] ①人に知られないように、ひそかに行

動する。/隐蔽,躲避。②つらいこと

をじっと我慢する。/忍耐,忍受,容忍。

[他ー] 落ちているものを取り上げる。/拾

起来。

[名] 動物。繁殖地と越冬地とのあいだを季

節によって移動する鳥。/候鸟。

[名] 鳥のふわふわしたはね。/羽毛,羽翎,

绒毛。

274日语综合教程第五册

思い屈する(おもいくっする) [自サ] おもいよわる。憂鬱になる。/(想得变)忧
慰める(なぐさめる)
[他ー] 郁,(想得变)消沉。
五燭(ごしょく) 悲しんだり、苦しんだり、寂しがったりして
とりかかる(取り掛かる) いる人をやさしくいたわって、元気を出す
石炭酸(せきたんさん)
[名]. ようにする。/安慰,宽慰;使快意,使舒畅。
ヨードフォルム(Jodoform)
足蹴(あしげ) [自五] 5燭光の意で、「燭光」は旧時の光の明るさ
手荒ら(てあら) [名]
縛る(しばる) の単位。/5支光。

暴れる(あばれる) やりはじめる。/着手,开始。
胴体(どうたい) コール・タールから得られた芳香族化合物。

股・胯(また) 臭気のある無色の結晶で、水溶液は消毒な
叱りつける(しかり付ける)
夜更け(よふけ) どに使う。有毒。合成樹脂やナイロン・染
出血(しゅっけつ)
料・医薬などの原料になる。/石灰酸,苯酚。
塵(ちり) [名] 黄色に結晶性粉末で、消毒"止血などに使

散弾(さんだん) う。/碘仿,三碘甲烷,黄碘。

[名] ①足でけること。/踢。②相手にひどいしう
ちをすること。/无情对待,打击。

[形動] 手荒いこと。乱暴なこと。/蛮横,野蛮,粗

野,粗暴。

[他五] ①ものが動かないように、なわやひもをま

Zきつけてしめる。/绑捆。②自由を奪う。

.[自一] 束缚,拘束,限制。
人や動物が、乱暴な振るまいをする。思う存
分自分がしたいようにふるまう。/闹,乱闹。

[名] ①動物の足や頭をのぞいた部分。/躯体,躯
干。②附属物をのぞいた、本体の部分。/机

身,机腹。

Z[名] 両足のわかれでるところ。足のつけね。

胯,胯下,裤裆。

[自ー], 厳しく強くしかる。/斥责,狠狠申斥。
[名] 夜もだいぶ遅くなったころ。/深夜。
[名・自サ] ①けがで血管が切れるなどして、血が流れ
出ること。/出血。②人員や金銭などに、犠

牲や損失があること。/血本,高成本。

[名] ①こまかい土や砂。また、目に見えないほ
どの小さなごみ。/尘土。②俗世間のきたな

いことやいやなこと。/垃圾;肮脏,污垢。

[名] 破裂すると小さなたまが四方にとびちっ
て、損害を大きくするしかけになっている

弾丸。ばらだま。/小球形的子弹。铅沙子。

第io課屋根の上のサワン275

突きぬける(つき抜ける) [自ー] ものの中を勢いよく通って向こう側へい
ほじくり出す(穿りだす) [他五] <〇 /穿透,扌し透,穿过。
銃(じゅう) [名] ①穿って取り出す。/扌を出,抠出。②知られ
引き金(ひきがね) [名] たくないことを、あばきたてる。/翻出,挑剔。
弾丸を発射する小型の武器。小銃や機関銃、
痛手(いたで) [名]. ピストルなど。/枪,步枪,手枪,机枪。
くったく(屈託) ①銃やピストルで、指で引いてたまを発射さ
せる装置。/扳机。②比喩的に、物事が引き
火鉢(ひばち)
凭れる(もたれる) Z起こされるきっかけ 诱因。

見違える(みちがえる) ①重大な損害。/沉重的打击。②体や心に受
放し飼い(はなしがい) けるひどい傷。/惨重的损失;重伤,重创。
人なつこい(ひと懐こい)
仕える(つかえる) [名・自サ] ①気にして、いろいろ心配すること。何かを
気にしてくよくよすること。/担心,发愁;操
野道(のみち) 心。②退屈や疲労などで精気を失っているこ
初夏(しょか)
装い(よそおい) と。/厌倦,无聊。

純白(じゅんぱく) [名] ' 灰を入れて、そこに炭火などをおき、手をあ
成育(せいいく) たためたり湯を沸かしたりする痼具。/火盆。
滑り込む(すべ&こむ)
[自ー] ①ささえとなったようなものに、よりかか
る。/凭靠。②食べたものがよく消化されな

[他ー] いで、お腹の中にたまっているような感じに
[名] なる。/积食,存食,不消化。

Z見たときにほかのものだと思ってしまう。

看错,焕然一新。
家畜をつないだり、さくの中に入れたりしな
いで、広いところで飼うこと。/放养,放牧。

[形] 人になつきやすく、すぐに親しくなるよう
[自ー] す。/容易和人亲近,不认生,和蔼可亲 。
①偉い人のそばにいて、忠実にさまざまな用
を足す。/服侍,待奉,侍候。②役所などに

っとめる。/做官,当官。

[名] 野原の中を通る道。/原野(田间)的道路。

5 6[名] 夏の初め。• 、 月ごろ。/初夏,夏初,孟夏。

[名] ①外観を飾り整えること。また、そうしたも
の。/装束,服装。②したく。準備。/梳妆

打扮。

[名・形動] まっしろ。/纯白。

[名•自他サ] 育つこと。また、育てること。/生长,繁育,

生养。

[自五] ①すべりながら入る。/滑进,溜进。②野球

で、走者が、相手のタッチをさけるために、す

)日语综合教程第五册

水浴(すいよく) [名] べりながらベースに入る。ハ'骨进(垒垫)。
叢・草叢(くさむら) [名] 水を浴びること。/凉水浴。
追いはらう(おい払う) [他五] 草の茂ったところ。/草丛,野草繁茂的地方。
追って遠ざける。おっぱらう。邪魔なものを
潜る(もぐる) [自五] 追い立ててその場から退かせる。追放する/轰
走,赶走,驱逐。
漁る(あさる) [他五] ①水の中深く入り込む。/潜水。②見えないよう
に、ものの下や中に入り込む。/躲入,藏入,钻进。
うっちやる(打つ遣る・ [他五] 手に入れようとして、あちこち探し回る。/寻找
打つ棄る) 食物;寻求,猎取。
①投げ捨てる。/扔掉,抛弃。②(しなければな
習性(しゅうせい) [名] らないことを)手をつけずにおく。ほうってお
<〇また相手にならないでおく。/扔开,不管。
仕掛(しかけ) [名] ③相撲で、寄ってくる相手を土俵際で身をひ
ねって逆に外へ倒す。/身子后仰,把;逼近摔跤场
木戸(きど) [名] 地边的对方仍出自己身后的界外。④(転じて)物事
の最後のところで形勢を逆転する。/最后一刻转
木枯・木枯し(こがらし) [名] 败为胜。
①習慣が身について、性質のようになったもの。/
ドテラ(襦袍) [名] 习癖,习惯。②動物が、それぞれ生まれつきをもつ
ている、特徴のある行動パターン。/成性。
羽織る(はおる) [他五] ①装置。からくり。/结构,装置;手法,招数。②
足袋(たび) [名] 行動に出ること。攻勢をかけること。/开始,着
手。
炭火(すみび) .[名] ①庭などにある、木でできた簡単な開き戸。/栅

门,栅栏门。②すもうや芝居などの、興行場の出
入り口。/入口,进口。

Z晩秋から初冬にかけて吹き荒れる冷たい風。

寒风,秋风。
普通の着物よりやや長くて大き目に仕立て、綿

を入れた広袖の着物。防寒具または寝具として
用いる。/(长宽袖的)棉和服,和式棉袍。
肩の後ろから覆うように、無造作に着る。/披上,
罩上。
和服を着るときに足にはく、つま先が二つにわ
かれたふくろ形の衣料品。布などでつくる。/日
本式短布袜。
炭でおこした火。/炭火。

277第10課屋根の上のサワン

あぶる(炙る) [他五] 火の近くにかざして焼いたり、あたためたり、

わかしたりする。/烤,晒,烤干,烘干。

ふところ手(懐で) [名] ①手を懐へ入れていること。/两手揣在怀里。②

人に任せて自分は何もしないこと。/游手好闲。

静けさ(しずけさ) [名] 静かなこと。静かさの程度。/肃静,沉静,清静。

物々しい(ものものしい)[形] おおげさに思われるぐらいに厳しくて、はりっ

めたような感じだ。/森严的。

騒がしい(さわがしい) [形] ①大きな物音や人声がして、うるさい。/吵闹,

嘈杂,喧闹。②大きな事件が起こったりして、平

静でない。/骚然,不稳,议论纷纷。

転じる(てんじる) [自他一] 方向や状態などが変わる。また、変える。/转

变,转换。

戸外(こがい) [名] 家の外。/户外,屋外,室外。

雨滴(うてき) [名] 雨のしずく。雨だれ。/雨滴,雨点。

降りそそぐ(ふり注ぐ) [自五] 雨や日光などが降りかかる。そそぐように降

る。/倾盆大雨。照射。

いびつ(歪) [形動] ゆがんでいる。/变形,压扁,走型。

鳴き交す(なきかわす) [自五] 鳥や虫や鹿などが互いに鳴く。/相互对叫。

察する(さっする) [他五] ①状況、雰囲気から事情をそれと知る。推し

量って知る。/推察,揣测,想像。②思いやる。

同情する。/谅察,体谅。③詳しく調べる。観

察する。/观察;察知,了解到。

僚友(りょうゆう) [名] 同じ職場などで、仕事をともにしている友

人。/同事。

さしはさむ(差し挟む) [他五] ①他人の話などを遮って、違ったことを言った

りする。/插嘴,插话。②疑いや不満を心の中

にもつ。/心里怀着,怀有。

鳴(泣)きすがる(なき縄る)[自五] 鳴(泣)きながらすがりつく。/哀求,纠缠。

手招き(てまねき) [名・他サ] 手のひらを下に向けて手首から先を上下に動か
し、そばにくるように合図すること。/招手,用

手招呼。

棒切れ(ぼうきれ) [名] 棒のきれはし。/棍子头,半截木棒。

離れ島(はなれじま) [名] 陸から遠く離れた島。孤島。'/孤岛。

沖(おき) [名] 海や湖で、岸から遠く離れたところ。/海上,
’洋面。

紐(ひも) [名] ①糸より太く、網や縄より細い、長い線状の繊
維製品や紙、革など。ものをしばったりつない
だりするもの。/细绳,带子。②そのことの裏
側にあるよくない条件。/条件。③女を働かせ

278 日语综合教程第五册

て金銭をみつがせている情夫。/情夫。

一端(いったん) [名] ①一方のはし。/一端,ー头。②全体の中の一

部。/一部分。

く くりつける(括り付ける) [他ー] ひもなどで、しばって離れないようにする。/绑

上,扌困上。

愛着(あいちやく) [名・自サ]いつまでも心がひかれ、はなれがたく感じるこ

と。/留恋,依依难舍。

裏切る(うらぎる) [他五] ①人の信頼や期待していたことと、反対の結果

を出す。/辜负,违背。②味方にそむき、敵に

つく。/背叛,通敌,倒戈。

苛酷・過酷(かこく) [形動] まったく人情が感じられないほど、苦しめかた
がひどい。ひどすぎるようす。/严酷,苛刻,

残酷。

とりあつかう(取り扱う) [他五] ①仕事として処理する。/处理,办理,经办。②

道具や機械などを、使用したり操作したりす

る。/操作,操纵,使用。③人の立場を見定め

て、それにあった対応をする。/对待,接待,

待遇。

薄情(はくじょう) [名・形動]人情・愛情に乏しいこと。また、他人に対する

思いやりの気持ちがないこと。/薄情,薄倖,薄

情寡意。

肘(ひじ) [名] ①上腕と前腕とをつなく関節。また、その折れ

曲がる外側の部分。/肘,胳膊肘子。②①の形

にしたもの。/肘形物。

寝床(ねどこ) [名] 寝るために敷いたふとんや、ベッド。/睡铺,

被窝。

遠音(とおね) [名] 遠くの音。遠方に聞こえる音。/远处的声音。

うち負かす(打ちまかす) [他五] 打ち合って相手を負かす。/打败,战胜。

号泣(ごうきゅう) [名・自サ]大声をあげて泣くこと。/号啕大哭。

飛翔(ひしょう) [名・自サ]空高くとびめぐること。/飞翔。

古風(こふう) [名•形動]考え方やもののようす、やりかたなどが、現代

的でなく、古めかしいこと。/古式,旧式,老

派作风。

ブリキ(blik) [名] 錫めっきした薄い鉄板。トタンより耐食性はあ

るが、鉄が露出すると腐食しやすい。/马ロ铁,

白铁皮。

月明(げつめい) [名] 月の光(によるあかり)。/月光。

狼狽(ろうばい) [名・自サ]思いがけないことに遭ったり、ぐあいの悪いと

第io課 屋根の上のサワン279

廂(ひさし) [名] ころを見つけられたりして、あわてふためくこ
と。/狼狈,惊惶失措。
胸毛(むなげ) [名] ①屋根の軒先から先に差し出した部分。および
継目(つぎめ) [名] その下。/房檐,房檐下。②帽子のふちから額
の上に突き出た部分。/帽檐,帽舌。
微風(そよかぜ) [名] 胸に生えている毛。/胸部的长毛,胸毛。
そよぐ(戦ぐ) [自五] 二つのものをつなぎ合わせたさかいめの部
分。/接缝,接头。
穂状花序(すいじょうか [名] 静かに吹く風。/微风,和风。
じょ) [自ー] 少しの風に草や木の葉などがわずかにゆれ
る。/沙沙作响,微微动摇。
朽ちる(くちる) 長い花軸に柄のない花が穂状につくもの。/穗
头的花序。
①(木、草、木材などが)くさる。腐って役に立
たなくなる。/腐烂,腐朽,腐坏。②(転じて名
声などが)おとろえ滅びる。むなしくなる。/(人
オ等)默默无闻而终,埋没一生。

'言葉の学習・

そう さもなければ 要不是这样…,否则…,要不然的话… J

接続詞。そのようでなかったら、次に述べる事態が成立する、という意味を
表すものである。「そうでなければ」の古い言い方である。「さもないと」と同
様。

❶ とりあえず彼を逮捕することにした。さもなければ彼はまた事件を起こすお
それがあるから。(我们决定先逮捕他。否则他可能还会肇事。)

❷ 明日の会議に間に合うようにしようとすれば少し高くついても明朝、一番の
新幹線で行くべきだ。さもなければ、会議に遅れるかもしれない。(要想赶上
明天的会议,即便贵一点,也得赶坐明天早上的头班新干线去。否则或许会迟
到的。)

〇戦争で負けた国は、当時、賠償として土地や金銀を戦勝国に渡さなければな
らなかった。さもなければ再度攻撃されたことだろう。(当时在战争屮战败的
国家必须用土地和金^I赔偿给战胜国。否则可能会再次遭受攻击。)

❹ 医師から禁煙の指示がでているのなら、それを守るべきだよ。さもなければ
病状はまた悪くなるかもしれない。(既然医生让你不要抽烟,你就应该严守医
生的指示。否则病情可能又会恶化的。)

280日语综合教程第五册

既9〜でもって 以…,用… j

書き言葉で、多くは抽象的な名詞や動作性の名詞について問題解決の手段や
方法、また状態、資格、原因、限界などを表す。

❶ どの医師にかかってもかなりの難病だったが、その漢方医は1本の針でもっ
てこの難病を1年の歳月をかけて、根気よく治した。(这是ー种无论什么医生
都难治愈的病。可是那位老中医却用1根银针坚持了1年的时间,治好了这个
疑难病症。)

❷ 在学3年の間、親は彼のために大変苦労して高い授業料を稼いだが、3年後、
彼は親の期待に背かず、学校ーという成績でもって高校を卒業して一流大学
に進学した。(在校3年间,父母含辛茹苦地为他赚取昂贵的学费。3年后,他
没有辜负父母的期望,以全校第一的成绩毕业于高中,并考上了一流大学。)

❸ 銀行頭取の資格でもって会議に臨んでいた彼には、昔のいたずらだった面影
が全く見られなかった。(他以行长的资格出席了会议,从他身上已经完全看不
到昔日的那种淘气模样了。)’

.❹ あそこはきれいな観光地だったが、この間の津波でもって観光施設がだいぶ
崩れた。(那里原来是个漂亮的观光地,就因为前些日子的海啸,许多观光设施
毁于一旦。)

と△〜でいる一直,依然,仍 !

名詞や形容動詞の語幹について、その状態が続いているという意味を表す。

❶ あの村の人はみな長寿で、80歳を越えても元気でいる人が大勢いる」那个
村里的人都很长寿,80岁以上还很健康的大有人在。)

❷ あんな大病をした後なのに、未だに健康でいるなんて、ほんとうに奇跡だ。
(患了那么严重的病,现在却依然那么健康,真是个奇迹。)

❸あの子ったら、本当に困ったもんだ。あんなに先生にひどく言われても平気
でいる。(那孩子真拿他没办法,老师那么严厉地批评他,他却依然无动于衷。)

❹ ずっと独身でいてもかまわないが、ただこの一人暮らしの寂しさをなんとか
しないと、親は心配するだろう。(一直独身也没关系,只是1个人生活太寂寞,
这点必须想想办法,否则父亲会担心的。)

〜てからでなくては〜ない 不…之后是不会… «

動詞の連用形につづいて、前項は後項実現に必ず満たさなければならない条
件を表す文型である。「〜てからでなければ〜ない」「〜てからでないと〜ない」
という形も用いられる。

io第 課 屋根の上のサワン 281

❶ 一度子供を産んでからでなくては、子育ての苦労がどんなものか真の理解は
でき・と思う。(没有生过孩子的人,是无法真正理解抚养孩子是多么辛苦的。)

❷ 一度勤めなどで競争に曝されてからでなければ、競争の中で戦う人間の苦労
はわから也(没有就过职,参加过激烈竞争的人,是不能理解在竞争中奋斗
的艰辛的。)

❸ 親の有り難みは、自分も親になってからでなければなかなか分らないもの
だ。(自己不当父母是不会真正体会到父母之恩德的。)

❹ 今度も子供がダイエットに失敗してからでないと、彼女は子供に対する自分
の普段の甘やかしを反省しないだろう。(要不是这次孩子减肥失败,她还不会
反省自己平时对孩子的过分宠爱。)

匕をrどうもら 仿傀,多辛,天晚;顶子テ「強香,好蓉易オ!

副詞。よく後ろに「らしい」「ようだ」「そうだ」がついて文型を構成し、確
実ではないが、どうもそのようだという話し手の不確実な推量の気持ちを表す
ほか、また、「十分で完全ではないが、なんとか。どうにか。」という話し手の
評価の気持ちを表す場合には、文末に動詞の過去形を伴うのが一般である。ま
た「どうやらこうやら」と、「どうやら」を強めた言い方もある。

❶ 隣の伯父さんは、毎朝遅くまで寝ていて、夜も早く帰宅している。と,Iやら
失業したようだ。(隔壁的叔叔每天起得彳艮晚,晚上又很早回家,多半是失业了
吧。)

❷ この本の編集は4年近くかかったが、どうやら穽成までこぎつけたc (编写这・
本书花了将近4年的时间,好歹总算完成了。)

0 このごろ、雨の日が毎日続いて気持ち悪かったが、今日はどうやら空が晴れ
てくれた。(最近每天下雨,心情很不好。今天好容易天放晴了。)

❹ 夏休みもそろそろ終わりに近づいたが、心配していたこの仕事もどうやらこ
うやら新学期に間に合った(暑假快结束了,原来十分担心的这项工作也终算
赶上新学期开学了。)

上冬時として(は)(ときとして) 偶尔,有时…;没有…的时候)

「時として」は副詞で、「場合によっては、時には、まれには」と、いつもそ
うとは限らないという意味を表す。また、下に否定の語を伴い、「〜ときとして
〜ない」の形で「少しの間さえもない」「ひとときもない」という意味を表す古
い表現がある。現代日本語では「いっときとしても〜ない」になるが、その意
味で用いる場合は「〜ときとして」の後に「は」をつけてはいけない。

❶ あの人はこれまでずっとしっかりしていたが、最近はどうしたことだろう
か、時としては、出勤時間に遅れたりすることさえある。(那个人ー贯认真持

282日语综合教程第五册

重,可是最近不知怎么回事,有时甚至上班也会迟到 。)
❷ この国は治安が悪くなってきた。時として、通り魔のような非常に悪質な犯

罪もある。(这个国家现在治安不太好,有时还有“马路恶魔”这种性质十分恶
劣的犯罪。)
❸ 日本はデフレ現象が出始めている。時としては高価な宝石類まで破格で売り
出されることさえもあると聞いている。(日本开始出现通货紧缩现象。听说有
时甚至连昂贵的宝石都在以血本出售。)
❹ この仕事を引き受けて以来、もう4年になるが、その間時として心が安らか
になる日はなかった,(自接受这项工作以来已经有4个年头了,期间没有一天
心里平静过。)
❺ 息子がタクシー運転手になってから、私は時としてん、配しない日はない。(自
从儿子当上出租车驾驶员后,我没有一刻不为他担心的 。)

&ー裁享尊あ车を詞—衆二 ]

「もの」で構成された慣用的な表現で、この形でものごとの量が多いことを
以って物事の程度の甚だしさを強調するのに用いる。

❶ 丘の上の樟の大木の梢には上がったばかりの雨の滴が、射し込みはじめた日
差しに幾百もの電飾をいっせいに点したようにキラキラ輝いて、えもいわれ
ぬ美しさを見せている。(雨停后,山丘上樟树稍上的雨滴,在刚刚升起的太阳
的照射下,如同数百盏彩灯同时点亮,闪闪发光,真是ー副妙不可言的美景 。)

❷ 今一番人気のアイドルのコンサートには何千人もの若者が押し寄せ、会場内
はむせ返るような熱気にあふれていた。(这场当今最走红的歌手的演唱会吸引
了成千上万的年轻人,场内热气腾腾,让人喘不过气来。)

❸ 今度の北海道旅行で、私は行く先々の景色に魅せられ、200枚もの写真を
撮ってきた。(这次北海道之^艮,我被所到之处的景色所吸引,拍了 200多张照
片。)

❹ 今回のSARSは思わぬ広がりをみせ、ところによっては100人もの感染者を
出したそうだ。(这次非典传染范围之广令人难以预料,据说有的地方被感染的
人甚至多达100人以上。)

泌-よほど J

副詞。次のような用法がある。

1.普通の程度、数量を越えていることを漠然と言う語。相当。かなり。だいぶと・

いう意味を表す。事柄の程度を推量して言う場合に用いる語である。話しことば
で強めて言う場合には「よっぽど」になる。また、よく「よほど〜ば」や「〜ほ

第io課屋根の上のサワン283

うがよほど」の形で用いられる。(很,颇,相当,在很大程度上)

❶ よほど困らなければ、決して頼みに来ない性格の持ち主だから、彼に助け舟
を出してあげよう。(他是个不到十分困难决不会开口求救的人,我们大家帮帮
他吧。)

❷ こんな長い間入院生活をしたんだから、よほど大病にかかっただろうと思っ
たら、いや、そのほうが手伝いさんも要らないので、経済的だという説明を
聞いてびっくりした。(我想他住院住了那么久,一定是得了大病。可是当我听
说他是因为住院就不需要家政服务员,可以减轻经济负担,所以オ住那么久
时,我大吃ー惊。)

❸ こんなきつい仕事でもやっているところを見ると、彼はよ昼ど生活に困って
いるらしい。(从他在从事这么辛苦的工作这点来看,他好像生活得非常困难。)

❹ 親に暴力を振るう子どもと一緒に暮らすより、老人ホームに入って暮らすほ
うがよほど気楽で自由だ。(与其跟向父母施加暴力的孩子住在ー起生活,不如
进养老院生活来的轻松自由。)

2差し迫った気持ちになり、もう少しでそうするところであるようすを表す。よ
くよく。思い切って。よく「よほど〜動詞未然形よう」の形で用いられる。文
末に「と思った」を伴うものが多く、後に逆接の内容のものが続く場合が一般
的である。(很想,差一点就)

❶ 彼を前にして、自分の気持ちをよほど打ち明けようかと思ったが、それを思
いとどまった。(在他面前我差一点把自己的心思全讲出来,可是我还是打消了
这个念头。)

❷ お子さんがこのままでは留年になりかねないよとよほど注意しようと思った
が、彼の見栄を張るところを見るとやはりやめた。(其实我很想提醒他,如果
他的孩子没有改变的话有可能留级,可是当我看到他彳艮虚荣的一面时便放弃了
这个念头。)

❸ 誤解されてよほど弁解しようと思ったが、済んだことだし、いまさら弁解し
ても仕方がないのでやめた。(我遭到了大家的误解了,很想辩解一番。可是事
情都已经过去了,辩解了也没有用,所以就没有说。)

❹ あの日の宴会でみんなの前でよほど恥をかかせてやろうと思ったが、みんな
楽しんでいるところを見てそれを我慢した。(在那天的宴会上我真想当众出他
的丑,可是我看到大家都玩得^I高兴,便忍住了。)

w疝 〜ようによっては 不同的做法,(会有不同的结果)

動詞連用形について、やり方や見方によって、違う結果が出る場合があると
いう意味を表す。

284日语综合教程第五册

❶ こういう問題については言いようによっては角が立つので、用心して発言し
た方がいいですよ。(这种问题如讲得不妥当还会引起争执,所以发言时还是谨
慎些好。)

❷ 問題の取りようによっては、犯罪になるおそれも出てくるので、よほど慎重
に議論しないとね。(根据对问题的不同看法,不能说完全没有犯罪的可能,所
以必须慎重讨论。)

❸ このようなテーマは書きようによっては、たいへんおもしろい小説になりう
る。(采用不同的写法,这个题目还可能写成非常有趣的小说 。)

❹ ピカソの絵は見ようによっては、とても幼稚に見えたり、理性の極みに見え
たり、奇人も、貴人も紙一重ということだね。(对于毕加索的画不同人有不同
的看法,有的人觉得它幼稚,有的人把它看成是极度的理智。所谓奇人、贵人
也只是ー纸之差啊!)

上二〉置き去り•放置する•ほったらかす

7.置き去り (おきざり)仍下,抛开,丢在后头,遗弃

名詞。人や生き物をあとに残したまま行ってしまうことを表す。よく 「置き
去りにする」の形で用いられる。

❶大学入試の直前、予備校ではみな血眼になって講師の話に耳を傾けていた。
ここで置き去りにされると、後からはとてもついて行けない正念場だった。
(正值高考前タ,复考班的学生瞪大了眼睛专心地听老师讲课。在这关键时刻,
要是掉队的话,那就再也跟不上了。)

❷真冬の雪が降るホームに置き去りにされたので、彼女は凍えて病気になって
しまったのだろうか。(也许是因为她被拉在隆冬下着大雪的站台上,结果オ冻
得生病的吧。)

❸ 第二次大戦後、やむをえず子供を中国に残して、親だけが日本に帰国した。
こうして中国に置き去りにされた子供のことを中国残留孤児と呼んでいる。
(二战后出于不得已的原因,ー些父母:to孩子遗留在中国,自己回到了日本 。这
些被遗留在中国的日本孩子叫做中国遗留孤儿。)

❹ ツァーで初めて旅行に参加した私は、いつの間にか、連れの一行がどこかに
移動してしまっていたことに気づいた。そして、自分が置き去りにされたこ
とを知った。(我第一次参加团体旅游团去旅游,突然发现不知何时同团的一行
已经不知去向了,这才知道自己被拉下了 。)

285第io課屋根の上のサワン


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